きみはいい子の紹介:2014年日本映画。中脇初枝の短編集の映画化作品で、新米教師や母親、老人たちの視点を通じて「児童虐待」や「いじめ」などという社会問題を見つめ直すヒューマンドラマです。
監督:呉美保 出演者:高良健吾(岡野匡)、尾野真千子(水木雅美)、池脇千鶴(大宮陽子)、高橋和也(大宮拓也)、喜多道枝(佐々木あきこ)ほか
映画「きみはいい子」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「きみはいい子」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
きみはいい子の予告編 動画
映画「きみはいい子」解説
この解説記事には映画「きみはいい子」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
きみはいい子のネタバレあらすじ:岡野匡の話
新米の小学校教師・岡野匡(高良健吾)は真面目ですが優柔不断で、上手く児童たちと向き合えず、何か問題があっても目を背けてばかりで、児童たちからも信頼されてないのが悩みです。
ある日、クラスの男子生徒が授業中にお漏らしをしてしまいます。クラス中がパニックとなり、匡は急いで床をモップで拭いて掃除します。その後、男子生徒の母親から電話があり、「息子が漏らしたのは、先生のせいだ」と言われてしまいました。「トイレに行きたくても、先生が怒っていて怖くて言い出せなかった」と言われ、困惑する匡。匡は必死に説明しようとしますが、母親から匡では話にならないと言われてしまい、電話は学年主任が変わることとなりました。「まだ一年目なのだから気にするな」とベテラン教師からは励まされた匡。夜になり恋人の部屋を訪れた匡ですが、彼女は仕事が忙しく、匡が話しても全く聞いていません。
翌日、匡は「授業中にトイレに行きたければ、いつでも行っていいよ。」と言ったせいで、子供たちは遊び半分でトイレに行くようになり、授業が成り立たなくなります。そして以前にお漏らしした男子生徒が茶化されたことで怒りを爆発させ、怒ってランドセルを投げるなど問題が起きてしまいました。その間にもクラスの女子生徒を名指しをして「キモイ」と書かれた手紙が見つかるなど、問題が山済みです。
そんな時、匡は給食費を滞納しているクラスの男子生徒・神田雄太が、いつも放課後になると一人残って校庭の隅いることに気が付きます。神田をラーメン店へ連れて行き、家のことをたずねる匡。母親は看護師として働いているのであまり家におらず、代わりに母親の彼氏がいつも家にいると話します。
その彼のことを「お父さん」と呼ぶように言われている神田。「お父さんは働いていない」と話し、食事もろくに与えてもらっていないことが判明。後日、土砂降りの中でも家に帰らずに校庭の隅にいる神田に、匡は声をかけます。「5時までは帰ってくるなとお父さんに言われている」と言う神田を匡は自宅まで送っていきます。神田の家は古い木造アパートで、母親の彼氏が不機嫌そうに家の前に立っていました。「5時まで帰ってくるなと言うのはどうか…」など匡が問うと、彼が怒り出し掴みかかられます。
翌日、育児放棄を疑った匡は神田を保健室に連れていき、複数の先生の前で事実を暴こうとしますが、神田本人は彼を恐れてか「叩かれたことはないか?」と聞かれても認めようとはしません。先生たちが叩かれたことがないか再度聞き、匡は神田の体にアザなどが無いか服をまくり上げようとしたところ、ほかの先生に止められます。結局、面倒ごとを避けたい学校側によって、虐待や育児放棄を解明することはできませんでした。保健室を出て後、「ごめん」と謝る匡。
教室に戻ると別の問題が起きており、女子生徒の清水が帰ったことを知ります。母親に電話をすると、「娘が学校でいじめられている」と言われ、そのことは以前に手紙を見て知っていたにもかかわらず、何もしなかった自分に落ち込む匡。その夜、偶然彼女が知らない男性と親し気にしているのを見て、匡は自信喪失して家に帰ります。家に帰ると姉と姉の子供が遊びに来ていました。
落ち込む匡を見て、「頑張って」と抱きしめる子ども。姉から「自分が子供へ優しくすると、子供は他人へ優しくできる。だから母親の存在は、すごいんだよ!」と言われて、深く納得した匡。
その翌日、匡は宿題として家族の誰かから抱きしめてもらうよう生徒たちに伝えます。それを聞いた神田は顔を暗くし、帰っていきました。翌日に宿題をしてきたか尋ねると、子供たちはみんな笑顔で頷きます。自分なりに少しずつ児童たちと向き合うようになった匡。その日、学校に来なかった神田の家に匡は走って向かいます。家のドアをノックしますが、誰かがいる様子はありませんでした。
きみはいい子のネタバレあらすじ:水木雅美の話
