ボクの妻と結婚してください。の紹介:2016年日本映画。原作は放送作家・樋口卓治さんの小説「ボクの妻と結婚してください。」で、2012年に講談社から単行本が刊行されました。テレビ業界で奮闘する放送作家がある日余命宣告を受け、「人生最期の企画」を家族に残すため奔走する様子を描く。
監督:三宅喜重 キャスト:織田裕二(三村修治)、吉田羊(三村彩子)、原田泰造(伊東正蔵)、込江海翔(三村陽一郎)、森カンナ(片岡喜子)、小堺一機(俵屋三幸)、大杉漣(荒城伊知郎)、高島礼子(知多かおり)、ほか
映画「ボクの妻と結婚してください。」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ボクの妻と結婚してください。」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
「ボクの妻と結婚してください。」の予告編 動画
映画「ボクの妻と結婚してください。」解説
この解説記事には映画「ボクの妻と結婚してください。」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
「ボクの妻と結婚してください。」のネタバレあらすじ:1.異変
少女がスイカ1玉をカンナで削り、全て赤くなったところで、丸かじりして「甘い」チャレンジ達成。これを企画するのが放送作家・三村修治の仕事でした。しかし、その収録語、修治は腹部に痛みを感じて、診察を受けます。結果は、すい臓がん。ステージ4。末期です。手の施しようがないため、手術は意味がなく、余命は半年。もって1年。医師は「ご家族と相談して、残りの人生、どうしたいか考えてください」に言われるのですが、修治はショックで、何を言われたか覚えていません。その晩、スケジュール帳を見ると、最初の内は毎日ギッシリ、深夜まで埋め込ま、万年筆で書きこまれた予定表も徐々にまばらになり、3月までには、真っ白になっていました。企画会議でも上の空です。どうやって妻の彩子に告げようかと考えていたからです。プロデューサーの眞島が「お茶の間をイメージしよう」と言いますが、修治は彩子の反応をシミュレーションをしている間に、終わりました。会議終了後、眞島に、「また企画手伝ってよ」と言われるのですが、修治はボソっと呟きます。「他人にあげれる時間もうないんだよな」 翌朝、出勤しようとすると妻の彩子と息子の陽一郎が、昨日収録した少女がスイカを食べる番組を早速見て笑っていました。でも、いつまでも、こうしているわけには行けません。修治は出かけます。玄関にゴミ袋が置いてあり、修治は一旦持ちますが、通るのに邪魔だったから、のけただけでした。彩子は「もう、たまにはゴミ捨てしてくれてもいいのに」と怒ります。陽一郎がキッチンで呼んでいます。「パパ、食べてないよ」冷蔵庫には、ハンバーグが入っていました。ラップをしてあり「陽一郎のお弁当用」と書かれています。いつもなら修治はつまみぐいをしてるはずなのです。彩子はダミーとして、もう一つダミーを作っていました。仕方ないので「今日はお弁当に2ついれようか」と言うと陽一郎は「やったー」と喜びます。陽一郎は10歳。小学生です。修治は仕事前にサウナに行きました。そこで、婚活のCMを見ます。その時、彩子のウェディングドレス姿の幻影を見るのです。「これだ!」 修治のモットーは、人生に楽しいを持ち込むことです。もし、この末期がんの自分が残される家族の未来をプランニングできたら? 修治は、早速その思い付きを現実にするべく、本屋で10冊以上、婚活本を買い込んで、書店員におかしな顔で見られながら、トウテレに出勤します。修治の年齢は45歳で妻帯者に見えるからです。さて、トウテレ社内で修治が婚活の本を積み上げ、調べ物をしているとTV局編成の荒城がやってきました。そして、積み上げられた本を見るなり言うのです。「三村、お前も、あの番組やるのか? えーと、何だっけ?」といって、持っていた資料から新番組の企画書を見せます。「婚活するんだーって、片岡が張り切っていたぞ。」という話を聞いて、さっそく片岡を探します。プロデューサーの眞島を見つけました。修治「よ、眞島。」 眞島「ん? 三村か。珍しいな、どした。それより、この間の企画よかったから、また頼むよ。」修治「ああ、またな。それより、片岡見なかった?」 眞島「ああ、片岡なら、その辺に転がってるだろ。ああ、あの企画、おまえもやるのか」 眞島の言った通り、片岡喜子は、デスクの下の寝袋の中で寝ていました。彼女の役職はアシスタント・プロデューサー。徹夜で帰れないことは、ザラです。修治「よ、喜子ちゃん。」 喜子「おはようございます。ん? 何で、三村さんがいるんですか?」 修治「実はさ。例の婚活企画、見学させてほしくて」 喜子「ふぁー(あくび)。見学ですか。分かりました。アポとってみます。」
「ボクの妻と結婚してください。」のネタバレあらすじ:2.婚活へGo!
