映画「ホテルローヤル」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ホテルローヤルの紹介：2020年日本映画。北海道釧路市出身の作家・桜木紫乃が自らの経験を基に執筆し、直木賞を受賞した同名の短編集をネットドラマ『全裸監督』シリーズを手掛けた武正晴監督のメガホンで映画化した作品です。釧路湿原のラブホテルを舞台に、それぞれ問題を抱える経営者家族や従業員、利用客たちの織りなす人間模様を描いていきます。
監督：武正晴 出演者：波瑠（田中雅代）、松山ケンイチ（宮川聡史）、安田顕（田中大吉）、余貴美子（能代ミコ）、原扶貴子（太田和歌子）、夏川結衣（田中るり子）、伊藤沙莉（佐倉まりあ）、岡山天音（野島亮介）、正名僕蔵（本間真一）、内田慈（本間恵）、稲葉友（坂上朝人）、斎藤歩（能代正太郎）、和知龍範（若き日の大吉）、玉田志織（若き日のるり子）、長谷川葉生（聡史の妻）、友近（能代ミコの母）、冨手麻妙（美幸）、丞威（貴史）ほか
この解説記事には映画「ホテルローヤル」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
北海道・釧路湿原。売れないカメラマンの貴史（丞威）と売れないグラビアアイドルの美幸（冨手麻妙）は今では閉鎖されて廃墟と化したラブホテル「ホテルローヤル」の中に立ち入りました。貴史はそこで美幸のヌード写真を撮り始め、欲情した貴史は美幸に抱きつきました―――。
―――時はまだ「ホテルローヤル」が営業していた頃に巻き戻ります。このホテルは田中大吉（安田顕）と妻のるり子（夏川結衣）が経営しており、従業員の能代ミコ（余貴美子）と太田和歌子（原扶貴子）がそこで働いていました。
大学受験に失敗した田中夫妻の娘・雅代（波瑠）は両親を手伝うことにしました。雅代は絵を描くことが趣味で、ホテルの窓から見える釧路湿原の景色を描いていました。そんな雅代は時折ホテルを訪れるアダルトグッズ販売会社の営業員・宮川聡史（松山ケンイチ）にほのかな想いを寄せていました。
るり子は酒屋の年下男性・坂上朝人（稲葉友）と不倫関係にありました。ミコと和歌子はるり子と坂上の関係を知っていました。ミコの夫・正太郎（斎藤歩）は仕事中の事故で足を悪くしており、成人して家を出ていた息子・小次郎が度々仕送りをしてくれていました。
ところが、たまたま従業員控室でテレビのニュースを見ていたミコは強い衝撃を受けました。何と小次郎は暴力団員となっており、死体遺棄容疑で逮捕されたのです。
ミコはその後気丈に働いていましたが、夜になってホテルに正太郎が訪れ、ミコがまだ帰ってきていないと告げました。大吉たちはホテルの周囲を捜索しました。
その頃、ミコは幼き日のことを思い出していました。ミコの母（友近）は働き者であり、ミコに「何があっても働け。聞きたくないことには耳を塞いで、毎日笑って働け」と教えていました。母はよくミコに「この道」を歌って聴かせていました。
やがてミコは正太郎に発見されました。正太郎は深い訳は訊かず、ミコを背負って引き上げていきました。二人を見送ったるり子は、雅代に「稼ぎがあろうがなかろうが、自分を一途に愛してくれる人を見つけなさい」と告げました。
翌日。るり子は坂上と一緒に駆け落ちしました。大吉は雅代に、これからは父娘二人でホテルを守っていくことを伝えました。雅代は幼少期にラブホの娘ということでいじめを受けており、長年のトラウマとなっていましたが、黙々と働く大吉の姿を見てこのホテルを守ることを決意しました。
季節は夏になり、雅代はすっかりホテルの女将としての働きが板についていました。ホテルの地下にあるボイラー室は普段は雅代たちの休憩場所であり、客室と繋がっているパイプを通じて客の会話が筒抜けに聞こえるようになっていました。雅代たちは休憩がてら利用客の会話を盗み聞きするのが愉しみになっていました。
ある日、ホテルに本間真一（正名僕蔵）と恵（内田慈）の夫妻が客としてやってきました。夫妻の応対をしていた雅代の前に聡史が訪れ、雅代は胸をときめかせましたが、聡史は既に別の女性（長谷川葉生）と結婚しており、雅代は強いショックを受けました。
