映画「銀平町シネマブルース」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
銀平町シネマブルースの紹介：2022年日本映画。『女子高生に殺されたい』『愛なのに』の城定秀夫がメガホンを執り、脚本に『れいこいるか』『神田川のふたり』のいまおかしんじが脚本を手がけ、本作が本格的な主演復帰作となる小出恵介を主演に迎えて製作されたヒューマンドラマです。一文無しのさすらいの男がかつて青春時代を過ごした町に流れ着き、落ちぶれた映画館でアルバイトをすることになるのですが・・・。
監督：城定秀夫 出演者：小出恵介（近藤猛）、吹越満（梶原啓司）、宇野祥平（佐藤伸夫）、藤原さくら（足立エリカ）、日高七海（大崎美久）、中島歩（渡辺健介）、黒田卓也（白川はじめ）、木口健太（那須ヒロシ）、小野莉奈（谷内由里子）、平井亜門（高杉良太郎）、守屋文雄（スクリーンの中の監督）、関町知弘（木村章）、小鷹狩八（川本守）、さとうほなみ（二ノ宮一果）、谷田ラナ（二ノ宮ハル）、加治将樹（桑名陽平）、片岡礼子（高杉弥生）、藤田朋子（桐谷陽子）、浅田美代子（黒田新子）、渡辺裕之（谷口章雄）ほか
この解説記事には映画「銀平町シネマブルース」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
一文無しのさすらいの男・近藤猛はこの銀平町に流れ着きました。近藤は河川敷の公園のベンチで映画のチラシを売りつけてきたホームレスの男・佐藤信夫と知り合いました。大の映画好きである佐藤はチラシの映画について「デビュー作というのは監督の想いのすべてが詰まっている」と語りました。
佐藤はいつの間にか近藤の荷物を持ち逃げしていました。困り果てた近藤のもとに生活保護ブローカーと名乗る黒田新子という女が現れ、近藤を商店街の喫茶店に連れていきました。この喫茶店には佐藤の他にもこの町の映画館「銀平スカラ座」支配人の梶原啓司がいました。佐藤は黒田のアドバイスを受けて生活保護を受けることにしましたが、黒田に不信感を抱いた梶原は近藤をスカラ座に連れ帰りました。
スカラ座ではアルバイトの足立エリカと大崎美久、映写技師の谷口章雄が働いていましたが、給料の支払いも滞るほど経営は行き詰っていました。それでも梶原は映画館の物置部屋を寝場所として貸すからここでバイトしないかと近藤を誘いました。
近藤は早速翌日からスカラ座で働き始めましたが、この日もスカラ座はガラガラでした。閉館後、梶原は近藤、エリカ、美久に観てほしい映画があると言い、「監督残酷物語」という映画の試写会を始めました。この映画は落ちぶれた映画監督と助監督を描いたもので、妻に先立たれた監督が自暴自棄になっていく姿を描いたものでした。この映画を観た近藤はなぜか泣き出して物置小屋に去っていきました。
梶原は以前に近藤をどこかで見かけたことがあると言いますが、近藤が何者かまではわかりませんでした。梶原は近藤はおそらく映画の中の監督と自分自身を重ね合わせたのだろうと推測しました。
スカラ座には売れない俳優の渡辺健介、売れない映画ライターの那須ヒロシ、ミュージシャンでジャズバーのマスター白川はじめ、映画オタクの中学生の川本守といった常連客がいました。彼らはエリカや美久らと共に真剣にスカラ座の存続や今後の展望について語り合っていました。そこで浮上したのが今年開業60周年を迎えるスカラ座の記念イベントでした。
梶原は雀荘で仲間たちと麻雀を打ちながら、元恋人の桐谷陽子に金を貸してほしいと頼むも断られてしまいました。一方、近藤の前に佐藤が現れ、生活保護の申請が通ったと報告してきました。佐藤は近藤と共に酒を飲みながら、もし自分が死んだら遺骨は川に散骨してほしいと頼み、理由についてはいつか広大な海に流れつくだろうからと語りました。