待ち合わせ場所である婚活場所に来ると、喜子は、赤いドレスに身を包み、毅然としていました。修治「さっきとは見違えたな。」 喜子「当たり前です。婚活女子は試合に挑む時の戦闘服ですから。」 修治「試合?」 喜子「婚活女子は婚活パーティーのことを試合と呼ぶんです。それより、三村さんは、婚活取材してどうする気ですか? あ。分かった。他局の企画でしょう。少しは、こっちにも回してくださいね。」修治は苦笑するだけです。で、婚活パーティー会場に入ると、正装した男女が赤外線でアドレス交換していました。どうやら、婚活アプリがあって互いのスマホに近づけると反応すると、アドレスや趣味趣向まで、データが書き込まれる仕組みのようです。「私達もやりましょうか」と喜子に言われるままに、スマホを近づけると、確かに互いのデータ交換が行なわれました。修治は楽しくなってきたので、女性を集めてるイケメンの話を聞きに出かけました。喜子はアポイントメントをとってる人物とコンタクトを取っているようです。女性「中島さんっていうんですか。ご職業は?」 中島「一応医者です。整形外科をやっております。」 女性「どんな女性がタイプですか?」 「家庭的というか、料理が得意な女性ですかね」女性「あ、私、ビーフ・ストロガノフとか、ラザニアが得意です」 修治「そんな凝った料理、毎日続きますかね?」女性「毎日は無理でも、休日には」 修治「休日こそ、手抜き料理ですよ。あ、中島さんですか。よければアドレス交換を。(ピッ)いいですか、中島さん。家庭で、そんな肩肘張った料理を食べるよりも、気軽な家庭料理。これを作れる女性をいとめるべきですよ」 と、修治が大演説ぶってるところで、喜子につまみ出されます。「ちょっと三村さん、何やってるんですか? はい、アポイントとれましたよ。こちらの社長さん」 知多「相変わらずね。三村君。」 修治「ひょっとしてかおり先輩? ご無沙汰しております」 喜子「お二人とも、お知り合いのようですので、私はこれで失礼します。」別室に通されました。知多かおり。かつての修治の先輩であり、名うてのリサーチャーでした。修治「それが、今や結婚相談所の社長さんとは。あ、ひょっとしてリサーチャー経験を生かして。」 かおり「そ、今は各カップルの相手探しのリサーチャーとしてお手伝いしてるの。それで、三村君も結婚相手探してるんだって? 誰の? ご希望にはできるだけ、こたえるわよ」修治は居住まいを治しました。「えー、その、妻の結婚相手を探してるんです。僕が死ぬので。膵臓がん。もって半年だそうです。」かおりは思わず立ち上がりました。そして、壁際の暖炉の上に並べられた瓶の中に入ったクッキーや金平糖などを手でつかみ取って、バリバリ食べ始めます。少し落ち着いたようで、戻ってきました。かおり「奥さんには話したの」 修治「いえ、妻にはまだ」 かおり「私も正直知りたくなかったわよ。保険は?」修治「そのへんは、妻がしっかり管理してますので、いつ何が起きてもバッチリです。」 かおり「奥さんに言ってないなら、すぐに話して。これから残された時間を家族で過ごしなさい」 修治「それも考えました。でも、妻には笑顔でいてもらいたいんです。これが僕に出来る最後の企画です。」 かおり「あんたの人生はテレビ番組じゃないのよ」しかし、力ない修治の笑顔の底には、変えられない意志を感じます。結局、かおりが折れました。「分かったわ。再婚相手探してあげる。そのためには詳細なデータを書いてちょうだい。どんな小さなことでもいいわ」その日、修治は退職しました。眞島は寝耳に水です。5つの番組も引き継ぎすらせず、丸投げでやめると言ってるのです。「ちょっと、三村ちゃん勘弁してよ」 しかし、荒城編集局長は何かを察したようです。「三村、決心は固いのか」修治「はい」 荒城「分かった。今までご苦労だったな」 修治はカンテレの前で、深々と頭を下げました。
「ボクの妻と結婚してください。」のネタバレあらすじ:3.理想の相手
