映画「39 刑法第三十九条」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
39 刑法第三十九条の紹介：1999年日本映画。刑法３９条１項心神喪失者の行為は、罰しない。２項心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。心神喪失を扱ったこの刑法３９条を軸に争われる本格法廷サスペンス。監督はサスペンス映画の雄、森田芳光。法により守られる加害者の権利と虐げられた被害者の感情の相克を真正面から描いた重厚な物語。
監督：森田芳光 出演：小川香深（鈴木京香）、柴田真樹（堤真一）、名越文雄（岸部一徳）、小川祐子（吉田日出子）、工藤実可子（山本未來）、工藤啓輔／砂岡明（勝村政信）、ホームレスの手塚（笹野高史）、中村刑事（竹田高利）、畑田修（入江雅人）、畑田恵（春木みさよ）、館林刑事（菅原大吉）、裁判長（田村忠雄）、漁村の村松（井上博一）、犬山の警官（ラッキィ池田）、柴田利光（國村隼）、長村時雨（樹木希林）、草間道彦（江守徹）、藤代実行（杉浦直樹）、ほか
この解説記事には映画「39 刑法第三十九条」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
「一、心神喪失者ノ行為ハ之ヲ罰セス。」「一、心神耗弱者ノ行為ハ其刑ヲ減軽ス。」は、刑法第三十九条の条文です。
ある日、若い夫婦の畑田修とその妊娠中の妻・畑田修がめった刺しにされるという猟奇的殺人事件が起きました。捜査に当たった名越文雄刑事と中村刑事は、劇団員・柴田真樹をその容疑者として逮捕しました。柴田は取り調べで素直に自分が殺したと自白をしました。
柴田の国選弁護士・長村時雨にも柴田は概ね容疑を認め、「死刑にしてください」と長村に言いました。しかし、長村は「死刑など人間のする裁きではない。頑張りましょう」と言い、まず柴田に犯行に及んだ動機を尋ねました。すると柴田の形相は一変し、「動機なんてねえよ」と言い出しました。
そして、柴田の公判が始まりました。検察官の草間道彦が起訴状を読み上げたところ、再び、柴田は変貌し、意味不明の言葉を発し始めました。驚いた長村は、これは刑法第三十九条に当たると思い、柴田の司法精神鑑定を請求しました。
柴田の司法精神鑑定に、精神医学者の藤代実行とその助手の小川香深が当たることとなりました。二人は拘置所を訪問し、柴田と面会しました。柴田は大人しい、温厚な人間でした。
藤代は様々な心理テストを柴田に行いました。柴田は真摯にそのテストに向かい、偏差値62と高い知能指数を出しましたが、柴田は犯行時の事をはっきりと覚えていないようでした。
そんなある日の面会時、助手の香深は柴田に犯行時の動機を尋ね、柴田が劇団でやっていたある芝居のセリフを朗読しました。すると、突如、柴田が豹変し、香深を襲ってきました。その姿はあの温厚な柴田ではありませんでした。豹変した柴田は好戦的で「犯行をやったのは俺だ。柴田の野郎にはそんな度胸はねえ」と言い放ちました。また、その豹変した柴田は、普段の柴田とは違い、左利きでした。
公判が再開され、鑑定にあたった藤代は、幼少期に柴田が父親・柴田利光から虐待を受けていたことを鑑みて、彼を解離性同一性障害・多重人格症と判定しました。そして、左利きで行われた犯行時の柴田の精神状態は、心神喪失状態であったと鑑定しました。つまり、柴田の中に眠っている交代人格が、犯行を行わせたと主張しました。
しかし、香深は藤代と別の見解を持っていました。香深は柴田に襲われたとき、殺意を感じなかったことから、あまりにも典型的過ぎる柴田の症状に疑惑を覚え、詐病ではないかと考えていました。
香深は検察官の草間に自身の見解を告げました。香深は草間から柴田の再鑑定を委任されました。香深はこの柴田の捜査に当たっていた名越刑事と会いました。名越刑事もこの事件に疑念を抱いていました。それは柴田と畑田夫妻とは特に面識はなく、柴田が夫妻を惨殺する動機がなかったからでした。
しかし意外な事実がありました。なんと畑田修は15歳の時、工藤温子という少女を強姦、殺害したという犯行歴がありました。未成年の畑田は家庭裁判所において心神喪失状態にあったと判定され、刑法第三十九条によって無罪となっていました。
