生きたいの紹介:1999年日本映画。躁うつ病の中年娘を抱え、自身も体の衰えに悩む老人山本安吉は民話「姨捨山」の虜になり、迫りくる死について考え始める。「姨捨山」と現代の日本社会を交差させながら老いの問題に深く切り込んでいく人間ドラマです。
監督:新藤兼人 出演者:三國連太郎(山本安吉)、大竹しのぶ(山本徳子)、大谷直子(ママさん)、吉田日出子(オコマ)、宮崎美子(トモコ)、柄本明(君塚長太郎)、津川雅彦(烏丸長者)ほか
映画「生きたい」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「生きたい」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
生きたいの予告編 動画
映画「生きたい」解説
この解説記事には映画「生きたい」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
生きたいのネタバレあらすじ:起
長野県の姨捨駅に降り立った老人山本安吉は眼前に広がる姨捨山を見て恐怖にとらわれます。東京に帰ってきた安吉は馴染みのスナック「ペペルモコ」に立ち寄り、古くから伝わる民話「姨捨山」についてママさんに語って聞かせますが、便失禁をしてしまい、店を追い出されます。安吉は妻に先立たれてからというものママさんに入れあげてきましたが、ママさんは手のかかる老人でしかない安吉が鬱陶しくてたまりません。そのまま路上で眠り込んでしまった安吉は自転車に乗っていた医師長太郎に轢かれてしまい、病院へと担ぎ込まれます。
呼び出された安吉の長女・徳子は父をしばらく預かってもらえないだろうかと長太郎に頼みます。安吉は躁うつ病を患う長女・徳子からも煙たがられていました。しかし病院は入院患者であふれており、安吉は入院を拒否されてしまいます。家に戻ってきた安吉は病院から拝借してきた民話本「姨捨山」を夢中で読み始めます。
生きたいのネタバレあらすじ:承
それは遠き昔の姨捨。谷には13軒ばかりの家がありました。ある時村の男が死に、家には男の妻オキチが残されました。村の掟で後家となった女の引き受け先はくじ引きで決めることになっており、その結果オキチを引き当てたのが老女オコマでした。オキチを従えて帰ってきたオコマは長男クマにお前の嫁だとオキチを紹介します。こうしてクマとオキチはめでたく夫婦になりましたが、面白くないのは次男のウシです。毎晩のようにクマとオキチの夜の営みを見せつけられ、羨ましさから苛立ちを募らせる日々が続いていきます。
オコマはウシに申し訳なさを感じながらもオキチが嫁に来てくれたことでようやく肩の荷が下りたような心持になっていました。オコマは今年70歳。村の掟で12月にはお山入りすることが決まっています。お山へ履いていく草履作りやオコマが乗る背負子の準備が着々と進められていきます。お山入りの日が迫ってくると、心優しきクマはおっかあといつまでも一緒に暮らしたいと泣き始めます。オコマは死んで魂となった後もクマ達のことを守り続けるぞと優しく語りかけます。
生きたいのネタバレあらすじ:転
安吉はママさんのもとに通い続けますが、冷たくあしらわれます。ある日離れて暮らす次女の幸子が家に帰ってきますが、安吉は寝たまま失禁をしてしまい、徳子を激怒させます。徳子は安吉を無理やり風呂場に放り込みますが、安吉は浴室で倒れて、再び倒れ病院に担ぎ込まれます。病院には安吉の長男の輝男と婚約者が見舞いにやって来ますが、失禁が怖いので結婚式には参加しなくていいと言い渡されてしまいます。見かねた長太郎は知り合いに特別養護老人ホームの所長をしている者がいるので、安吉をそこに入れてはどうかと徳子に提案します。
父親が邪魔でしょうがない徳子はこの提案に同意しますが、安吉は自分を現代の姨捨山に捨てるのかと駄々をこね始めます。安吉は徳子がこの先一人で生きていけるのか心配でもありました。徳子が可愛くて仕方ない安吉は無邪気に寝ている徳子の寝床に入り込み、徳子の逆鱗に触れてしまいます。安吉は老人ホームへ行く覚悟を決めました。安吉はシルクハットにタキシードという珍妙な出で立ちで老人ホームに入居します。父を預けさっぱりしたはずの徳子でしたが、心は塞ぎ、うつ状態に陥ってしまいます。徳子は友人のトモコから本当は安吉がいなくて寂しいのではないかと言われ、黙り込んでしまうのでした。
生きたいの結末
とうとうオコマのお山入りの日がやってきました。オコマを背負ったクマは深い谷に沿って歩みを進め、死の谷を目指します。一方留守を任されたウシは欲望を抑えられなくなり、一度だけでいいので抱かせてもらないだろうかとオキチに懇願します。妊娠中のオキチは無事に子供を産んだ後ならばクマと相談の上抱かせてあげてもよいと告げます。ウシは飛び上がって喜びました。谷を渡り、峰を超え、オキチとクマはいよいよ死の谷にやってきました。辺りには人の死肉を食らうというカラス達が群がり、不気味な鳴き声を上げています。オコマはクマの背中から降りると岩の上に正座し、念仏を唱え始めました。恐ろしくなったクマは一緒に帰ろうとオコマに懇願しますが、オコマは動こうとはしません。そして来る道々の木の枝を折ってきたから、その枝を伝って早く家に帰るよう促します。クマは泣きながら山を下りていきます。雪の中で念仏を唱え続けるオコマの姿は神々しくさえありました。
徳子は老人ホームに乗り込み、安吉に家へ帰ろうと迫ります。安吉は自分は捨てられたのだから帰らないと意地を張りますが、安吉がいないと寂しくて仕方ないのだという徳子の言葉にほだされ、老人ホームを後にします。安吉は徳子を背負って夜の道を降りていきます。春になるとオキチは元気な赤ん坊を生みました。昼寝をしている安吉の周りをカラスが取り囲んでいます。徳子は何かに取り憑かれたかのように猟銃で次々とカラス達を撃ち殺していくのでした。
以上、映画「生きたい」のあらすじと結末でした。
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