映画「名探偵コナン 緋色の不在証明」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
名探偵コナン 緋色の不在証明の紹介：2021年日本映画。青山剛昌原作のテレビアニメ『名探偵コナン』の劇場版第24作『名探偵コナン 緋色の弾丸』（2021年4月16日公開）の公開に先駆け、これまでのテレビ本編作品の中から『緋色の弾丸』のキーマンとなる赤井秀一とその家族に焦点を当てて厳選されたエピソードからなる期間限定上映の特別総集編です。
監督：山本泰一郎、佐藤真人、於地紘仁 脚本：宮下隼一、古内一成 構成：宮下隼一 声優：池田秀一（赤井秀一）、日髙のり子（世良真純）、森川智之（羽田秀吉）、田中敦子（メアリー・世良（領域外の妹））、高山みなみ（江戸川コナン／ナレーション）ほか
この解説記事には映画「名探偵コナン 緋色の不在証明」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
FBI捜査官・赤井秀一（池田秀一）はイギリスで生まれ育ち、父が「黒の組織」絡みの怪しげな事件に巻き込まれて死亡したことから日本に避難していました。赤井は父の死の真相を探るべくアメリカ国籍を手に入れてFBIに入り、「黒の組織」にコードネーム“ライ”として潜入捜査していましたが、あるミスで正体がバレてしまい、夜の来葉峠で処刑された…ことになっていました。
江戸川コナン（高山みなみ）が「世界を射抜く危険な一家」と評する赤井ファミリー。赤井、赤井の末妹で女子高生探偵・世良真純（日髙のり子）、赤井の弟でプロ棋士の羽田秀吉（森川智之）、そして赤井兄妹の実母であり、現在は訳あって少女の姿となっている“領域外の妹”ことメアリー・世良（田中敦子）。未だ謎のベールに包まれている一家ですが、コナンは赤井ファミリーも自分と同じく「黒の組織」を追っているという共通点だけ気付いていました―――。
「黒の組織」を追うため日本に派遣中のFBI捜査官ジョディ・スターリング（一城みゆ希）は米花百貨店地下のカフェで飲み物を飲んでいました。コースターの端が折れ曲がっていることに気付いたジョディは、そこに「逃げろ。このエリアは危険だ」というメッセージが書き込まれていることを知りました。ジョディはそれが死んだはずの赤井からのものではないかと考えました。同じ頃、ジョディの同僚アンドレ・キャメル（梁田清之）は百貨店内で赤井らしき人物を目撃していました。
その頃、百貨店内では、コナンが身体に爆弾を巻きつけた男と対峙していました。その場には赤井らしき人物、そして自称・大学院生（正体は後述）の沖矢昴（置鮎龍太郎）の姿がありました。百貨店の外では「黒の組織」のジン（堀之紀）やウォッカ（立木文彦）らが動向を注視していました。
やがて赤井らしき人物は他の客たちに紛れて外に出ようとし、急いで引き留めようとしたジョディは沖矢とぶつかりました。沖矢は「過失の割合は50：50（フィフティ：フィフティ）ですよ」と声をかけました。その後、コナンと遭遇したジョディは、コナンもまた赤井らしき人物を追っていることに気付きました。
別の建物からは「黒の組織」のキャンティ（井上喜久子）が赤井らしき人物を狙撃しようと待ち構えていました。赤井らしき人物の右の頬には火傷の跡のような痣がありました。キャンティに狙撃指示を出す役目のジンですが、バイクでやってきたベルモット（小山茉美）と会話をしているうちに突然客たちが慌てて百貨店内に戻り始め、狙撃のタイミングを逃しました。その際、赤井らしき人物はキャンティの存在に気付いているようでした。ジンらは作戦を中止して引き上げることにしました。
コナンは「ある日突然、そいつは俺たちの前に現れた」と、真純との出会いを振り返りました。
