未来へのかたちの紹介:2020年日本映画。焼き物「砥部焼」の町である愛媛県砥部町出身の大森研一監督が脚本を手掛け、2017年に開催された町民ミュージカル『シンパシーライジング』を基に映画化した人間ドラマです。聖火台デザインコンペを勝ち抜き、磁器製の聖火台制作に乗り出した主人公の陶芸家と家族たちの挑戦と人間模様を描きます。主題歌は「湘南乃風」のメンバーであり、ソロとしても活動するHAN-KUNが手掛けています。
監督:大森研一 出演者:伊藤淳史(高橋竜青)、内山理名(高橋幸子)、吉岡秀隆(高橋竜哉)、橋爪功(高橋竜見)、桜田ひより(高橋萌)、飯島寛騎(村上武)、大塚寧々(高橋典子)ほか
映画「未来へのかたち」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「未来へのかたち」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
未来へのかたちの予告編 動画
映画「未来へのかたち」解説
この解説記事には映画「未来へのかたち」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
未来へのかたちのネタバレあらすじ:起
ここは焼き物“砥部焼”の町である愛媛県砥部町。陶房「りゅうせい窯」を営む陶芸家の高橋竜青(伊藤淳史)は妻の幸子(内山理名)、学生の娘・萌(桜田ひより)の三人家族です。
りゅうせい窯ではアルバイトの青年・村上武(飯島寛騎)を雇っており、竜青の一家三人と村上はそれぞれ役割を分担して陶器を作っています。竜青の座右の銘は“結昇”(けっしょう)であり、互いに結び合うように高め合っていこうという意味を込めて竜青が編み出した造語です。
砥部町ではオリンピック開催決定に伴い、砥部焼で聖火台を作ろうというプロジェクトが動き出していました。デザインコンペ説明会にはかねてから自分の手で聖火台を作りたいと願っていた竜青も参加しましたが、会場には竜青の父・竜見(橋爪功)や兄・竜哉(吉岡秀隆)の姿もありました。竜青はかねてから竜見とは折り合いが悪かったのです。
日本芸術大学の教授である竜哉は必ず聖火台は採用されると説きましたが、地元でも有名な陶芸家であり「高橋窯」の主でもある竜見はもし採用されなければ町のモニュメントにでもすればいいとどっちつかずでした。
結局、会議が折り合いがつかないまま閉会されました。竜青が竜見らと折り合いが悪そうなことに疑問を抱く村上に、萌が家庭の事情を説明しました。
かつては家族の仲は良好でした。しかしある時、竜青兄弟の母・典子(大塚寧々)が竜見と共に陶器用の土を採取しに行った際、別行動を取った後に遭難したのです。懸命の捜索の末、数日後に典子は遺体となって発見されました。竜青はなぜあの時自分たちも一緒に連れていかなかったのかと竜見を責め、それ以来竜青と竜見は長く確執があったのです。
未来へのかたちのネタバレあらすじ:承
長らく砥部を離れていた竜哉はしばらく砥部に留まることにし、竜見の高橋窯に寝泊まりすることにしました。
竜青はコンペに出すための聖火台のデザインを練り始めました。それに興味を持った萌もデザインを考え始めました。竜青はなるべく自分の色を抑えて無難なデザインでいこうと決意しましたが、萌は陶器として形にするのは難しそうなデザインも大胆に考案していきました。
竜哉はりゅうせい窯を訪れ、当分の間砥部に留まると告げました。竜哉は萌に、聖火台は竜青の子供の頃からの夢だったと語りました。竜青は竜見が留守の時に庭の壺を聖火台に見立てて火をつけたことがあり、後で竜見にこっぴどく叱られたというエピソードまで竜哉は楽しそうに萌に語ってみせました。
やがてデザインコンペの発表の日が来ました。厳正な選考の結果、選ばれたのは何と萌がりゅうせい窯の名で出していた「シンパシーライジング」でした。それは陶器が螺旋を描くように天へと昇っていくようなデザインであり、とても竜青のりゅうせい窯の設備で作るのは無理な規模の大きさでした。
設備の充実している竜見の高橋窯ならば作ることが可能ですが、竜見との確執が未だに残る竜青は父に頭を下げるべきか悩みました。
未来へのかたちのネタバレあらすじ:転
竜青は苛立ちまぎれに、りゅうせい窯にかけられていた“結昇”の紙を破ってしまいました。幸子に慰められて落ち着きを取り戻した竜青はようやく竜見の元に出向き、頭を下げて力を貸してほしいと頼みました。
しかし、頑固者の竜見はつい「好き勝手やって安易やのう」と嫌味を言ってしまい、竜青と竜見は竜哉を巻き込んで大喧嘩となってしまいました。その時、竜哉は突然大量の血を吐いてしまい、病院に緊急搬送されました。
診察の結果、竜哉は肺結核を患っていたことが判明しました。竜哉は自分の本当の病名を知ることを恐れるあまり病院に行っていなかったのですが、幸いにも明日には退院できる程度の病状であり、一家は安堵しました。さすがの竜青も竜見も冷静にならざるを得ませんでした。
竜哉は竜見に衝撃の事実を打ち明けました。それは、砥部焼の聖火台は最初から採用される見込みのないということでした。竜哉は聖火台計画の実現に向けて奔走したのですが叶わず、それでも聖火台のデザインを巡って砥部の陶芸家たちが紛糾していることに黙っていられなかったのです。竜見はみんなにはこのことを伏せるよう竜哉に告げ、退院した竜哉は竜見の家で体調の回復に努めることにしました。
一方の竜青は、萌の描いた螺旋状のデザインを大きさの違う5個の陶器を積み上げることで表現するアイデアを思いつきました。
未来へのかたちの結末
竜見が竜青の元を訪れ、土の採取に誘いました。竜青、幸子、萌、村上は竜見と共に山に登り、いくつかの採石場を巡ることにしました。大きな陶器を作るためにはいくつかの程よく粘り気のある土を混ぜると良い仕上がりになるためです。一行は最初の採石場で土を採取しましたが、もう1ヶ所の採石場には辿り着けず、山で一夜を明かすことにしました。
翌日、一行は再び採石場探しに出発しましたが、竜見が足を滑らせて滑落しそうになりました。その際、一行は探し求めていた採石場を見つけ、そこに典子の形見の磁器製のかんざしを発見しました。一行は遭難した典子もこの採石場を探し求めていたのだと理解しました。
竜青たちは入手した土を使い、竜見の高橋窯で「シンパシーライジング」の製作に取り掛かりました。さすがの大作づくりには地元の陶芸家の協力が必要であり、竜青たちは町じゅうの窯元を回っては陶芸家たちに頭を下げました。竜青たちの説得に陶芸家たちも重い腰を上げ、人々の協力を得て遂に「シンパシーライジング」は完成しました。竜見も初めて竜青を一人前の陶芸家として認めました。
その後、「シンパシーライジング」は結局オリンピックに採用されることはなかったものの、砥部町の新たなモニュメントとして町の名所となっていました。テレビでも取り上げられて、報道されていました。
りゅうせい窯には新たに書かれた“結昇”の紙、そして「シンパシーライジング」で撮った家族の記念写真が飾られ、竜青たちはいつものように陶芸作業に勤しんでいました。
以上、映画「未来へのかたち」のあらすじと結末でした。
この映画の感想を投稿する