由宇子の天秤の紹介:2020年日本映画。2015年に『かぞくへ』で監督デビューを果たした春本雄二郎の監督2作目となる本作は、3年前に発生した女子高生いじめ自殺事件の真相を追うテレビディレクターを通して情報化社会の抱える問題や矛盾を映し出していく社会派ドラマです。
監督:春本雄二郎 出演者:瀧内公美(木下由宇子)、光石研(木下政志)、河合優実(小畑萌)、梅田誠弘(小畑哲也)、松浦祐也(長谷部仁)、和田光沙(矢野志帆)、池田良(小林医師)、木村知貴(池田)、宮本幸太(小木)、木原勝利(陸奥)、前原滉(矢野和之)、河野宏紀(ダイチ)、東龍之介(ケンタ)、根矢涼香(救急看護師)、松木大輔(保土田)、鶴田翔(市村)、川瀬陽太(富山宏紀)、丘みつ子(矢野登志子)ほか
映画「由宇子の天秤」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「由宇子の天秤」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
由宇子の天秤の予告編 動画
映画「由宇子の天秤」解説
この解説記事には映画「由宇子の天秤」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
由宇子の天秤のネタバレあらすじ:起
テレビのドキュメンタリー番組のディレクターを務める木下由宇子(瀧内公美)は、父・政志(光石研)が経営する学習塾を臨時講師として手伝いながら、3年前に発生した女子高生いじめ自殺事件のドキュメンタリー番組の制作に携わっていました。
3年前に死亡した被害者の女子高生・長谷部広美は、生前に自分がいじめの被害を受けていることを訴えていましたが、学校側は広美が教師の矢野と交際していると主張して広美に自主退学を迫ったのです。その翌日に広美は自ら命を絶ち、このことはマスコミの格好のネタとなりました。
広美の遺族や矢野、矢野の家族にまで心ない誹謗中傷などが相次ぎ、耐えかねた矢野は「広美との交際の主張は学校側がいじめの隠蔽を図るためのねつ造であり、広美と交際したことはなく、報道や学校の主張は事実無根。死をもって抗議する」との遺書を残して自殺したのです。
由宇子は事件の真相を独自に探るべく、広美の父・仁(松浦祐也)、矢野の母・登志子(丘みつ子)や姉の志帆(和田光沙)ら遺族に取材することにし、その前にテレビ局のプロデューサーらに仮編集した映像を見せるプレゼンテーションを行い、その中で事件報道のあり方に問題提起する内容を盛り込もうとしましたが、局側は身内批判だとして却下し、由宇子に再構成を命じました。
由宇子の天秤のネタバレあらすじ:承
由宇子は直接的に加熱報道に問題提起するこれまでの計画を修正し、広美の遺族、矢野の遺族、学校側といった三者の立場や主張、事実の認識などの材料をフラットに並べ、そこから出てくるであろう意見の相違を明らかにすることで、真実がどこで歪み曲げられていったかを炙り出すことにしました。
登志子は顔を映さないという条件で由宇子のインタビューに応じ、矢野が生前学校側と揉めていたことを明らかにしました。翌日、登志子の住むアパートに招かれた由宇子は、登志子が世間の誹謗中傷から逃れるためにひっそりと息を潜めて生活している現状を目の当たりにしました。
登志子から誰が本当の加害者なのかと問われた由宇子は、自分は誰の味方にもなれないけど光を当てることはできると答えました。
そんなある日、政志の学習塾に通う女子高生の小畑萌(河合優実)が教室内で突然嘔吐してしまうという事態が発生しました。由宇子は萌を自宅へと送っていくことになりましたが、その際に萌は妊娠していること、何と相手の男性は政志だという衝撃の事実が明らかになりました。