夫が海外に単身赴任中の主婦・水木雅美(尾野真千子)は、3歳の娘・あやね(三宅希空)と留守を守っています。同じマンションのママ友と日中は公園へ行き、おしゃべりを楽しむ雅美。ママ友の中でも明るく気さくな大宮陽子(池脇千鶴)と仲がよくなり、ある時一緒にマンションまで帰ることになりました。その時にあやねが、陽子の押しているベビーカーを代わりに押したいと言い出します。
陽子はあやねに「マンションまで押してくれる?」と頼み、あやねは慎重に押して歩くのですが、陽子の息子が突然「自分も押したい!」と言い出し、ベビーカーが倒れそうになりました。陽子は自分の息子を責めますが、雅美はあやねが謝らないことに腹を立て、自宅に帰ったとたんあやねを叩いて叱ります。
しかしその叱り方は異常で、虐待そのものでした。実は過去に虐待を受けた経験を持つ雅美。すぐに娘にも手をあげてしまう日々で、手をあげた後は自責の念に駆られて、雅美は一人閉じこもり後悔して泣くのでした。
ある休日、公園で遊ばせていると陽子もやって来ます。陽子の夫は小学校の教師をしていることを知る雅美。その後レストランへ行き家に帰る途中、あやねの靴の底がはがれてしまいます。陽子は「接着剤が家にあるので、直してあげる」と言い、後日陽子の自宅へ行くことになりました。その時にあやねは遊んでいて、ティーカップを割ってしまいます。
あやねが必死で頭をかばいながら「ごめんなさい」と怯えるのを見た陽子は全てを悟り、思わず雅美を抱きしめました。そして自らも虐待された過去があったことを雅美に打ち明ける陽子。陽子は両親から虐待され、その時に近所に住んでいた老女だけが心のよりどころだったことを話します。雅美は自分の心の傷を理解してくれた陽子の前で涙にくれ、その後は雅美のあやねに対する気持ちは少しずつ良い方向に変化していくのでした。
きみはいい子のネタバレあらすじ:佐々木あきこの話
学校の近くにある古い家に独り暮らしの老人・佐々木あきこ(喜多道枝)は、認知症がありますが本人は気付いていません。彼女はスーパーで商品を買い物袋に入れたまま、会計をせず店を出ようとしたところを店員の櫻井(富田靖子)に見つかってしまいます。
そんなある日、いつも自宅前を通る自閉症の男の子が、家の鍵が無いと困っていました。あきこはその子に声をかけ、自宅に招き入れてお茶を飲ませてあげました。一緒にお手玉をして遊ぶなどしていると、そこへ母親が迎えに来ます。その母親とは、先日スーパーであきこに声をかけた櫻井でした。
あきこは櫻井の子供はいつも挨拶をしてくれること、きちんと片づけをして礼儀だたしく、とても良い子だと伝えました。すると櫻井は涙を流し、「いつも誰かに謝ってばかりだから、褒められたことなんてなくて…」と喜びました。あきこには子供がおらず、両親も弟も亡くして天涯孤独でした。そんな時に子供と一緒にいられてうれしそうなあきこ。
その日以来、あきこは櫻井親子と交流を持つようになり、孤独な日々がぬくもりのある日々に変わっていきました。
以上、映画「きみはいい子」のあらすじと結末でした。
「きみはいい子」感想・レビュー
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私も教師なので、身につまされる思いで、見てました。30年あまりの教職を辞しても、この作品に指摘されるようなこと、解決せずにうやむやに終わったことなど、いろいろと思い出し、自責の念にとらわれております。実際ここで取り上げられた問題全てが、あまりにも現実的で、私の学校でも日常的な事態でした。新米教員が主人公の様ですが、新米に限らず、対処に困る問題が取り上げられており、自分ならどうするか問われているような気がして見入ってしまいました。小学校でも、高校でも変わらないけど小学校の教員は、自分にはできないと思いました。
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「自分が子供へ優しくすると、子供は他人へ優しくできる。だから母親の存在は、すごいんだよ!」
そんな単純だろうか
簡単に他人を嘲る子供たち、集団による悪意の増幅、反省ないままの成長、教育者の権威失墜・・・これが現存する世の中と理解しつつも、底なしの怖ろしさしか感じることができなかった。
褒められ、甘やかされるのみで、注意されることも叱られることもなく育つ子供たちが体のみ成長してどういう大人になるのか
道徳とはなにか、正しい躾とはどういうものか、しっかり社会全体で考え具体的な施策を講じていく必要性を強く感じる
いじめや虐待にの問題に迫る素晴らしい映画だと思います。「抱擁」と「大丈夫」の言葉かけの大切さも伝わってきました。青年教師役の高良健吾さんはじめ出演者の演技にも感嘆しました。ただ、教師の匠が神田君のアパートまで駆け付ける場面で、匠の心の中には何があったのでしょうか、私には読めませんでした。さらに、ドアをノックしても返事がなかったことは何を暗示しているのでしょうか?