メタモルフォーゼの縁側の紹介:2022年日本映画。「このマンガがすごい!2019オンナ編第1位」を受賞した鶴谷香央理の「メタモルフォーゼの縁側」。一見地味だが心温まるこの物語を映画化したのは『青くて痛くて脆い』の狩山俊輔監督。そして5巻分の話を2時間にまとめ上げたのは人気脚本家・岡田惠和だ。2011年公開の岡田脚本作品『阪急電車 片道15分の奇跡』に祖母と孫役で出演していた宮本信子と芦田愛菜が、年の差58歳のBL好き友だちとしてW主演し、ふたりで主題歌も歌っている。
監督:狩山俊輔 脚本:岡田惠和 原作:鶴谷香央理「メタモルフォーゼの縁側」(KADOKAWA) キャスト:芦田愛菜(佐山うらら)、宮本信子(市野井雪)、高橋恭平<なにわ男子>(河村紡)、古川琴音(コメダ優)、生田智子(花江)、光石研(沼田)、汐谷友希(橋本英莉)、伊東妙子<T字路s>(佐山美香)ほか
映画「メタモルフォーゼの縁側」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「メタモルフォーゼの縁側」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「メタモルフォーゼの縁側」解説
この解説記事には映画「メタモルフォーゼの縁側」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
メタモルフォーゼの縁側のネタバレあらすじ:起
夫の死後、都内の一軒家で書道教室を営む75歳の市野井雪は暑い夏の日、本屋で一冊の本と運命の出会いを果たします。それは「君のことだけ見ていたい」というBLマンガ。レジで対応した17歳の高校生・佐山うららは、カバーもかけずそれを持ち帰った雪に驚きます。
表紙の絵がきれいだったのでその本を手に取った雪は、寝る前に久しぶりのマンガを読み始めます。男子高校生同士のキスシーンにドキドキし、思わず「キッス!?」と声に出し手しまいます。
その頃うららは自室で、「君のことだけ見ていたい」(以降「君見て」)の1~3巻を段ボール箱から取り出し読み始めます。そのまま寝落ちしてしまったうららは朝目覚めると、「やばっ」と言いながら慌ててマンガをしまい、箱を机の下に押し込むのでした。
母とふたり、団地で暮らしているうららには紡というイケメンの幼なじみがいます。紡はうららのクラスのキラキラ女子・英莉とつき合っていて、英莉は紡と仲の良さそうなうららのことを少し気にしている様子です。
雪は再び本屋にやってくると「君見て」2巻を買いました。登場人物の咲良と佑真がいきなり小学生になってしまい面喰らいますが、すぐに読み終えてしまい今度は3巻を買いに。でもあいにく在庫がなく、接客したうららは注文を受け付けます。
3巻入荷の報せを受けやってきた雪はうららのことをおぼえていました。そしてBLについて語りたいと思い、おしゃべりしましょうとうららを誘います。カフェでは恥ずかしくて思うように話せなかったうららですが、本当は自分もこういう話がしたかったと打ち明けると、雪の提案で連絡先を交換することにしました。
そろそろ受験のことを考えなければいけないうらら。自宅では母から進路についてたずねられます。特に目的のないうららがはぐらかしていると雪からメッセージが入ります。「君見て」の単行本の発売が1年半に1冊のペースなので、続きが読めるまで時間がかかるということを知ってしょんぼりしています。そしてほかにオススメの作品があったら教えてほしい、とも。うららは持っている本をベッドに並べ、こんなの引く?などと悩んでいます。
たくさんの本を抱えたうららの足取りは重く、一方雪は鼻歌まじりで料理をしています。うららは雪の家に招き入れられると、「君見て」作者の別の本や似たようなテイストのマンガなどを説明しながら取り出し、最後に「過激なシーンもあるので、イヤだと思ったら読むのをやめてください」と勇気を出して伝えます。雪は「了解!」とお茶目に親指を立てて見せます。そして「君見て」の連載が乗っている雑誌を渡されると、これなら月一回続きが読めると大喜びするのでした。
それからというものふたりは本屋やカフェ、雪の家で頻繁に会うようになり、そのたびに「君見て」の佑真と咲良の話で盛り上がります。
