駆込み女と駆出し男の紹介:2015年日本映画。原案は井上ひさしの時代小説東慶寺だより。女性からの離婚が困難だった江戸時代。夫との離縁を求め、幕府公認の縁切り寺を頼る女たちを、調停人の医者見習い・信次郎は口八丁手八丁で彼女たちの再出発を手助けする。第39回日本アカデミー賞で優秀主演男優賞(大泉洋)・優秀主演女優賞(満島ひかり)を受賞。
監督:原田眞人 出演者:大泉洋(中村信次郎)、戸田恵梨香(じょご)、満島ひかり(お吟)、内山理名(戸賀崎ゆう)、松岡哲永(田の中勘助)、陽月華(法秀尼)、キムラ緑子(お勝)、木場勝己(利平)、神野三鈴(おゆき)、武田真治(重蔵)、北村有起哉(鳥居耀蔵)、橋本じゅん(近江屋三八)、樹木希林(三代目柏屋源兵衛)、堤真一(堀切屋三郎衛門)ほか
映画「駆込み女と駆出し男」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「駆込み女と駆出し男」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「駆込み女と駆出し男」解説
この解説記事には映画「駆込み女と駆出し男」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
駆込み女と駆出し男のネタバレあらすじ:起
天保12年、江戸は老中 水野忠邦(中村育二)によるいわゆる「天保の改革」によって質素倹約、奢侈禁止の政策が推し進められ、華やかな品や娯楽が取り締まられていた窮屈な時代。
今日も縄を打たれた女義太夫の一座が人々の前に引き出されて来ました。「風紀を乱した」として市中引き回しの上、所払いと申し渡す役人の目を掻い潜るようにして頬っかむりの男が幕府を非難する野次を飛ばし、素早く逃げて行きました。
荷揚げの真っ最中の日本橋の唐物問屋堀切屋。 堀切屋のめかけ、お吟(満島ひかり)は鎌倉の東慶寺を目指して家を出ました。
夫が妻を離縁することは簡単であっても、妻からの離縁の申し立てはほぼ不可能に近かった江戸時代、東慶寺は何とか夫から逃げたいという女達の為の「駆け込み寺」だったのです。
鎌倉の七里ヶ浜のたたら場を取り仕切っている練り鉄の職人じょご(戸田恵梨香)。じょごの夫、重蔵(武田真治)は、たたら場の仕事を放り出し、盛り場に入り浸っていました。重蔵は彼を連れ戻しに来たじょごの容貌を罵ります。たたら場で働き続けていたじょごは顔に火傷を負っているのです。何とか一緒に帰ってくれと懇願するじょごを罵倒し、暴力まで振るう重蔵。じょごは遂に家を出ます。
暗い山道を提灯の明かりを頼りに東慶寺を目指すじょごは途中、乱暴しようと襲いかかって来た駕籠掻きを返り討ちにしたものの、脚を挫いて動けなくなっていたお吟を見つけて二人揃って寺を目指します。
堀切屋の追手を気にするお吟。いよいよ山門が見えてきたところで、二人の後ろに人影が迫ります。たとえ山門の手前で追手に捕まっても寺の境内に草鞋の片方でも何か持ち物が投げ入れられれば、駆け込み成就として、その女性には何人たりとも手出しは出来なくなるという東慶寺の掟を信じて二人は石段を登り、何とか駆け込みを成就させることができました。
じょごに突き飛ばされて目を回してしまった男は追手ではなく、寺の御用宿柏屋の主人の甥、信次郎(大泉洋)でした。
駆込み女と駆出し男のネタバレあらすじ:承
寺に駆け込んだ女達はまず御用宿で身元の確認や離婚したい理由の聞き取りなどが行われ、彼女達の言い分を吟味されます。そして彼女達の申し立てが認められると夫が呼び出され離縁状を書くようにと申し渡されますが、ここで夫が素直に従わない場合は女は寺に入り、髪を切り世俗との関わりを断って二年間修行に励むのです。二年が過ぎると、男側との離縁が正式に成立したと認められました。
お吟とじょごについても柏屋の女主人、三代目柏屋源兵衛(樹木希林)が聞き取りをすることになりました。
お吟を囲っていた堀切屋三郎衛門(堤真一)は大店の主人であるが陰では何か悪どい事をしているらしく、一緒にいるのが怖くなったというお吟の訴えは通りましたが、じょごはなかなか口を開きません。
