臨場 劇場版の紹介:2012年日本映画。都内で起きた通り魔事件の犯人が心神喪失と判定され無実となったことから解決したはずの事件が複雑に広がりを見せて行くという内容のテレビドラマの劇場版です。この作品は、『半落ち』『クライマーズ・ハイ』などで有名な横山秀夫の刑事小説『臨場』を原作としたテレビドラマの劇場版です。キャッチコピーは「まだ、根こそぎ拾えてねぇ。想いを拾い尽くさない限り、終われない」「物言わぬ、死者の声を聞く それが彼の使命」という、豪快かつ型破りであるが鋭い観察眼を持つ検視官を中心に描いたヒューマン・サスペンスドラマです。
監督:橋本一 出演:内野聖陽(倉石義男)、松下由樹(小坂留美)、渡辺大(一ノ瀬和之)、平山浩行(永嶋武文)、益岡徹(五代恵一)、高嶋政伸(立原真澄)、段田安則(仲根達郎)、若村麻由美(関根直子)、柄本佑(波多野進)、平田満(浦部謙作)、市毛良枝(山下美奈子)、長塚京三(安永泰三)、隆大介(坂東治久)、小林勝也(西田守)、伊藤裕子(早坂真里子)、京野ことみ(倉石雪絵)、おのさなえ(刑事部鑑識課)、道井良樹(刑事部鑑識課)、松田ジロウ(捜査一課 刑事)、中山夢歩(捜査一課 刑事)、水野直(捜査一課 刑事)、菅原大吉(高村則夫)、デビット伊東(加古川有三)、土屋良太(関本幸彦)、魏涼子(安永光子)、春木みさよ(樋口雅代)、前田希美(関本好美)、浜田学(繁野刑事)、田中伸一(川相刑事)、ヨシダ朝(大沢検視官)、前田健(張り番の警官)、ほか
映画「臨場 劇場版」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「臨場 劇場版」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
臨場 劇場版の予告編 動画
映画「臨場 劇場版」解説
この解説記事には映画「臨場 劇場版」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
詳細あらすじ解説
臨場 劇場版のネタバレあらすじ(詳細):1.プロローグ:検死官・倉石義男
「おはよう」と倉石義男(46歳)は朝起きると、18年前の通り魔事件で亡くした妻・雪絵の写真を見ながら、多くの植物や花に声をかけ、水をやりました。その花々を育てることは、亡き雪絵の趣味で、ベランダで家庭菜園もしていました。また、2匹の金魚も飼っていました。倉石は、刑事部鑑識課検視官で班長を務めていました。検死官とは、刑事訴訟法に基づき、変死体の状況捜査を行う司法警察員です。
臨場 劇場版のネタバレあらすじ(詳細):2.無差別通り魔殺傷事件、発生
いつもと変わらないその日、吉祥寺の広場は、いつもと変わらず大勢の人々が行き交いしていました。しかし、突然、そこに1台のバスが突っ込んで来ました。バスの中から息を切らせ、必死で出てくる客たちは、「逃げろ!」と叫びました。その後に続いて出てきたのは、全身血まみれの若い男でした。彼は手にナイフを持ち、近くにいた人たちをナイフで次々に殺そうとしました。悲鳴をあげ逃げ惑う人々の中、その男はベビーカーの赤ちゃんを庇おうとした母親を殺そうとしました。その時、「やめて!」と叫ぶ女性の声が、その男の耳に入りました。そこには若い女性が立っていました。その男はナイフを持ち、その女性をナイフで殺し、次に赤ちゃんの母を殺しました。無差別通り魔殺傷事件の発生です。騒然とした現場に、通報を受けた警視庁刑事部捜査一課の管理官・立原真澄、坂東治久、一ノ瀬和之らが急行して来ました。死者4名、多数の重軽傷者を出して逃亡した犯人の男は逮捕されました。続いて現場に到着したのは、鑑識課倉石班の倉石検視官、検視官心得の小坂留美、検視補助官の永嶋武文たちでした。倉石は愛用のレザージャケットを脱ぐと、小坂から受け取った検死官の制服に袖を通し、班員を連れ、臨場しました。倉石たちはまず、バスの2名の死者を検死することにしました。倉石たちは、いつものようにまず死者に対し、全員で合掌し弔いました。そして、「始めるか!」