そんなある日、紡が母親から預かったおすそ分けを持ってやってきます。うららの部屋に勝手に入ると、出しっぱなしだったBLマンガを見つけますが気づかないふりをします。うららは(見られた?)とドキドキしながらそっとそれを隠します。
後日紡は英莉にBLを読んでいるかをたずね、英莉は読んだことはないけど興味はあると答えます。その後学校では英莉を中心にBLが流行り出し、うららはなんだか複雑な気持ちになります。そんなうららのバイト先に英莉がやってきて、BLマンガと留学の本を買っていきます。リア充な英莉に反感を抱いたうららは「ずるいよ。留学とかBLとかいろいろ…」と言ってしまいます。
メタモルフォーゼの縁側のネタバレあらすじ:承
雪には結婚してノルウェーに住んでいるひとり娘・花江がいます。その花江が日本にやってきました。ひとりで広い家に暮らす高齢の雪を心配し、いっしょに住もうと花江は提案します。そこへやってきたうらら。英莉に言ってしまったことを反省し、雪が自分だったらどうするか、聞いてみたかったのです。
すると雪が「私がうららちゃんだったら、もう描いちゃうかもしれない」と言い出します。偶然の答えにびっくりするうららですが、どうやら雪はうららに自分でマンガを描いてみたら?とすすめているようです。才能ないから無理ですと答えると、才能ないと描いちゃダメなの?と雪は言い、人は思ってもみないことになるものよと悟ったように微笑みます。
雨が降り出し傘を借りてうららは帰りますが、傘を開くと中にはバラの花が咲き乱れ、そのギャップにうららはなんだかうれしくなるのでした。
うららは気になっていた冬のコミケに雪を誘います。好奇心旺盛な雪はふたつ返事でOKしますが、寄る年波には勝てず腰の具合がよくないようで、誘ってしまってから気になったうららはひとりで下見に出かけます。とてもこの距離を、あの混雑の中75歳の雪が歩き続けられるとは思えず、うららはその場で断わりの電話をしてしまいます。雪を傷つけないように理由は受験勉強ということにして…。
実際うららはそろそろ進路調査票を出さなければならず、ノートにマンガを描いている場合ではありません。でもそのマンガを紡が見て、「熱くなれるものがあっていいなぁ」と言ってきました。英莉が留学を目指していることを知り、紡は応援しつつも寂しさを感じているようでした。
ある日、うららは雪の家が妙に片付いていることに気づきます。古いマンガを見つけると、雪はそのマンガ家の先生にファンレターを書いたが自分の字が汚くて嫌になって出せなかったといいます。字が上手に書けるようになりたくて書道を習っているうちにいつの間にか先生になっちゃった、と雪は笑います。
メタモルフォーゼの縁側のネタバレあらすじ:転
うららは雪に、5月に行われる同人誌即売会・コミティアに出ませんか?と相談します。詳しく説明する前に「出る。出るわ」と食い気味に返事する雪。受験勉強はいいの?と心配しながらも雪はうららを応援するつもりです。
道具を揃え、ペンで線を引くことから始めるうらら。「正気か、私…」とつぶやきながら、何かに取り憑かれたようにうららは描いていきます。
そんなうららに雪は書道教室の生徒である印刷屋の沼田を紹介し、そこで作品をオフセット印刷・製本することを提案します。突然のことにうららは固まってしまいますが、雪はお金も出させてほしいと言い、話を進めます。いよいようららは後戻りできなくなりました。
入稿まであと10日。焦ってインクがにじんでしまった箇所を、雪の家の縁側でうららは修正します。ガラス窓に紙をあて、外の光を使って写している姿を見て、雪はかつて自分もそうやって好きなマンガを写していたことを思い出します。
寝る間も惜しんで描き続け、ようやく原稿が完成しました。描いている途中は楽しくないと言っていたうららでしたが、いまは自然に「楽しかった」と声に出ていました。
ついに製本された作品が納品され、うららが恐る恐る見せると雪は「きれい」と言ってにっこりしました。あとは当日これを売るだけ。雪はうららのためにお弁当を準備しますが、突然腰に激痛が走ります。ひと晩寝てもよくならず雪は起き上がることができません。うららに連絡しつつ、なんとか動けないかともがき、雪は沼田を呼び出します。
一方うららはただでさえ心細いのに、完全に周りの雰囲気に飲まれてしまい準備をすることができません。ベンチでぼんやりと時間を過ごし、雪からの電話にも出ません。するとそこに紡がやってきました。秘かにうららを応援していた紡はそのマンガを買いに来たのです。頑なに拒否するうららでしたが、「客だぞ」と言われ100円で一冊売りました。
