この世界の片隅にの紹介:2016年日本映画。広島出身こうの史代の漫画「この世界の片隅に」を映画化したアニメ。舞台は戦時中の広島。のんびりとした性格の主人公すずは、呉に嫁ぎ、ささやかな幸せを感じながら生活していた。ところが、時代と共にどんどん戦争は激化していき、すずのささやかな幸せが崩れていってしまう。すずはどのように生きていくのか、家族愛とはなんなのか、「この世界の片隅に」は戦争の中で見つけていく希望の物語。2018年にはテレビドラマ化され、2019年12月に映画版の新作「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」が公開。
監督:片渕須直 声優:のん(北條すず / 浦野すず)、細谷佳正(北條周作)、稲葉菜月(黒村晴美)、尾身美詞(黒村径子)、小野大輔(水原哲)、ほか
映画「この世界の片隅に」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「この世界の片隅に」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
「この世界の片隅に」予告編
映画「この世界の片隅に」解説
この解説記事には映画「この世界の片隅に」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
「この世界の片隅に」簡単ネタバレあらすじと結末
主人公の少女すずは、のんびりとした性格の少女。広島市に生まれ育ち、兄、すず、妹の三人兄妹。しっかり者の兄からはいつも鈍いと怒られてばかりだったが、実はすずは手先が器用で絵を描くのが得意だった。えんぴつが握れないほど小さくなるまで絵を夢中になって描いているような少女時代を過ごした。
ある日、北条周作という青年が父親と共に呉から広島市のすずの実家に訪れる。幼少時代に、すずと一度会ったことがあり、その際に一目惚れをし、結婚を申し込みに来たのだった。すずはあまり気乗りはしていなかったものの、周りの勧めもあり、呉へと嫁ぐことを決める。嫁ぎ先の北条家では優しい父、病弱な母、周作、すずの4人で過ごしていたが、途中から周作の姉である径子が娘の晴美を連れて戻ってくる。嫁ぎ先の義実家とうまくいかず戻ってきたという。径子はすずとまさに真逆な性格で、テキパキと行動し、鈍臭いすずには絶えず小言を言っていた。しかし、娘の晴美とすずはとても仲が良く、ふたりでよく遊んでいた。
戦時中のため、決して裕福な生活とは言えなかったが、晴美は軍艦が好きだったので、すずが軍艦の絵を描いてあげるなど、ささやかに楽しい生活を送っていた。次第に空襲警報も増え、呉も空襲に怯えながら防空壕に逃げ込む回数も増えていった。そんな中、義父が空襲のせいで怪我をしてしまう。すずと晴美は義父のお見舞いに病院に行くが、その帰り道にまた空襲警報が鳴る。近場の防空壕に飛び込み、すずは晴美を勇敢に守っていたが、防空壕から出た直後、埋もれていた不発弾に晴美が被弾してしまい死んでしまう。すずも、晴美と繋いでいた右手を失ってしまう。
大切にしていた晴美と右手を同時に失った喪失感、晴美の母親である径子から責められる日々で、すずは死にたくなってしまう。空襲警報が鳴っても外にいたところ、周作がすずを見つけ、命がけで守ってくれる。広島の実家に帰ろう、そう思っていた頃、広島市に原爆が投下される。原爆投下から数日が経ち、広島市の様子を見るために広島市に周作と共に帰省するが、そこには変わり果てた故郷があった。そのとき、右手を失ったすずを見て、少女が母親だと思い込み近寄ってきた。すずと周作は戦争孤児になってしまった少女を引き連れて呉へと帰り、新たな生活を始めようとするのだった。
以上、映画「この世界の片隅に」の簡単ネタバレあらすじと結末でした。
「この世界の片隅に」原作について
「この世界の片隅に」の始まりは漫画でした。原作者は広島県出身の、こうの史代さん。祖母と母親が広島の呉市出身だそうです。2007年から2009年まで連載され、上・中・下巻が発売中で、kindle版(各540円)もあります。物語は昭和18年~21年の話で、連載は平成18~21年まで漫画アクションで連載されました。そして2011年に日本テレビで、8月5日に2時間ドラマ化され、視聴率は12.7%でした。東日本大震災(3.11)の後、片渕監督は、こうの史代さんと共に2011年の震災復興のための支援ソング「花は咲く」に合わせたアニメーションを手掛けられています。
