そして父になるの紹介:2013年日本映画。産院で子供を取り違えられたまま6年間育てられた2組の家族の子供。取り違えを知らされた家族の葛藤や絆を描く是枝裕和監督制作のヒューマンドラマ映画。2組の夫婦が最後に選ぶのは、血の繋がりか?それとも、過ごした時間か? 「そして父になる」は70年代の沖縄で実際に起きた新生児取違え事件の小説「ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の十七年(奥野修司)」をモデルにしているとされる。「そして父になる」はカンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞。スティーヴン・スピルバーグによりリメイクされることが決定しています。
監督:是枝裕和 キャスト:福山雅治(野々宮良多)、尾野真千子(野々宮みどり)、二宮慶多(野々宮慶多)、真木よう子(斎木ゆかり)、リリー・フランキー(斎木雄大)、黄升げん(斎木琉晴)、ほか
映画「そして父になる」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「そして父になる」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
そして父になるの予告編 動画
映画「そして父になる」解説
この解説記事には映画「そして父になる」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
詳細あらすじ解説
そして父になるのネタバレあらすじ:1.プロローグ:1本の電話
東京のある名門私立小学校、一組の家族が入学試験に来ていました。父・野々宮良多と母・野々宮みどりは、6歳になる一人息子・野々宮慶多とその面接を受けました。少しおっとりとした慶多は、元気にハキハキと面接官の質問に答えました。あとは結果を待つばかりでした。父・良多は都内の一流企業に勤めるエリートサラリーマンでした。いわば、良多は人生の勝ち組で、家族三人で都内の高級マンションで幸せな暮らしをしていました。良多は自分と同じように息子・慶多にも人生の勝ち組になってほしかったため、英才教育を施し、慶多には優しくも厳格な姿勢をとっていました。母・みどりは、慶多が健康でのびのびと育ってくれればいいとだけを願っていました。父・良多は出世するに従って、大きなプロジェクトを任されるようになり、息子・慶多が生まれたときから、仕事優先であまり家族サービスなどはしていませんでした。そんなある日、慶多が産まれた病院から1本の電話がかかってきました。詳細は会ってから話をするという病院に、みどりと良多は不安を募らせました。
そして父になるのネタバレあらすじ:2.衝撃の事実
そして、良多とみどりは病院の職員と弁護士と事務官と面会、そこで二人は衝撃的な事を言い渡されました。なんと、病院側が赤ちゃんを取り違え、今、良多とみどりの息子・慶多はあかの他人の子だというのでした。発覚したのは、良多とみどりの実の子を育てていた家族から、小学校入学の身体検査からでした。病院側は正式にはDNA鑑定で結論を出すと言いました。良多とみどりは耳を疑い、不安にかられました。何も知らない慶多は、受験した私立の小学校に晴れて合格し、嬉しそうでした。みどりは不安を見せないように、努めて明るく振舞いました。しかし良多は、慶多が自分に似ずおっとりとした性格に不満を感じていた事を改めて認識していました。そしてDNA鑑定の結果が出ました。結果は衝撃的でした。やはり慶多は他人の子でした。家に帰る車中、愕然とするみどりの横で良多は窓ガラスを叩き、「やっぱり、そういうことか…」と、ため息交じりに呟きました。みどりは言葉を失いました。みどりは「なぜ気づかなかったんだろ…私、母親なのに」と自分を責めました。良多はそんなみどりを慰める言葉を持っていませんでした。
そして父になるのネタバレあらすじ:3.動揺・不安・固執
病院側は、良多夫妻とその実の子を育てていた夫婦との面談の場を設定しました。良多とみどりはそこで、実の我が子を育てていた夫婦と出会いました。その相手方の夫婦は、斎木雄大と斎木ゆかりと言い、群馬で小さな電気店を営んでいました。その夫婦も取り違えられた事実を知り、同じように動揺していました。斎木夫婦は、良多とみどりの実の子を斎木琉晴と名づけ、兄弟二人と元気に伸び伸びと育てていました。病院側は両夫婦に、早いうちに子供を交換するように勧めてきました。簡単そうに言う病院側に斎木夫婦は「犬や猫でも普通はむりですよ」と拒否しました。第1回での面談で結論など出せるはずもなく、両夫婦はとりあえず、実際に家族だけで会うことにしました。