アイネクライネナハトムジークの紹介:2019年日本映画。伊坂幸太郎の同名連作短編集を本作が3度目の共演となる三浦春馬と多部未華子のダブル主演で映画化したラブストーリー群像劇で、10年の時を超えて紡がれる“恋”と“出会い”の物語が描かれていきます。全編に渡って仙台にてロケを敢行、主題歌は原作者・伊坂幸太郎と交流があり本作誕生のきっかけを作った斉藤和義が手掛けています。タイトルはモーツァルトの同名楽曲から取られており、「ある小さな夜の曲」を意味しています。
監督:今泉力哉 出演者:三浦春馬(佐藤)、多部未華子(本間紗季)、矢本悠馬(織田一真)、森絵梨佳(織田由美)、恒松祐里(織田美緒)、萩原利久(久留米和人)、成田瑛基(ウィンストン小野)、八木優希(亜美子)、こだまたいち(斉藤)、MEGUMI(板橋香澄)、柳憂怜(久留米邦彦)、濱田マリ(久留米マリ子)、藤原季節(青年)、中川翼(少年)、祷キララ(女子高生)、伊達みきお(サンドウィッチマン)(セコンド)、富沢たけし(サンドウィッチマン)(セコンド)、貫地谷しほり(美奈子)、原田泰造(藤間)ほか
映画「アイネクライネナハトムジーク」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「アイネクライネナハトムジーク」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
アイネクライネナハトムジークの予告編 動画
映画「アイネクライネナハトムジーク」解説
この解説記事には映画「アイネクライネナハトムジーク」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
アイネクライネナハトムジークのネタバレあらすじ:起
寒空の下の仙台駅前。多くの人々が大型ビジョンに映し出される、日本人初の世界ヘビー級王座を賭けたボクサーのウィンストン小野(成田瑛基)のタイトルマッチに釘付けになるなか、街頭アンケートの仕事をしているマーケティングリサーチ会社の会社員・佐藤(三浦春馬)は、道行く人々に声を掛けるも誰も見向きもしませんでした。やがて佐藤は、街中でギターの弾き語りをしているストリートミュージシャンの斉藤(こだまたいち)の歌声に魅了されていきました…。
…ほんの少し前、とある美容室では美容師の美奈子(貫地谷しほり)が常連客の板橋香澄(MEGUMI)の髪にドライヤーをかけながら、格闘技の話題をしていました。美奈子に彼氏がいないことを知った香澄は唐突に「私の弟がいるんだけどさ、どうかな?」と持ちかけてきました。困惑する美奈子に、香澄は弟の人の良さをアピールしはじめました。
一方、この日が休日の佐藤は、大学時代の同級生で今では居酒屋で働く織田一真(矢本悠馬)と、妻の由美(森絵梨佳)の家に遊びに行きました。由美はかつては学校屈指のマドンナ的存在でしたが、佐藤は由美とは付き合うことなく、由美が伴侶に選んだのは適当な性格の一真でした。二人には5歳になる長女の美緒と産まれたばかりの赤ん坊がいました。
一真は佐藤に、彼女はいないのか尋ねてきました。佐藤は「いねぇよ」と笑いますが、一真は「出会いがないから」と彼女がいないことを伝えると、一真は「まさかお前、落ちてたハンカチを届けたのがきっかけ、みたいなドラマチックな出会いを期待してるんじゃないだろうな」と佐藤の本心を見抜き、「そういうドラマチックな出会いで結婚する奴はドラマチックな出会いそのものに引かれてるんだよ。例えばそこで全く別の奴と出会ってたら、そいつと結婚するのか? そんな出会いをした奴は後から後悔するんだよ」と持論を述べました。佐藤の耳には一真の言葉が印象的に残りました。
アイネクライネナハトムジークのネタバレあらすじ:承
翌日の夜。美奈子の元に見知らぬ男から電話がありました。男は香澄の弟であり、香澄は本当に弟に美奈子の電話番号を教えていたのです。美奈子は困惑して電話を切ろうとしたところ、部屋にゴキブリが出現して美奈子は思わず悲鳴を上げてしまいます。驚いた香澄の弟は美奈子に大丈夫かと声をかけ、これがきっかけで二人は打ち解け合いました。