「この世界の片隅に」アニメ映画化、テレビドラマ化
そして、アニメ映画化の話が動き出したのは2012年。2015年3月にパイロット版制作のための資金調達として2000万円目標のクラウド・ファンディングが行なわれ、8日間で目標額を達成し、5月末には3374人の支援者によって3912万1920円が集められました。(映画部門でそれまでの最高額。映画ラストに全員の名前が掲載されます。だから、この映画が見れるのは、この方達のおかげでもあります。)
もちろん、「この世界の片隅に」のアニメ映画は3912万円では出来ません。製作されたパイロットフィルムによって、出資者が集まり、今回の映画上映となりました。当初、50館公開の予定でしたが公開日には90館になり、その後もツイッターや口コミで、増え続けていきました。
2018年7月からはTBSで連続テレビドラマ化もされ、主役すずを松本穂香、その夫役に松坂桃李がキャスティングされました。
「この世界の片隅に」評価・レビュー
映画評論家の町山智浩さんが「この世界の片隅に」を「2016年最高の映画」と評価していたり、業界関係者の賞賛ツイートも絶えません。物語は、普通…より、ぼんやりとした女の子が主人公。でも、もちろんそれだけではないのですが、彼女が主役になってしまう時代がありました。それは、昭和19~20年の広島・呉。しかし、戦争ものと見構える必要はありません。むしろ、2011年3月11日を経験した現代の我々は、震災ものとして、自分ならどうする? を考えてみるべきかもしれません。
奇しくも、同年にヒットした「シン・ゴジラ」、「君の名は。」も、ポスト3.11です。勿論、「この世界の片隅に」は、ポスト8.15でもあるのですが、空襲も地震・津波も人災・天災の違いはあれど、巻き込まれた者は、どう生きるかしかないからです。「はだしのゲン」や「火垂るの墓」に恐怖感を持つ人も安心して見られる作品のはずです。
「この世界の片隅に」アニメ版キャスト
主役の「すず」さんを演じるのは、能年玲奈(のん)さんです。事務所を独立したせいで、バーニング事務所所属時の本名で役者活動ができなくなったそうです。そのせいか、「じぇじぇじぇ」でお馴染みの「あまちゃん」が主役キャストなのに、マスコミは取材活動を一切していません。もし「この世界の片隅に」がヒットすれば、マスコミに頼らずに口コミでヒットした数少ない作品ということになります。「君の名は。」「聲の形」に続くヒット作になるかまでは分かりませんが。
「この世界の片隅に」実話を交えて描かれる
本作で片渕須直監督は脚本も手掛けています。監督の前作は「マイマイ新子と千年の魔法」で昭和30年代と千年前の平安時代が舞台でした。物凄く時代考証をしっかりされる方で、特に航空関係の知識は詳しく、何冊か書かれています。それだけに、「この世界の片隅に」は歴史的資料としても一見の価値ありです。戦艦大和からの降りてくる乗員や、広島の商店街にいる名もない人々も取材によって、できるだけ詳細に再現されているそうです。戦後70年余り。原作の、こうの史代さん曰く、今この時期の我々が第二次大戦をを生き残った戦争を知っている世代と交流できる最後の世代です。当時の人々の暮らしを垣間見るヒントになるかもしれません。
「この世界の片隅に」上映館の広がり
映画「この世界の片隅に」の公開初週土日は10位。他作品が150~300館上映の所を63館での大健闘。興収は4704万2090円で9位。14ケ国で配給決定し、既に広島国際映画祭 ヒロシマ平和映画賞を受賞しました。1週間で上映予定119館に。極上音響上映が決定した立川シネマシティでのキャッチフレーズは「どうしても、観て欲しい映画があります」イオンシネマ茨木(大阪)では「100年先に伝えたい」。「この世界の片隅に」はテアトル東京70周年記念作品として作られています。2019年7月現在も全国のどこかの映画館で上映され続けています。
「この世界の片隅に」タイトルの意味とは
「この世界の片隅に」のタイトルの意味ですが、映画の予告編でもすず自身が言っています。
「ありがとう、この世界の片隅に、うちを見つけてくれて。」
すずの周作への感謝と愛情の気持ちが込められています。
「この世界の片隅に」続編、新作の制作