その日。毛利蘭（山崎和佳奈）が空手の関東大会で優勝したお祝いにと、鈴木園子（松井菜桜子）が杯戸ホテルのケーキバイキングを奢ってくれることになりました。コナンも蘭と園子に同行して満員のバスに乗り込んでいましたが、突然園子が「痴漢です！」とある人物の手を掴みました。男に見間違うほどのボーイッシュないでたちのその人物こそが真純であり、真純は誤解を解こうとしましたが、蘭は懲らしめようと戦いを挑んできました。
真純はすかさず截拳道（ジークンドー）で反撃し、蘭とほぼ互角の腕前を見せつけました。そこに割って入ったコナンは「この人は痴漢じゃないよ」と言い出し、真純は園子に痴漢を働いた男を捕えようとしていたのだと証言しました。
結局その痴漢には逃げられたのですが、蘭と園子は真純への誤解を解いて謝罪しました。真純も行き先が蘭たちと同じく杯戸ホテルであったことから同行することにしましたが、一行はホテルに着くなり謎の転落死事件に遭遇しました。目撃者の証言ではホテルの屋上に怪しげな人影があったということであり、コナンは屋上に行ってみると、そこには上着の上に靴が丁寧に置かれていました。
コナンはすぐにそれが自殺を装った殺人だと見破りましたが、いつの間にかその場にいた真純もコナンと同じ推理をしていました。真純は自らを探偵だと名乗り、なぜかコナンのことを知っていました。
真純は駆け付けた目暮十三警部（茶風林）らに推理を展開しましたが、コナンはその推理に穴があることを見抜きました。コナンは変声機で自らの正体である工藤新一（山口勝平）になりすまし、無事に事件を解決しました。
後日、蘭たちの通う帝丹高校に真純が転校生としてやってきました。真純がてっきり男だと思い込んでいた蘭や園子は大いに驚きました。あの時は自分も驚いたと振り返るコナンは、「さらにもう一人、意外なところに意外な人物として登場したのは…」と羽田秀吉について語り始めました―――。
ある冬の日。警視庁交通部交通執行課の婦警・宮本由美（杉本ゆう）はレストランでメガネの男から封筒を渡されました。メガネの男は「7つ揃うまで開けないでください。揃ったら連絡しますから。約束ですよ」と念を押しました…。
…これは由美が勤務中に居眠りした際に見た夢でした。同僚の三池苗子（田中理恵）に起こされた由美は、封筒を渡したメガネの男は元彼であり、自分が警官になった時に別れを告げられたことを語りました。由美は“7つ”については思い当たることはありませんでした。たまたま通りかかったコナンや「少年探偵団」の面々は由美の夢の話を聞いていたようで、コナンは元彼は船乗りではないかと推測しました。“7つ”は“7つの海”のことであり、元彼は全ての海を制覇するまで待っててくれと言っているのではないか、と。
由美は夢の中の元彼は船乗りのように逞しくはなく、青白くてニートみたいだったということしか覚えていませんでした。元彼は不定期であちこち仕事に行っていたようですが、それが何なのかは由美も知らないことでした。
そんな時、苗子の携帯に幼馴染の家政婦・米原桜子（丹下桜）から電話があり、とあるマンションで人が死んでいると伝えてきました。コナンは由美や苗子、「少年探偵団」と共に現場に向かうと、桜子が働く部屋の主の妻が首を吊って死んでおり、足元には遺書らしきメモが置かれていました。その時、桜子はこの部屋の隣に非常に記憶力が優れている無精ひげのメガネの男（秀吉）が住んでいることを思い出し、隣に向かいました。由美はそこで元彼だった秀吉とまさかの再会を果たしました。
秀吉はポストに被害者の部屋の合鍵が入っていたことを覚えていました。事件当時、秀吉は部屋を離れており、どこに行ったかは言えないと答えました。秀吉はコナンのことを知っている様子で、この事件は既にコナンが解決してくれていることを確信していました。そして秀吉の記憶力や「少年探偵団」の協力により、事件は自殺ではなく被害者の夫による殺人だと判明しました。
