きまじめ楽隊のぼんやり戦争の紹介:2020年日本映画。朝9時から夕方5時まで毎日規則正しく戦争している二つの町を舞台に、音楽隊への異動を命じられた真面目な兵士の顛末を周囲の一風変わった人々も交えてシュールに描いたヒューマンドラマです。第21回東京フィルメックスで審査員特別賞を受賞、第50回ロッテルダム国際映画祭ハーバー部門の正式出品作品となっています。
監督:池田暁 出演者:前原滉(露木)、今野浩喜(藤間)、中島広稀(三戸)、清水尚弥(平一)、橋本マナミ(春子)、矢部太郎(仁科)、片桐はいり(城子)、嶋田久作(板橋)、きたろう(伊達)、竹中直人(大木)、石橋蓮司(夏目)ほか
映画「きまじめ楽隊のぼんやり戦争」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「きまじめ楽隊のぼんやり戦争」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
きまじめ楽隊のぼんやり戦争の予告編 動画
映画「きまじめ楽隊のぼんやり戦争」解説
この解説記事には映画「きまじめ楽隊のぼんやり戦争」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
きまじめ楽隊のぼんやり戦争のネタバレあらすじ:起
ここはとある国の津平町という町。津平町は町の境である一本の川を挟んだ対岸の隣町と毎日朝9時から夕方5時までの間、規則正しく戦争をしていました。なぜ戦争をしているのか知る者はなく、津平町の人々は隣町のことについては詳しくは知りませんでした。
朝6時。津平町にどこからともなく見知らぬ音楽隊の奏でる音楽が聞こえてきました。この町で一人暮らしをしている真面目な兵士・露木(前原滉)は毎朝の身支度を済ませると出勤の途につき、途中で同僚の藤間(今野浩喜)と合流しました。
露木は毎日行きつけの煮物屋で夕食の煮物を買うのが日課になっていました。露木は出勤途中で煮物屋の主人・板橋(嶋田久作)に弁当箱を渡し、そして職場である茶色いレンガ造りの兵舎に到着しました。
津平町の町長・夏目(石橋蓮司)は朝礼で今日もみんなで頑張って隣町と戦争をしようと声高らかに演説し、この町に新しい部隊が新兵器を持ってやってくるとの噂があることを伝えました。露木ら兵士たちは淡々と気怠だるそうにラジオ体操を行い、持ち場である川の下流に前進すると、定刻の朝9時になると川の向こう側へ銃撃を開始しました。
露木は昼休みになると、藤間と共に町の定食屋へ昼食を食べに繰り出しました。定食屋の女主人・城子(片桐はいり)は毎日のように露木たちに戦況はどうなのか尋ね、自分の息子は出世しようと上流の激戦地で戦っているので露木たちも頑張れと激励してくれました。
そして夕方5時になるとこの日の戦争は終了となり、露木は兵舎を後にすると煮物を受け取りに煮物屋に立ち寄りました。この日はどうやら店は泥棒の被害に遭ったようで、板橋の機嫌はすこぶる悪いものでした。帰宅した露木は煮物を食べてからいつもの時間に眠りにつきました。こうして津平町の何も変わりのない毎日は過ぎ去っていきました。
きまじめ楽隊のぼんやり戦争のネタバレあらすじ:承
翌朝。いつものように兵舎へ向けて出発した露木は、途中でどこか頼りなさげな技術者の仁科(矢部太郎)という男に道を尋ねられました。仁科はどうやらこの町に転属になったようでしたが、兵舎の不愛想な受付嬢・志村(よこえとも子)は兵隊以外は通してはいけないと突っぱねてしまいました。
露木はいつものように持ち場で戦闘し、いつものように藤間と共に城子の定食屋で昼食をとりました。ところが、露木と藤間の会話の中で向こう岸の隣町の名「太原町」が飛び出した瞬間、城子は態度を急変させて「その町の名前は口にしてはいけないよ」と告げてきました。
その後、城子はいつものように息子の自慢話をするのですが、今まで敵の正体などロクに知らず、激戦地にすら行ったことのない露木たちにとっては、自分たちは戦争をしているという実感が全くないのでした。
夕方5時になり、この日の戦争が終わりました。兵舎の外では露木たちの上司・川尻(木村知貴)の妻・春子(橋本マナミ)が主人が出てくるのを待っていました。ところが、川尻の目は春子よりも別の女性・の方を向いていました。
時を同じくして、煮物屋の板橋の妻が二人組の煮物泥棒をとっ捕まえていました。板橋の妻はこの二人の若者、三戸(中島広稀)と平一(清水尚弥)を夏目と警官に突き出したのですが、実は平一は夏目の息子であり、夏目は平一が泥棒を捕まえたのだと勘違いして褒め称えてしまいました。警察には三戸だけが連行されていきました。
その翌日、前日捕まったはずの三戸が新入り兵士として入隊してきました。この日もいつものように戦闘が始まり、三戸は銃を撃つ露木に自分たちは一体何と戦っているかと尋ねてきましたか、それは露木たちもわからないことでした。その時、目の前を飛ぶ一匹の青い蝶々に見とれた藤間が右腕を撃たれ、衛生兵たちに抱えられて離脱しました。露木と三戸はその様子を黙って見ていました。