修治は、その足で帰宅しました。いつもより早い帰宅に彩子も陽一郎も驚きます。そして修治が提案します。「折角だから今日は外に食べに行こうか。」喜ぶ陽一郎でしたが、ベランダで家庭菜園に水をやってる彩子は反対です。「陽一郎、今日は塾の日でしょ。あなたも、いきなり帰ってきても、こっちも予定があるんです。」しかし、修治は澄ましていいます。「折角、巽寿司の予約とれたのにな」 次の場面で彩子と陽一郎は、高い寿司をバンバン注文します。修治はカッパ巻きを注文するのがやっとです。そこでやっと本題を聞きはじめます。「なー、彩子。もし再婚できたら、(ギロッと睨まれます)えーと、つまりもし、もう一度結婚できたと考えた場合、どんな相手がいい?」 彩子「やっぱり仕事が目的だったか。おかしいと思った。そうね、ゴミを朝捨ててくれる人とか。」陽一郎「つまみ食いしない人。最近パパしないけど」 修治「へー、へー、つまり、今の旦那とは正反対のタイプか。」翌朝の食卓でもしつこく聞きます。「タイプは?」 彩子「ちょっと、まだ続けるの? うーん、容姿は気にしないかな。明るい人、一緒に笑って、一緒にご飯を食べてくれる人。」などなど、修治は彩子の意見をまとめたり、写真を撮ったりして、まとめた資料を、かおりに渡しました。陽一郎は、修治が出かけてから気づきます。修治がいつも録画している番組の録画予約を全くせずに出かけて行ったことに。「また、何か企んでるな。いつも風船みたいに、フワーとして、どっかに行くんだから。」そして、数日後、修治は、かおりに呼び出されました。待っている間に、修治は薬を飲んだりしています。抗がん剤などの治療は既に意味がない状態なので、鎮痛剤でしょう。モルヒネ、コデイン、アスピリンと種類はありますが、恐らく(非ステロイド性鎮痛薬)のアスピリンを飲んでいたのだと思います。かおりに答えを言われる前に修治は勝手に結論を出そうとします。「やはり、無理でしたよね。そんなに都合よく、相手が見つかるわけがない」 かおり「それが見つかったのよ」。2mのスクリーンに等身大で映し出された男性は、正に理想的です。彩子が好きそうなタイプの男性でした。履歴書もなかなか立派です。関東・千葉県在住で、インテリア系の会社を経営。慶応大学経営学部出身です。また、早速、会うセッティングも、かおりはしていました。修治に名刺ケースを渡し、「お見合い請負課長 鈴木」と書かれていました。修治「これは?」 かおり「これで、私も共犯。このお見合い、絶対成功させるわよ」待ち合わせに使われたレストランは、お相手の伊東さんがインテリアのデザインをし、その施工まで行なったそうです。外のテラスで、男性がはしごに登って照明の付け替えを行なっていました。そして、その男性が社長と呼ばれています。かおり「ひょっとして、あの人?」 修治も振り向きます。お得意様のために、アフターサービスを怠らない、仕事ができる男としても評価が高いです。そして、部下に背広を着せてもらいながら、歩いてきます。「お待たせしました。お得意様なので、つい、サービスしてしまいました。」かおりが立ち上がって、名刺を渡し始めるので、修治も習います。でも「あ、三村…」と言った瞬間に、かおりのハイヒールで靴を踏まれました。「お見合い担当の鈴木です。」「どうも伊東です。」名刺交換が終わって、着席して、伊東はさっそく謝りました。「スイマセン、この話なかったことにできませんか。」 修治はショックです。既に伊東が陽一郎を肩車して、その隣に彩子がいて、イチョウ並木を歩く情景を思い浮かべていたからです。ショック過ぎて口がきけなくなった修治に変わって、かおりが代弁します。「どうしてですか?電話では、そんな素振りも見せてなかったのに」 伊東「実は、妹が勝手に申し込んでしまって、それに母も盛り上がってしまって、あの場では断りづらかったんです」 かおりも、そう言われては無理にとは勧められません。「そうなんですか。残念です」伊東「申し訳ありません。そのお詫びと言っては何なんですが、ここのパン、絶品なんです。」そういって、バスケットに入った、ふかふかの小さめの食パンを千切って、配ります。修治は、それを自宅のキッチンで彩子や陽一郎に配っている光景を思い浮かべました。なんて幸せなシーンなんでしょう。もう、修治の中では再婚相手は伊東でしかありえなくなっていまいた。
