うつくしいひと サバ?の紹介:2017年日本映画。熊本県出身の行定勲監督が熊本県出身者たちを集めて製作した短編映画『うつくしいひと』(2016年)の続編です。熊本地震後の被災地を舞台に、前作に登場した高良健吾扮する私立探偵がある人を探しているフランス人男性の手助けをすることになり・・・。タイトルの“サバ?”とはフランス語で「元気ですか?」「大丈夫ですか?」を意味します。
監督:行定勲 出演者:高良健吾(玉屋末吉)、米村亮太朗(田上)、中別府葵(古町明日香)、石橋静河(コガ・マリエ)、ロイック・ガルニエ(マチュー)、井手らっきょ(寿司屋の大将)、中原丈雄(川上義晴)ほか
映画「うつくしいひと サバ?」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「うつくしいひと サバ?」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
うつくしいひと サバ?の予告編 動画
映画「うつくしいひと サバ?」解説
この解説記事には映画「うつくしいひと サバ?」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
うつくしいひと サバ?のネタバレあらすじ:起
2016年4月、熊本県を未曽有の大地震が襲いました。ひとりの外国人男性(ロイック・ガルニエ)は包みを大事そうに抱えながら瓦礫と化した住宅地を彷徨い歩いていました。男が余震に身を屈めたその時、近くをバイクで通りがかった田上(米村亮太朗)に助けられ、彼の案内で私立探偵・玉屋末吉(高良健吾)を頼ることになりました。
玉屋の事務所では地震で迷子になった犬や猫を里親が見つかるまで預かっており、玉屋もまた被災した友人に電話でエールを送っていたところでした。田上から男を託された玉屋でしたが、彼の話す祖国の言葉は全く理解できませんでした。ただ、男は「サバ?」という言葉をしきりに繰り返していました。
「サバ」という言葉が魚の“鯖(さば)”だと思った玉屋と田上は、寿司屋の大将(井手らっきょ)のもとに男を連れて行きました。世界各国の客を知る大将は即座に男がフランス人であることを言い当てました。男の言う「サバ?」には別の意味があるのではという大将のアドバイスを受け、玉屋と田上は(前作『うつくしいひと』に登場したが、震災の影響で別の場所に移転した)本屋兼カフェに向かいました。(橋本愛が演じた前作の主人公であり、この店でアルバイトをしている)透子はフランス語が話せるということで連れてきたのですが、あいにく透子は半壊した自宅の改修工事の打ち合わせのため休んでおり、代わりに古町明日香(中別府葵)が店番をしていました。
うつくしいひと サバ?のネタバレあらすじ:承
明日香は片言のフランス語が話せることから、彼女が男の相談に乗ることになりました。男の名はマチューといい、亡くなった妻・マリの遺骨を熊本に住む義父・川上義晴(中原丈雄)に届けるために来日したのです。マチューの来日は今回が初めてで、熊本地震が発生したことも知らなかったのです。玉屋は明日香の頼みを聞き入れてマチューを助けることにし、彼が持っていたマリの手紙の住所を基に義父を探すことにしました。
手紙の住所は地震で甚大な被害を受けた上益城郡益城町でした。玉屋と田上、明日香はマチューを連れて夜の商店街に繰り出し、復興を呼びかける“熊本城おもてなし武将隊”と“くまモン”に声援を送りました。その後一行は、マリが幼い頃よく義晴に連れて行ってもらったという熊本城の天守閣を訪れました。マチューはマリから「熊本には美しい城がある」と聞かされていたのです。玉屋や明日香はボロボロになりながらも倒壊しなかった天守閣に勇気づけられたと語ると、マチューは明日香から教えてもらった日本語で「すごいかっこいい」と城を讃えました。マチューは「傷ついても美しい」と誇り高き姿に見とれていました。玉屋は明日香に「サバ?」という言葉の意味を尋ねてみました。明日香曰く、「サバ?」とはフランス語で「元気?」「大丈夫ですか?」という意味なのだそうです。