本間夫妻は泡風呂につかりながら会話をしていました。恵は子育てと母の介護で多忙な毎日を送っており、精神的に参っていました。ようやく二人きりの時間が持てた夫妻は風呂で、そしてベッドで愛し合いました。
恵はパートで金を貯めたらまたここに来ようと真一に告げ、夫婦はチェックアウトぎりぎりまで過ごして去っていきました。雅代たちにとって夫妻のやりとりは心に染み入るものでした。
ある雨の日、ホテルに高校教師の野島亮介（岡山天音）と教え子の佐倉まりあ（伊藤沙莉）がやってきました。まりあは興味津々でホテルの内部を探索して回り、間違って火災報知器を鳴らす騒ぎを起こしてしまいました。
まりあは母が浮気相手と蒸発し、父も失踪して住む家を失い、チンピラにナンパされそうになったところを野島に助けられたのです。野島も同じ教師の妻が校長と不倫関係にあり、そのことを知って苦悩していたのです。
この頃になると大吉も病気がちですっかり弱っており、雅代が事実上ホテルを仕切っていました。そんな雅代の元に同窓会の案内が届き、雅代は昔を懐かしむかのように古いアルバムを開きました。そこには若き日の大吉（和知龍範）とるり子（玉田志織）、ミコと和歌子、そして産まれたばかりの雅代の写真がありました。
その後、釧路の街に買い出しに出かけた雅代は八百屋を継いだ同級生と再会しました。その際、雅代は聡史が妻と一緒にいるところを目撃してしまいました。
ホテルに戻った雅代でしたが、野島とまりあはチェックアウトの時間を過ぎても部屋から出てきません。雅代が様子を見に行くと、野島とまりあは部屋のベットに横になったまま死亡していました。野島とまりあの心中はテレビニュースに報じられ、ホテルにはマスコミが殺到しました。
マスコミを追い払おうとした大吉は発作を起こして倒れてしまいました。たまたま居合わせた聡史がアダルトグッズをカメラの前に見せつけてマスコミを追い払い、その間に大吉は救急車で搬送されていきました。雅代は二人の心中を止められなかったことを悔やみましたが、聡史は雅代のせいではないと慰めました。
大吉はかなり弱っており、余命幾ばくもありませんでした。見舞いに来た雅代に大吉は絵を描いてるのかと聞き、雅代がうなずくと「やっぱり俺の子だ」と呟きました。それから程なくして大吉は息を引き取りました。
季節は春を迎えていました。雅代はホテルを畳む決心をし、後片づけを始めました。そこに聡史がアダルトグッズの在庫を引き取りに訪れ、雅代は聡史を心中事件の現場となった部屋に案内しました。
雅代はこのホテルは客にとっては非日常だったものの自分にとっては日常そのものだったと語り、聡史に抱いてほしいと頼みました。聡史も雅代の想いを受け止め、二人はベッドで愛し合いました。こうして聡史への想いに踏ん切りをつけた雅代は描きかけの絵とアルバムを持ってホテルを後にしました―――。
―――物語は雅代がまだるり子のお腹にいた頃にさかのぼります。若き日の大吉は別の女性と結婚していましたが折り合いが悪く、行きつけの店で働いていたるり子と不倫関係にありました。
やがてるり子が大吉との子である雅代を身籠り、大吉は自分が責任をもって面倒を見ると約束しました。大吉は安産祈願のためデパートに果物を買いに行き、果物の箱についていたシールに「ローヤル」と書かれていたことに着想を得、釧路湿原に自分たちのホテルを建てる構想を立ち上げました。アルバムの両親たちの写真はホテルが開業した頃に撮ったものでした―――。
―――雅代は釧路の街へと車を走らせました。両親が出逢った店も、大吉が果物を買ったデパートも既に閉店していました。同級生の八百屋で果物を買った雅代は、果物に「ローヤル」と書かれたシールが貼ってあるのを見て微笑みました。雅代は思い出の詰まった釧路を後にしました。
以上、映画「ホテルローヤル」のあらすじと結末でした。
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