「ボクの妻と結婚してください。」のネタバレあらすじ:4.結婚の素晴らしさ
そして、伊藤と別れた後、修治は早速、かおりに「伊東さん、彼はいい。彼しかありません」当然、かおりは乗り気じゃありません。「でも、先方は、お断りしたし、彼は辞めておいた方がいいんじゃない?」 修治「いえ、その気にさせてみます。彼は結婚の素晴らしさを知らないだけです」 かおりとしては、本人が残る寿命で、生きがいを見つけたのなら、応援したくなりました。「ダメでもともとだからね。相手に迷惑かけたり、くれぐれも無茶しちゃダメよ。」修治「分かりました」あくる日から、修治は、伊東にメールを送り、そして会社前にも押しかけて、修治はお見合い斡旋課長の鈴木として結婚の素晴らしさを説くのです。伊東「いやー、周りの人間から結婚は人生の墓場だ。行動が制限されるって脅かされていまして。鈴木さんのように、結婚を前向きに語る人は珍しい。」 修治「いいですか。伊東さん。結婚をすると、そうですね。中華料理屋に行ったりします。一人だと多くて2品頼むがやっとでも、2人だと4品、ラーメン、餃子、春巻き、炒飯まで頼め、さらに子どもが生まれると杏仁豆腐とかのデザートまで頼めます。勿論、家族みんなで食べると、人数分だけ美味しくなるんです。家族の魔法です。」伊東「鈴木さんにとって、結婚って何ですか?」 修治「一番の味方、親友、仲間が出来ることです。」 伊東「しかし、今まで仕事人間だったので、うまくできるかどうか。」 修治「それです。仕事人間だからこそ、次の仕事が結婚なんです。お前は今まで仕事をやってきた。次の仕事は結婚だ…ってね。」 伊東「誰に言われるんですか?」 修治は空を指さします。「天かな。結婚は伊東さんにとって、やりがいのある仕事です。」 伊東「分かりました。このお見合い、お受けさせてください。」 修治「え、いいんですか。実は、この彩子さんの写真、見た時から気になっていたんです。他のお見合い写真は、どこか作った感じがするのに対して、彩子写真は日常生活の自然な感じが出ている。陽一郎君と母子2人で頑張っているんですよね」流石に修治の顔も曇ります。気づかない伊東は構わず、続けます。「職業柄、この人の人生はどんなだろうと考えることが多いのですが、彩子さんは、亡くした旦那さんの悲しみを払しょくして、明るく生きている」でも、当の夫である修治は目の前で生きています。そして、自分が死ぬと言う意味を改めて考えるのでした。しかし、そんな表情を伊東に見せるわけにはいけません。修治は作り笑顔で無理に笑うのでした。修治と彩子の出会いは、修治の企画でパンチのある写真を探している時でした。その頃の彩子はレンタル写真館にいて修治の言われるままに写真を探していました。修治が「いいでしょう。これ」と示した写真は、中国拳法の構えをする赤ん坊と威嚇する猿でした。別々の写真でしたが、組み合わせると破壊力があり、修治の言うパンチの意味が分かりました。だから、彩子は、パンチのある写真を準備して待つことにしたのです。大男が高音を出そうとしている写真です。修治はイチコロでした。修治と伊東のデート?は公園やラーメン屋など、色々な場所で行なわれました。その甲斐あって、お見合いOKという段階まで進みました。問題は、彩子にどう伝えるかです。修治は、かおりに伊東がお見合いを引き受けてきた報告をした時、当然、聞かれます。かおり「どうするの?」 修治「ちゃんと考えています」そう言って、取り出したのは離婚届でした。夫である修治の欄は埋められています。修治「身元引受人になってくれませんか?」 かおり「本当にいいのね」修治「すみません。」 かおり「言ったでしょ。あなたと私は共犯、運命共同体だって。」かおりがサインを書き、その離婚届を持って、修治は次の作戦に乗り出します。
「ボクの妻と結婚してください。」のネタバレあらすじ:5.浮気発覚?