と言う倉石の言葉で、班員たちは検死を始めました。バスの中の遺体の検死を終えた倉石たちは、次に広場で殺された女性の検死をしました。そこに犯人のナイフが届きました。小坂がナイフの幅を測ると、倉石はほぼ傷口と一致すると判断しました。それを聞いた立原が「確認作業は終わりだな」と言うと、倉石は「まだ、終わってねえ!」と一喝しました。その犯人は波多野進という24歳の若者でした。波多野は取り調べ室で「天…神…お告げ…殺せ~!殺せ!」と訳の分からない言葉を口走り、暴れました。それを見ていた立原とその上司の刑事部長・警視監・五代恵一は、彼が刑法第39条に当たる可能性があると困惑しました。刑法第39条とは「1.心神喪失者の行為は、罰しない。2.心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する」というものです。「やめて!」と叫び、波多野に殺された女性は、関本好美というまだ若い女性でした。一報を聞いた彼女の両親・関本直子と幸彦が遺体安置所に駆けつけて来ました。母・直子は娘・好美の遺体を見ると、信じられない事態にショックを受け、号泣しました。傍に座っていた倉石は、その姿を見るのが偲びなく、その場から立ち去りました。
臨場 劇場版のネタバレあらすじ(詳細):3.事件から2年後、謎の刺殺事件発生
この無差別殺人事件から2年後、現場の吉祥寺の広場は、過去に何も無かったかのように、大勢の人々が行き交いしていました。その殺人犯・波多野は精神鑑定で心神喪失状態にあったとされ、刑法第39条の適用を受けて無罪、そして措置入院となっていました。その頃、倉石はある病に冒され、生活は乱れていました。亡き妻・雪絵の写真のまわりにあったたくさんの花々はほとんどが消え、飼っていた金魚も1匹だけになっていました。倉石は携帯電話のベルで、寝ているところを起こされました。それは小坂からの臨場要請の電話でした。倉石は「直接向かう」と小坂に伝え、タクシーで現場に向かいました。現場は弁護士事務所でした。被害者は高村則夫(51歳)でした。彼は刺殺体で発見されました。「相変わらす重役出勤か」と先に現場にいた立原に嫌みを言われながら、倉石は臨場しました。いつも通り、倉石班は遺体に合掌し弔いました。「始めるか!」と言った倉石は、小坂に方位磁石を渡し、彼女に遺体の検死をさせました。倉石は現場の周りの様子を丹念に見て回りました。倉石は被害者の履いていたズボンのシミに着目しました。小坂はそのシミをお茶がこぼれたものと判断していましたが、倉石は違いました。倉石は小坂に検死をやめさせ、自分で遺体を検死しました。倉石は4個所の傷がどれも動脈損傷で、それによって死斑が出ていないと判断し、死因は動脈損傷による大量出血死と下しました。小坂は直腸内温度から死亡推定時刻を言いましたが、倉石は「気に入らない」と言い、死亡推定時刻は保留としました。遺体は司法解剖にかけられました。倉石、小坂、永嶋が立ち合いました。解剖した医師は、死亡推定時刻を小坂と同じ時刻と推定しましたが、倉石はそれに疑念を持ちました。倉石は突然、体温計を遺体の肝臓に刺し、温度を医師に見せました。その温度は30度を示し、医師は驚きました。小坂は文献でアメリカなどでは肝臓で死亡推定時刻を割り出すことを思い出しました。1つの遺体から2つの死亡推定時刻が出た事に、倉石は「謎だね~」と言い、深い疑惑を抱きました。その数日後、神奈川県警の管轄内で殺人事件が起きました。殺されたのは、精神科医の加古川有三(43歳)でした。捜査に乗り出したのは、神奈川県警刑事部捜査一課の管理官・仲根達郎が率いる刑事たちでした。
臨場 劇場版のネタバレあらすじ(詳細):4.連続殺人事件発生、警視庁と神奈川県警との合同捜査開始