映画「この世界の片隅に」に新しい場面を追加した「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」が2019年12月20日に公開が決定しました。監督・主演はこれまで通りで、原作者こうの史代によって複数のエピソードが追加される予定。すずが街で出会ったリンという女性との交流によって、夫・周作とリンとの繋がりが明らかになります。昭和19年の秋~昭和20年の春にかけてのエピソードや、妹・すみを案じながら迎える枕崎台風のエピソードなどが追加されます。今回追加されるエピソードによって主題に一部変更が加わることから【さらにいくつもの】というタイトルが追加された新たなもう1作の映画「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」として制作。主題歌は引き続きコトリンゴで、この映画のために新曲も制作される予定です。「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」は、2019年冬、全国で公開です。
「この世界の片隅に」感想・レビュー
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変に戦争はいけないことだと登場人物たちに述べさせることはなく、ただただ日常が流れていく中に戦争があるといった感じの作品で、祖父母たちもこんな感じで当時を過ごしていたのかなと、この作品をきっかけに祖父にしっかり当時の話をめんどくさがらずに聞いておけば良かったと深く後悔した。すずさん達北條家の皆さんがその後どうなったのか気になって続編でもあるといいのにな
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昭和20年太平洋戦争末期、呉に嫁いだ19歳のすずがもがき苦しみながら「この世界の片隅に」生きていくお話です。徹底的かつ綿密に調査・研究された時代描写は、戦争が当時の生活のそばにあり、その中でも笑顔を絶やさず生きていた人々の匂いが感じられる。
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戦争映画でありながら、戦場ではなく女性目線で当時の日常を描いた作品。のんびりとした生活の中に突然の空襲。目の前で家族を失う恐怖。原爆が落とされたときのリアルな描写は息を呑みます。主人公の北条すずを演じるのは女優の「のん」。広島弁も違和感なく作品に入り込めます。
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こうの史代さんの原作漫画が好きで、このほんわかした空気をどうアニメで表現するのかな~?と思っていました。実際に観てみると、もうどんぴしゃ!主人公すずの声を演じるのんさんの、柔らかでふんわりした演技が本当に魅力的でした。そしてほんわかしつつも、戦争が日常にどんどん入り込んで来ることの恐怖、空襲の恐ろしさ、言葉では言い表せないほどの悲しい出来事といった面もきっちりと描かれていて、何度観ても観きれないほど、いろんなものが詰まってる作品だと思います。
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戦争映画なのに、ほんわかした日常を描いているのがとても新鮮で好感が持てました。お話がほんわかしているからこそ、主人公がのんびりしているからこそ、グロテスクだったり怖かったりする戦争映画より、そのほんわかした日常を壊した戦争の悲惨さがより心に沁みるのだな・・・と思いました。
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戦時中でも家族がワイワイしている明るい家庭なのが、この状況にいても明るくしてられるなら、私たちも、もっと明るくしていかないといけないという感情にさせてくれます。
また、戦争中のご飯の炊き方や、食べれる草の紹介など今の日常でもすごく勉強になると思う。
一度は絶対に見たほうがいい!!
劇場用アニメが実写映画と同じように見られるようになって久しいですが、この作品こそ大人から子どもまで前世代が見るべき映画だと感じました。
戦争を通してとある主婦の日常を描いた作品ですが、主人公の心の機微や当時の様子がとても丁寧に描かれている作品で、日本映画の良さがこの作品の中にたくさん詰まっている気がしました。