それからというもの、美奈子は毎晩香澄の弟と電話を楽しんでいたのですが、ある日突然、香澄の弟は「仕事が忙しくなるから電話できなくなる」と告げてきました。美奈子はこのことを香澄に相談すると、香澄はこの日のタイトルマッチでウィンストン小野が勝ったら、彼からプロポーズされるかもしれないと語りました。事情の呑み込めない美奈子は「そんなのは嫌。他力本願じゃないですか」と動揺してしまいます。
その頃、佐藤は会社の上司・藤間(原田泰造)と残業をしていました。しかし、佐藤は藤間の様子がおかしいことに気付くと、藤間は突然気が動転したかのように突然大声をあげて机を蹴り出し、止めに入った佐藤は誤ってコーヒーを室内のコンセントにこぼしてしまいます。おかげで事務所内の全てのパソコンの電源が落ち、入力中だったデータが全て消えてしまいます。翌日になって知ったことですが、藤間はどうやら妻が子供を連れて実家に帰ってしまったということでした。この日は藤間が仕事を休み、佐藤は失ったデータの補充のための街頭アンケートを命じられました。(冒頭に戻る)
弾き語りに聞き入っていた佐藤は、自分と同じように歌に聞き入っているひとりの女性・本間紗季(多部未華子)に目が行きました。紗季に思わず見とれた佐藤は、彼女にアンケートへの協力を求め、その際に彼女の左手には小さく「シャンプー」と書かれてあるのを見つけました。佐藤はアンケートに応じてくれた紗季と談笑し、彼女は現在フリーターで就活中であることを明かしました。
同じ頃、美奈子は部屋でウィンストンの試合中継を見ていました。そして試合はウィンストンの劇的なKO勝ちに終わり、ウィンストンは日本人初となるヘビー級王座に輝きました。美奈子は、香澄の言った言葉は本当なのか疑心暗鬼でいると、美奈子の携帯に香澄から電話がかかってきました。香澄は自分は結婚していて旧姓は「小野」であること、そして弟はなんとウィンストン小野本人であることを打ち明けました。美奈子はそのことに大いに驚くも、ウィンストンと交際を始めることになりました。
試合からしばらく経ったある日、美奈子はウィンストンを伴い、大学時代からの友人である一真と由美の元を訪れました。一真は佐藤も招待していたのですが、その頃、佐藤は途中の公園でいじめられていた少年(中川翼)を助けていました。耳の不自由な少年はウィンストンのファンであり、姉(祷キララ)と共にウィンストンと対面しました。ウィンストンは次の防衛戦で必ず勝利すると少年に約束しました。
佐藤はウィンストンからもらったサインを藤間に渡し、たまたま道路工事の作業員をしていた紗季と偶然にも再会しました。佐藤は先日買ったシャンプーを紗季に渡しました。その後、ウィンストンは初の防衛戦に臨みましたがまさかの敗北を喫してベルトを失い、少年の姉から「弟ががっかりしています。期待させないでください」との葉書を受け取って落ち込んでしまいました。
アイネクライネナハトムジークのネタバレあらすじ:転
それから10年後の仙台。
一馬と由美の娘・美緒(恒松祐里)は高校生になっていました。ある日、合唱の授業中に教師に叱られている生徒を同級生の久留米和人(萩原利久)が庇い、その様子を見た美緒と友人で藤間の娘・亜美子(八木優希)は感心しました。その夜、和人は父・邦彦(柳憂怜)や母・マリ子(濱田マリ)と食事に出かけますが、和人は会社の上司からの電話に応じる邦彦の姿を見て、マリ子に「俺は絶対父さんみたいにはならない。社会の歯車にはならない」と言いました。
そんなある日の放課後、帰路につこうとした和人は美緒に呼び止められました。和人は美緒に連れられて駅の駐輪場に向かい、美緒はそこで自分の自転車に貼っていた駐輪シールが何者かに剥がされて別の自転車に付け替えられたことを伝えました。
その場に居合わせた男が他の自転車からシールを剥がしているのを見かけた美緒は、この男こそが犯人だと断定、和人は美緒を庇って男にとっかかりましたが、ねじ伏せられてしまいます。そこにたまたま邦彦が現れ、言葉巧みに男を説得してその場を収めました。あれだけ軽蔑していた邦彦に助けられた和人でしたが、美緒には邦彦が自分の父だとは言い出せませんでした。
その夜、佐藤は紗季を夜景の見えるレストランに招いていました。出逢ってから10年、紗季とアパートで同棲生活を送っていた佐藤は、意を決して婚約指輪を渡そうとしましたが渡しそびれ、アパートの近くでようやくプロポーズしましたが、紗季は佐藤の煮え切らない態度に業を煮やし、置き手紙を遺して実家に帰ってしまいました。