その頃、倉石は自分を検死官の道に導いてくれた恩師・横浜医大法医学教室教授の安永泰三のもとを訪ねていました。「もの言わぬ死者の声を聞くのが、私たちの仕事だ」と言った安永教授の言葉は、倉石にとってバイブルとなっていました。倉石は、刺殺された精神科医の加古川の遺体を司法解剖したのが安永教授であったことを確認しました。倉石は高村殺人事件と加古川殺人事件の刺殺方法がよく似ているので、安永教授に聞きに来たのでした。解剖の結果を安永教授は倉石に説明しました。それを聞いた倉石は、殺しの手口が酷似していることを再確認しました。倉石は署に帰ると、立原に高村殺人事件と加古川殺人事件は連続殺人事件だと告げました。立原も薄々そう気付いていました。なぜなら、殺された2人は2年前の無差別通り魔殺傷事件と深く関係していたからでした。犯人の波多野の弁護をしたのが高村弁護士で、彼の弁護側精神鑑定を行ったのが加古川医師だったからでした。それから数日後、警視庁刑事部の刑事部長・警視監である五代恵一のトップの下に、この2つの殺人事件は連続殺人事件として扱い、警視庁刑事部と神奈川県警刑事部は合同捜査することになりました。立原は刑事たちに、情報を抱え込まずに、必ず上司に報告することを義務づけました。仲根は、両部とも情報を交換し合い、すり合わせるように言いました。その合同会議を後ろで聞いていた倉石に、会議が終わると立原が死亡推定時刻が2つのままであることを聞いてきました。倉石は「そのうち、分かる」と言い、部屋を出ていきました。仲根は、噂に聞く倉石を見て「組織にそぐわない男」と揶揄して、捜査に出ていきました。
臨場 劇場版のネタバレあらすじ(詳細):5.倉石、ある疑念を抱く
神奈川県警と合同捜査となった倉石たちは、神奈川県警の検死官たちと情報交換をしました。加古川の検死情報を聞きいていた倉石は、その中で1枚の解剖後の遺体の縫合後写真に目を留めました。その遺体の縫合は杜撰なものでした。とてもそれは恩師・安永教授がしたものとは思えないものでした。倉石はある疑惑を抱きました。その頃、無罪となり措置入院していた波多野は、医師たちに付き添われ、広場のマリア像に手を合わせて謝罪するという日課を送っていました。高い塀に覆われたその病院の外には、関本直子が立っていました。彼女はいまだに娘・好美の死を受け入れられず、殺人犯・波多野に強烈な復讐心を持ち続けていました。事件の起こった日、ある斎場で、波多野が起こした無差別通り魔殺傷事件の遺族たちによる合同3回忌が行われました。4名の被害者の生前写真が彼らの遺品と共に飾られていました。関本好美の遺品には絵とその道具がありました。倉石たちはその式典に参列し、被害者を弔いに来ていました。帰ろうとした倉石たちに、関本直子が尋ねてきました。娘の死を受け入れられない彼女は、なぜ娘がそこにいたのかと疑問に思い、その事件後も現場に何度も足を運んでいたのでした。悲嘆に繰れ、自責の念に駆られ、生きる希望を失った母・直子は「なんで、あいつは保護されて生きているんですか!?」と倉石に聞いてきました。倉石は「俺の仕事は、仏の声を聞くことです」と答えました。その言葉を聞いた直子は倉石たちに「教えてくれませんか?好美の最期の声…。私がこれから生きていく言葉をちょうだい!」と倉石たちに泣き叫びながら、詰め寄りました。何も言えない倉石たちは、事件が未解決であることを痛感しました。
臨場 劇場版のネタバレあらすじ(詳細):6.暗礁に乗り上がる捜査
その頃、合同捜査は難航し、暗礁に乗り上げていました。仲根は、容疑者は2年前の事件に恨みを持った人物の中にいると、会議で刑事たちに発破をかけました。その人物の中には殺された遺族も入っていました。もちろん、関本直子もその1人でした。「俺のとは違うな~」と倉石は、その仲根の言葉を聞き、言いました。倉石は遺体から死亡推定時刻が2つ出たのは、犯人が細工をしたからだとその理由を言いました。仲根が鑑識の倉石には捜査に口をはさむ権利はないと言うと、倉石は「権利?ホシを挙げるのに鑑識もデカも関係ない」と突っぱねました。仲根はなおも倉石にケチを付けてきました。倉石は仲根に「死体に細工をするような人間が、遺族の中にいるわけねえだろう」と言い、その場を去りました。ある日、関本直子は波多野を自らの手で殺すため、包丁を隠し持ち、彼が入院する病院に潜入しました。