サイダーのように言葉が湧き上がるの紹介:2020年日本映画。JVCケンウッド・ビクターのアニメ音楽レーベル『フライングドッグ』の設立10周年を記念し、本作が映画初出演にして初主演、声優初挑戦となる歌舞伎俳優の八代目市川染五郎を主演に迎えて製作された長編アニメーション作品です。コミュニケーションが苦手な俳句少年とコンプレックスをマスクで隠す少女が織りなすひと夏の青春が描かれます。
監督:イシグロキョウヘイ 声優:市川染五郎(チェリー)、杉咲花(スマイル)、潘めぐみ(ビーバー)、花江夏樹(ジャパン)、梅原裕一郎(タフボーイ)、中島愛(ジュリ)、諸星すみれ(マリ)、神谷浩史(紘一)、坂本真綾(まりあ)、山寺宏一(フジヤマ)、井上喜久子(藤山つばき)ほか
映画「サイダーのように言葉が湧き上がる」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「サイダーのように言葉が湧き上がる」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
サイダーのように言葉が湧き上がるの予告編 動画
映画「サイダーのように言葉が湧き上がる」解説
この解説記事には映画「サイダーのように言葉が湧き上がる」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
サイダーのように言葉が湧き上がるのネタバレあらすじ:起
チェリー(市川染五郎)は地方都市・小田市の団地に住む男子高校生です。人付き合いが苦手なチェリーは外に出る際は人に話しかけられないように常にヘッドホンを耳につけ、言葉で表せない思いや感情を趣味の俳句にしたためてはSNSに投稿する日々を送っていました。
同じく小田市に住む女子高生のスマイル(杉咲花)は前歯に歯列矯正器具を付けており、常にマスクで口元を隠していました。スマイルは動画配信サイト「キュリオ・ライブ」で“カワイイ”をコンセプトにした動画を配信している“現役JKキュリオス”として活動しています。
かつては姉のジュリ(中島愛)、妹のマリ(諸星すみれ)と共に「スマイル・フォー・ミー」というユニットを組んでいましたが、現在はスマイル一人で活動しています。
チェリーの母・まりあ(坂本真綾)は地元のショッピングモール「ヌーベルモール小田」内にある福祉施設「陽だまり」で働いているのですが、腰を痛めたために現在は代わりにチェリーが「陽だまり」でアルバイトをしています。
「陽だまり」の利用者の一人でチェリーの俳句の師匠でもある老人フジヤマ(山寺宏一)は失った想い出のレコードを探し続けており、チェリーは俳句を教えてもらうがてらフジヤマと一緒にモール内を歩くのが日常的になっていました。
この日、モール内ではチェリーの友人である小学生のビーバー(潘めぐみ)が警備員に追われていました。メキシコ人と日本人のハーフであるビーバーは日本語は話せるのですが読み書きは苦手で、よくチェリーがSNSにアップした俳句をモールのあちこちにタギング(落書き)しているモール内の厄介者です。
この日はチェリーの友人でアイドルオタクのジャパン(花江夏樹)のために人気アイドルの等身大パネルを盗もうとしていたのです。
チェリーはたまたまモール内で“カワイイ”を探していたスマイルと鉢合わせしたところ、逃げてきたビーバーが二人に突っ込んできました。その拍子にチェリーとスマイルはそれぞれ手にしていたスマホを落としてしまい、偶然にもケースの柄が同一であったことから、スマイルは間違ってチェリーのスマホを拾って去っていきました。
その際、チェリーはマスクが取れたスマイルの矯正器具を目の当たりにしました。
サイダーのように言葉が湧き上がるのネタバレあらすじ:承
その後、チェリーがビーバーやジャパンと一緒にいたところに、スマホを取り違えたことに気付いたスマイルが連絡を入れてきました。これがチェリーとスマイルの出逢いのきっかけでした。
何とか互いのスマホを取り戻したチェリーとスマイルは、年齢も近いことから互いの存在を意識するようになっていきました。やがてスマイルはチェリーが俳句をアップしているSNSを見つけ、二人は互いにアカウントをフォローし合いました。
スマイルとの出逢いを通じてチェリーは“サイダーのように言葉が湧き上がる”ようになり、以前にも増して精力的に俳句を書くようになっていきました。一方のスマイルもチェリーが「陽だまり」で働いていることを知り、人手不足も相まって自身も「陽だまり」で働くようになりました。
チェリーはスマイルとの交流を通じて少しずつ人とのコミュニケーションが取れるようになっていき、いつもは耳に付けていたヘッドホンも外すようになっていきました。
