ぜんぶ、ボクのせいの紹介:2022年日本映画。現代社会で孤立した人々を描いたこの作品、監督・脚本は、秋葉原無差別殺傷事件をモチーフにした『Noise ノイズ』が話題となった新鋭、松本優作だ。
主演の白鳥晴都はオーディションで選ばれた15歳。『とんび』でデビュー後、2作目で主役に抜擢された。彼と交流する女子高生に『ある船頭の話』で評価の高い川島鈴遥。そしてオダギリジョーがふたりを支え、息のあった家族のような雰囲気を醸し出す。
重要な部分で使われるのが大滝詠一の名曲「夢で逢えたら」。内容にリンクした歌詞と美しいメロディが切ない。
監督・脚本:松本優作 出演:白鳥晴都(松下優太)、川島鈴遥(杉村詩織)、松本まりか(松下梨花)、若葉竜也(山﨑重之)、仲野大賀(片岡)、片岡礼子(中川千里)、木竜麻生(宮本由美香)、駿河太郎(白石凌)、オダギリジョー(坂本健二)ほか
映画「ぜんぶ、ボクのせい」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ぜんぶ、ボクのせい」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「ぜんぶ、ボクのせい」解説
この解説記事には映画「ぜんぶ、ボクのせい」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ぜんぶ、ボクのせいのネタバレあらすじ:起
児童養護施設で暮らす中学生の優太は学校でいじめられ、施設でも周囲となじまず孤独に過ごしています。そんな優太を心配して新人職員の宮本が声を掛けますが、中学生になったらお母さんに会えると言われていたのに、と会いに来ない母親のことを優太からたずねられ返す言葉がありません。
ある日の深夜、トイレに起きた優太は職員の部屋で偶然、入所者の家族の住所が記載されたファイルを見てしまいます。翌日、母親が迎えにきた少女の退所を見かけ、優太は施設を出ることを決意します。母の写真と職員の財布から抜き取った現金を持ち、優太はひとり電車で母のもとを目指します。
大原駅に降り立ち、住所をもとに母の暮らすアパートへやってきた優太。ノックに返事はなく施錠されていなかったドアから中に入ると、下着姿の母が眠っていました。気配に気づき起きた母・梨花は優太が誰かわかりません。
「母さん」という声で事態を理解した梨花は優太を抱きしめ、会いに行けなかったことをわびて涙を流します。そしてラーメンを作って食べさせていると、梨花と同居する男・山﨑が帰ってきました。梨花は優太のことを親戚の子だと説明し、ふたりはそのまま別の部屋に籠もって朝まで出てきませんでした。
翌朝、優太が部屋をのぞくとふたりは裸で抱き合って寝ていました。山﨑が出かけると梨花は菓子パンと水を持ってきて施設についてたずねます。「戻りたくない!」という優太に梨花は「そうだよね」と答えます。しかし梨花はゴミ出しのため家の外に出るとスマホで施設に電話するのでした。
その日梨花と優太はふたりで買物に行き、帰りに梨花は「手出して」と左手を引っ張るとその手首にミサンガを巻いてくれました。
夜、山﨑と梨花、優太の三人でカップ焼きそばを食べていると、食の進まない優太に山﨑が説教し、優太が激昂して山﨑につかみかかってしまいます。梨花が山﨑に謝りこぼれた焼きそばを拾っていると誰かが呼び鈴を鳴らしました。
梨花の指示で優太がドアを開けると、そこには施設職員の宮本が立っていました。慌てて部屋に戻ってくる優太を梨花は「お願い、無理なの。戻って」と押し戻します。「ヤダ、ヤダ」をくり返す優太でしたが梨花はどうしても受け入れてくれません。「ねえ、どうしてぼくを産んだの?」という優太の言葉に宮本がたまらず「優太くん、行こう」と声を掛けますが、優太は叫び声を上げてそこから逃げ出してしまいます。
夜の町を走り、路上でたむろする不良たちを避け海辺までやってきた優太。漁協の倉庫でひと晩過ごし、その翌日は一日中海辺をぶらぶら歩き回ります。左手のミサンガを外そうとしますが外れませんでした。
ぜんぶ、ボクのせいのネタバレあらすじ:承