陽一郎は中学受験を希望していました。というのも、陽一郎「パパとママが頑張ってるから、僕も何か頑張りたくて」なので、今日は、塾の入学日でした。入校手続だけして、彩子は帰ります。その時、ふと修治が勤める会社近くの喫茶店を見上げると2階の窓際の目立つ席で、修治が若い女性と抱き合っていました。若い女性も満更でもないようで、もたれかかっています。彩子も決して若くはありません。肩を落として帰って行きます。その様子をみた修治は「モモちゃん、ありがとう。もういいよ。」 演技でした。修治は、伊東と彩子のお見合いのために、離婚しようとしていたのです。修治は何気ない顔で家に帰ります。彩子はキッチンで洗い物をしていました。「ただいまー。ふー、疲れた疲れた。朝から打ち合わせがいっぱいでね」 彩子「ふーん。若い子と抱き合うのが打ち合わせなんだ。まー私も若くないしね。」修治「ひょっとして見てた?」 彩子「いつから?」 修治「1年くらい前から。ダイエットも進められて、大分痩せたよ」彩子「それは、それは気が利かなくて悪うございましたね。今日だって、陽一郎の塾の入稿日だったのに」 修治「この家にいるとさ、何もかもキチっとしてて、イライラするんだよ。受験だ。ゴミ捨てろとか、つまみ食いするなとかさ」 彩子「だったら…」 修治「だから別れよう。彩子」そう言って離婚届を出すのでした。彩子は言葉になりません。やっと言えたのは「そんなに私と別れたいの?」 修治「ああ、別れてくれ。俺が出て行く」 そう言い残して、修治は出て行きました。残された彩子は修治のカバンを蹴り、上から何度も降りおろし、床に叩きつけて八つ当たりします。そのうち、中身がこぼれ落ちました。そのうちの1つ。修治のスケジュール帳が、あるページを開いてるのが彩子の目に入りました。「何これ?」「死にゆく僕が愛する妻・彩子に出来る最後のプレゼン。それは最高の再婚相手を捜すこと。問題点:見つかると怒られるだろうな…」などと書かれています。彩子は、そのページ以降を読み漁ります。次第に怒りとも泣き顔ともつかない表情になってゆき、最初のページにこう書き始めます。「あなたの命 足りないなら、私の…」真夜中になり、修治は帰ってきました。修治だって葛藤がなかったわけではありません。街をさ迷い歩く中で、思い出したことがありました。実は修治は、以前にも離婚届を書いたことがあったからです。その時は、陽一郎がまだ、2~3歳の時です。父親が3千万円の借金を負い、息子の修治も2千万円の借金を負うことになりました。弁護士に相談すると、自己破産した方がいいと言われたので、彩子とは別れようと決意して、そう話したのでした。でも、その時の彩子は言いました。「修治、よく話してくれたわね。結婚した時、お互いが困ってる時、話し合えないのは夫婦として嫌だ…と言っていたもんね。いいじゃない、貧乏生活。頑張って3人で借金返しましょう。人生に楽しいを。貧乏も楽しめばいいじゃない。じゃー、今日は奮発しましょう。明日からの貧乏生活を頑張るために」そう言って、出前の寿司を頼み、ハンバーグを用意して、明日からの貧乏暮らしのために最後の晩餐をしたのでした。自室に戻ると、カバンが喧嘩をしたリビングから戻っていました。修治は、その違和感に気づかず、スケジュール帳を開きます。そして、彩子に書きこまれた文字に気づくのです。電気が消えている彩子の部屋の前で修治は語り出すのです。「彩子、そのまま聞いてくれ。僕はガンだ。すい臓がんで、余命半年、もって1年と言われた」 すると、彩子が出てきて部屋に入れられます。彩子は電気をつけ、「お医者さんに相談して、1日でも長く生きれる方法がないか、探しましょう」と主張するのですが、修治はお構いなしにいきさつを話します。それを聞いて、彩子は「ふー」と息を漏らします。修治「ふー?」 彩子「ざけるな…」クッションで何度もたたきます。叩きつかれたのか、彩子がクッションを下したので、修治は部屋から出て行きます。扉を閉めたのと同時でした。廊下で派手な音がしました。彩子が部屋から飛び出ると、修治が倒れていました。彩子は救急車を呼び、修治は緊急搬送されます。