うつくしいひと サバ?のネタバレあらすじ:転
翌日、玉屋は愛車の旧型フィアット500にマチューと明日香を乗せ、マリの実家がある益城町に向かいました。町には未だに震災の爪痕が生々しく残っていました。辿り着いたマリの実家は無残にも倒壊してしまっており、玉屋は瓦礫の中から1匹の子猫を助け出すと、若き日のマリが義晴と一緒に写った写真を発見しました。マチューが思い出に浸っていると、遅れてバイクでやってきた田上が義晴を見つけたと告げました。
義晴は町の仮設住宅で独り暮らしをしていました。あなたの心を手助けしたいという玉屋に、義晴は「何が心を助けるだ? お前に俺の何が解るというのか! 家がなくなったんだぞ! この絶望をお前がどうするというのだ!」と声を荒げました。マチューは明日香の通訳を介して義晴に「マリは病床で何度も熊本に帰りたいと言っていた」と伝えましたが、義晴は「うちにマリなんて娘はおらん。帰ってくれ」と突き放してしまいました。結局マリの遺骨は渡せませんでしたが、マチューは去り際に義晴にマリの手紙を渡しました。途方に暮れるマチューを、玉屋は「サバ?」と言って励ましました。するとマチューはマリと出逢った日のことを語り始めました。
20年前、マリはコンテンポラリーダンサーになるため、親の反対を押し切って単身フランスに渡りました。当時まだ学生だったマチューは彼女の美しさに一目惚れし、以来彼女の成功がマチューの夢となりました。やがてマリは夢を叶えて成功を収め、二人に輝かしい未来が待っていたかと思われましたが、マリを突然の病魔が襲ったのです。日に日に衰えていくなかマリは故郷・熊本の話をマチューに語り、“ぐるぐる”が食べたいと言っていました。、玉屋たちに語っていたマチューは、すぐそばを自転車で通りがかった女性を見るなり「マリだ!」と駆け寄りましたが、女性は気付くことなく走り去っていきました。玉屋と明日香は、マチューの哀しみが強いあまり幻を見たのだろうと思いました。
うつくしいひと サバ?の結末
玉屋は偶然にも学校時代の後輩・ケンタ(嶺豪一)と再会しました。ケンタが探偵ドラマが好きだった玉屋が本当に探偵になったことに興奮を隠せず、早速「復興市場」まで案内するとマチューに熊本の郷土料理“一文字ぐるぐる”をご馳走してくれました。マチューが熊本の味に舌鼓を打っているその時、先程の自転車の女性が市場にやってきました。マチューがマリに瓜二つだという女性の名はコガ・マリエ(石橋静河)といい、フランス語を勉強しているのだというのです。玉屋が事情を説明すると、マリエは何だか不思議な気持ちになったと言いつつ、玉屋に1枚の紙を手渡しました。それは熊本地震が発生した4月16日付のフランス・パリへの旅程表でした。マリエもまたコンテンポラリーダンサーを目指してパリに渡ろうとしていたのですが、被災した家族を置いていけず断念していたのです。マリエは熊本で必死に立ち直ろうとしている人々の姿を見て熊本に腰を据える決意を固めたのです。玉屋とマチューはぜひマリエのダンスが見たいと言い出し、マリエはマリのために踊ることを快諾してくれました。マチューがスマホで音楽を流し、マリエは様々な人々の想い、鎮魂の想いを込めて渾身のダンスを魅せてくれました。そこに田上が義晴を連れて現れ、義晴はマリエの姿に亡き娘を重ね合わせていました。
崩れ落ちた橋、ひび割れたアスファルト、倒壊した寺院、石垣の崩れ落ちた熊本城・・・熊本の「いま」を想いながら舞うマリエの姿に、マチューも義晴も、玉屋ら周りの人たちも心を大いに揺さぶられ、拍手を送りました。マチューはマリエに感謝の意を述べると、ようやく義晴にマリの遺骨を手渡しました。義晴は「メルシー」と応え、マチューも日本語で「ありがとう」と伝えました。二人の目には涙がにじんでいました。その様子を見つめていたマリエは玉屋に「探偵さん、ここに残ってよかったです。ここでもダンスは踊れるのですから。私、熊本で踊り続けていこうと思います」と伝え、玉屋もその夢を応援すると約束しました。
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