僕たちは世界を変えることができない。の紹介:2011年日本映画。原作は、葉田甲太によるノンフィクション小説。2005年夏、医大に通う田中甲太は、イベントサークルなどに入り、楽しい毎日を過ごしていたが、どことなく物足りない毎日…。そんな、日常を非日常に変える、一冊のパンフレットに、目を奪われる。
監督:深作健太 出演:向井理(田中甲太)、松坂桃李(本田充)、柄本佑(芝山匡史)、窪田正孝(矢野雅之)、村川絵梨(久保かおり)、黒川芽以(デリヘル嬢・ルナ)、江口のりこ(篠崎奈緒)、黄川田将也(IT企業の社長)、リリー・フランキー(バーのマスター)、阿部寛(近藤教授)、ほか
映画「僕たちは世界を変えることができない。」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「僕たちは世界を変えることができない。」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
僕たちは世界を変えることができない。の予告編 動画
映画「僕たちは世界を変えることができない。」解説
この解説記事には映画「僕たちは世界を変えることができない。」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
僕たちは世界を変えることができない。ネタバレあらすじ:起
一浪の末、目標だった医大に合格した田中甲太(向井理)は、東京の大学に通う普通の学生です。同じ大学に通う友人の矢野雅之(窪田正孝)や、柴山匡史(柄本佑)とコンパに明け暮れ、無難に単位をとり、何気ない日常を過ごしていた甲太。
日々の生活に物足りなさを感じ、自分を変えてくれる何かを模索していた彼は、ある日、郵便局で一枚のパンフレットに目が止まります。そこには、『カンボジアの子供たちに屋根のある小学校を』と書かれており、この言葉に感化された甲太は、友達にすぐさま声を掛けました。
「150万円でカンボジアに小学校が建てられる!」と熱弁する甲太ですが、匡史は乗り気ではありません。しかし、あるイベントで出会った本田充(松坂桃李)だけは、学校建設に乗り気になってくれました。雅之と匡史はチャラい本田に対して懐疑的ですが、甲太は仲間ができたことに大喜びです。本田は「金を集めるにはクラブイベントが効果的!」と、持ち前の行動力と人脈の広さで、どんどん学校建設の話を進めていきます。
夜のクラブで女の子に声をかけたり、学校ではサークル募集のチラシを配ったりと、学校建設に向けて仲間を集める甲太たち。そんな中、本田が見つけてきた大手の企業がプロモーション協力してくれることも決まり、甲太たちは学校建設に向け、着実に歩みだすのでした。
2005年9月、第一回イベントが開かれました。このイベントには、看護学校に通う久保かおり(村川絵梨)が来ていました。彼女はボランティア活動でインドネシアに行った経験があり、「実際に現地に行ってみないとわからないことってあるよね…」と話します。「小学校が建つところってどんなところ?」と聞かれ、何も答えられない甲太。「えっ?カンボジアに行ったこと無いのに、学校建てるの?」と言われ、甲太は実際にカンボジアに行くことにしました。
僕たちは世界を変えることができない。ネタバレあらすじ:承
2005年10月、第一回スタディーツアーとしてカンボジアを訪れた甲太、雅之、匡史と本田。初日は観光気分の4人でしたが、訪れた病院で楽しい気分を一気に打ち砕かれる現実があります。40人に1人がエイズ患者のカンボジア。その数は17万人と、東南アジアの中でも一番多い人数となっています。
病院で甲太たちは、一人の若いエイズ患者の女性と話す機会がありました。女性は、「普段若い男性と話をすることはないのでうれしい。」と喜びます。そして、雅之が有名な歌手に似ていると話す女性。甲太は雅之に何か歌うよう無茶ぶりをしますが、雅之は恥ずかしがって歌いません。最後に記念写真をみんなで撮り、別れ際に女性から「生きる希望が湧きました。」と言われて、甲太たちは何も言えなくなりました。
次にカンボジアの首都・プノンペンに行った甲太たちは、トゥールスレン博物館に行きます。かつてポル・ポト政権の独裁による大量虐殺があった場所です。医師や教師など、知識を備えた人やその家族がたくさん虐殺されました。その数はカンボジアの人口の4人に1人で、200万人を超すとも言われています。ベトナム戦争があり、かつては高校だったところが収容所となり、そこが今は公開されています。
ここには1万7千人が収容され、生き残ったのはたった7人でした。慰霊塔にはたくさんの骸骨があり、カンボジアの若い人たちに過去のことを知ってもらうために展示されています。医者になったら一人でも多くの命を助けたいと考える甲太にとって、忘れられない光景となりました。
ガイドをしてくれているカンボジア人のブティは、自身の経験を話してくれます。彼の父は収容され、働かされてある日ついに倒れてしまいます。その時のことを涙ながらに語るブティ。その夜、本田は体調を崩してしまいます。「まだ小学校を見ていない!」と本田は拒否しますが、甲太は帰国するよう勧め、本田は一足先に帰国することになりました。