「ボクの妻と結婚してください。」のネタバレあらすじ:6.お見合い
修治にはすでに治療法がない状態なので、点滴が行なわれるだけです。その間、彩子のモノローグが続きます。「あなたの命が足りないなら、私の命使ってよ。そして、まだ行っていない色んな所に行こう? 4月は桜の花びらの下でお花見をしよう。5月は日本中を旅して、色んな写真を撮ろう。お願いだから一緒に生きて。」翌朝、修治は目を覚まします。左足に重みを感じるので見ると、布団の上で彩子が寝ていました。しょうがないな…と思って頭を撫でようとすると、右手にはペースメイカー用の測定機械がつけられていて、左手が動かなかった理由は、点滴が打たれていたからです。しばらくすると、彩子が目覚め、家に帰ります。まだ朝方なので、陽一郎は、寝ていました。(恐らく、塾から真夜中に誰もいない家で寝たのでしょう。)彩子が布団をかけようとすると、起きていました。そして聞くのです。「ママ、パパに何が起きたの? 教えて」 陽一郎も薄々感じていたのです。その頃、修治は、かおりに呼び出されていました。それは、週刊誌の件でした。内容は「清瀬モモ!熱愛発覚。お相手は以前、出演した放送作家」と書かれ、小さく「三村修治(45)」と書かれていました。かおりは言います。「若い子使い過ぎ。こんな売れてる子と、あんな目立つところで密会してたら、フォーカスされるに決まってるでしょう。伊東さんが連絡あったわ。どういうことですか? もう連絡しないでくださいって」 伊東もバカじゃありません。お見合い相手の三村彩子と鈴木と名乗っていた男が三村姓なら、二人は夫婦と、流石に気づきます。寧ろ、結婚詐欺すら疑っているかもしれません。修治「すいません」 かおり「これ以上、バカなことをしないで、治療に専念しなさい」しかし、それを聞く修治ではありません。また伊東の会社まで押しかけて、伊東を待ち受けます。伊東は修治の顔を見るなりうんざりしています。「もう、あなたとは話すことはありません。三村さん」 修治「すいません。でも、僕は死にます。すい臓がんで、半年後には、この世にいません。だから、彼女には、その後も幸せでいて欲しいんです。」伊東は何も言えません。とりあえず言えたのは「三村さん、だったら、せめて残された人生、奥さんのために生きてあげてください。あなたのおかげで、僕は結婚に希望を持てました。だからこそ、このお見合い受けるわけにはいかないのです」修治は、その場に残され、去っていく伊東の背中を見つめることしかできませんでした。そのはずだったのですが、何故か、かおりから、伊東がお見合いをOKするという連絡が来ました。しかも彩子もOKしています。お見合いは中華料理屋で行なわれ、修治に紹介されるまま、彩子と伊東は出会うのでした。修治「こちら、伊東正蔵さん、インテリア業を営んでいて、大学時代はバスケ部に所属、団長というあだ名で呼ばれていました。」 彩子「なぜ、団長と呼ばれていたんですか?」 伊東「バスケ部には所属していたんですが、いろんな部活の応援をするのも好きで、そうやってるうちに、いつの間に”団長”と呼ばれるようになっていました」 彩子「ああ、応援団長って、ことですね」 修治「そして、こちらは三村彩子さん。10歳の陽一郎君の母親で、ロールキャベツとか、春巻きとか、巻く系の料理が得意な主婦です」 彩子「ちょっと、何よそれ」 伊東「ああ、ぼくも包む系の料理、好きなんですよ。こないだ、旅行して食べた、ジャンボ餃子、美味しかったな。」 彩子「ひょっとして、三重県の津ぎょうざですか。私、出身なんで、得意ですよ。」 伊東「そうですか。それは食べてみたいな」 2人はいい感じです。それだけに、修治の顔が時々、歪みますが無理に笑います。