雪は沼田の車で会場を目指していましたが、車の故障で立ち往生していました。あきらめて道端に座っていると、コミティア帰りの「君見て」作者・コメダ優が声をかけてきました。もちろん雪はそれが憧れのマンガ家だとは知らず、コミティアに出店予定だったが行けなかったこと、きっかけは「君見て」を好きになったからで「読むと元気が出るの」と熱く語ります。コメダは雪が持っていたうららのマンガに気づき、ぜひ売ってほしいと言って100円払うのでした。
失意のまま雪の家まで帰ってきたうらら。雪はうららがちゃんと作品を完成させコミティアに参加したこと、そして2冊も売れたことを喜びなぐさめます。うららは外を向いたまま雪のつくったサンドイッチを無言で食べ、そのまま泣いてしまいました。
メタモルフォーゼの縁側の結末
季節は再び夏。あの日と同じように本屋に寄ると、雪は「君見て」の掲載誌を買って家に帰ります。最終回まであと一話となった「君見て」は表紙になっていて、雪の推しであるキャラ・佑真は柄物のシャツを着ていました。あら!と鏡を見ると、雪の着ているワンピースも同じ柄です。「おそろい!」と喜び雪は証明写真を撮りに行きます。
うららは紡を見かけて声を掛けようとしますが、どうやら泣いているようです。うららに気づいた彼は、英莉の留学が決まり別れたと言って立ち去ります。
学校で英莉に会ったうららは瞬間的に彼女を呼び止め、「あの、がんばって」と声を掛けます。英莉は少し驚いた様子で「うん、ありがとう」と言うのでした。
一ヶ月が経ちいよいよ「君見て」最終話。うららが掲載誌を持って雪の家に行くと、部屋はすっかり片付いています。同時に「君見て」を読み終え、望んでいたハッピーエンドにふたりは大興奮。そしてひと月後におこなわれるコメダ優のサイン会に行くことを約束すると、うららは気になっていたことをたずねます。「どこか行くんですか?」
雪はノルウェーの娘の家に行くといいます。お試しでいっしょに住んでみることにした、と。そして佑真とおそろいの服で写った写真付きのパスポートを見せてくれました。
サイン会の日。早めに準備していたうららに紡から電話がかかってきます。団地の下にはちょっとおしゃれをした紡がいて、今日英莉が留学に出発すると言います。見送りに行かなくていいとうららに言ってほしかった紡。でもうららの答えは行ったほうがいい、でした。途中までついて来てほしいという紡にうららは一瞬考えますが、急いで雪に連絡すると遅れるが必ず行くと伝え、紡の手を取り走り出しました。
先にサイン会場に着いた雪。コメダは目の前にいるのが、あのコミティア帰りに会った老婦人だと気づき話しかけます。あのとき買ったマンガに元気をもらったというコメダ。雪は驚き、あわててあのマンガは自分ではなくこのあとやってくるうららが描いたのだと話しますが時間切れでそれ以上説明できませんでした。
紡を見送ったあと走ってサイン会場に到着したうららは、緊張のためコメダとは一切話せませんでした。それでも目の前で咲良のイラストを描いてもらい胸がいっぱいになるうらら。カフェで合流すると、雪はワクワクしてうららの報告を待ちます。でもうららは何も聞いておらず、雪はうららのマンガを買ったのがコメダ本人だったこと、それを読んで元気でたと言っていたことを伝え、先に知らせておくべきだったと悔やみます。うららはビックリして叫んでしまいますが、それでも十分幸せで、ふたりはもらったサインを見せ合い、写真を撮るのでした。
雨の中タクシーで帰宅するとうららは、「さっきの話、先に聞いておかなくてよかったかもです」と言います。たぶんいっぱいいっぱいで何も話せなかった、と言うと雪も納得します。そして今日一日の出来事を思い出し、「完ぺきな一日でした」と「君見て」の名場面と同じセリフをつぶやくのでした。
雪がノルウェーに発って数ヶ月、印刷屋の沼田は雪の家に風を通しに来ています。家が傷まないようにたまにこうして訪れているのです。そこにうららがやってきました。雪にマンガを送ってほしいと頼まれて取りに来たのです。そして時差のある雪と少し電話で話し、縁側に座って庭を渡ってくる風を感じるのでした。
以上、映画「メタモルフォーゼの縁側」のあらすじと結末でした。
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