良多は上司の上山一至に相談すると、上山は「どうせなら、両方とも引き取れば」と良多に言いました。良多はそれを真剣に考え始めました。そして野々宮一家と斎木一家との初めての面談の日が来ました。みどりは「このままだと、病院の言った通りになってしまいそう」と不安を漏らしました。そんなみどりに、良多は「俺に任せておけ」と言いました。斎木一家は良多の家庭と対照的でした。子供たちは兄弟仲良く元気に伸び伸びと遊び、父・雄大も子供と一緒になって遊ぶ、家族サービス満点の男でした。ただ、生活が苦しいのか、斎木夫婦は慰謝料のことを気にしていました。良多はそれを聞き、友人の弁護士・鈴本悟に相談することにしました。みどりはゆかりと電話番号の交換をし、情報交換をし合うことにしました。それを聞いた良多は、みどりを叱咤しました。良多は斎木一家を完全に見下していました。みどりは驚きました。数日後、良多は弁護士をしている鈴木のオフィスに行き、「両方、引き取ることはできないか」と相談しました。驚く鈴木に、良多は「何とかなるだろ。血は繋がってるんだから…父親ってそういうもんだろ」と言いました。良多は斎木夫妻を想像し、「母親はすぐ怒鳴るし、父親は家でゴロゴロしている感じなら?」と問いますが、鈴木は「それではダメだ。親権ってのは強いんだ」と言いました。しかし、良多は慶多と琉晴の二人を金で引き取ることに固執していました。月日は流れ、1月、両家と病院との面談も4回目になり、病院側は明らかに焦っていました。交換ということを仕切りに提案してくる病院側に、斎木夫妻は「家族のこともあるので、あまり急ぎたくない」と言い、拒否しました。良多は、とりあえず週末だけ慶多と琉晴を交換し合うことを提案し、そうする事になりました。
そして父になるのネタバレあらすじ:4.時間・血・繋がり・怒り
そして、週末が来ました。良多は慶多に「これは大人になるためのミッションだ」と言い、慶多を斎木家に連れて行きました。良多は斎木の家のあまりの貧相さに、「おいおい、これはいくら、ちょっと…」と呟きました。慶多は斎木家に、琉晴は野々宮家に1泊することになりました。こうして、二人の子供を交換する交流が続きました。慶多と琉晴は、初めての体験と暮らしに戸惑います。ただ、慶多は狭いが賑やかで温かな斎木家の暮らしに、ある種のカルチャーショックを受けつつも慣れていきますが、一方、琉晴は静かで広々とした高級マンションでの暮らしに直ぐには慣れず、琉晴ホームシックに陥り、家に帰りたがろうとしました。ある日、野々宮一家と斎木一家の交流の日、雄大は子供を一緒に遊ぼうとしない良多に、「もっと一緒にいる時間作ったほうがいいよ。子供と」とアドバイスすると、良多はそれを教育方針が違うと一蹴しました。雄大は子供にとって一緒にいる時間が大切だと言うと、良多は「僕にしかできない仕事があるんですよ」と言い放ちました。そんな良多に雄大は「父親かて取り替えのきかん仕事やろ」と表情を変えて言い返しました。その帰り際、ついに良多は斎木夫婦に「二人とも引き取らせてください。お金ならまとまった額、用意できます」と言い出しました。完全に自分たちを見下している良多の言葉に、斎木夫婦は激怒し、良多に「負けたことのない奴は、本当に人の気持ちがわからないんだな」と言い放ちました。この突然の良多の言動には、妻・みどりも動揺しました。その数日後、この赤ちゃん取り違え事件についての裁判が開かれました。その裁判で証人として出てきた当時の看護師・宮崎祥子が衝撃の告白をしました。なんと彼女は、自分の鬱憤を晴らすためだけに、わざと赤ちゃんを取り替えたのでした。それを聞いた雄大、そしてみどりとゆかりは、激怒しました。時効で罪に問われないと聞くと、みどりとゆかりは更に憤り、「一生、恨んでやる」と呟きました。ある慶多と琉晴を交換する日、良多は父・野々宮良輔の言った「血が大事なんだ」という言葉を思い返し、みどりとゆかりに「慶多は斎木さんに似てくる。琉晴は僕たちに似てくる。それでも血の繋がっていない子供を愛せますか?」と問いました。すると、ゆかりは「愛せますよ。もちろん。似ているとか、似てないとか。そんな事を言えるのは、子供と繋がってると実感のない男だけよ」ときっぱりと言い放ちました。それでも良多は子供を交換することを考えていました。みどりはその頃から、ゆかりと連絡を頻繁に取り合うようになり、良多と心の溝が出てきました。ある日、みどりはついに溜まっていた怒りを、夫・良多にぶつけました。「俺に任せておけって言ったのに…嘘つき。…あなたは最初から決めていたのよ。慶多との6年より、血を選ぶって。…あなたはこう言ったの『やっぱり、そういうことか』って…『やっぱり』ってどういう意味?…あの一言だけは、一生忘れない」と。