しかし、彼女は実際にはできずに、警官に確保されてしまいました。確保された直子は、仲根に取り調べを受けました。仲根はその日から、犯人に強烈な殺意を持つ直子を疑い、執拗に彼女をマークし始めました。その知らせは倉石班にも届きました。小坂は「人はそう簡単に人を殺せるものじゃない」と、永嶋に言いました。すると昼食を食べていた倉石は、突然、何かを思いついたように、立ち上がり、食べかけのカツ丼を残し、部屋を出ました。様子がおかしい倉石を心配し、小坂は彼の後を追いました。倉石はひとり、ロビーで何かを考えていました。小坂は体調が芳しくなさそうな倉石に休暇をとるように懇願しました。倉石はそんな小坂に「まだ、寝言、拾えてねえ!」と一喝し、「お前も同じだろ」と彼女に言い、出ていきました。
臨場 劇場版のネタバレあらすじ(詳細):7.隠された8年前の殺人事件
倉石は勝手に殺された高村弁護士の現場に行き、自分なりの捜査をしていました。仲根はそれを聞き、倉石を署に連行しました。仲根に「泥棒まがい」と倉石の行動を揶揄しました。倉石は「高村と加古川を殺したのは遺族じゃねえ。他にいる。高村と加古川が扱った他の事案の中に恨みを持つ奴がいるんじゃないか」と持論を展開しました。するとそこに、立原たちが入って来ました。立原は、今回の被害者2人が関係していた8年前の女性殺人事件のことを話しました。それは立原が誤認逮捕した事件でした。誤認逮捕され、きつい尋問を受けた被害者の元恋人・浦部翔太は、嘘の自白を強いられ、「お父さん、たすけて」という文字を壁に刻み、拘置所で自殺したのでした。そして、その父・浦部謙作は当時、神奈川県警の刑事だったのでした。そして彼は今、地域課駐在所で勤務していました。立原は、仲根がその事件のことで今回の被害者に恨みを持つ父・浦部謙作の存在を隠していたことで、彼を厳しく責めました。仲根は立原に「私はあなたの部下ではない。この事、上に伝えます」と開き直り、逆切れしました。それから数日後、刑事部長・警視監の五代は食堂に、倉石と立原を呼び出しました。神奈川県警から五代は、2人の行動に対して厳重抗議を受けたからでした。立原は上司・五代に思い切って、浦部謙作の捜査を申し出ました。立原は倉石の見解を信じ、死体に細工をできる人物の1人として、ベテラン刑事だった浦部も候補に挙げていました。五代は立原に個人の責任という条件で、捜査を許可しました。立原は部下・一ノ瀬を連れ、浦部のもとに事情聴取に行きました。浦部は今回の2つの事件には無関係であると主張しました。アリバイもありました。浦部は、無実の罪を着せられ死んだ息子に何もできなかった自分への罰の念から、警官を続けていました。立原は一ノ瀬に浦部をマークするように命じました。その頃、仲根はまだ執拗に関本直子をマークしていました。深夜、署内で小坂はズボンにお茶をかけ、シミ具合を必死に検証していました。倉石を目標にして、一生この仕事を続けたいと思っていた小坂は、「根こそぎ拾いたい」と永嶋に言いました。
臨場 劇場版のネタバレあらすじ(詳細):8.恩師・安永教授の暗い過去
倉石はある疑念を抱きながら、独自に加古川の現場に行きました。倉石は巡査の制しも聞かず、勝手に冷蔵庫にある総菜を見て、その店に調査しに行きました。それを聞いた仲根たちは、倉石に怒鳴り込んで来ました。仲根は勝手な倉石の行動に業を煮やし「事と次第によっては懲戒の対象になる」と脅しました。倉石は「合同捜査だろ」と言いますが、仲根は「組織はそうじゃない。お前のような男は必ず潰される」と倉石に言ってきました。倉石は組織論を言う仲根に、「お前たちだって、いつまでも組織の中で生きてるわけじゃないだろう」と言い返し、外に出かけました。倉石は義妹・早坂真里子が経営するバー「かくれんぼ」に行きました。倉石は家で飼っていた1匹だけになった金魚を、そのバーで飼っていた1匹の金魚の中に入れました。真里子は妊娠していました。倉石は真里子の身を案じながら、金魚に「あばよ」と言うと出ていきました。真里子はそんな倉石の様子を見て、心配になりました。