そして、無事、お見合いは終了しました。彩子が化粧直ししてる間に、修治は疑問を伊東にぶつけました。修治「伊東さん、お見合い受けてくれてありがとうございます。でも、何故受けてくれたんですか?」 伊東「一度、三村さんの自慢の奥さんに会ってみたかったんです。それで、もしよければ、友達として、これからも会っていいですか?勿論、三村さんも同伴で。じゃないと、三村さんも心配するでしょうから…と、さっき彩子さんに言われました」修治「そうですか。それはよかったです。」 そして、それから現夫の監視つきの3人デートという奇妙な状況が続きます。
「ボクの妻と結婚してください。」のネタバレあらすじ:7.残り時間
翌日、会社に呼び出されました。荒城編集局長は言います。「変な時期に辞めたものだから、この記事の出る前に辞めたと局内では、もっぱらの噂だぞ。」 修治「スイマセン。向こうのマネージャーからも怒られました。」 荒城「お前も、放送作家20年か。長かったな。」 修治「荒城さんにはお世話になりました。でも、何故わかったんですか。」 荒城「俺の兄貴が、今のお前と同じ顔をしてた。それで、人生最後に、いい仕事は出来そうなのか?」 修治「はい。三村修治、最高傑作の仕事を現在、製作中であります。」 荒城「そうか。頑張れよ」家に帰ると修治は、久しぶりに陽一郎に会いました。陽一郎は、胸に飛び込み、ただ、修治の胸をぶつだけです。そして、気がすんだ陽一郎は言います。「ほんと、変なこと思いつくよね。パパは」 修治は陽一郎と河原に出かけることにしました。インディアンサマー(小春日和)の中、川原では色んな人がいました。陽一郎と修治は、走って川原に向かいます。しかし、修治の体力は衰えていました。寄る年波なのか、病気のせいなのか分かりません。修治「参った参った。早くなったな。陽一郎」そして、いきなり叫ぶのです。「陽一郎がお父さんになる姿を見たかった」。陽一郎も叫びます。「僕も大人になって、パパと一緒にお酒飲んでみたかった」2人は顔を見つめて笑います。そして、修治は、陽一郎に手紙を渡します。「陽一郎が、もう少し大人になってから読んでくれ」 そう言って、修治は陽一郎を抱きしめるのでした。「母さんを頼むぞ」陽一郎「任せて。ママは僕が守るから。」でも、陽一郎は帰るなり、いきなり手紙をハサミで切って、読んで泣くのです。それを見つけた彩子は、陽一郎の肩を抱きしめるのでした。修治も一仕事終えて、疲れたのでしょう。一気に老け込みました。病状が進行したのかもしれません。彩子がベランダで家庭菜園に水を撒いている様子を、車いすに座り、膝に毛布を掛けて、点滴をしています。顔の頬のコケが目立つようになって、大分骨ばっています。もう残された時間は少ないのかもしれません。その日、彩子と陽一郎は、ある種を植えました。
「ボクの妻と結婚してください。」の結末
修治が元気なうちに、かおりと伊東と彩子と陽一郎の4人は相談して、結婚式を早めることにしました。勿論、本当の式ではなく、予行演習です。参列客はいません。そして、式場は、かおりが経営する結婚相談所にある教会を使うので誰の遠慮もいりません。伊東は陽一郎に言います。「練習とはいえ、緊張するな」 流石に、修治も車いすではありません。スーツで決めた修治がウェディングドレスに着替えた彩子をエスコートして、バージンロードを歩きます。通常は、途中で夫にバトンタッチするのですが、修治は、祭殿前の伊東まで連れて行きます。そして、新婦の前で、語るのです。「伊東さん、あなたは、パンチのある彩子の几帳面さに面食らうかもしれません。それだけ、彼女はきめ細やかに、様々なフォローをしてくれるでしょう。だから、あなたの結婚生活の幸せは約束されます。陽一郎の中学受験もあり、時には落ち込むかもしれません。そんな時は、支えてあげてください。彼女は最高の女性です。今まで僕の妻でいてくれて、ありがとう。これからは伊東さんと幸せな家庭を築いてください。