三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実の紹介:2020年日本映画。1969年5月13日、政治の季節のただなか、東京大学駒場キャンパス900番教室で行われた三島由紀夫と東大全共闘の討論会の映像をTBSが保管していた。1000人を超える学生たちを前に政治的立場が正反対と思われる三島と全共闘の若者たちが熱く言葉を戦わせる。貴重な映像と共に、元東大全共闘、元盾の会会員、三島に同行した新潮社のカメラマン、元TBS記者、文学者、研究者、三島の友人といった人々があの日の討論と三島、そして全共闘運動について語る。監督は討論の20年後に駒場キャンパスで学生生活を送った豊島圭介。三島原作の舞台「豊穣の海」で主演し、三島文学を愛する東出昌大がナビゲーターを務める。
監督:豊島圭介 出演者:椎根和、平野啓一郎、内田樹、小熊英二、瀬戸内寂聴、ほか
映画「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実の予告編 動画
映画「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」解説
この解説記事には映画「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実のネタバレあらすじ:第一章 七人の敵あり、三島の決意表明
三島由紀夫は最初に挨拶代わりの10分ほどのスピーチをする。「男子門を出ずれば七人の敵あり」ということわざを三島がスピーチの枕に使ったように、討論会を宣伝する漫画は、鍛錬した身体で知られる三島を「近代ゴリラ」として揶揄し、入場者は「飼育料」100円を払う。
だが三島は、東大全共闘と彼らにとって「反動」である自分とが共有する立場を取りあげる。三島は自分が暴力を否定したことがないと言う。学生の暴力をあげつらう保守政治家への違和感を明らかにする。そして自分は反知性主義だと言い、東大全共闘は知識人の自惚れの鼻をたたき割ったと認める。
東大安田講堂にたてこもった戦いの敗北以後の東大全共闘の進むべき道を模索して三島に討論会をもちかけ、この日の司会を務める学生服の木村修がつい「三島先生」と言ってしまって言い訳をするのを、三島は煙草を吸いながら苦笑するように見ている。木村が「人間にとって他人というのはどういうものであるのか」と話題を振り、本格的な討論になる。
実はこの日、三島の身に万一のことがあってはと心配した盾の会の一期生・原昭弘たちも聴衆の学生たちの間に混じって座っていた。盾の会は三島の元に集まった右派・民族派の学生たちによる民兵組織で、自衛隊に体験入隊して本格的な軍事演習をしていた。
「もう時効だから」と元会員はカメラの前で、自衛隊で実弾訓練を受けていたという証言をする。一方、全共闘側も別の暴力を恐れていた。駒場キャンパスで力をもつ民主青年同盟の学生による妨害があるのではと恐れていたことを木村修は話す。
三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実のネタバレあらすじ:第二章 対決
全共闘最大の論客といわれた芥正彦が赤ん坊を抱いて現れる。当時から前衛劇団を主宰し、今日も積極的に活動を続ける芥。討論会の聴衆だった社会学者橋爪大三郎も当時芥と演劇活動をしていた。芥が「三島さんは敗退してしまった人だということになるんですけどね」と断言する。
二人は空間と時間、解放区について難しい議論を続ける。主張が平行線をたどるときに「俺は三島をぶん殴る会があるというから来たんだ」と学生がヤジを飛ばす。芥が「出てこいこら!殴れ」と恫喝し全共闘側の仲間割れの一幕も。三島が芥に対してマイクを差し出したり、タバコをやり取りしたりと三島と芥は議論の応酬の内にも互いへの敬意を見せる。
三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実のネタバレあらすじ:第三章 天皇
東大全共闘の小阪修平が三島に天皇論をふる。その中で三島は天皇についての、学習院高等科を首席卒業して卒業式で時計をもらったという個人的なエピソードについふれてしまう。
「こういうところに陛下が座っておられて、3時間全然微動もしない姿を見ている。とにかく3時間、木像のごとく全然微動もしない。卒業式で。そういう天皇から私は時計をもらった。」、「それはとてもご立派だった。その時の天皇は」。
しかし、三島の天皇論を通じて、三島と全共闘は右と左から実は現実の堕落した日本社会という共通の敵と戦っているのではないかという図式が浮かび上がってくる。三島は「諸君が天皇を天皇とひと言言ってくれれば、俺は喜んで諸君と手をつなぐのに、言ってくれないから、いつまで経っても殺す殺すと言っているだけのことさ。それだけさ」と言う。
三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実の結末:第四章 熱情
最後に一人の学生が三島に共闘を呼びかけるが、三島は拒絶する。そして「言霊を、とにかくここに残して私は去っていきます」、「私は諸君の熱情は信じます。これだけは信じます。他のものは一切信じないとしても、これだけは信じるということを分かっていただきたい」と討論を結んで三島は教室を後にする。
木村修は後日三島に電話をかけた時に盾の会に入らないかと誘われたというこぼれ話をする。木村は断ったが、電話の側に人がいるのを感じた三島は木村のガールフレンド(現在の妻)を電話に出させ、5分話したと言う。結局三島がきいたのは、木村を愛しているのかということだった。
1年半後、三島は選ばれた少数の盾の会会員と共に自衛隊市谷駐屯地で自衛隊東部方面総監を監禁し、自衛隊員に決起を呼びかけた後、総監室で割腹自殺をする。東大全共闘との討論会に三島を護るために潜り込んでいた盾の会会員の一人であった森田必勝が三島の介錯をして、自らも割腹自殺を遂げた。元盾の会会員たちはそのニュースの衝撃を語る。
そして全共闘は敗北し、政治の季節は終わる。橋爪、木村、芥はカメラを前にそれぞれ全共闘運動を総括する。
映画は最後に現在の900番教室を見せ、「熱情」への期待をこめて終わる。
以上、映画「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」のあらすじと結末でした。
「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」感想・レビュー
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真のインテリジェンスの討論とはこういうものだと感じられる。圧倒的熱量であふれる全共闘の学生たちに対して、冷静にかつ彼らに傾聴しながら答える三島由紀夫。ドキュメンタリーであるがゆえに脚色なしの伝説の討論を感じられる作品。
本当にたった50年前の事なのか?現代の我々とは全く違う人間のように見えます。
三島さんの冷製でユーモラス、そして敬意を持った討論と、触れれば爆発しそうな学生達の熱気が、不思議なコントラストを生んでいました。その知性と熱意たるや!一見違う立場、違う思想の学生達と三島さんが、本当は何と戦っているのか。
本では学べない生の歴史を、是非体感してほしいです。