夕方、優太が防波堤の上を歩いていると、汚い軽トラックから男女の揉めている声が聞こえてきました。どうやらデリヘルの女が金を払わない男を責めているようです。明日必ず払うから、と女を帰すと優太に気づいた男は声を掛けてきます。
最初は見るな、と怒っていた男も優太の様子が心配になり車に招いてくれました。その男・坂本は優太が現金を持っていることを知ると2万円貸してくれと言い、すぐ返すし今夜はここに泊まっていいと言います。
翌日、優太が寝ている間に坂本は女に金を払い、残金を自分のポケットに…。優太はそれを見ていましたが何も言わず、坂本についてでかけます。慣れた手付きで自転車を盗むとリサイクル業者・片岡のところに売りに行く坂本。盗品かといぶかしみながらも片岡は坂本に金を渡し、坂本はその金の一部を優太に渡しますが「足りない」と言われると宿泊代だ、とうそぶきます。
片岡は頼まれていたエンジンが手に入ったといって見せますが、その値段は取付費込で15万円。坂本に払えるはずもなく、取っておいてくれというのが精一杯です。帰り際、片岡は優太に「なにかあったらいつでもおいで」と声をかけます。
車に戻るとふたりはこの町にきた理由を話します。優太の母について坂本はあまり詮索しませんでした。一方の坂本は一年位前に名古屋に行く途中、ここで車が壊れてそれっきりだといいます。車の中には坂本が描いた絵が何枚も貼られていて、興味を持った優太に坂本はクレヨンと段ボールを渡します。
印象的な太陽の絵について坂本は、オレの心につまっている石みたいなものだと説明します。そして、いつでも死ぬことができる。それは金持ちにも貧乏人にも平等に与えられた権利だ。でもいつ死んでもいいわけじゃない。そのときまで生きるんだ、といいます。
翌朝、早起きした優太は軽トラの絵を描いています。うまいな、と声をかけ坂本は優太を連れて“パトロール”にでかけます。
歩きスマホをしている男を見かけ、坂本は優太に腕時計をつけるとぶつかってこいと命令します。渋々言われたとおりにして転んでみせると、父親然とした坂本がまんまと治療費と時計の修理代をせしめ、あんな何でも金で解決する大人になるなと優太に言い、オレたちいいパートナーだな、と笑うのでした。
ぜんぶ、ボクのせいのネタバレあらすじ:転
海辺にやってくると今度は漁師から魚を分けてもらってこいと坂本が指示します。言われたとおりアジをもらってくると、ふたりは浜辺で焼いて食べ始めます。そこへ坂本と顔見知りの女子高生・詩織がパンを持ってやってきました。
詩織は坂本が名古屋に行くことについて話し始め、母親の話になると坂本は自分の母が認知症だと告白します。オレに対してしたことも何も覚えていない、と虐待を受けていたようなことをほのめかす坂本。そしてたき火を見つめながら、火には自分の心が反映されると言います。
詩織は坂本からたばこをもらい、火をみると不安になると言います。ここで初めて優太に声をかけ、父親から早く帰れとメッセージが入り詩織は帰っていきました。
風の強い日。廃品を集めた坂本は具合が悪そうです。優太はひとりで片岡のところに行ってくるといい坂本は車で休むことに。片岡は優太に坂本から離れるよう忠告しますが、優太はあのエンジンを売らないで取っておいてほしいと言って立ち去ります。
優太が浜辺にひとりでいると詩織がやってきました。坂本を心配しつつ優太の身の上を聞く詩織。するとそこに町の不良三人が現れます。かつて詩織がつき合ったリーダー格の男がしつこくつきまとっているのです。
嫌がる詩織を助けようと優太が止めに入りますが突き飛ばされてしまいます。男たちは去っていきましたが、優太のミサンガがはずれてしまいました。捨てようと思っていた優太は気にしませんでしたが責任を感じた詩織は直してくると言ってそれを持ち帰ります。
詩織の家は裕福な家庭です。母親は詩織が小さいころ病気で亡くなり、姉は大学へ通うため家を出てひとり暮らしをしています。この日は姉も帰ってきていて詩織とふたりで夕食の準備をしています。
詩織は母の死が本当に病死だったのか、父のせいで自殺したのではないかと疑っていますが姉は取り合いません。その後父が帰宅し三人はともに夕食をとりますが、要領の良い姉とはちがい詩織は父の期待を重荷に感じているのでした。