そんな頃、波多野は医師の案内で、自分が殺した人のお墓参りに行くことになりました。波多野はお詫びの手紙を遺族に送り続けていました。もちろん、それは関本直子夫婦にも届きました。夫・幸彦は直子に許しを得ずに、前に進むために彼のお墓参りを許可しました。それを聞いた直子は激怒し、「墓参り?あいつを殺してやる!」と言い、夫を責めました。一方、倉石は恩師・安永教授の家を、加古川の家で見つけた店で買った総菜を手土産に訪ねていました。安永教授も暗い過去を持っていました。彼は以前、外科医でした。彼はその仕事に情熱を燃やし、家庭とは疎遠になっていました。その事で思い悩んだ妻は精神疾患になり、自殺してしまったのでした。安永教授は妻の死に強い自責の念に捕らわれていました。彼が法医学の道に入ったのは「理不尽に命を奪われた最期の声を拾うため」でした。2人とも不遇な死で妻に先立たれた男同士、そんな話をしながら、酒を酌み交わしました。しかし、密かに倉石は安永教授の解剖結果の診断に疑いを持っていました。そこで倉石はゴミ箱の中に自分が服用している同じ薬を見つけました。倉石は安永教授も自分同様に死期が迫っていることを悟りました。
臨場 劇場版のネタバレあらすじ(詳細):9.連続殺人犯は安永教授?
その夜明け、早朝、倉石はある店に歩いていきました。そこには防犯カメラが付いていました。倉石はそこで倒れ込んでしまいました。その知らせを聞いた徹夜明けの小坂と永嶋は、直ぐに倉石の入院した病院に駆けつけきました。倉石はベッドの上で思ったより元気そうでした。小坂は、自分たちで割り出した、2つの死亡推定時刻の謎についての推論を倉石に告げました。それは高村の場合は「犯人は直腸内温度を下げるため氷を入れ、それをごまかすためお茶を故意にかけた」、そして加古川の場合は「犯人は直腸内温度を下げるため、揮発性の高い消毒用アルコールを使った」というものでした。2人の推論に倉石は頷きました。また、そのようなことができる人物は、法医学に精通する人物・安永教授でしかないと倉石たち3人の推論は合致しました。しかし、物的証拠がありませんでした。小坂は自分たちで探そうと言い、永嶋、先に見舞いに来ていた一ノ瀬を連れ、署に急いで帰りました。署に帰った小坂は、一ノ瀬の強力を得て、倉石が倒れた店の前の防犯カメラを立原たちに見せました。その店の過去の映像を洗うために倉石はそこに向かったのでした。その映像には、事件当日の昼、殺された高村弁護士はその店で昼食をとりに入っていき、その後を追うように犯人らしき男が入っていく様子が映っていました。立原は難色を示しましたが、小坂を筆頭に、永嶋、一ノ瀬たちはその店の遺留指紋を取らせてほしいと立原に懇願しました。捜査も行き詰まっている状態だったので、立原はそれを許可しました。鑑識課は総出でその店の鑑識をしました。しかし、事件から月日が流れているため、そう簡単には指紋は出ませんでした。その頃、浦部が姿を消しました。また、倉石は病院を抜け出し、ある場所へ必死で走って行きました。まだ完全でない倉石は途中でまた倒れてしまいますが、気合いで立ち上がり、また走り出しました。
臨場 劇場版のネタバレあらすじ(詳細):10.消えた浦部の置き手紙
その日は、波多野が関本好美のお墓参りに行く日でした。波多野が医師たちの付き添いの下、お墓参りに行くと、好美の母・直子が駆け込み、持っていたバッグを投げつけ、「帰れ!帰れ!でないとこいつを殺してしまう」と大声で泣き叫び、罵りました。波多野たちは仕方なく、その場を去りました。直子が犯人と目星をつけ、密かにマークしていた仲根たちの読みは大ハズレでした。一方、立原たちは姿をくらました浦部の捜索をしていました。立原たちは浦部の駐在所で置き手紙を見つけました。それには、自分が警察官としての誇りを持って今まで生きてきたこと、息子が強引な取り調べで無実の罪を着せられたこと、自分が高村と加古川の殺人の容疑者となっていることが切々と綴られていました。そして、それの最後には「私はこれから波多野を殺す。すべてを潰してやる。警察の威信も信頼も。これは40年間、沈黙してきた私の復讐だ」と書かれていました。
