蜜のあわれの紹介:2016年日本映画。室生犀星の幻想文学『蜜のあわれ』を映画化。登場人物の「老作家」は室生犀星自身の投影とも言われている。老作家は無邪気で愛くるしい少女赤子と仲睦まじく暮らしていた。しかし彼女には秘密があった。赤子の正体は金魚だったのだ。老作家と金魚、そして老作家に思いを寄せる幽霊の三角関係を美しくエロティックに描いた幻想ロマンス。
監督:石井岳龍 出演者:二階堂ふみ(赤井赤子)、大杉漣(老作家)、真木よう子(田村ゆり子)、高良健吾(アクタガワ)、永瀬正敏(辰夫)ほか
映画「蜜のあわれ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「蜜のあわれ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
蜜のあわれの予告編 動画
映画「蜜のあわれ」解説
この解説記事には映画「蜜のあわれ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
蜜のあわれのネタバレあらすじ:老作家と赤い少女
舞台は昭和の日本。自宅で仕事をしていた老作家が顔を上げると、真っ赤な洋服を着た愛らしい少女がソファに寝そべって文学雑誌を読んでいます。「人を好きになるということは、愉しいことでございます」と呟く少女。縁側に出てポーズを取る彼女を、老作家は熱心にスケッチします。少女は老作家にも「人を好きになるということは、愉しいことでございます」と言って欲しいとねだりますが、彼は「言えないね」と突っぱねました。少女はモデル代を貰って出かけていきます。老作家のスケッチブックには金魚が描かれていました。帰宅した少女は野良猫に尾鰭を裂かれたと嘆き、唾で接いでくれと老作家に頼みます。さらけ出された丸い尻に見惚れながら、老作家は少女の尾鰭を治してやりました。その時、奥の部屋から「お父さん」と声がしました。19年間寝たきりの、老作家の妻の声です。少女は庭の池へ戻っていきました。
蜜のあわれのネタバレあらすじ:白い着物の幽霊
老作家の文学講演を聞きに行った少女。隣に白い着物の女性が座りました。手首に傷のあるその女性田村ゆり子は、老作家の姿を見て急に泣き出します。驚いた少女はゆり子をカフェに連れ出しました。彼女は15年前、老作家に自分の作品を見て貰ったことがあるそうです。どうやら老作家への愛を募らせているらしいゆり子。老作家との関係を聞かれ、少女は秘書のようなものだと話します。「恋人ではないのね?」としつこく問われ、少女は恋人にして貰おうと思い立ちました。講演後、老作家にゆり子を紹介しようとしますが、彼女の姿がありません。ゆり子の特徴を教えると、老作家は12年前に心臓麻痺で死亡した女性だと教えます。死後腕時計が何者かによってもぎ取られ、傷になっていたそうです。バーに立ち寄って話す老作家と少女。その背後にゆり子が現れます。逃げる彼女を必死で追いかけると、ゆり子は一度礼をして川に身を投げ消えてしまいました。
蜜のあわれのネタバレあらすじ:金魚と幽霊
「おじさま、あたいを恋人にして頂戴」と頼む少女。老作家は面食らいながら「僕もとうとう金魚と寝ることになったか」と承諾します。喜んだ少女は、これから「赤井赤子」と名乗ることにしました。赤子が昼の街を歩いていると、こっそりゆり子がつけて来るのに気付きます。赤子は金魚売りの辰夫のところへ行き、隠れて近寄って来たゆり子を捕まえました。「おばさま、幽霊でしょ」と尋ねた赤子は、「あたい、元は300円しかしない金魚なんです」と自分の秘密を明かしました。辰夫が売っていた金魚の赤子は老作家に買われ、どういう訳か人間の姿に変化したのです。老作家を巡って喧嘩をする赤子とゆり子。ゆり子は勝手に出て来てしまうのだと言い訳をします。2人は花を買う老作家の姿を目撃し、後をついていきました。彼は映画館裏のアパートに住む愛人、丸田丸子のところへ密かに通っていたのです。怒る赤子とゆり子。ゆり子は2ヶ月前突然この世に呼び戻されたと話し、2ヶ月前老作家に何かあったかと赤子に尋ねます。
蜜のあわれのネタバレあらすじ:幻惑
家に帰った赤子は、2ヶ月前のことを老作家に尋ねます。彼は人間の姿になった赤子と出会ったのがちょうど2ヶ月ほど前だと答えました。その後も丸子の元へ通う老作家に腹を立てた赤子は、金魚の姿で丸子の家に潜り込みます。そこへ老作家もやって来ました。ゆり子の家で一夜を過ごした赤子は、帰宅するなり老作家を池に突き落とし、泣いて暴れて浮気を詰ります。そしてある日、赤子は突然「あたい、おじさまの子が欲しい」と言い出しました。金魚と交尾をして、老作家の子として育てると言うのです。老作家は半狂乱で止めましたが、結局赤子は出かけてしまいます。自宅の2階に上がった老作家は、全裸で横たわる赤子に顔の見えない若者が覆いかぶさる幻を見ます。幻が場所を座敷に変えると、そこには亡き友人芥川龍之介がいました。文学と人生への情熱を語る老作家に、芥川は「死と税金からは逃げられない」と笑います。
蜜のあわれの結末:真っ赤な世界
老作家は赤子のすっかり大きくなった腹を呆然と撫でていました。2人の後ろに一瞬ゆり子が現れます。彼女を追いかけた赤子と老作家。しかし老作家は、「そんな女は存在しない」とゆり子の前で言い放ちます。去っていくゆり子を追いかける赤子。ゆり子は自分を呼び戻してくれたのは老作家ではないかと期待していました。しかしそうではないと知った彼女は、川に入って滑るように遠ざかっていきます。赤子は泣きながらその姿を見送りました。後日、赤子は「大変お世話になりました」と言って老作家の家を出て行こうとします。許さない、と止める老作家。彼は病気を患っていることを打ち明け、もう長くないのだと叫びます。病気が見つかったのは2ヶ月前のことでした。「1人にしないでくれ」と頭を下げる老作家。その時「お父さん」と妻の声がします。それを聞いた赤子は老作家の元を去っていきました。その後、辰夫が金魚に戻った赤子の死骸を持って老作家の家を訪ねて来ました。辰夫も偶然見つけたそうです。受け取った老作家はあまりの悲しみに声を上げて泣きました。後日、茫然自失の老作家は立ち上がろうとした拍子に倒れてしまいました。赤い光が差し、目を開けると赤子が立っています。彼女に手を取られ立ち上がった老作家は、「人を好きになるということは、愉しいことでございます」と笑顔で呟きました。2人が真っ赤に染まる世界で踊りだし、この物語も終幕を迎えます。
以上、映画蜜のあわれのあらすじと結末でした。
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