映画「僕が愛したすべての君へ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
僕が愛したすべての君への紹介：2022年日本映画。小説「僕が愛したすべての君へ」と「君を愛したひとりの僕へ」。2016年6月にハヤカワ文庫より刊行された乙野四方字のこれらの小説は、同じ名前の少年がそれぞれの物語で別のひとりの少女と恋に落ちるストーリー。タツノコプロの新レーベルBAKKEN RECORDが製作した『僕が愛したすべての君へ』の監督は、『劇場版Infini-T Force/ガッチャマン さらば友よ』の松本淳。主題歌「雲を恋う」は若者に人気の須田景凪の書き下ろし。主人公の高崎暦は声優初挑戦の宮沢氷魚が演じている。
監督：松本淳 原作：乙野四方字 声優：宮沢氷魚（高崎暦）、橋本愛（瀧川和音）、蒔田彩珠（佐藤栞）、水野美紀（佐藤紘子）、余貴美子（老年期の瀧川和音）、西岡徳馬（老年期の高崎暦）、田村睦心（幼少期の高崎暦）、浜田賢二（日高翔大）、園崎未恵（高崎真由美）、西村知道（高崎康人）、平野文（老年期の栞）ほか
この解説記事には映画「僕が愛したすべての君へ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
自宅のベッドで療養中の高崎暦は73歳。IP端末に「8月17日10：00昭和通り交差点」という記憶にないスケジュールが表示されています。不思議がる暦を妻の和音は、行って確かめてきたら？と送り出します。
電動車イスで交差点へとやってきた暦。横断歩道の上にひとりの少女が立っています。「迎えにきてくれたの？」と彼女が言うので「迎えにきたよ」話を合わせると彼女は消えてしまいました。並行世界への移動（パラレル・シフト）が認知されているこの時代。暦は自分がパラレル・シフトしたのかと思いIP端末を確認すると、エラーと表示されていました。
暦は7歳のとき両親が離婚し、彼は母親についていきました。彼は厳格な祖父とやさしい祖母、母、そして犬のユノと古風な日本家屋で暮らしていました。
暦が父親に買ってもらったエアガンをユノに向けて遊んでいると、祖父に取り上げられてしまいます。怒った暦は祖父と口をきかなくなってしまいますが、そのまま祖父は他界してしまいました。後悔する暦がユノの散歩をしていたとき、転んで気がつくとカプセルのようなものの中に入っていました。
透明な蓋は開かず、そこにいた少女に開けてもらいますが、彼女はそのままいなくなってしまいました。暦がその建物から出ると、そこは別れた父が働く虚質科学研究所でした。電話を借りて母を呼び出すとなんだか会話が噛み合いません。それもそのはず、そこは暦が父親に引き取られた並行世界で、母の家に行くと祖父がにこやかに出迎えてくれたのです。
代わりにそこではユノが死んでいて、庭にはお墓もあります。暦はその晩祖父の部屋へ行き、いっしょに寝ました。やさしい祖父は、もし自分が暦を叱ったとしても嫌いになったわけではなく暦を思ってのことなのだと話してくれました。
翌朝目を覚ました暦は母親と寝ていました。祖父が亡くなったもとの世界に戻ってきたようです。その後遺品整理をしていて暦はあのエアガンを見つけます。そこには「人や動物に向けてはいけないよ」という祖父からのメッセージも添えられていました。
高校生になったら絶対友だちをつくる、と意気込んでいた暦ですが、目立たないように総代を辞退したのに進学校の上位クラスの生徒は皆他人に無関心。ある日、ひとりの女子生徒にいきなり絡まれた暦。同じクラスの瀧川和音はなれなれしく「暦、なんで無視するの？」と呼び捨てにし、そのまま放課後にカラオケボックスへ連れて行かれます。
和音は腕にまだ実用化されていないIP端末をつけていて、その数字を見せながら「85 離れた世界から来た」と暦に告げます。その世界でふたりはつき合っていて、どうやらパラレル・シフトしてしまったらしいというのです。父親が研究者であり自らも成績優秀な暦は和音の言うことを理解しますが、自分が彼女とつき合っているということで意識してしまいすっかりそのペース巻き込まれてしまいます。とりあえず様子をみながら明日からも自然に接してほしいと言って和音は店を出ていきました。
暦は任意の並行世界に移動するオプショナル・シフトについて電話で父にたずねますが、まだ研究中であり実現までにはあと10年はかかるとのことでした。
特に進展もないまま数日が経ち、暦はたまらず和音をあのカラオケボックスに呼び出します。和音は怪訝な顔をしており、暦はこの和音がもともとこの世界の和音であり、あの日の和音はきっと帰ったのだと解釈します。そして唐突に友だちになってくれませんか？と言ったのです。