小田市では数週間後に夏祭りが行われるのを前に、「陽だまり」の利用者たちは盆踊りで踊る「小山田だるま音頭」の稽古に励んでいました。実は祭りの当日、チェリーは引っ越しで小田市を離れることになっていましたが、スマイルにはまだこのことを伝えてはいませんでした。
いつもはフジヤマの孫でチェリーの友人でもあるタフボーイ(梅原裕一郎)が「陽だまり」にフジヤマを迎えに来るのですが、この日は来られなかったので、代わりにチェリーとスマイルがフジヤマを送って行くことになりました。
フジヤマはレコード屋を営んでおり、大量のレコードが店頭に出されていました。いつも空のジャケットを持ち歩いているフジヤマはそのレコードをもう一度聴きたいと願っており、チェリーとスマイルはフジヤマの願いを叶えてあげることにしました。
ジャケットの表面は桃色一色の表紙に「YAMAZAKURA」と書かれたロゴだけがあり、真ん中には大きな穴が開いていました。裏面には電波塔の横に立つ女性が写っていました。
ネットでは「YAMAZAKURA」に関する情報はなく、チェリーとスマイルは女性の着ているワンピースが今から50年ほど前であること、モールがある場所は50年前はレコードのプレス工場だったこと、ジャケットに穴が開いているレコードは盤面に写真がプリントされているピクチャー盤であることを突き止めました。
サイダーのように言葉が湧き上がるのネタバレあらすじ:転
チェリーとスマイルはさらに、ジャケット裏面の写真が山桜の名所である小田市の南側にある馬伏山の電波塔であること、「YAMAZAKURA」を歌ったのは小田市出身のシンガーソングライター“藤山さくら”(歌声:大貫妙子)であること、そしてさくらの夫がなんとフジヤマであることを突き止めました。
フジヤマの娘・つばき(井上喜久子)は、さくらは自分を産んですぐに他界したことを明かしました。フジヤマは今週末にもこのレコード店を畳む決断をしており、チェリーとスマイルはビーバーやジャパン、タフボーイにも協力してもらって店内の膨大なレコードから「YAMAZAKURA」を探し始めましたが中々見つかりませんでした。
そうこうしている間にも祭りの日、そしてチェリーの引っ越しの日は着々と近づいていました。
そんなある日、部屋の荷造りをしていたチェリーは本棚にあった雑誌を見つけ、その内容から“山桜”は“出っ歯”を意味する隠語であるを知りました。チェリーはスマイルの矯正器具になぞらえて「やまざくら かくしたその葉 ぼくはすき」という句を詠みました。
祭りを翌々日に控えたある日。チェリーたちはようやく「YAMAZAKURA」のレコードを見つけ出しました。チェリーはスマイルから、祭りの日に打ち上げられる花火を一緒に見ようと誘われましたが、結局引っ越しのことを打ち明けられませんでした。その後、レコードを聴こうとしたスマイルは誤って盤を割ってしまいました。
サイダーのように言葉が湧き上がるの結末
祭りの前日。スマイルはレコードを割ったことをフジヤマに謝るため、チェリーも一緒についてきてくれるよう頼みました。ところが、スマイルは「陽だまり」でまりあが職員たちに挨拶しているのを見て、チェリーが翌日にも小田市を離れることを知ってしまいました。スマイルは強い衝撃を受け、チェリーとの関係もギクシャクしてしまいました。
そして遂に訪れた祭りの日、そしてチェリーが小田市を離れる日。スマイルは何とかレコードを聴けるようにしたいと接着剤でつなぎ合わせていたところ、盤面の表はさくらの写真、裏は小田市の花火の写真であることに気付きました。何と「陽だまり」には奇跡的に残っていた「YAMAZAKURA」のピクチャー盤を使って作られた壁掛け時計があり、レコードも幸いにも無傷で聴ける状態でした。
街が祭りで賑わう頃、チェリーは父・紘一(神谷浩史)やまりあと共に車で小田市を離れようとしていました。その時、チェリーのスマホにスマイルの生配信が流れ、「陽だるま」の人々が「YAMAZAKURA」の音楽に合わせて踊っている様子が移し出されました。
その時、車道にビーバーとタフボーイが現れ、チェリーが詠んだ「やまざくら かくしたその“歯” ぼくはすき」の句を見せてきました。意を決したチェリーは車を降りて祭り会場に向かいました。
会場に着いたチェリーはフジヤマに背中を押され、やぐらに駆け上がるとマイクを握って自分の句を詠み始めました。いつしかそれはスマイルへの想いを綴った言葉に変わっていき、スマイルはチェリーの自分への想いに気付きました。スマイルはマスクを取り、矯正器具の付いた歯を見せて微笑みました。
以上、映画「サイダーのように言葉が湧き上がる」のあらすじと結末でした。
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