父と暮せばの紹介:2004年日本映画。井上ひさしが書き下ろした同名戯曲の映画化作品。戦後の広島を舞台に、被爆体験により心を閉ざして生きてきた娘と、亡霊として現れた父の心の交流を描くヒューマンドラマ。父役の原田芳雄と娘役の宮沢りえ、二人の会話劇で展開していく親子の絆の物語です。
監督:黒木和雄 出演:宮沢りえ(福吉美津江)、原田芳雄(父・竹造)、浅野忠信(木下 正)、ほか
映画「父と暮せば」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「父と暮せば」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
父と暮せばの予告編 動画
映画「父と暮せば」解説
この解説記事には映画「父と暮せば」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
父と暮せばのネタバレあらすじ:起
1948年の夏。月曜日の夕刻、雷鳴が響く中仕事から帰ってきた福吉美津江(宮沢りえ)のもとに幽霊の父・竹造(原田芳雄)が現れます。竹造は美津江の務める図書館の利用者・木下(浅野忠信)を気に入っていて、ぜひ娘の結婚相手にと考えています。木下との仲がどうなっているのか聞き出したい竹造ですが、肝心の美津江は結婚する気などないと突っぱねます。美津江は人を好きになること、そして人並みの幸せを手に入れることを固く断じていました。
今後、木下には声を掛けないようきちんと言うと宣言すると、父は悲しそうな顔をしてこう言います。木下が初めて図書館へやってきた時、お前の心がにわかにときめいたことを自分は知っている。父はお前の胸のときめきと熱い溜息、かすかな願いから現れた存在なのだと。竹造は美津江の恋の応援団長を買ってでようとしていました。
父と暮せばのネタバレあらすじ:承
水曜日、美津江が原爆瓦を持って帰ってきます。原爆資料を集めている木下から預かって、困ってしまったと竹造に漏らします。夜になると、夏休みに開くお話会に向けて、昔話の朗読の練習をします。その様子を見ていた竹造は、昔話の中に原爆の話をおり込んでみたらどうかと提案します。美津江は占領軍の目が光る中で原爆の話をするなんて無理だと、難色を示します。
そこで父が即興で、一寸法師が原爆瓦で鬼を倒すというお話を作りますが、美津江は大変苦しそうな表情を浮かべて制止します。美津江にとって原爆の体験は、決して忘れることのできない悪夢でした。
父と暮せばのネタバレあらすじ:転
木曜日、雨が降りお話会は中止になってしまいました。美津江が早退してきたので、竹造は原爆病が出たのではないかと心配になります。美津江は最近は原爆病の症状は出ていないこと、原爆病が出たら木下から寝ずに看病をしてくれると言ってくれたと打ち明けます。美津江は木下からプロポーズの言葉を貰っていました。
二人の間がそこまで進展していたことに驚きつつも喜ぶ竹造ですが、美津江はそれでも結婚をする気はないと漏らします。何故なのかと問う父に、友人の昭子に悪いからと美津江は答えます。女学校の同級生の昭子は一緒にお話会を立ち上げた女性で頭脳明晰、人望も厚く、美津江は彼女に憧れていました。学校を卒業した後も二人の交流は続き、昭子から手紙を貰った美津江はある朝返信を出そうと封筒を持って家を出ます。庭の石灯篭の脇で封筒を落としてしまい、しゃがんだ時でした。ピカが落ちました。
美津江は灯篭の影にいたことで直撃を免れましたが、昭子は原爆で命を落としました。その後、美津江は負傷した昭子の母を見舞います。昭子の母は最初こそ歓迎してくれましたが、昭子の話をするうちに怒りを抑えきれなくなり、どうしてうちの子が死んでお前が生き残っているのだと美津江を問い詰めました。
その母もやがて亡くなり、美津江は自分だけが生き延びてしまったことへの罪悪感に悩まされるようになります。原爆で多くの親しき知人を失った美津江は死ぬことが自然で、生き残ったことは不自然なことなのだと次第に考えるようになっていました。
父と暮せばの結末
金曜日、木下が美津江の家にやってくる予定で、美津江はもてなす準備に追われています。竹造もお風呂を焚いたりと張り切っています。しかし美津江はまだ結婚へ踏み切れずにいます。生きることに後ろめたさを感じると漏らす美津江に父は「お前は後ろめとうて申し訳なあ病という病なんだ」と一喝します。美津江が声を振り絞るように語り出したのは、自分が原爆の火の海の中で父を置き去りにしたひどい娘だということ。美津江が本当に申し訳なく思っているのは父に対してであり、父への罪悪感からでした。
あの原爆で竹造は大やけどを負って、何十本もの木材の下敷きになりました。早く逃げろと言う父の言葉にも頑なにその場を動こうとしない美津江。竹造はジャンケンで決めようと言い出し、わざと負けて美津江だけを行かせたのでした。美津江が当時を思い出し涙を流すと、竹造はジャンケンで勝ったからお前が生き残ったのだ、生き残った者には原爆を伝え継いでいぐという使命があるのだと語り掛けます。
頑なに心を閉ざしてきた美津江は父の思いを受け入れ、木下とともに生きる覚悟を決めました。薪を注ぐと言って風呂場へと消えていく竹造に美津江は、ありがとうと囁くのでした。
以上、映画「父と暮せば」のあらすじと結末でした。
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