医者の見習いでありながら戯作者として一旗揚げたいと思いつつ、天保の改革で住みにくくなった江戸から逃げて来て柏屋の居候になっている信次郎は、じょごの顔の火膨れの手当てをします。信次郎と柏屋の人々にじょごも次第に心を開き始めました。じょごの語る話から、出雲出身の鉄練り職人だった祖父は曲亭馬琴の知己であったこともわかります。
堀切屋は寺からの呼び出しに応じず、重蔵も離縁を承知しません。二人は東慶寺で「院代様」と呼ばれる法秀尼(陽月華)の下で二年間の修行に励むことになりました。
駆込み女と駆出し男のネタバレあらすじ:転
柏屋を経て東慶寺に入山したのはもちろんお吟とじょごだけではありません。
道場破りの田の中勘助(松岡哲永)に夫を殺され、道場を奪われた上に無理矢理祝言を上げさせられた剣客の娘、戸賀崎ゆう(内山理名)はいつか勘助を討ち取ることを心に誓っています。
また拐われて吉原に売られた妹のおみつを助ける為に自分は身を隠し、おみつを自らの替わりに入山させたおせん。全く消息を絶っているおせんを柏屋で待つおせんの夫。おみつを取り返しに柏屋には吉原に雇われたヤクザ者が押し掛けてきたこともありましたが、信次郎が口八丁で撃退しました。その後、おせんと夫、寺から戻ったおみつは源兵衛の機転で再会を果たしたのでした。
ところがある日、お吟が寺で血を吐いて倒れたとの知らせが入りました。医者として寺を訪ねた信次郎はお吟が当時は不治の病であった労咳(結核)にかかっていると診断します。男子禁制の寺の中では中々思うように診察も出来ない信次郎に協力して、じょごはお吟をかいがいしく看病するのでした。
じょごとの間に友情を育み、信次郎にも心を許したお吟は、ある秘密、自分が東慶寺に駆け込んだ訳を信次郎に打ち明けます。そんな信次郎は寺からの帰り道に堀切屋に誘拐されてしまいます。堀切屋は実は盗賊の首領であり、お吟が裏切って逃げ出し、自分を強請ろうとしていると思い込んでいます。信次郎はお吟の連絡役に間違われてしまったのでした。
拷問される信次郎はお吟は労咳であることと、自らの死んで行く姿を惚れた堀切屋に見せて悲しませたくなかったという彼女の本心の本当の気持ちを堀切屋に伝え、解放されました。
お吟は柏屋で二年目の夏に楽しみにしていた馬琴の『南総里見八犬伝』の続きを信次郎に読んでもらいながら静に息を引き取りました。その時戸口で経を唱えていたのは実は僧となった堀切屋でした。
駆込み女と駆出し男の結末
南町奉行鳥居燿蔵は幕府から東慶寺を潰せという密命を受けて体の不自由な女密偵、玉虫を寺に送り込ませていました。玉虫に源兵衛ははじめから疑いを持ちじょごとゆうに彼女を見張らせます。
そんな中、寺にいるおゆきという女が妊娠したという騒ぎが持ち上がります。男子禁制の東慶寺でそんなことが起こったとすれば、何より幕府に付け入る隙を与えてしまう一大事です。院代がおゆきを問いただそうとしますが、信次郎はおゆきが想像妊娠していると見破り、事なきを得ました。
一連の流れを探っていた、実は隠れキリシタンであった玉虫は院代の隠し持っていたマリア像を見て、密偵の立場を捨てて寺に入ることを決意しました。
やがて二年が過ぎようとする頃、離縁に納得できないゆうの夫、勘助が寺に乱入して暴れる騒ぎがありました。立ち向かうじょごに感化され、女達は武器を取り応戦。勘助を取り押さえます。
一方呼び出されたじょごの夫、重蔵は改心してじょごに戻って欲しいと頼みますがじょごはこれを断り、じょごの離縁は成立しました。
信次郎はオランダ医学の勉強をするために長崎へ行こうと決心し、じょごに一緒に来てくれるように頼みますが、じょごは戯作の道を諦めることはないと諭し、二人は江戸へ向かいます。とある家へ信次郎をつれて行くじょご。そこは信次郎が憧れる曲亭馬琴その人の家だったのでした。
以上、映画「駆込み女と駆出し男」のあらすじと結末でした。
何度も見返してしまうほどのいい映画です。
セリフ言い回しが難しいので1度目では全て理解できませんでしたが、それを抜いても心に訴えてくるものがあります。現代のように離縁することが容易くなかった時代、様々な理由から離縁したく東慶寺に駆け込む女たちと、それを手助けする男。色鮮やかな映像と、交わる人間関係、どれをとっても美しい映画でした。