僕たちは世界を変えることができない。ネタバレあらすじ:転
三日目、チャラス村にやってきた甲太、雅之と匡史。首都とはまったく違った田舎で、屋根のない学校で子供たちは学んでいます。ここでは、学校に通いたくても家の手伝いがあるために学校に通えない子供たちが大勢いることを知る三人。しかもこの村にはたくさんの地雷が埋まっています。カンボジアは、世界でも一番多くの地雷が埋められているところです。
村には少年・スイットが暮らしていました。彼は学校には通わず、父親の仕事を手伝っています。甲太は「もうじき屋根のある学校ができるよ」と伝え、持っていたボールペンをプレゼントしました。
たった一週間の旅でしたが、日本とのギャップに大きくショックを受ける甲太。日本に帰ってカオルと再会したあくる日、アクシデントが発生します。チャリティーの協力を取り付けていたIT会社の社長が、不正取引の容疑で逮捕されたのです。甲太たちのサークルも疑いの目が向けられ、ネットが炎上するなど募金が集まらなくなります。
本田はこのままでは金が集まらないとして、チケットを売りさばくなどして一人5万円のノルマを課してきました。メンバーは不平不満を言い、結局話し合いはまとまらずバラバラになってしまいます。「学校を建てたところで、何も変わらない…」と匡史が言い出し、甲太や雅之、匡史の関係もぎくしゃくし始めました。
自分がやりたかったことはいったい何なのかがわからなくなり、しかもカオルと本田が付き合っていることを知って、余計に落ち込む甲太。そんな時に、カンボジアでガイドをつとめてくれたブティから手紙が届きました。
少年・スイットが甲太に感謝の気持ちを伝えたいと手紙を書いてくれたのです。彼の母親は病気で亡くなり、『だからこそ勉強して医者になりたい。希望をありがとう。またカンボジアに来てください。』と書かれていました。しかし今の甲太には、こんなにまっすぐな手紙は重すぎるのでした。
僕たちは世界を変えることができない。結末
一人夜の公園に甲太がいると、そこへ本田がやって来ます。本田の父親は医者で、彼も実は医者を目指していました。しかし受験の時に挫折。これまで何かしたいと思っていた彼が、甲太と出会って、やりたいことを見つけました。
本田は、「カンボジアに学校が建てば見に行きたい!」と前向きです。すると甲太は、「学校を建てようと思ったのは、モテたかったから…」と告白。「それでもいいんだ!考えても答えなんて出ない!」と、ようやく甲太の中で結論が出ます。
そして、「一人では何もできないので、力を貸してほしい!」と本田に頼み、匡史や雅之とも集まって学校建設に向けて諦めないことを誓い合いました。それからは色々なアルバイトやイベントでの募金活動を続け、ようやく目標金額に達成した甲太たち。
イベントで甲太は突然観客の前でパンツ一丁になり、「自分は何も持っていません。でも誰かのために何かをする喜びは、自分のために何かをする喜びよりも上回る時がある!」と力強く発言します。「何もできない自分だが、笑ってくれる人がいるからこの活動をこれからも続けていきたい!」と熱弁し、雅之、匡史と本田もパンツ一丁になり、みんなで熱い抱擁を交わすのでした。
甲太たちは、サークルのメンバーと共に、学校の開校式のためにカンボジアを訪れます。雅之は、以前に会ったエイズ患者の女性に会いに病院へ行きましたが、彼女は一月前に亡くなっていました。彼女の前で歌を歌うために、カラオケに通い一人『青空』を練習していた雅之は、深く落ち込みます。
一方甲太は、手紙をくれたスイットが学校に来るものだと信じていました。しかしスイットは、父親の仕事を手伝うために学校には通わないつもりです。それを知った甲太は、やるせない気持ちになります。ブティは「夢と現実は違います。」と説明しますが、甲太には理解できません。
甲太はスイットが耕す予定の荒れ地へ行き、自分が代わりに耕そうとします。しかし地面はかたく、大人でも簡単には耕せません。必死に耕そうと鍬を振り下ろす甲太を見て、周りにいた大人達も手伝い始めました。するとスイットは、学校に通ったあとに仕事を手伝うことを約束。甲太はスイットと手をつないで学校に向かいます。
すると、子供たちが花道を作って待っていてくれました。開校式では、たくさんのキラキラとした子どもたちの笑顔があり、子供たちからは歌のプレゼントがありました。甲太たちは、お礼に『青空』を熱唱します。甲太は「生きる希望をありがとう。」と、子供たちに笑顔で礼を言いました。
その後、大学を休学して海外で支援を始めた本田。雅之はエイズ治療に専念します。匡史は語学の勉強をはじめて、カオルは関西の病院に就職。ブティはプノンペンでガイドの仕事を続けています。そして甲太は、日々の生活でいっぱいいっぱいの毎日です。カンボジアでのことが薄れかけている甲太は、世界を変えることはできなかったかもしれません。それでも彼らが学校を建てて、たくさんの子供を笑顔にしたことだけは事実です。
以上、映画「僕たちは世界を変えることができない。」のあらすじと結末でした。
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