コナンはもうひとつの真相も掴んでいました。コナンが「少年探偵団」に見せたスマホには“太閤名人”の勝利インタビューの動画がありました。実は秀吉は“太閤名人”の異名を持つプロ棋士であり、この日はちょうど対戦の日だったのですが、まだ由美には自分が棋士であることを知られたくなかったのです。
数年前、秀吉は“名人”のタイトルを獲ったことを由美に教えようとしましたが、由美にとってはそんなことよりも大相撲の横綱が6場所連続優勝を果たしたというニュースの方が気になっていました。由美から全く期待していないと言われた秀吉は、その日から将棋の7冠（名人・竜王・棋王・王将・王座・棋聖・王位）を獲ろうと固く決意したのです。事件解決後、由美は苗子から秀吉の凄さについて聞かされました。しかし、将棋には興味のない由美は「どうせゲームか釣りでしょ？ あいつらしいわ」と意に介しませんでした。
コナンは“領域外の妹”と名乗る謎の少女の話をしようとしましたが、この少女については何も心当たりはありませんでした。ある日、蘭や園子、コナンと一緒に下校していた真純は、截拳道については兄から送られたビデオや近くの道場で学んだと語りました。アメリカからやってきた真純は母は今もアメリカに住んでいると語り、身寄りもいないのでひとりでホテル暮らしをしていると語りました。コナンは兄が二人いるという真純が親戚がひとりもいないことに疑念を抱き、以前真純が見せてくれた写真の少女（メアリー）が何者なのか気になっていました。
蘭と園子はコナンと共に真純が暮らすホテルを訪れました。コナンたちは真純からケーキと紅茶をごちそうになり、楽しい時間を過ごして帰宅しようとした時に下の階で発生した殺人事件に遭遇しました。コナンたちは現場に急行しましたが、コナンが置き忘れていったランドセルを真純の部屋から出てきた何者かが見ていました。
被害者の女性はとある恋愛小説家の助手であり、その遺体には首を絞められた跡と抵抗した痕跡がありました。事件の直前、小説家の元に「助手を辞めさせないとただじゃ済ませない」というファックスが送りつけられていました。コナンと真純はわざとらしく泣いている素振りを見せたこの小説家こそが犯人だと気付き、同時にそのトリックを見破りました。
事件解決後、コナンは真純の部屋にいた少女（メアリー）が何者なのか怪しみ、密かに真純の部屋に盗聴器を仕掛けておきました。しかし、盗聴器は真純とメアリーに見つかり、破壊されました。メアリーは盗聴器の性能からコナンに興味を抱き、もしコナンが自分のことを探ろうとしたならば“領域外の妹”だと答えるよう指示しました。
“領域外の妹”の正体について掴めずにいたコナンでしたが、ある事件がきっかけで真純・秀吉・“領域外の妹”の意外な関係性が浮き彫りになってきました。
ある日、真純は行きつけのラーメン屋「マジで死ぬほどヤバイ ラーメン小倉」に蘭と園子、そしてコナンを誘いました。蘭と園子は店の名物「閻魔大王ラーメン」の美味しさに感激しました。コナンは真純がいつもこの店でチャーハンと餃子をテイクアウトしているのが気になり、「もしかして（真純の暮らす）ホテルに匿っている“誰かさん”の分だったりして」と話を振ってみました。
その時、店に由美と苗子がやってきました。1週間前の夜に近隣をパトロールしていた由美と苗子は偶然にも強盗殺人犯に出くわし、追跡しているうちにこの店に逃げ込んだものだと確信していました。強盗殺人犯はこの店の先客3人のうち誰かだと思われました。店の主人は由美と顔見知りであり、由美はいつも秀吉と一緒に店に来ていたと語りました。
秀吉の特徴と真純の兄の特徴（丸いメガネに無精ひげ、抜群の記憶力）は偶然にも一致していました。店の主人は3人の客の他にも秀吉が客としてやってきていたことを思い出し、由美らは秀吉に電話して当時の状況を聞くことにしました。秀吉はあの夜、偶然にも強盗殺人犯とすれ違っており、コナンと真純は秀吉の証言から真犯人を突き止めました。
