映画「ある戦争」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ある戦争の紹介：2015年デンマーク映画。第88回アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた注目作。アフガン紛争地域で市民を保護するデンマーク軍。タリバンとの戦いで神経をすり減らす中、故郷に妻子を残してきた部隊長クラウスはある決断を迫られる。部下のために行ったその行為は、やがて戦争犯罪として裁判にまで発展する。正義とは何か、家族とは何かを問いかけるシリアスな戦場ドラマ。
監督：トビアス・リンホルム 出演：ピルー・アスベック（クラウス・M・ペデルセン）、ツヴァ・ノヴォトニー（マリア・R・ペデルセン）、ダルフィ・アル・ジャブリ（ラッセン）、ダール・サリム（ナジブ・ビスマ）、ソーレン・マリン（オルセン弁護士）、シャーロット・マンク（ダニング検事）ほか
この解説記事には映画「ある戦争」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
緊張下にあるアフガニスタン。民間人をタリバンから守るため、デンマーク軍中隊が駐留しています。兵士達が銃を構えて大地を踏みしめ進む中、突然、埋まっていた地雷が爆発しました。すぐそばにいた21才のアナスが重傷を負い、その場で息を引き取ります。無線で基地から指示を送っていた隊長のクラウスは、すぐさま救急ヘリを送ると伝えます。アナスの遺体が基地へと運ばれます。アナスと親しかった兵士のラッセは大きなショックを受け、もう家に帰りたいとクラウスの前で泣き出します。ラッセの悲しみを少しでも軽くしようと努めるクラウスですが、自身もまた、戦地での過酷な生活に疲弊していました。クラウスにはデンマークで待つ妻マリアと、ユリウス、フィーネ、エリオットという3人の子供達がいます。戦場にいる夫の身を案じながら、3人の子育てに奮闘するマリアの毎日も同様に辛いものでした。唯一の慰めはたまにかかってくるクラウスからの電話で、夫の無事を確認することでマリアの心は安らぐのでした。
アナスの死により、兵士達の間で任務への不満が巻き起こります。彼らを納得させるため、クラウスは自分も明日から巡視に参加すると言います。基地周辺には民間人の住居が点在し、子供達も大勢います。ある日、1人のアフガニスタン人男性が基地に助けを求めてきます。クラウス達が男性の家へ向かうと、ヤケドで苦しむ少女がいました。手当をしてやると、父親は深い感謝を捧げます。一方マリアは、父親不在のあまりどんどん反抗的になるユリウスや、薬の誤飲で体調を崩すエリオットに手を焼いていました。ある日、クラウス達は、アフガニスタン人の家族から今夜タリバンが村に来る恐れがあるので助けてほしいと懇願されます。クラウスは、今夜は無理だが明日は必ず村へ行くと伝え、なかなか納得しない父親をなだめて家族を帰しました。翌日、村へ入ったクラウス達があの男性の家を訪れます。家族全員がタリバンに射殺され、無残に息絶えていました。銃弾を受けた幼い子供達の遺体に、クラウスは言葉を失います。激しく動揺するラッセを、仲間達が外へ連れて行きました。その時、村の外で激しい銃撃の音が響きます。
クラウス達が銃を構える中、ラッセが首を撃たれて倒れます。搬送ヘリはなかなか到着せず、瀕死のラッセの姿にクラウスは焦ります。銃声はするものの敵の姿は見えず、爆発で起きた砂埃で周囲は真っ白になります。クラウスは、部下のブッチャーに攻撃を命じます。その後ラッセは命をとりとめ、イギリスに治療搬送されました。しかし、クラウスは司令官から信じがたい話を聞きます。クラウスの出した攻撃命令で、11人もの民間人が命を落していたのです。クラウスは起訴され、デンマーク帰国を命じられます。父親の帰宅に大喜びする子供達でしたが、マリアはクラウスの様子がおかしいことに気づきます。後日、裁判を控えたクラウスとマリアは、オルセン弁護士のもとを訪ねます。争点は、クラウスが敵の存在確認を怠ったのか否か。軍事司法違反が発覚すれば、最長で懲役4年が課せられます。クラウスはマリアに本音を漏らします。「敵を確認できなかった。責任をとる」。しかしマリアは、「4年も服役したら子供達はどうなるの？」とクラウスを責めます。
裁判が始まりました。マリアと部下の兵士達が、被告席のクラウスを見つめています。女性検事ダニンングは、銃撃された子供達の写真を証拠品として提示。クラウスの法順守の精神欠如を指摘しました。自分の子供達と同じ年頃の遺体を見せられ、クラウスの顔に動揺が現れます。敵の確認の有無を聞かれ、覚えていないで押し通すクラウス。ラッセ救出のためやむを得ない決断だったという訴えは、ダニング検事によって退けられます。裁判2日目。副隊長のビスマが証言します。クラウスを最高の軍人だと讃える一方で、クラウスの判断ミスを指摘されると反論できずに言葉を濁します。ビスマの発言に、帰宅したクラウスはマリアの腕の中で号泣します。裁判3日目。クラウスと問題の現場にいたブッチャーが、敵の銃口が見えたと発言します。ダニング検事は驚き、なぜその情報を提供しなかったのかと問いかけます。ブッチャーは、聞かれなかったから言わなかったと冷静に答えます。ブッチャーは宣誓供述書をパソコンで確認したため、署名はしていませんでした。ダニング検事は有罪判決を求めます。そして下された判決は無罪。クラウスは安堵し、マリアは涙を流して喜びます。家族に平和な日々が戻りました。クラウスは、もう戦地へは行かないよとユリウスに告げます。クラウスの目に、眠りについた息子とアフガンで死んだ子供の姿が重なります。真夜中。クラウスは深い思いに沈みます。
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