立原たちは、直ぐに波多野が入院している病院に向かい、仲根にもその事を伝えました。仲根たちも同じく病院に向かいました。
臨場 劇場版のネタバレあらすじ(詳細):11.浦部の復讐
病院で安永教授は波多野が帰ってくるのを、待っていました。波多野たちは何も知らず、病院に帰って来ました。
波多野が病院に着き、車から降りると、浦部が待っていました。浦部は躊躇なく、波多野を銃で撃ちました。銃弾は波多野の肩を撃ち抜きました。その銃声は病院内に響き渡り、警報音が鳴り響きました。それを聞いた安永教授は逃げる波多野と彼を追う1人の警官の姿を見つけました。安永教授は波多野を捕まえに行き、彼を助けるふりをして、院内の教会に連れて行きました。パニック状態の院内に、到着した立原たちと仲根たちは、銃を手に浦部を確保するため、院内を捜索にかかりました。仲根は浦部を追い、病院の屋上に行きました。すると、背後から浦部に銃を突きつけられました。浦部の真の目的は波多野ではなく、仲根でした。浦部は仲根の足を撃ち抜きました。倒れた仲根に浦部は「痛いか!痛いのは生きてる証だ!死んだら痛みも感じない」と言い、仲根を殺そうとしました。そこに立原たちが踏み込んできました。しかし、復讐に燃える浦部は「これからこいつには息子のいる世界に行ってもらう。そこで息子に詫びろ!許しを請え!」と言い、命乞いをする仲根を撃ち殺そうとしました。そんな浦部の姿を見た立原は「こんなことが息子さんへの償いになるのか!その男にも家族がいる。あんたがその引き金を引いたとたん、今度はその家族があんたと同じ地獄を見ることになる」と彼に大声で説きました。浦部は躊躇に躊躇をした挙げ句、銃で自分の頭を撃ち抜き、自殺してしまいました。
臨場 劇場版のネタバレあらすじ(詳細):12.安永教授の供述
その頃、小坂たちはようやく、店の中から安永教授の指紋を発見できました。証拠の1つが挙がりました。安永教授は波多野の肩の傷を応急手当すると、麻酔を注射し、「これから君がきちんと2年前の償いをする手助けをしてあげようと思っているんだ」と言い、白衣を脱ぎました。波多野はか細い声で「僕は正気じゃなかった」と呟きました。それを聞いた安永教授は笑って「君の演技力には、ほとほと感心するよ。私も騙されかけた。…犯した罪は償わなければならない。それが人としての、あるべき姿だ」と言い、片刃のナイフを取り出しました。その時、教会の扉が開きました。入って来たのは、倉石でした。倉石は肩で息をしながら、「ここは人を殺す場所じゃねえ、先生」と安永教授に言いました。倉石は、安永教授の加古川の解剖後の縫合の仕方が杜撰で、死者に対して労りがなく、逆に悪意にも似た感情を抱いているように見えたので、犯人は安永と思っていたのでした。互いに死期が迫っていることを告げた倉石は、安永教授に「人っていうのは、てめえの命がもう長くねえと分かったとき…この先…どう生きていくか…覚悟を決めなきゃなんねえ。先生はその覚悟の決め方、間違ったみてえだな」と言いました。それに対し、安永教授は倉石に、犯行に及んだ理由を吐露し始めました。2年前の事件の現場に安永教授はいたのでした。そこで「死にたくない…」と呟きながら死んでいった母親の姿に、自分の亡き妻の姿を投影したのでした。そして、安永は現場で何もせずに逃げた自分を責めていました。末期癌で余命半年と宣告された安永は、波多野が裁判所で第39条が適用され無罪を宣告されたとき、ふと笑みをこぼしたのを見たのでした。その笑みが安永には脳裡から離れず、彼は弁護士・高村と精神鑑定医の加古川の所に行ったのでした。そのとき、安永は、高村と加古川は法や倫理を無視し、自分たちの利害だけを考えていると感じ、それが許せなかったのでした。安永は残り少ない人生の中で自分のやるべき事は、次の悲劇を産まないために、被害者の無念をはらすために、2人を殺したのでした。
臨場 劇場版のネタバレあらすじ(詳細):13.事件解決