事件は解決しましたが、真純は用があるとして先に店を後にしていました。コナンは店の主人から、真純が店に置き忘れていたハンカチを返してくれるよう頼まれました。ハンカチには「Mary」という刺繍がされており、店の主人は真純（ますみ）のことを“マリー（Mary）”という名前だと思い込んでいましたが、コナンは「Mary」の綴りは“メアリー”とも受け取れることに気付き、ハンカチの持ち主は真純と一緒に写真に写っていた“領域外の妹”なのでは推測しました。コナンは一瞬“メアリー”は真純の本名なのではと思いましたが、どこかで“領域外の妹”の名前を聞いたことがあることを思い出していました。
コナンは、どこか不思議なオーラを放つ人物・沖矢昴について振り返りました。ある日、コナンと灰原哀（林原めぐみ）が二人組の誘拐犯に誘拐され、廃ビルに監禁された時のことでした。コナンと灰原は運よくロッカーに忍び込んでいた「少年探偵団」と協力して誘拐犯のうち一人を退治しましたが、コナンたちの元に謎の足音が近づいていました。
そこに現れたのは、コナンの実家・工藤家に居候している沖矢でした。異変に気付いた沖矢はコナンの予備の追跡装置付きメガネを使って居場所を突き止めたのですが、沖矢の正体を知らないはずの灰原は何やら怪しげな気配を感じ取っていました。
ある日、キャメルの前に赤井の宿命のライバルである公安警察の安室透（古谷徹）が現れました。安室は「君ならうっかり口をすべらせてくれそうだから」と言い、杯戸中央病院に入院中の患者で付近に車を乗り捨てて姿を消した楠田陸道という人物を知らないかと尋ねてきました。
時を同じくして、杯戸中央病院にジョディと共にいるコナンは異常なまでの胸騒ぎを覚えていました。その直後、ジョディは安室と会話中のキャメルを連れ戻し、安室は情報を聞きそびれました。ジョディはキャメルに楠田のことを喋っていないか念を押しました。キャメルは自分が日本に派遣される前に楠田は車内で拳銃自殺を遂げていたことを話すと、ジョディは「そう、ありがとう」と答えてその場から立ち去りました。
その直後、キャメルの前にジョディがコナンを連れてやってきました。そこでジョディが先程と同じ質問をしてきたことから、コナンはキャメルがさっき会ったジョディは偽物であり、その正体は「黒の組織」の一員であるベルモット（小山茉美）であることに気付きました。
「黒の組織」にコードネーム“バーボン”として潜入捜査中の安室は変装を解いたベルモットと合流しました。ベルモットから楠田の死を知らされたバーボン（安室）は「やはり、そういうことですか」と不敵な笑みを浮かべました。一方、コナン、ジョディ、キャメルは自分たちの行動がベルモットに読まれていたことに強い危機感を抱いていました。キャメルやジョディは「黒の組織」のスパイである楠田がFBIに口を割る前に自決したのだろうと考えましたが、コナンはそれよりも大きな裏があるのではないかと感じ取っていました。
一方、ベルモットはFBIがなぜコードネームすら与えられていない下っ端の楠田の情報を隠ぺいしようとしていたのか腑に落ちないままでした。バーボン（安室）はベルモットに「もし拳銃で自殺する場合、あなたならどうします？」と問いかけ、拳銃自殺ならば頭蓋骨に弾痕があるはずだと語りました。楠田が消息を絶った時はちょうどあの赤井秀一が来葉峠で死んだとされる時と同じ頃でした。
安室は赤井が楠田の死体を使って死を偽装していたことに気付きました。ベルモットは一瞬驚愕しましたが、すぐに「その推理は的外れよ」と笑い出しました。あの時、来葉峠で赤井の死を確認したのはFBIの要請を受けた日本の警察であり、車ごと焼かれた死体の指紋は紛れもなく赤井の指紋と一致していたというのです。ベルモットは来葉峠で赤井を撃った「黒の組織」の一員のキール（三石琴乃）が隠しカメラで撮った現場の様子の動画を確認すればいいと言いました。