翌日、佐藤は仕事を休みました。その日の夜、テレビのスポーツ番組には10年ぶりに王座に挑戦することになったウィンストンが出演していました。ウィンストンは美奈子と結婚しており、子供も生まれていました。
一真は東京で行われるウィンストンの王座挑戦試合のチケット3枚を確保しましたが、誰と一緒に観に行くかを巡って、美緒と由美は口論になってしまいます。美緒はだらしのない一真を毛嫌いしており、納得のいかない美緒は家を飛び出していきました。美緒は薬局で買い物をしていた佐藤と会い、一真の愚痴をこぼし始めました。佐藤は「あいつも変わらないな」と苦笑いしながらも、美緒に一真と由美が結婚した経緯を語り始めました。
かつて佐藤はクラスのマドンナであった由美に想いを寄せていましたが、由美は一真に想いを寄せていることに気付いて自ら身を引いたのです。やがて由美が美緒を身籠った時、一真は佐藤に「生まれてくる子供のためにもしっかりしねえとな」と語っていました。その話を聞いた美緒は父への誤解を解き、改めて自分が両親に愛されていると感じました。帰宅した美緒は由美に、なぜ一真と結婚したのか尋ねてみると、由美は笑いながら「わからないけど、放っとけないんだよね」と語りました。
いつものようにソファで寝転がっている一真は、東京へ行く準備を進めていました。その頃、進学塾で働く紗季はこの塾に通う亜美子と言葉を交わしました。亜美子は離婚した父・藤間が10年前にウィンストンからもらったサインを自慢げに紗季に見せ、今度の試合は勝ってほしいと語りました。
アイネクライネナハトムジークの結末
やがてウィンストンの試合の日になり、一真・美緒・亜美子の三人で東京に行くことになりました。亜美子はバス停で会った紗季に、今日の試合でウィンストンが勝ったら和人は美緒に告白することを打ち明けました。
その日の夜、部屋で一人きりで過ごしていた佐藤は居てもたってもいられなくなり、寒空の仙台駅前にやってきました。そこでは10年前と同じように街頭ビジョンにウィンストンの試合中継が映り、同じように斉藤が弾き語りをしていました。10年前の出来事を思い出していた佐藤は帰りのバスターミナルで紗季の姿を目撃しますが、紗季はそのままバスに乗って行ってしまいました。佐藤は次のバス停まで先回りすることを決心して走り出しました。
しかし、なかなか紗季に追いつくことはできず、佐藤はひたすら次のバス停に向かって走っていると、公園のベンチ付近で泣いている一人の少年の姿を見かけました。佐藤が少年に声をかけ、現れた母親に少年を引き渡しますが、その様子をバスから降りた紗季が見つめていました。佐藤は紗季にプロポーズの返事はゆっくり考えてほしいと告げると、困惑する紗季を次のバスに乗せて帰らせました。
同じ頃、東京の試合会場では一真、美緒、亜美子らが見守るなかウィンストンの王座挑戦の試合が始まっていましたが、全盛期を過ぎていたウィンストンは劣勢を強いられていました。その時、ウィンストンは客席に一人の青年(藤原季節)の姿を見つけました。この青年こそが10年前にウィンストンに憧れていた耳の不自由な少年だったのです。青年の姿に勇気をもらったウィンストンでしたが、結果は惜しくも判定負けでした。帰り道、美緒は一真の愚痴を聞きながら歩いていると、偶然にも青年と出くわした亜美子は互いに一目惚れしていました。
その翌日、落胆した和人はファミレスで両親を待っていると、この店でバイトをしている美緒が客に絡まれているのを目撃しました。和人は以前邦彦が自分を助けてくれたように言葉巧みに男を説得、何とかその場を収めました。和人は美緒に「好きです」とだけ言葉をかけて店を飛び出し、そのまま仙台駅前で弾き語りをしている斉藤の歌声に聞き入っていました。そこにバイトを終えた美緒が現れ、二人は笑顔で斉藤の歌を聴いていました。
仕事を終えた佐藤が帰宅すると、そこには紗季が戻ってきており、夕食の支度をしてくれていました。佐藤は戸惑いながらも紗季の作った料理に口をつけると、紗季は「良いですよ」と答えました。驚いた佐藤が何のことかと問うと、紗季は呆れながらも「結婚!」と返しました。喜んだ佐藤は紗季に「末永くよろしくお願いします」と伝え、二人は笑いながら食卓を囲みました。
以上、映画「アイネクライネナハトムジーク」のあらすじと結末でした。
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