誓えますか?」 彩子「誓います」 修治「伊東さん、ボクの妻と結婚してください」 伊東「謹んでお受けします」かおりが拍手します。陽一郎も続いて。全員で拍手して、式は解散となりました。4月。桜が咲いています。彩子と伊東が2人であっていました。彩子から、あることを伝えるためです。「修治は、3月25日に最終回を迎えました。何の心配もない、そんな顔で安らかな笑みを浮かべて」 伊東「そうですか。最後の半年間でも会えてよかったです。今も、あの屈託のない笑顔で、顔を出すんじゃないかと思ってしまえるほど。」彩子「本当にね」 伊東「三村さんのおかげで、僕も結婚に前向きになることが出来ました。時々、知多さんのオススメで婚活パーティーでも出かけているんです」実は、陽一郎と彩子と3人がバラエティー番組を見ている間に、修治は息を引き取りました。その修治の顔は映されません。彩子が泣く中、陽一郎は懸命に涙をこらえ、「パパ、僕がママを守るから」と言っていたのです。実は、彩子は、週刊誌に修治と清瀬モモの熱愛報道がされた日に、伊東と会っていたのです。そして「伊東さん、主人が大変ご迷惑をかけました。」 伊東「もう、そのことはいいです。」 彩子「それで、大変ぶしつけなのですが、私からもお願いしてはダメですか?」 伊東「え?」 彩子「主人の最後の企画、一緒にかなえてもらえませんか。フリでいいんです。あの人に後悔してもらいたくないんです」伊東「あれは驚いたな。僕は、再婚相手の役、うまく演じられていましたか?」 彩子「ええ。大変お上手でした」2人は、そのまま分かれます。でも、続編があると言うことは、この2人は、いずれ結ばれるのかもしれません。とりあえず、この映画では、友人のままです。修治の置き土産としては、随分マシな方でしょう。翌日、陽一郎と彩子がベランダに出ると、発芽していました。それは、ムクムクと成長し、トマトの実をつけていきます。エンディングは中島美嘉さんの「Forget Me not」です。でも、まだ終わりません。次第に10年間を振り返っていくのです。陽一郎の入学式に記念写真を撮ろうとして、電話がかかってきて、変なポーズで映ったり、動物園の象園の前で肩車する修治、陽一郎が生まれた日、などなど、思い出が積み重ねていきます。最後に、陽一郎が友達と別れ、彩子の買物の荷物を持とうとします。窓から開かれて桜の花びらが舞い込んだ陽一郎の部屋には、修治が万年筆で書いた手紙が張られていました。修治がその手紙を朗読します。
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陽一郎へ
将来、自分でお金を稼ぐようになったら ジャンジャン使いなさい。
ただし、高級車や宝石ではなく思い出を買いなさい。
そして、万年筆を買いなさい。汚くてもいい。自分らしい字を見つけてください。
飲み会には必ず3次会まで行くこと。そこまで残った人にしか聞けない話があります。
酔っぱらった先輩のおもしろい話を酔い潰れるまで聞きなさい。
人の悪口をどんどん言いなさい。その代わり必ず本人の前で。
ユーモアと素直を大切に。そして、みんなをお日さまみたいに照らしてください。
陽一郎。君の名前そのままに。
追伸
お母さんに伝えてください。大好きです。会ったその日から。そして今も…。
いつかまた巡り会えたならボクと結婚してください。
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原作「ボクの妻と結婚してください。」の続編は、修治が1週間だけ地上に戻る話だそうです。果たして、どうなるんでしょうか? でも、本当に、それは死んだ後の話なのでしょうか? 単純に、残された家族の話だけではないようなので、映画の続編があるなら見たいものです。
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