当時の映像では、キールに肺を撃ち抜かれた赤井の姿が映っていました。キールはジンから赤井の頭を撃ってとどめを刺すよう指示され、赤井は「まさか、ここまでとはな…」と呟きました。映像を確認したベルモットは、赤井の言葉は演技ではなく本心から言ったのだろうと推測しましたが、バーボン（安室）はどうしても赤井の言葉が引っかかっていました。脳裏にコナンの存在が浮かんだバーボン（安室）は、もし生きていた場合の赤井の居場所まではわからないものの自分の推理が正しかったことを証明すると宣言しました。
翌日。この日はコナンの父で推理小説家の優作（田中秀幸）が最優秀脚本賞でノミネートされているアメリカ映画の祭典「マカデミー賞」の授賞式が行われる日でした。しかし、コナンは居候先の「毛利探偵事務所」にはいませんでした。
その夜。工藤家ではマスクをした沖矢が「マカデミー賞」授賞式のテレビ中継を見ていました。そこに安室が訪れ、沖矢に話を聞きたいと言ってきました。公安警察の者たちが見張るなか、安室は沖矢に“死体すり替えトリック”の話を切り出しました。赤井の身元確認に使われた指紋はコナンが赤井から渡された携帯電話から採取したものですが、採取されたのは利き手ではない右手（赤井は左利き）であることに着目したのです。
その頃、ジョディとキャメルは赤井に関する何かの手がかりを得るため来葉峠に向かっていました。指紋の件がどうも引っかかっていたジョディは、赤井は携帯電話に指紋がつかないようあらかじめ両手の指に特殊なコーティングをしていたのだろうと推理しました。その携帯電話は赤井の手に渡る前に楠田が右手で拾い上げていたのです。すなわち、来葉峠で車ごと焼かれた死体の指紋と携帯電話の指紋は実は楠田のものだったのです。
時を同じくして、工藤家にいる安室もジョディと同じ結論に達していました。安室は赤井がキールとグルであり、コナンの協力者である発明家の阿笠博士に血糊の出るニット帽を作らせ、キールに空砲を撃たせて監視役のジンらの目を欺いたのだと推理していました。
安室もジョディも、赤井の偽装工作を仕組んだのはコナンだと感づいていました。安室は赤井が言っていた「まさか、ここまでとはな…」に“ある言葉”を付け足せば別の意味になると考え、赤井の真意は「まさか、ここまで“読んでいた”とはな…」という首謀者のコナンを賞賛する意味に捉えられると読み解きました。
その頃、来葉峠に向かっているジョディとキャメルの車は公安警察の複数台の車に追われていました。その際、キャメルは赤井の口癖が「50：50（フィフティ：フィフティ）」であることを思い出し、ジョディは先日に米花百貨店で出くわした沖矢が赤井と同じようなことを言っていたのを思い出しました。安室もジョディも、沖矢の正体は赤井が変装したものであることに気付いていました。
正体がバレそうになった沖矢は自らマスクを外してみせましたが、安室は「その変装を解け、赤井秀一！」と詰め寄り、沖矢の首元に変声機が仕込まれていないか確認しましたが、沖矢の身体には変声機らしきものは何もつけられていませんでした。その様子はコナンが部屋に仕掛けた隠しカメラを通じて見つめていました。
一方、車を運転するキャメルはドライビングテクニックを駆使して追っ手を振り切りましたが、その際に車が故障してハンドル操作が効きにくくなっていました。キャメルは「こんな時、赤井さんがいれば何とかするんでしょうけど…」と呟いたその時、車内から「屋根を開けろ、キャメル」という声が聞こえてきました。キャメルは言われた通りにルーフを開けると、後部座席には何と赤井がいつの間にか乗り込んでいました。