この日の昼、いつもの定食屋で三戸は城子にはばかることなく、なぜ津平町と太原町は戦争をしているのか、この戦争はいつからなのか、太原町って一体どんな連中なのかと疑問を口にしました。すると城子は、戦争は自分たちが生まれる以前からずっと続いているものであり、戦争の理由も敵の素性も知らないと答えました。
きまじめ楽隊のぼんやり戦争のネタバレあらすじ:転
露木は突然、川尻から音楽隊への転属を言い渡されました。人員に欠員が生じたとのことで、かつてはトランペットを嗜んでいたもののしばらく音楽をやっていなかった露木は戸惑いを隠せませんでした。
川尻は子宝に恵まれなかったこと理由に春子に一方的に離縁を突き付けており、昨日知り合ったばかりの女を後妻に迎え入れていました。川尻だけではなく夏目までもが子供を埋めない春子をこき下ろし、何も聞かされていなかった春子は驚くしかありませんでした。
警官になった平一は堂々と煮物屋でに盗み食いを続けていました。板橋夫婦は三戸から平一の苦手なものはちくわだと聞いき、翌日から店を「ちくわ屋」としてリニューアルすることに決めました。
帰宅した露木はすっかり埃をかぶっていたトランペットを引っ張り出しました。翌日、露木は志村に音楽隊の場所を尋ねてみましたが、志村は兵隊に関すること以外は知らないときっぱり言い捨てました。露木は散々音楽隊の場所を探し回ったあげく、物知りやの板橋に訊いてみました。
翌日、出勤中の露木の前に右腕を失った藤間が現れました。藤間は自分は兵隊しかできないのでもういちど兵士として働けないか志村に問い合わせましたが、志村は散々無理難題を藤間に押し付けたあげく、藤間はもう兵士としては使い物にならないと突っぱねました。途方に暮れた藤間は川尻に捨てられた春子と知り合い、やがて互いの心の傷を埋め合うかのように交際を始めました。
その頃、露木は軍需工場らしきところに足を踏み入れていました。そこには仁科の姿もあり、どうやら夏目が太原町に対抗して作り上げた新兵器を隠している様子でした。露木はこの工場にいた憲兵にスパイと間違われて尻を蹴られました。
その後、露木は工場の近くにようやく音楽隊の兵舎を見つけました。音楽隊は冴えない指揮者の伊達(きたろう)を始めとして男女4人、誰もが新入りの露木を歓迎してくれました。それからというもの、露木は毎朝、トランペットを吹きながら楽団員たちと共に街中を練り歩く日々を送るようになりました。
そんなある日、露木はいつも戦争をしている河原から聴いたこともない美しいトランペットの音色を聴きました。軍歌しか聴いたことのない露木にとってこの曲「美しく青きドナウ」はとても新鮮なものであり、その日を境に露木は毎日のように河原に行っては「ドナウ」を覚えようと必死になっていました。
きまじめ楽隊のぼんやり戦争の結末
そんなある日、露木はいつものように夕暮れの河原でトランペットを吹いていると、川の対岸の草むらからオレンジ色のワンピースを着た一人の女性が現れました。トランペットの主はどうやらこの女性のようでした。露木が太原町の人間を見たのはこれが初めてでした。
そんな時、三戸が意を決し、川を泳いで渡り初めて太原町の様子を見て帰ってきました。三戸は露木に、太原町の人々は自分たちと全く同じ普通の人々であることを告げました。やがて露木は対岸の女性とトランペットを通じて少しずつ心を通わせ合っていました。しかし、そんなことも知らぬ夏目は着々と新兵器の準備を進めていました。
藤間と結婚した春子は、働けない夫の代わりに稼ぐべく城子の定食屋で働き始めました。そんなある日、城子の息子が戦死したとの知らせが舞い込んできました。気が動転してしまった城子は店に食べに来た露木に、「息子とご飯を食べてあげて」とテーブルに息子の骨壺を置きました。
そして遂に新兵器お披露目の日が来ました。露木ら音楽隊はセレモニーの盛り上げ役に抜擢され、夏目や仁科、尻を蹴る憲兵らが出席しました。一方、藤間は自分の子を身籠った春子を連れ、セレモニーが始まる前の朝早くにひっそりと町を離れていました。露木は静かに「気を付けて」と二人を見送りました。一方、川尻の後妻には未だに妊娠の兆候すらありませんでした。
新兵器とは大きな大砲でした。朝9時、津平町側は太原町に向けて大砲を撃ちました。次の瞬間、けたたましい轟音と巨大な火柱と共に太原町は業火に包まれていきました。その日の夕方、露木はひっそりと除隊する決意を固めました。三戸は太原町の様子を確かめるため川を泳いで渡っていきました。
露木は川で、打ち捨てられた女性のものらしきトランペットを見つけました。露木は一人「美しく青いドナウ」を奏で始めました。その直後、太原町は津平町のものと同じ大砲で報復攻撃を仕掛けてきました。露木は炎に包まれた津平町を見て、ただ呆然と立ち尽くしていました。
以上、映画「きまじめ楽隊のぼんやり戦争」のあらすじと結末でした。
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