恩師・安永の供述を聞いた倉石は「俺のとは違うな~」と言い、「思いはな…死者の声に静かに耳を傾ける。そう胸に刻み込んだのは先生、あんたなんだ。…だが、今のあんたはなんだ…何が被害者の最期の声に応えるだ…ふざけるんじゃねえ!」と安永に説き、怒鳴りました。そして倉石は「先生の胸の中に死んだ奥さんなんかいんのか?俺は、あの世からお迎えが来るまで精一杯生きる。…死にたくねえと思いながら、この世から消えて亡くなった奴らに、顔向けできねえからよ。…胸の中にいる奥さんの声、耳すませて、よく聞いてみろ。…笑って頷いてくれてるか」と、ナイフを倉石に突きつける安永に静かに説き伏せました。倉石のその言葉に、安永は全身を震えさせて聞き入り、ナイフを机に置き、思い直しました。その時、背後で目を覚ました波多野が起き上がり、ハサミで倉石を刺そうとしました。安永は倉石を庇い、波多野に刺殺されてしまいました。倉石も波多野と格闘中、隙をつかれ、ハサミで背中を刺されてしまいますが、憤った倉石には効きませんでした。波多野は「お前を殺しても僕はまた無罪だ」と笑みを浮かべ呟き、倉石にトドメを刺そうとしました。しかし、倉石は素手で凶器を掴み、波多野を睨みつけました。その目に脅えた波多野は、また正気でないような演技を始めました。だが、もう倉石には通じませんでした。倉石は波多野の顔面を思いっきり張り倒しました。波多野は倒れ込み、ついに現行犯逮捕されました。殺された恩師・安永の遺体を、倉石たちはいつものように検死しました。事件は解決しました。
臨場 劇場版のネタバレあらすじ(詳細):14.亡き娘さんの声
倉石は吉祥寺の2年前の殺人事件の現場に行きました。被害者・関本好美の母・直子がやって来ました。倉石は直子に「もしかしたら、この街のどこかに、娘さんの最期の声が残っているのかもしれないなあ」と言いました。母・直子は倉石の言葉を脳裡に街を彷徨い、歩きました。するとある店のシャッターに絵が描かれていました。その絵は亡き娘・好美の絵でした。直子は娘の最期の声を聞き、泣き崩れました。その姿を陰でそっと見た倉石は、静かにその場から立ち去りました。
臨場 劇場版の結末:15.エピローグ:消えた倉石
その後、小坂は倉石に連絡をとろうと、電話をしましたが、通じませんでした。小坂は心配になり、倉石の家に行きますが、彼の姿はありませんでした。暗い部屋の中、ただ、電話の音だけが鳴り響いていました。
以上、映画「臨場 劇場版」の詳細あらすじ解説でした。
「臨場 劇場版」感想・レビュー
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柄本さんの表情がホントに恐くてそして憎かったです
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横山秀夫作品ということで観ました。TVの方は観てないです。伏線が弱く、例えば行きつけのスナックの女性が妊娠していてその腹部を倉石がさするシーン、これは唐突過ぎて、そもそも行きつけのシーンが描かれてないから、ただのセクハラに見えてしまいました。それと、内野さんと柄本さんの演技は派手でも良いとして全体的に演技過剰な俳優が多くて辟易としてしまいました。「何故、その行動と仕草なの?」という場面が多く、これは演出なのか脚本なのかわかりませんがちょっと残念でした。ボケットに手を入れて歩くシーンも、どうなのかなぁとか色々考えました。何人も部下を引き連れて歩く、スーツを着ている、両手をポケット、というのは違和感しかないですね。これが白衣ならわかるんです。手が入れやすく楽だから。まあ、こんな見方をする人はあまりいないでしょうね。主人公の倉石演じる内野さん、難役だったと思いますが、しっかり消化されていたと思います。ただ、演出上なのでしょう、末期ガンという、度々、苦悶、苦痛を現すシーンがあり、これを押されて全編観ると疲れてしまうんですね。そこはさりげなくというか、サラッと劇的な効果を生む演出が観たかったです。以上、横山秀夫作品はやはり映像化はかなり難しいのかな?と思った次第です。
スッキリしない話だった
勧善懲悪は必要