驚いた公安警察の者たちは安室に連絡し、赤井は200mの直線に出たら5秒だけハンドルと速度を固定するようキャメルに指示しました。赤井は「この下らないチェイスにケリをつけてやる。全てあの坊や（コナン）の思惑通りだ」と言い、ジョディたちが来葉峠に来るのも全て想定内だったことを語りました。そして赤井は直線に差し掛かった直後、追っ手の先頭車両のタイヤを拳銃で撃ち抜き、後続車両もまとめて走行不能に追いやりました。
ちょうど工藤家のテレビでは、見事に最優秀脚本賞を受賞した優作のスピーチが始まっていました。ところが、優作の様子はどこか変でした。安室は公安警察の部下たちに赤井の追跡を続けるよう指示すると、追っ手の車のところに赤井が戻ってきて代わりに電話に出ました。「久しぶりだな、バーボン。いや、今は“安室透”だったかな。“黒の組織”にいたのは薄々気付いていたが、あの坊や（コナン）にあだ名が“ゼロ”だと明かしたのは失敗だったな、降谷零くん」―――。
安室は赤井が自分の本名までも知っていたことに驚愕しました。赤井は続けて「これだけは言っておく。目先の相手に囚われて本来狩るべき相手を見誤らないでもらいたい。君は敵に回したくないんでね」と告げると、ジョディやキャメルと共にその場を後にしました。完全に一杯食わされた格好の安室は工藤家を後にしました。
全てはコナンが赤井や優作と共謀し、安室が動くことを予見して先回りしたものでした。沖矢に変装していたのは今回は赤井ではなく、アメリカの授賞式会場にいるはずの優作でした。授賞式会場の優作はコナンの母・有希子（島本須美）が変装したものでした。そして赤井と共謀して偽装工作に加担したキールの正体は、コナンや赤井らと同じく「黒の組織」を追っているCIA諜報員の水無怜奈でした。
コナンは赤井が生きていることを「黒の組織」に悟られないよう、両親や阿笠博士の協力を得て赤井に変装を施し、“沖矢昴”という偽名を与えたのです。沖矢の正体を知っているのはコナン、優作、有希子、阿笠博士、ジョディらFBIだけだと思われていましたが…。
コナンは真純の留学先はアメリカではなく、イギリスでないかと思い当たりました。それは10年前、日本に避難していた赤井が熱浜海水浴場で秀吉と7年ぶりに再会した時のことでした。当時高校生だった秀吉は、初めて赤井に会うというまだ幼い真純を連れてきていました。
海水浴場には一家の母である、“領域外の妹”になる前のメアリーも来ていました。メアリーはFBIに入ろうとしている赤井を「まるで死神に見入られた幼稚な子供のよう」と批判し、赤井らの亡き父が一家を日本に避難させた時に残したメッセージ「いいか。この先、私はいないものと思え。どうやら私はとんでもない奴らを敵に回してしまったようだ」を思い出すよう促しました。赤井は心の中で「母さんこそわかってないんじゃないか。父の遺体はまだ発見されてないってことを…」と呟きました。
その後、真純は秀吉と共に海の家に向かいましたが、秀吉とは違って全く笑うことのない赤井の笑顔を見たいと思うようになりました。真純はフライドポテトを使って赤井を笑わせようとしましたが「食べ物で遊ぶな」と注意されてしまいました。真純はメアリーに注意されているところ、たまたま通りかかった有希子に声をかけられました。有希子は（まだコナンになる前の）新一や蘭と共にこの海水浴場に来たのですがはぐれてしまっていたのです。
有希子はメアリーの言葉遣いから彼女がイギリス人であることを見抜き、それを見た赤井は「一般人にも言葉遣いだけで祖国がバレてしまう。この世に安全な国なんてないんだよ」と皮肉を言い、自分の正体がバレる前に父を死に追いやった連中を一人残らず地獄に叩き落とすと誓いました。
「バレバレだよ」その時、一人の少年が赤井に声をかけました。「お兄さんの正体がピエロだってことを。さっきお兄さんは世界中を回ってるって話してたでしょ？ そんな人ってサーカスのピエロしか思い当たらない」―――。少年の鋭い洞察力に感服した赤井は思わず笑い出し、真純を驚かせました。これが後にコナンとなる新一と赤井の初めての出会いでした。
