リズと青い鳥の紹介:2018年日本映画。京都アニメーションの若手女性監督山田尚子が、聲の形以来約一年半ぶりに制作した最新作。先行するテレビアニメ作品「響け!ユーフォニアム」のスピンオフ企画として、オーボエ担当の鎧塚みぞれとフルート担当の傘木希美の三年生二人に焦点を当てた青春劇を、監督特有の瑞々しい表現で描き出している。本作は国内外から高い評価を受け、第73回毎日映画コンクール大藤信郎賞を受賞した。
監督:山田尚子 声優:種崎敦美(鎧塚みぞれ)、東山奈央(傘木 希美)、本田望結(リズ)、 藤村鼓乃美 (中川夏紀)、山岡ゆり(吉川優子)、杉浦しおり(剣崎梨々花)、黒沢ともよ(黄前 久美子)、朝井彩加(加藤 葉月)ほか。
映画「リズと青い鳥」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「リズと青い鳥」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
リズと青い鳥の予告編 動画
映画「リズと青い鳥」解説
この解説記事には映画「リズと青い鳥」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
リズと青い鳥のネタバレあらすじ:起
高校3年生で鎧塚みぞれは吹奏楽部でオーボエを担当していた。彼女は内向的な性格で、他人と打ち解けること苦手だった。そんなみぞれの唯一の友達は、同じ吹奏楽部でフルートを担当している傘木希美だ。希美はみぞれとは対象的に明るく外交的で、誰とでも気さくに話ができる性格だった。
二人は中学時代からの知り合いで、みぞれが吹奏楽を始めたのも、希美が一緒に部活に入ろうと誘ってくれたことがきっかけだった。みぞれはそれ以来、希美の行くところにはどこでもついていき、希美の言うことには何でも賛同するのだった。
リズと青い鳥のネタバレあらすじ:承
吹奏楽部では高校生活最後のコンクールが間近に迫っていた。自由曲は「リズと青い鳥」に決定しており、その曲の中にはオーボエとフルートの二重奏が含まれていた。希美がみぞれに見せた「リズと青い鳥」の絵本には、お互いのことを愛し合いながらもやがては別れなければならない、リズという少女と青い鳥の物語が描かれていた。希美は自由を求めて外の世界へ旅立つ青い鳥に、みぞれは家の中にいて青い鳥がどこまで羽ばたいていくことを願うリズに、それぞれ自分自身を重ね合わせる。
コンクールが近づく中で、吹奏楽部の練習はより厳しさを増していく。他の部員たちと和気あいあいと練習している希美の影で、みぞれは後輩からの遊びの誘いも断り、独りで黙々と練習に励んでいた。そんなみぞれの音楽的な才能を見抜いていた指導教員の新山聡美は、みぞれに音大に進学してプロの演奏家になるように勧める。始めは乗り気でなかったみぞれだが、希美も音大に進学する意思があるという話を聞くと、やはり自分も行きたいと言いだすようになった。
リズと青い鳥のネタバレあらすじ:転
コンサートは日に日に近づいていたが、みぞれと希美の掛け合いはうまく行っていなかった。みぞれの心の中にはいつも、のぞみが自分を置いてどこかへ行ってしまうのではないかという不安があった。それは二人が二年生だった頃、希美が部内の対立をきっかけに、みぞれには何も言わず部活を一度辞めてしまっていたからだ。なぜ物語の中のリズは、青い鳥を自分の手の中にしっかり留めておかなかったのだろうか。みぞれにはそれが理解できなかった。
一方で希美もまた、自分の力では追いつくことのできないみぞれの才能に嫉妬を覚え始めていた。一時はみぞれとともに音大を受験すると言っていた希美だが、急に心変わりをし、普通大学への進学を目指すと言い出す。それを聞いたみぞれは、その身勝手な振る舞いに困惑するのだった。
リズと青い鳥の結末
みぞれは新山先生に自分の率直な悩みを相談する。すると彼女は、青い鳥は本当はみぞれの方なのではないかと助言した。みぞれはそこで初めて物語の真の意味を理解する。青い鳥は愛するリズの願いを受け入れるために、外の世界へ羽ばたかなければいけなかったのだと。
心の迷いを断ち切ったみぞれは、次の練習で誰もが息を呑むような素晴らしい演奏をして見せた。練習が終わった後、独り生物室にいる希美を見つけたみぞれは、そのそばへと近寄る。
みぞれの圧倒的な才能を見せつけられた希美は、皮肉交じり自分を卑下する。しかしみぞれは、これまでの自分勝手な希美の振る舞いを責め、自分にとってどれだけ希美が大切な人間であるかを伝える。今までに言葉にすることができなかった胸の内をさらけ出した二人は、その絆の強さを再確認するのだった
次の日、図書館でみぞれに出会った希美は、コンサートでみぞれを全力で支えていくことを宣言する。その後、みぞれはオーボエの練習のため音楽室へ行き、希美は受験のために図書館に残って勉強する。そこにはもう、希美の後ばかりをついていくみぞれの姿はなかった。
そして二人はそれぞれの未来へ向かって歩き出すのだった。
以上、映画「リズと青い鳥」のあらすじと結末でした。
『響け! ユーフォニアムシリーズ』本編では、あくまで主人公勢を主軸に人間関係の葛藤や部活全体として全国コンクールを目指す等の青春ドラマが展開される。一方、今作は主人公勢の一つ上の学年のフルート担当:傘木希美とオーボエ担当:鎧塚みぞれの関係性にのみフューチャーして物語が進行する。
本編とは絵のタッチや物語の魅せ方がかなり異なるが、会話の間や目線の交わりやすれ違い等、発話を伴わずにそれぞれの感情の機微を表現しており、その行間を読ませるような描写が秀逸。
希美とみぞれの関係性は単なる友情か、恋愛感情か、依存心か、ライバル心か、それとも
それらすべてが交わったものか。明言はされず、色々な捉え方や感じ方ができる雰囲気だった。思春期の感情の機微を精緻な表現で描写し切った名作だと思う。