奇跡のリンゴの紹介:2013年日本映画。絶対不可能と言われたリンゴの無農薬栽培に成功した青森のリンゴ農家・木村秋則の実話を映画化した作品です。2013年5月25日、イタリア・フィレンツェで開催されたフィレンツェ映画祭で、同映画祭唯一の観客賞を受賞しました。全国305スクリーンで公開され、2013年6月8、9日の初日2日間で、観客動員数ランキングで初登場第3位となった映画です。
監督:中村義洋 出演:阿部サダヲ(木村秋則)、菅野美穂(木村美栄子)、池内博之(もっちゃん)、笹野高史(深津)、伊武雅刀(三上幸造)、畠山紬(雛子)、山崎努(木村征治)、ほか
映画「奇跡のリンゴ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「奇跡のリンゴ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「奇跡のリンゴ」解説
この解説記事には映画「奇跡のリンゴ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
奇跡のリンゴのネタバレあらすじ1
昔、昔、野生のリンゴはただの木の実でした。人間はそれを長い年月をかけて、甘く食べられるようにしました。それが日本に来たのは今から約100年前で、全国で栽培が行われました。しかし、その栽培は難しく、農家は次々と止めていきました。そんな中でも、青森県だけがリンゴの栽培を止めませんでした。これが津軽魂です。
1949年、三上秋則は青森県津軽の三上家の次男として生まれました。彼は幼い頃から、何でもかんでも分解してその構造を知らずにはいられませんでした。成長してもその性格は変わらず、友人のバイクを分解、改造したり、エレキギターのアンプを改造して爆発してしまうなどの失敗をしていました。そんな秋則を父・幸造は叱ります。しかし、秋則の母・葺子は「諦めるな。ひとつ失敗したら、ひとつ常識を知ればいい。百も千も失敗して、人は答えを見つけるものだ」と彼を励ましました。ある日、秋則は「笑うことは人間だけが持つ性能だ」と言います。それを聞いていた同級生の木村美栄子は、彼をバカだと笑いました。
高校を卒業した秋則は、父に内緒で東京の電器メーカーに就職します。秋則の仕事は原価管理でしたが、彼には適職でした。ある日、秋則は実家から「スグ、カエレ」の電報を受け、帰省します。すると、両親は秋則にお見合いを奨めます。相手はリンゴ農家で気が進まない秋則でしたが、その相手はあの木村美栄子でした。秋則は美栄子に「心は分解もできない。その答えを一緒に探さないか」と求婚し、大雪の日に結婚式を挙げます。式では突然、停電で真っ暗になりました。秋則は「光れば同じでしょう」と仏壇の蝋燭を持って来ました。参加者も持ってきて、「日本初のキャンドルサービス」と笑い、結婚式は終わります。秋則は木村家の養子になり、リンゴ農家を継ぎます。
奇跡のリンゴのネタバレあらすじ2
春、リンゴ畑は農薬散布で真っ白くなります。農薬散布は年十数回、「安全なリンゴを作る」ことと「安全にリンゴを作る」ことは違いました。農薬に過敏な妻・美江子は散布の度に、体調を壊し、1か月も寝込むこともありました。義父の木村征治はこれもリンゴ農家の運命と諦めていましたが、秋則は美江子の体を治すために、農家の青年たちを集めて「農薬について考える青年会」を立ち上げます。その会の青年たちは、減農薬や堆肥づくりの研究を繰り返しました。秋則は計算し、減農でリンゴが病気等の被害があっても、減農薬の費用と比べれば収支はプラスになると算出します。ある日、秋則と美江子の間に長女・雛子が産まれました。秋則は育児の勉強をしようと本屋に行きますが、そこで別の本も落としてしまい、買うはめになりました。その本は『自然農法・農薬も肥料も何も使わない農業』という本でした。彼は夢中になり一晩で読んでしまい、「これだ!」と気がつきます。早速、秋則は義父に4つの畑の1つで無農薬栽培をしたいとお願いします。義父はそれを了承します。
秋則は無農薬に挑戦しますが、他の青年たちはもう当初の意気込みはありませんでした。「農薬について考える青年会」への参加者も減り、最後は幼馴染みのもっちゃんだけになりました。秋則の無農薬農園は最初3か月は順調でしたが、その後は病気にかかり、失敗してしまいます。それでも秋則は「リンゴはおもしろい」と諦めません。2年目、秋則は、農薬の代わりにワサビやら人間の口に入るものを散布して樹を守ればいいと考え、挑戦します。しかし、失敗します。早く結果を出すには、もっと多くの樹が必要で、秋則は覚悟が足りなかったと言い、義父にお願いします。組合の集会で、義父は「うちは4つの畑全部で無農薬栽培します」と宣言します。その夜、驚く秋則に、義父は戦時中の話をします。それは、ジャングルの奥地で、食べ物もないときに、何もできないと思った荒地を畑にしたら、大きなナスができたという話でした。義父は秋則に無農薬栽培は「戦地に行く覚悟だぞ」と諭します。
奇跡のリンゴのネタバレあらすじ3
無農薬3、4年目、秋則は失敗をしながらも、実験を重ねます。秋則と美江子の間には、次女、三女が産まれ、それも秋則の励みになっていました。