赤井は自分はサーカス団員ではなく、新一の考えでは海外を渡り歩いている人は全員サーカス団員になってしまうと諭しました。やがて蘭が新一を連れ戻しに来ましたが、そこには新一をつけ狙ってきたチンピラ三人組も現れました。新一は海の家でわざと食事にハエを混入させて店主を脅したチンピラたちの行いを止めたのです。
すると赤井が立ち上がって截拳道の技を構え、「この坊やは俺の連れでね。話があるなら俺を通してからにしてくれ。まあ両眼を抉られた後ならいくらでも話は聞くよ」と新一を庇いました。真純が截拳道に興味を抱いたのはこのことがきっかけでした。
赤井は新一と蘭に真純の相手をしてくれるよう頼みました。その時、猛スピードで走っていた1台の車が海水浴場近くの崖から海に転落しました。赤井は海に飛び込み、車の運転者を助けようとしましたが、後部座席にはまで値札のついているブランド物の高級時計が何本もあること、車内には運転者の他にも同乗者がいたことに気付きました。
赤井は運転者を浜辺まで引き上げましたが既に手遅れであり、新一は海の家で着替えの服を買おうとしたずぶ濡れの人物がいるか確認するよう、蘭には有希子に警察に通報してもらうよう頼みました。海の家に向かった新一は、秀吉からずぶ濡れの人物は三人ほどいたとの証言を得ました。
赤井は駆け付けた警官に、同乗者はあらかじめ助手席の窓を全開にしており、転落したのと同時に脱出して海水浴客に紛れている可能性があること、運転者はシートベルトをつけておらずガードレールに衝突した際に頭をガラスに強打して即死していたことを説明しました。
警察は1時間前に海水浴場近くの時計店で二人組の強盗が入ったという通報を受けており、車内の高級時計はどうやら盗難品のようでした。そこに新一と秀吉がずぶ濡れの人物を三人とも連れて現れ、有希子はホテルで小説を執筆中の優作に三人の写真を送るから同乗者を特定してほしいと依頼しました。そして新一は三人のうち一人が新品状態の腕時計を身につけていたことから同乗者を割り出してみせました。
事件は解決し、赤井たちはメアリーに連れられて帰路につきました。赤井は今回の一件でますますFBIに入りたいとの思いを強くし、「兄さんは何かにとりつかれている」と怯える秀吉に「とりつかれてるんじゃない。侵されてるんだよ。“好奇心”という名の熱病にね」と語りました。
赤井が父そっくりになったことに気付いたメアリーは彼の覚悟を受け止め、「行け、秀一。お前の熱病で、命が尽きるまで真実を覆い隠す霧を一掃しろ。その代わり、ひとつでもボヤを残したら承知しないぞ」と送り出す決心をしました。
赤井は「もとよりそのつもりだ」と返し、メアリーは今日から秀吉と真純の父親代わりになると宣言しました。赤井はシャーロック・ホームズの弟子を気取る新一に「なんてったって君は我が国が誇る名探偵の弟子なんだから」と激励しました…。
…10年前のことを振り返ったコナンは赤井・秀吉・真純の関係を思い起こし、そしてあの時に秀吉が「メアリー母さん」と言っていた女性は“領域外の妹”と容姿が非常に似通っていることからメアリーと“領域外の妹”は同一人物なのではないかと推測しました。まだまだ謎の多い赤井ファミリーですが、コナンがただひとつはっきりと分かっているのは、自分と同じく「黒の組織」に戦いを挑んでいるということだけでした―――。
赤井はとある場所で銃弾を手にしながら、観客にメッセージを送りました。「ずいぶんと待たせたな。そんな顔をするな。すぐに会える」―――。
以上、映画「名探偵コナン 緋色の不在証明」のあらすじと結末でした。
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