和音はソファから転げ落ちゲラゲラと笑い出します。実はすべて和音の作り話で、プライドの高い彼女は入学式で総代をつとめたものの実は二番手だったと知ってずっと暦への仕返しを考えていたというのです。暦自身、和音が総代だったことすら覚えておらず、それなのに成績は常にトップで和音は2位。でもこれでスッキリした、と仲直りをしたふたり。暦は改めて彼女につき合ってほしいと言いますが和音は拒否し、今後話しかけないように言って帰っていきました。
しかしその後、和音の方から暦に話しかけてきて、やがてふたりは休み時間などにいっしょに勉強するようになっていきます。そしてふたりのまわりには自然と人が集まってくるようになり、友だちと呼べる人が暦にもできました。それから暦は卒業までの間、何度も和音に告白しますが一度もOKしてもらえませんでした。
卒業後ふたりは同じ大学に進み、虚質科学の研究室でともに学びます。そしてあるとき突然和音からつき合ってくれない？と切り出し、ようやくふたりはつき合うようになりました。
その後揃って虚質科学研究所に入所し切磋琢磨していくふたり。やがて彼らの功績でIP端末が実用化され、街中でそれをつけている人を見かけることが増えてきました。そしていよいよ暦は和音にプロポーズします。遠くに工場地域の灯りが見える公園でアクアマリンの指輪を渡す暦。和音は「暦にしては上出来」とクールに言いつつよろしくお願いします、と了承するのでした。
そして結婚式の日。並行世界の研究者である彼らは、いま目の前にいるパートナーが本当に自分の世界の相手なのかということを常に意識しており、IP端末をはずして式に臨みます。
ふたりは涼という息子を授かりました。いま5歳の涼はクレヨンで、パパに連れて行ってもらったという場所の絵を描いていますがそれがどこなのか和音には教えてくれません。
ある日、家族は揃って人気のアートイベンドに出かけました。暦が買物をしている間に和音と涼の近くでは男が暴れ出しており、異変に気づいた暦が駆けつけたときには涼が犯人の近くに取り残されていました。暦は無我夢中で犯人に体当たりして倒しますが、逃げながら涼がその男に斬りつけられてしまいます。
これは夢なのか？そう思った暦の目の前にはスヤスヤ眠る涼の姿がありました。
事件後幼稚園を休んでいた涼ですが、ずっと家にいるのも飽きた様子。そろそろ行きたいとぐずり出します。和音は烈火のごとく怒り、仕事も休んで涼とふたりで家にこもった生活を続けています。
暦はそのことを研究所で父に相談しますが、あんな事件のあとでは仕方ないだろうと言われてしまいます。しかしその後所長に呼ばれ、和音にオプショナル・シフトの形跡があることが発覚します。
暦はすぐに自宅へ戻りふたりを探しますがどこにもいません。暦は涼の描いていた絵のことを思い出してその場所へ向かうと、思ったとおりふたりはそこにいました。その和音は13番目の世界の和音で、そこでは涼が死んでしまったのだといいます。彼女は自分の否を認めて送還されることになりました。ひと言「ずるい」とつぶやき、涼の描いた絵を大事そうに持って自分の世界へと戻っていきました。
涼は成長して結婚し、やがて孫娘も生まれました。家族は幸せに過ごしてきましたが、73歳のいま、暦は余命半年と告げられます。家族の意見もあり自宅で最期のときを迎えるべく、家族に囲まれて日々おだやかに暮らしていたそんなとき、あのスケジュールが突然現れたのです。
横断歩道で少女と言葉を交わしたこと以外、特に変わったことはありません。特に急ぐ用事もない暦は、交差点近くの木かげでもう少し待ってみることにしました。
すると突然痛みが襲い、薬を飲もうと薬入れを取り出しますがそれを地面に落としてしまいます。手が届かず苦しんでいると、ひとりの老婦人が手を差し伸べてくれました。
暦が落ち着くまでそばにいてくれたその老婦人に礼を言い、暦は名前をたずねます。すると「名乗るほどの者ではありません」といたずらっぽく彼女が笑います。「どこかでお会いしたことがありませんか？」と暦はさらにたずねて高崎と名乗りますが、その名前を聞いても彼女は思い出せず、どうやら本当に会ったことはなさそうでした。「もしかしたらどこかの並行世界で会ったことがあるのかも」と彼女が笑うので、暦はこんな質問をします。
「あなたはいま、幸せですか？」
「幸せです」と答えた彼女の笑顔に満足した暦。そしてふたりはそれぞれの行く先へと分かれていきます。
帰宅した暦は和音に、約束にはだれもこなかった、でも代わりに素敵な出会いがあったと報告します。「全然知らない人が幸せであることが、僕はこんなにもうれしいんだ」と暦は言い、そんな気持ちにさせてくれた和音に感謝の気持ちを伝えます。
「僕が愛したすべての君へ、この喜びを伝えたいんだ。君がいてくれたから、僕はいま、こんなに幸せですって」
暦は心の中で、並行世界に存在するすべての自分へ、そしてその自分を愛してくれただれかへ、こう伝えたいと思っています。
「どうか君と、君の愛する人が、世界のどこかで幸せでありますように」
以上、映画「僕が愛したすべての君へ」のあらすじと結末でした。
この映画の感想を投稿する