無農薬5年目、全てのリンゴ畑は病気と夥しい数の害虫の天国と変貌しました。隣りの畑からも苦情がきて、秋則、妻、義父の3人で害虫を捕りますが、追いつきません。秋則の実家の両親が謝罪金をもってきましたが、義父は「秋則は私の息子。息子の責任は私にある」と言い、受け取りませんでした。義父は、深津から「今、木村さんのやってることは、既にやってきたことだ」と指摘されます。義父は「迷惑があったら、農薬をまきます。それまで見過ごしてくれ」と頼みます。義父は自分の貯金を全額引き出し、秋則を支援します。
無農薬6年目、収入はゼロ、バイク、車も売り、2時間歩いて畑に行く生活になりました。秋則は、財産を食いつぶす「竈消し」呼ばれます。いつの間にか、村八分状態になりました。秋則は誰にも会わないように、日が昇る前に家を出て、日が落ちてから家に帰る生活をしていました。
無農薬7年目、秋則はもっちゃんと口論となり、「俺が諦めることは人類が諦めることだ」と言いました。するともっちゃんは、雛子が彼の娘にもらった消しゴムを妹たちのために3つに切り分けた話をし、秋則の執着は「ただの自己満足だ」と言い、決別します。秋則は笑いを「無駄な性能」と言い、笑わなくなっていました。秋則は実家の父・幸造に借金をお願いしますが、無農薬栽培を止めろと言われます。また、唯一の理解者の母からも「諦めることを教えなかった私の責任。ただ、美江子や子供は巻き添えにするな」と追い返されてしまいます。その冬、秋則は東京に出稼ぎに行き、警備員をし公園で寝泊まりします。そこを、不良たちに襲われ、お金を奪われてしまいます。
無農薬8年目、税金の滞納分として農園が差し押さえられます。ついに、4つの畑のうち2つを売却という状況まで追いつめられました。秋則の心は壊れ始めました。家の電気代も電話代も健康保険も払えない状況でした。秋則は美栄子に離婚を申し出ます。そして、秋則は無農薬を諦めようと言うと、娘の雛子が「止めたら、何のために貧乏をしているの」と猛反対をし、そのまま、高熱で倒れてしまいました。雛子をおぶって秋則は、妻と救急病院まで走りました。医者はストレス性の発熱で、円形脱毛もあり、暫く入院と言いました。雛子に泣いて謝る妻の姿を見かねて、秋則は無言で去ります。翌朝、美江子が荷物を取りに家に帰ると、家には義父と娘・咲と菜ツ子だけでした。美江子は雛子の「わたしのおとうさん」という作文を読みます。そして、美江子は秋則を探して畑にいきましたが、彼の姿はなく、小屋で彼の日記を目にします。そこには、栽培記録と、妻の状態、家族への愛が綴られていました。最後には「美栄子、今までありがとう」と別れの言葉が記されていました。ねぶた祭りの街中を、美江子は秋則を探し回ります。
奇跡のリンゴの結末
その頃、秋則は自殺しに山中に入り、首吊り用のロープを掛けようとしていました。しかし、ロープをかけ損なった秋則は、そこで一本の樹を発見します。それはクルミの樹でしたが、虫が全くついておらず、秋則は「なぜ」と考えました。その時、彼は地面の土に注目します。彼の脳裏に、畑でトマトがなっている様子と、義父の戦地での話が蘇りました。彼は土の臭いをかぎ、口に入れ、土が自然の堆肥だといいのだと気付きます。
夫を見つけられずに家路を歩く美栄子の前に、秋則が元気に走って来ました。秋則は美栄子に再度やり直してもいいかと尋ねると、彼女は「まず、笑わねば」と言い、娘・雛子の作文を見せます。それを読んだ秋則は新たな気持ちで無農薬栽培に挑戦します。まず、秋則はリンゴの樹々の根本に山の土を植え、雑草は刈らず、大豆を巻いて、山鳩をよびました。すると、畑は様々な虫や動物が集まるジャングルのようになりました。
秋則は、雛子のスケッチブックから「てんとう虫は害虫の横に卵を産む。害虫の卵が孵ったら食べるようにしている。虫も全部捕らなくていいだ」と気付きます。隣の農家が「お前の所の虫が飛んでくる。雑草を刈り取れ」と苦情を言ってきますが、多くの蛾は逆に秋則の畑に集まっていきました。野菜も大きく実ってくると、噂が噂を呼び、周囲の人々は秋則の農法に成果があることを感じ始めました。すると、もっちゃんは木村家の滞納電気代を密かに払ってくれ、実家の母は密かにお米を持って来てくれました。その年の冬、義父は肺炎で入院していましたが、その上、痴呆症にまでなっていました。
無農薬10年目、隣りの畑の人々が秋則の畑を見て驚きます。目撃したもっちゃんも秋則を呼びにバイクを飛ばして来ました。秋則は美江子ともっちゃんのバイクで畑に走りました。畑に到着した秋則は怖くて見られません。まず、美江子が見ました。彼女の目から涙が流れました。秋則はその姿を見て、恐る恐る見ると、リンゴの白い花が満開に咲いていました。秋則は娘たちと感謝の言葉を樹々に声かけしていると、実家の父、母、兄が見に来ていました。その年の秋、ついに小さいが実に美味しいリンゴの実がなりました。ですが、悲しいことに、義父はそのリンゴを握りしめながら、亡くなりました。秋則のリンゴは美味しいと噂になり、各地から注文が来るようになりました。秋則は美江子に「ひとつのものに狂えば、いつか答えは見つかる」と言うと、彼女は「バカじゃない」と言い、二人は娘たちとともに笑うのでした。
感動する。こんなことが本当にあると思うと涙涙、、、