梶原は近藤が不在の間に彼のパソコンの中に動画ファイルがあるのを見つけました。梶原は戻ってきた近藤に勝手にパソコンを見てしまったことを詫び、近藤はかつて映画監督を志していたこと、パソコンのファイルは妻を主役に撮っていた未完成のホラー映画だったことを知りました。しかし、梶原は近藤の話をまともに聞かず、近藤の妻は既に亡くなっており、このことがきっかけで近藤は自暴自棄に陥ったのだと勝手に思い込んでしまいました。
翌日、近藤は公園で佐藤がホームレス仲間と酒を飲んでいるところに遭遇しました。ところが、佐藤は突然咳き込んで体調を崩してしまい、近藤は佐藤を自宅アパートまで連れていきました。佐藤が黒田のNPO法人から提供されたアパートは非常に粗末なものであり、佐藤の生活保護費の半分は黒田にもっていかれるためまともに医者に診てもらうことすらできませんでした。黒田が生活保護受給者を食い物にする悪徳ブローカーであることに気付き、抗議に出向くも冷たくあしらわれてしまいました。
梶原は商店街の仲間や常連客の協力をこぎ着け、スカラ座開業60周年イベントを開催することにしました。梶原はこのイベントの目玉として近藤の未完成の映画を上映することを思いつきました。
近藤は意を決し、映画の完成を目指して編集作業を再開しました。梶原はイベントのPR動画を作ることにし、カメラを前にこの映画は製作途中で主役だった近藤の妻が亡くなり、近藤はその死を受け入れられずにお蔵入りにさせていたと説明していたところ、どこからともなく何と近藤の元妻・一果と娘のハルが現れました。実は死んだのは一果ではなく、近藤の映画の助監督を務めていた高杉良太郎だったのです。
久しぶりに妻子との再会を果たした近藤は再び編集作業に取り掛かりました。近藤は学生時代をこの銀平町で過ごしており、梶原が近藤に見覚えがあったのは近藤がかつてこのスカラ座の常連客だったからでした。
その頃、佐藤は黒田にまんまと騙されて悪事に加担されられていました。実は弁護士資格を持っている梶原は黒田は詐欺罪に問えるのだと佐藤に助け船を出しました。
梶原のもとに「監督残酷物語」のメガホンを執った新人映画監督の谷内由里子が訪れました。地元出身の谷内は監督デビュー作となるこの作品をスカラ座で上映する夢を抱いており、谷内の説得を受けた梶原はイベントの一環として上映することにしました。
谷内は実は近藤のファンでした。新作は作らないのかと問う谷内に、近藤は3年前に高杉が突然自ら命を絶ったことを明かし、その理由も心当たりも今なお全くわからないこと、未だに高杉の死を引きずっていること、映画と向き合えなくなったことを語りました。近藤が谷内の映画を観て涙したのは登場人物の助監督と高杉の姿を重ね合わせてしまったからでした。
改めて過去と向き合う決心をした近藤は編集作業を完遂させ、高杉の母・弥生に会いに行きました。弥生は息子の死の真相はわからないと近藤を慰めました。
そして遂に銀平スカラ座60周年記念イベントの当日となりました。街中の人々はもちろん一果やハル、近藤の旧友・木村章、そして佐藤や弥生もスカラ座を訪れ、大盛況のなかイベントはスタートしました。
谷内の「監督残酷物語」も記念上映として公開され、そして近藤が遂に完成させた新作「はらわた工場の夜」が上映されました。エンドロールの最後には「高杉良太郎に捧ぐ」とクレジットされました。
イベントは大成功に終わりました。人々が帰っていき、近藤は後片付けを始めましたが、佐藤は最前列でスクリーンに手を合わせながら息を引き取っていました。佐藤の葬儀は近藤や梶原、スカラ座スタッフらによって執り行われ、遺骨は遺言通りに川に散骨されました。その夜、近藤は梶原に話があると告げ、梶原は「わかっているよ」とだけ答えました。
それから数日後。スカラ座には近藤の姿はありませんでした。近藤は川沿いをただひたすら歩き、以前のようにエリカと美久、梶原でスタートします。近藤は佐藤の散骨をした川の下流目指してひたすら歩き、そして広い海原へと辿り着きました。近藤は海を眺めながら「よーい、ハイッ」と呟きました。
以上、映画「銀平町シネマブルース」のあらすじと結末でした。
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