小野寺の弟 小野寺の姉の紹介:2014年日本映画。一つ屋根の下で暮らす恋愛に臆病な弟とパワフルな姉が、間違って配達された手紙をめぐり、それぞれの恋と人生が懸かった騒動を巻き起こしていく様子を描く。TVドラマ『妖怪人間ベム』やアニメ『TIGER & BUNNY』などの脚本を務めた西田征史が、自身の小説『小野寺の弟・小野寺の姉』を映画化、初監督した作品です。キャッチコピーは「最強のすぎるふたり。」「日本一・人生に不器用な姉と弟に、恋のチャンスが訪れた!?」で、一軒家に過ごす姉と弟の心の絆と二人の恋の行方をコメディタッチで描いたハートフルドラマです。監督・脚本は小説の作者の西田自身が担当、主役の小野寺姉弟は、2013年の舞台に引き続き、向井理と片桐はいりが務めています。映画初監督した西田は、この作品で第39回報知映画賞・新人賞を受賞しました。
監督:西田征史 出演:向井理(小野寺進)、片桐はいり(小野寺より子)、山本美月(岡野薫)、ムロツヨシ(河田耕輔)、寿美菜子(齋藤亜沙子)ほか
映画「小野寺の弟 小野寺の姉」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「小野寺の弟 小野寺の姉」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
小野寺の弟 小野寺の姉の予告編 動画
映画「小野寺の弟 小野寺の姉」解説
この解説記事には映画「小野寺の弟 小野寺の姉」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
「小野寺の弟 小野寺の姉」のネタバレあらすじ:1.小野寺の弟と姉
床に真っ赤な唐辛子が二本、仲良く落ちていました。「姉に殺意を抱いたことがこれまでに三度ある。一度目は、幼稚園児だった俺に、唐辛子をかりんとうのようなものと言い、食べさせたあの時。…」と呟く寝癖頭の小野寺進(33歳)は、遊園地「ドリームワールド」に姉・小野寺より子(40歳)に連れられて来ていました。福引で当たったので楽しまないと損と言い、大はしゃぎの姉・より子の姿を見て、弟・進は「気持ち悪い」とポツリと呟きました。姉・より子は背が高く、ショートカットのおかっぱ頭をしていました。そんな姉・より子を進は「数十年、髪型を変えない女。…笑顔が下手な女」と評しました。姉・より子は観覧車を見つけると、「次、あれ乗ろう」と言い、笑顔でスキップして向かって行きました。姉の背筋をピンと伸ばした後姿を見ながら、進はだるそうにゆっくりと立ち上がりました。
「小野寺の弟 小野寺の姉」のネタバレあらすじ:2.出会い
進とより子、二人の姉弟は、両親を幼い頃に亡くして、長年一軒家で二人暮らしをしていました。より子は風水好きで近所の商店街の眼鏡店に勤めていました。進は入浴剤などを開発する調香師でした。進は姉・より子が運気が上がると言い、取り付けた台所の玉暖簾に、いつも髪の毛を挟まれ、その度に「これ、外そうよ」と姉に文句を言っていましたが、姉は無視していました。二人は平穏な日々を送っていました。
ある日、小野寺家に一通の誤った手紙が届きました。宛名は岡野薫という人宛でした。姉・より子は、近くの住所だからと言い、直接届けようと進を誘いました。進は嫌がりましたが、じゃんけんで負けてしまい、結局、姉と共にその手紙を届けるはめになりました。
二人が住所のマンションの一室に到着し、チャイムを鳴らすと、可愛い可憐な若い女性が出てきました。その女性が岡野薫でした。薫は、見知らぬ二人の突然の訪問にも関わらず、礼儀正しく愛らしい姿勢で、進とより子に接しました。そんな薫の姿に進は、思わず元彼女だった祖父江好美の姿を重ね合わせてしまいました。帰宅途中、姉・より子も薫の姿に好美の姿を重ねていました。より子は弟・進に「いい出会いなんじゃない。そろそろ次に踏み出してよ」と言いました。より子は弟・進のことを心配していましたが、好美との辛い別れの想い出を断ち切れない進は、「いいよ。そういうの」と呟きました。
さて、姉・より子のほうは、毎週月曜日に勤務先の眼鏡店に営業でやって来るコンタクトレンズ・メーカーのイケメン・浅野暁に、密かに淡い恋心を抱いていました。ただ、浅野が来ると、決まって向かいのブティックに勤める若くて愛嬌のある齋藤亜沙子がやってきました。そのせいもあり、より子も一歩を踏み出せないでいました。
「小野寺の弟 小野寺の姉」のネタバレあらすじ:3.再会