軽トラの中、眠る坂本に向かって優太は「お父さん、お父さん」と小さく声を掛けています。すると突然詩織がやってきました。「手出して」と優太の左手を引っ張ると、青い糸が継ぎ足されたミサンガをつけてくれました。
そして、今度自分の絵を描いてほしいと言い優太と約束します。優太は詩織の夢が人に歌を届けることだと知り、聞きたいとねだります。はにかみながらも詩織が歌ったのは母が好きだったという「夢で逢えたら」でした。
次の朝。坂本の体調も回復したようです。パトロールにでかけた優太は駄菓子屋で爆竹を万引し、あの不良のたまり場にそれを投げ込みました。
坂本が軽トラに戻ってくると、スプレーで落書きされガラスに罵詈雑言が貼りつけられていました。
ぜんぶ、ボクのせいの結末
坂本は一心不乱に、あの太陽の絵になにかを描き加えています。
そのころ優太は浜辺で詩織の絵を描いていました。そんな優太の頬に詩織はいたずらっぽくキスをします。そして自分のことを話し始めます。何不自由ないはずなのに心が不自由だという詩織。父に反発するように援助交際をしたり不良とつき合ったり…、「甘えてるよね」と言う詩織に優太は「おっちゃんと三人で名古屋に行こう」と誘います。「明日?」という優太に詩織は曖昧に返事をし、「帰らないと」と言って立ち上がります。優太から絵を受け取ると詩織は帰っていきました。
坂本は急に咳き込むと、その手には血がついていました。そんなとき、軽トラに外からオイルのようなものがかけられ何者かによって火をつけられてしまいます。坂本は炎に包まれる母の姿を思いながら、あきらめたように静かに帽子を取るのでした。
立ち上る煙と消防車のサイレンの音に不安を感じた優太が戻ってくると、野次馬の向こうで軽トラが燃えてしまっていました。半狂乱になって近寄ろうとしますが止められてしまった優太は、犯人だと確信したあの不良たちのもとへと向かいます。
そして怒りのままに殴りかかりますが、逆にリーダー格の男に叩きのめされてしまいます。詩織もまた現場に向かい、必死に優太を探しますがなかなか見つかりません。優太は足を引きずりながら母のもとへと向かいますが、窓からのぞいた室内で山﨑に抱かれる母と目が合いそのまま立ち去るしかありませんでした。
絶望した優太はフラフラと海に入っていきますがそれを止めたのは詩織でした。叫びながら抗う優太と必死に岸に戻そうとする詩織。
その後少し落ち着きを取り戻したふたりは浜辺で火を前に並んで座っています。おっちゃんが死んじゃってこれからどうする?との問いにわからないと答える優太。夜になり、詩織は優太の肩にもたれかかるとこのまま眠ったらどうなる?とたずねます。火が消えたら凍えて死んじゃうかもしれない、と優太。どっちになるか賭けてみようか、とふたりはそのままそこで眠ります。
翌朝、「生きてた」「うん」とふたりは目覚めました。詩織は母の夢を見たと話し、飛び降りながら自分の人生を振り返っても遅いのにね、と笑います。そしてふたりは今度こそ名古屋に行こうと、2時間後に駅のホームで落ち合うことを約束して一旦分かれます。
優太は規制線をくぐって軽トラに近づくと、燃え残ったあの太陽の絵を見つけます。そこには坂本、優太、詩織の三人が描かれていました。それを持って駅へ向かう優太。ホームにはヘッドホンをした詩織が既に待っています。
しかしあと少し、というところで優太は警察の人間に呼び止められてしまいます。あわてて叫びながら逃げ出しますが詩織にその声は届かず、複数人に囲まれ確保されてしまいます。
名前、年齢、住所、と取り調べを受ける優太は一言も答えません。
「君が火をつけたんだな」と言う刑事に対し優太は「全部ボクがやりました」と答えます。聞き返す刑事に「全部」と言い、さらにゆっくりと刑事を見上げながらこう言います。
「世の中で起きている悪いこと全部、ぜんぶ、ボクのせい」
以上、映画「ぜんぶ、ボクのせい」のあらすじと結末でした。
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