萌は滞納していた塾の月謝を帳消しにしてもらうために政志と寝たことを明かし、このことは父・哲也(梅田誠弘)や学校側、友人たちには絶対に知られたくないので助けてほしいと由宇子に懇願しました。
塾に戻った由宇子は政志に事情を話すよう求め、一部始終をスマホで録画しながら問い質していきました。政志は萌と性的関係を持ったことは認めるも、月謝をタダにすると持ちかけたことはないと答えました。由宇子は深く思い悩んだ末に、政志の不祥事が表沙汰になった時の影響を考え、萌の件は内密に処理することにしました。
由宇子の天秤のネタバレあらすじ:転
由宇子は知人である産婦人科医の小林(池田良)に極秘裏に萌の中絶を依頼しました。その後、由宇子は学校も塾も休んでいる萌の自宅アパートを訪れ、料理を作ってあげたり勉強を手伝ってあげたりと萌の面倒を見ていくようになりました。萌も由宇子に心を開き、二人は交流を深めていきました。
図らずも自らも“加害者”の家族となった由宇子は、ドキュメンタリー作りの視点が徐々に変化していき、長年仕事を共にしている制作会社プロデューサーの富山宏紀(川瀬陽太)からも、番組の視点が良くなってきたと高評価を受けました。
ところが、広美の父である仁は、番組の方向性が当初の話とはだいぶ変わってしまっているのではないかと物言いをつけたため、由宇子は仁が営むパン屋へ出向きました。由宇子は仁に登志子の映像を見せ、被害者側の現実は加害者側の現実と繋がっている可能性に言及しました。これから再び登志子の取材に行くと言う由宇子に、仁は矢野の大好物だったというパンを渡しました。
由宇子は萌をとあるビジネスホテルに連れて行き、極秘裏に小林によるエコー検査を受けさせました。その結果、萌は子宮外妊娠の可能性があり、早急に精密検査を受けないと命に関わるということが明らかになりました。
政志は意を決して哲也に全てを話すことにしましたが、由宇子は社会的に抹殺されている取材対象者を救いたいとの思いから、2週間後に控えた番組の放送まで待ってくれるよう懇願しました。
由宇子は再び矢野の姉・志帆の取材をし、志帆とその家族もまた心ない誹謗中傷を受けて苦しんでおり、何度も住所や職場を転々としていることを知りました。
その後、萌と一緒に映画を観に行く約束をしていた由宇子は、萌の自宅アパート周辺をうろついている男子高生のダイチ(河野宏紀)と出くわしました。政志の塾に通っていたダイチは、萌は“売り行為”に手を染めており、嘘つきで有名だと証言してきました。
由宇子の天秤の結末
さらに追い打ちをかけるように、由宇子は志帆に呼び出され、衝撃の真実を告げられました。志帆が渡してきた矢野のスマホには、矢野が広美をレイプする映像が残されていました。さらに志帆は、矢野の遺書は実は弟の淫行が発覚することを恐れて自分が捏造したものだと打ち明けました。
これまで真実を伝えることを目指していた由宇子は、自らの信念を大いに揺さぶられ、富山に番組の放送中止を訴えました。その後、萌に会った由宇子はダイチから聞いた噂の真相を確かめようとしましたが、精神的に追い詰められた萌は衝動的にその場から逃げ出し、車に撥ねられてしまいました。
由宇子は哲也から、萌が車に轢かれて病院に搬送されたとの連絡を受け、政志と共に病院に向かいました。哲也は萌が妊娠していたことを知り、深い衝撃を受けました。
由宇子は意を決して、哲也に真相の全てを打ち明けました。激昂した哲也は由宇子に掴みかかり、首を絞めてしまいました。哲也は動かなくなった由宇子を置き去りにして去っていきました。
しばらくして、由宇子のスマホに富山から留守番がありました。それは番組の放送が中止になったとの知らせでした。やがて意識を戻した由宇子はスマホのカメラを自分に向け、録画を始めました。
以上、映画「由宇子の天秤」のあらすじと結末でした。
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