香深は今回の事件がこの事件と関係しているのではないかと思い、独自に調査を進めました。殺害された少女・温子には、ただ一人の家族である兄・工藤啓輔がいました。香深は、香深に触発された名越刑事と共に、啓輔に会うため、門司へ行きました。啓輔はそこで妻・工藤実可子と二人で慎ましく暮らしていました。
過去の事は忘れたいと嘆く啓輔に、香深と名越は疑念を持ちました。さらに二人は柴田の父・利光の足取りを辿り、あるホームレスの手塚という男と出会いました。手塚は柴田がちょくちょく父のもとに来ていたと話し、父・利光が「息子が生きてた」と喜んでいたという情報を手に入れました。二人は柴田真樹、そして工藤啓輔が本物かどうか益々疑念を深めました。
名越は再び門司に飛び、工藤の家へと向かいましたが、既に工藤夫妻は引っ越していました。名越はその工藤の家で、隠されていた数冊の精神医学の専門書を発見しました。名越は事件の核心へと迫っていました。
一方、その頃突如、香深の前に工藤啓輔が現れました。工藤は「僕は工藤啓輔ではないんです。実可子は本当の工藤啓輔を愛しています。柴田真樹を…」と言い、１冊の妻・実可子のノートを、香深に渡し、立ち去って行きました。香深はそのノートを読み、全てを悟りました。
実は、昼間の啓輔は砂岡明という全く別人なのでした。全ては柴田が用意周到に準備し、仕組んだことでした。柴田こそが本当の工藤啓輔で、彼は柴田真樹という男の戸籍を買うため、砂岡に自分の戸籍を与え、自分の恋人である実可子に頼み込み、工藤啓輔となった砂岡と一時的に結婚させたのでした。
そして全くの別人・柴田となった啓輔は、妹・温子を殺害した畑田修を殺し、見事に復讐を果たしたのでした。（畑田修は衝動的に妻・恵を、柴田（啓輔）が来る直前に殺害していました。恵の殺害は柴田とは全くの無関係でした。）復讐を終えた柴田は、今度は刑法第三十九条を逆手にとって、無罪を勝ち取るため、実可子と共謀して多重人格者を演じていたのでした。ノートにはその筋書きが書かれていました。
事件の真相を知った香深は、草間に頼み込み、精神鑑定を法廷内で行うように求めました。弁護士・長村は「人権侵害」と反対しましたが、柴田がそれを了承したことで、裁判官もそれを認めました。精神鑑定を公開法廷するという前代未聞の裁判が開かれました。香深と柴田は法廷内で対峙しました。
香深は柴田を自分が描いたシナリオ通りに追い詰めていきました。柴田はそのシナリオ通りに答え、さらに最後にキレた振りをし、香深の首に彼女の万年筆を突き立てました。その手は右手でした。柴田は最後の最後でミスを犯しました。香深は事前にそのシナリオを書き、裁判長、名越、長村に渡していました。
柴田の本性は香深の手によって、全て暴かれてしまいました。香深は裁判長に「精神鑑定は綿密なデータと知識に支えられていますが、所詮、精神鑑定人の主観に過ぎないのです。精神鑑定の結果、刑法第39条の下に被告人を無罪にしてしまうことは、被告人の人権を守ることではなく、逆に奪うことではないでしょうか」と訴えました。
しかし、裁判長はそれを却下しました。すると素に戻った柴田が発言し出しました。「小川香深、あなたの登場は予定外でした。予定外の共犯者でした。刑法第39条…僕が凶器を突き刺したかったのは、この理不尽な法律に対してだ。裁判長、僕は工藤啓輔です」と訴えました。
裁判は閉廷され、新たに柴田は工藤啓輔として裁かれることになりました。
香深はノートにこう書き記しました。「被告人・工藤啓輔。この法廷から刑法第39条が消えて、彼はようやく一人の人間になった。現在も審理中である。長い裁判になるだろう」と。
以上、映画39 刑法第三十九条のあらすじと結末でした。
法律で、犯罪者が守られ、その犯した罪さえ見逃された結果、また新たな被害者を生む。頭の良い彼は、知恵と知識で、それを社会に向けて命を賭けて訴えたかった。哀しく辛い映画だが、現実も、同じ様…昔、昭和の頃、まだ幼い私の遊び友だちの五才の女の子は、殺されはしなかったが、同様の犯罪の被害者だった…彼女は、事件後直ぐに引っ越した。犯人は、未成年者だったのか、きちんと罪に問われたのか、は、分からないまま。その後も、同じ様な事件はあり、被害者は出た。正義って❔もし、私が、彼女の身内だったら❔復讐では決して解決できないけれど、被害者や被害者家族を思いやれば、時代に則さない法律は、変えていくべきだろう。加害者も被害者も、一人の人間として扱う為に…(涙)
この映画、今日観たのですが、ちょっと分からない所もあり、解説のおかげで理解できました。 大変参考になりました。 ありがとうございます。