そして父になるのネタバレあらすじ:5.別れ・葛藤・愛
そして、結局、慶多は斎木家に、琉晴は野々宮家にと、子供を交換することになりました。良多は、慶多にこれもミッションだと言い聞かせ、斎木家に託しました。良多とみどりは、実の我が子・琉晴を引き取りました。しかし、慶多も琉晴も、元の親が恋しくてなりませんでした。その最中、この子供の取り違え事件が週刊誌で取り上げられ、何故か良多は子会社の研究所へ異動させられてしまいました。そのお蔭で良多は、家庭にいる時間が長くなりましたが、あまりなつかない琉晴に苛立ちました。そしてみどりは、琉晴と手放した慶多への思いが重なり、葛藤が募り元気を失っていきました。良多の家族は崩壊寸前でした。良多は、実の子・琉晴と何とか仲良くなろうと努力しますが、その一方で、6年間育てた慶多のことを考えていました。そして、良多は異動先の研究所の人工林を管理している山辺真一から、「蝉が自然に羽化するようになるまで15年かかった」と聞き、本当の親子関係を構築する事にも、同じように時間がかかると悟りました。そんなある日、琉晴が家出をし、斎木家に一人で行ってしまいました。良多は琉晴を斎木家から連れ帰りながら、琉晴に「すぐにパパ、ママと呼ばなくていい」と初めて優しい言葉をかけました。そしてある日、琉晴が初めて良多を「お父さん」と呼び、みどりを「お母さん」と呼びました。良多とみどりは嬉しくなり、琉晴と夜まで遊び続けました。その夜、琉晴はポツリと「パパとママ(斎木夫婦)の場所に帰りたい」という本心を呟き、良多とみどりに「ごめんなさい」と顔を隠しました。みどりは琉晴に愛情が湧いてきましたが、それは慶多への背信と感じ、涙を流しました。良多も、6年間育てた慶多が自分にしてくれた事や、共に過ごした時間を思い、一人涙にくれました。その涙を見た妻・みどりは、良多が自分と同じ気持ちだと悟りました。
そして父になるの結末:6.エピローグ:そして父になる
ある連休の日、良多とみどりは、実の子・琉晴を連れて、斎木家に向かいました。すると、慶多は良多から逃げるように、家を出て町中を歩き回りました。慶多は良多に「パパなんかパパじゃない」と言いました。良多は慶多を追いながら、6年間共に過ごしてくれた息子・慶多に父親として失格だったことを謝り、自分の心のうちを話し続けました。そして良多は「もうミッションなんか終わりだ」と慶多を優しく抱きしめました。良多は慶多と斎木家の電気店に戻りました。慶多は「スパイダーマンってクモだって知ってた?」と雄大から教わったことを、良多に教えました。古びた小さな一軒の電気店から、子供たちの笑い声が響きました。
以上、映画「そして父になる」の詳細あらすじ解説でした。
「そして父になる」感想・レビュー
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子供たち達を彼らの望むように元道り育ての親と住まわせて、
中学高校生くらいになって改めて取り違えられた、血のつながりのある親に戻そうと試みたことを知ったら、案外うまくいったのではないかと思いました。それにしても野々宮みどりは実の子への思いが浅く、まるで夫良多と他の女性の間に出来た子で、
育ててきた子への思いだけに囚われているような描き方が不思議でした。 -
子供の取り違えによって翻弄される2つの家族の成長ストーリです。主な主人公は福山雅治演ずるお父さんの成長が描かれていると考えられます。彼は仕事上では頼りになるエリート上司ですが、こと子育てとなると妻に任せきりで、それを当然のことと考えています。いわゆるイクメンが普及してきた2018年においては若干古いタイプの価値感を持っている父親ですが、運命という外部要因により子育てに注力していきます。
当初彼の子育てや、子供の取り違いに対する考え方は、すべて上司や彼の親の受け売りです。子育て経験がない彼には仕方がないのかもしれませんが、経験に裏打ちされない言葉は、現実に子育てをしている相手の母親(真木よう子役)にバッサリ切り捨てられています。そういう子育てにおける建前と現実の差が絶妙に表現されているところが随所に見られ、面白い映画です。
子どもを取り違えられた2つの家族の心の葛藤や交流を描いた映画です。
イケメン福山雅治がエリートサラリーマンながら子どもの心が
わからない父親を演じていました。
最初は自分の考えが正しいと信じて全く子どもの心を理解しようとも
しなかった福山雅治が徐々に変わっていく様子。
そして、血のつながりが大事なのか?それとも共に過ごした時間が大切なのか?
というトコロでも、実際自分も家庭を持っているという事もあって、
いろいろと考えさせられる映画でした。