進と薫との再会の時は直ぐに訪れました。進は開発中の入浴剤「ありがとうの香り」で悩んでいました。進は「ありがとうの香り」のヒントを求めて、近所の公園行き、草木などの匂いを嗅ぎまわっていました。その時、突然、薫が現れました。薫は愛犬の散歩で、ちょうど公園に来ていたところでした。二人は互いに職業を明かし合いました。薫は駆け出しの絵本作家でした。ただ、先日進たちが届けた手紙は、絵本コンクール落選通知でした。薫からその事を聞いた進は、自分の名刺も渡さず、逃げるようにして公園を立ち去ってしまいました。
帰宅して進が姉・より子にその話を報告すると、より子は激怒し始めました。より子は次の新たな恋に踏み出そうとしない進の姿勢に憤ったのでした。姉の怒りは翌日も収まっていませんでした。姉の怒りが理解できない進は苛立ち、幼馴染で売れない役者の河田耕輔と飲みに行きました。酔っぱらって帰宅した進は、偶然、本棚から落ちた『失恋から立ち直らせる20の方法』という本を発見しました。その本には付箋がたくさん貼ってありました。中を見ると、「なるべく外に連れ出すこと」という文により子は線を引っぱっていました。進はここ最近、姉が無理矢理でも自分を外に連れ出そうとしていたことが、姉・より子の心配りであったことを悟りました。進は姉の優しい思いやりに応えようと、自ら進んで外に出るようにしました。
「小野寺の弟 小野寺の姉」のネタバレあらすじ:4.ある日、突然…
そしてある日、進がいつもの公園で匂いを嗅ぎまわっていると、突然、薫が現れました。薫は進と公園で再会してから、毎日、進に会えないかと公園に来ていたのでした。進は薫から今、描いている新作の絵本についてアドバイスしてほしいと、お願いされました。その絵本の物語は、主人公の犬・ペロが、色々な人々と出会い、その人を元気づける香りを届けるというものでした。進は開発中の「ありがとうの香り」のヒントにもなると思い、快諾しました。進と薫はそれから二人で会うようになりました。薫は誠実で真面目で優しい進に、次第に心を惹かれていきました。
そして、ある日、進は薫の絵本の原稿を読みました。生真面目でお世辞が下手な進は、薫の出来過ぎた物語に違和感を覚え、「独りよがりな気がする。…ペロくんが相手の事を思ってしている事が本当の優しさとは限らないのでは…。場合によっては相手を傷つけているかもしれない」と、率直に感想を伝えてしまいました。しかし、意外にも薫は、落ち込むどころか、喜んで進の意見に賛同し、絵本を描き直しました。新しい物語は、主人公の犬・ペロが様々な人々と出会い、傷つきながらも本当の優しさを見つけ、めでたく飼い主のもとへ帰るというものでした。この物語にして、薫は念願だった絵本を出版することになりました。他人の意見を真摯に受け入れる真面目で素直な薫の姿に、進は心を惹かれながらも、また元カノの好美の姿を重ねてしまうのでした。
一方、姉・より子の恋のほうも進展がありました。それはある日、突然やってきました。浅野にランチに誘われたのでした。浅野に連れられて行ったのは、浅野が以前から気になっていたラーメン屋でした。しかし、そこは私語厳禁でした。浅野はより子に窮屈な思いをさせ、申し訳なさそうにしました。そんな浅野の姿に、より子は益々、心を惹かれていきました。
「小野寺の弟 小野寺の姉」のネタバレあらすじ:5.本当の優しさ…
季節が流れてクリスマスが近づいてきました。街が賑わっていたそんなある夜、突然、小野寺家に薫から電話がかかってきました。薫はクリスマスパーティーにより子と進を招待したいと誘ってきました。それを聞いたより子は、弟・進と薫をくっつける絶交のチャンスと喜び、進の都合も聞かずにその招待を受けました。より子はパーティーの準備まで申し出ました。もちろん、寝癖頭のまま進も一緒に駆り出されました。
パーティーの日、準備が終了し、あとはゲストを待つだけとなりました。より子はある妙案を思いつきました。より子は部屋に隠れてゲストを驚かそうと提案しました。より子はクローゼットに薫と進を無理矢理押し込み、二人の距離を縮めようとしました。暗い二人きりの空間で、薫は進にデートの誘いをしました。薫は絵本のアドバイスへのお礼だけでなく、進のことをもっと知りたいと告白しました。しかし、それを聞いた進は驚き、またその場から逃げ去ってしまいました。
その直後、より子は激痛に襲われ、倒れてしまいました。盲腸でした。より子は入院することとなりました。
その入院中、偶然、より子は昔の同級生のこだま、通称・マッチと再会しました。こだまはより子の初恋の人でした。まだ独身で世間体を気にしたより子は、見舞いに来ていた弟・進を彼氏と偽って紹介しました。より子は進とのラブラブぶりを自慢しました。しかし、偶々、より子と進を担任した平松先生が現れ、より子の嘘はあっけなくばれてしまいました。
進は姉・より子がマッチを好きだった時のことを思い出しました。その時、姉・より子はマッチのことばかり話していました。ある日、二人乗りして自転車の後ろに乗っていた進は、いたずら心でつい、姉の目を手で塞いでしまいました。二人は木に激突し、自転車は横転し、より子は歯を強くぶつけてしまい、前歯が黒ずんでしまいました。それ以来、より子は人前で前歯を出して笑うこと、好きな人のことを話すことを辞めてしまったのでした。進はその事に強烈な責任と引け目を感じ、自分よりも姉・より子に先に幸せになってほしいと思い続けていました。実は、進が好美と別れた理由も、そこにありました。しかしある夜、「それでお前の姉ちゃん、喜ぶのか?それって、お前の独りよがりじゃないか?」と幼馴染の耕輔に問われました。進はそれに返答ができませんでした。帰宅した進は一人、薫の絵本を読みながら、本当の優しさについて考えました。
一方、姉・より子は自分より弟・進の事を心配していました。また、より子は自分の容姿に幼い頃から強いコンプレックスを抱いていました。それで恋にも積極的になれませんでした。その事を平松先生により子は打ち明けました。平松先生はそんなより子を温かい言葉で励ましました。
「小野寺の弟 小野寺の姉」のネタバレあらすじ:6.恋の行方
時は流れ、退院したより子は自分の誕生日の前日、眼鏡店の店主夫妻から恋愛成就のパワーストーン・ブレスレットを貰いました。その上さらに、なんと浅野から誕生日当日にデートに誘われました。もちろん、より子は快諾しました。
一方、進も奮起して、薫に電話をかけて姉のデートと同じ日に、薫をデートに誘いました。薫は快く受けてくれました。
いよいよ、デートの日が来ました。二人は慌ただしくデートへと出かけました。進は薫と遊園地「ドリームワールド」に出かけ、その夜、食事を共にしました。楽しそうに笑い過ごす進と薫は、まるで恋人同士のようでした。進は思い切って、薫に告白しました。しかし、薫からの返事は良いものではありませんでした。薫は進に心を惹かれていましたが、クリスマスパーティーでの一件で進のことを諦めて、海外へ絵本の勉強に行く決心をしていたのでした。進は愕然としました。進の恋はあえなく潰えました。
その頃、姉・より子はいつもよりお洒落な装いで、浅野と雑貨屋でプレゼント選びを楽しんでいました。浅野は誰かにプレゼントをしたいと言い、より子は幸せいっぱいでした。しかし、浅野がプレゼントしたい相手は、より子ではなく、なんと向かいのブティックの齋藤でした。それを聞いたより子は愕然としましたが、より子は気丈に振舞い、浅野のためにプレゼントを選んであげました。より子は浅野からお礼の食事に誘われましたが、それ断り、タクシーに乗って直ぐに家に帰りました。より子は一人、自室に入り、庭で花を咲かせているワイルドストロベリーを観ました。ワイルドストロベリーは花が咲くと願いが叶うと言われていました。より子はそれを思い出し、辛い現実に耐え切れず、泣き崩れました。
「小野寺の弟 小野寺の姉」の結末:7.ありがとうの香り
そこに、進が帰宅してきました。進は姉・より子の泣き声を耳にしましたが、気づかない振りをしました。より子は必死で平静を装い、食事の準備を始めました。そんな姉・より子に、進は畳裏貯金でせっせと貯めていた千円札の束を渡しました。進は姉にこれで前歯を直してほしいと言いました。より子は照れ隠しで笑い、涙をこらえながら浅野にフラれたことを進に告げました。進も涙をこらえながら台所から去ろうとしました。その時、進はより子から「ありがとう」と言葉をかけられました。進は台所に戻り、匂いを嗅ぎました。「これがそうか」と進は呟きました。進はようやく探し求めていた「ありがとうの香り」を得ることができました。
自室に戻ろうとする進を追い、より子は台所を出ようしました。その時、より子の髪の毛が玉暖簾に引っかかりました。「イテ…」と思わずより子は、手にしていた唐辛子は勢いよく落としました。より子は進に絡んだ髪の毛を外してもらいつつ、「もう、これ外そうかあ」と呟きました。
突然のより子の方針転換に、進は笑ってしまいました。
床に真っ赤な唐辛子が二本、仲良く寄り添うように落ちていました。
まるで進とより子のように…。
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