模倣犯の紹介:2002年日本映画。宮部みゆきが放つ本格ミステリーを、大人気アイドルグループ「SMAP」のリーダー、中居正広が務めたことで話題となった。その他有名俳優陣を起用した意欲作。
監督:森田芳光 出演者:中居正広(網川浩一/ピース)、藤井隆(高井和明)、津田寛治(栗橋浩美)、木村佳乃(前畑滋子)、山崎努(有馬義男)、伊東美咲(古川鞠子)、田口淳之介(塚田真一)、ほか
映画「模倣犯」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「模倣犯」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「模倣犯」解説
この解説記事には映画「模倣犯」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
模倣犯のネタバレあらすじ:起
有馬義男は豆腐屋を営みながら、娘と孫と共に幸せな毎日を送っていました。しかし、義男の平凡な日々は急に終わりを迎えます。孫娘の鞠子が、突如行方不明となったのでした。警察に行方不明届を出すものの、一向に鞠子に関する情報は入らないまま時間だけが過ぎていきます。すると数ヶ月が、公園で女性の切り離された腕とショルダーバッグが発見されたのでした。
模倣犯のネタバレあらすじ:承
そして犯人と思わしき人物から、それらは鞠子のものであるという連絡が入ったのです。そして何と、今度は犯人から有馬に直接電話が入りました。犯人は、鞠子の腕時計をそっと有馬の家のポストへと忍ばせました。警察に報告した有馬ですが、その事が犯人の気に障ってしまいます。怒った犯人は「ここにいけば鞠子の死体に会える」と連絡をよこし、その言葉通り、そこで鞠子の死体が発見される事になるのでした。そしてここで映画の描かれる視点が、犯人側へと変わります。
模倣犯のネタバレあらすじ:転
この残虐な事件の犯人である網川、通称ピースは非常に頭の良い人物でした。そして彼は栗橋という男と、最終的に高井和明という人物に罪をなすりつける完全犯罪を計画しようとしていました。そして警察は、ピースの思惑どおりに動いてしまいます。高井は一連の事件の首謀者として逮捕されてしまいました。しかし、彼の妹である由美子だけは兄の無実を信じていました。そんな由美子にピースが近づきます。美人な彼女を、あわよくば自分にものにしようと考えたのでした。そしてテレビに向かって高井は無実である事を訴え続けたピースは、一躍時の人となりました。
模倣犯の結末
しかし、前畑滋子という以前ピースに夫を殺された過去を持つライターが疑問を持ちました。そして独自に調査を進め、ピースこそが今回の事件の犯人なのではないかと考えたのです。そして前畑はピースとの対談を設定し、敢えて彼の前で犯人を侮蔑する言葉を選び使い続けました。また、孫娘を殺された有馬からも電話が入ります。「犯人は愚かだ」という言葉に逆上したピースは、自ら自爆して事件に幕を閉じたのでした。
「模倣犯」感想・レビュー
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スティーヴン・キングの小説が素晴らしい映画に恵まれないのと同様に、宮部みゆきもまた自著の映画化に際して、原作と同等のクオリティが得られない作家であると思う。
その理由は奇しくも、スティーヴン・キングと一緒で、ディテールの積み重ねでリアリティを構築しているから、どうしてもセンテンスが長大になる。
映画はそれを限定された時間に置換しきれず、ダイジェスト以上のものを望む事が出来ないのだ。
そこで理想的なアプローチとしては、原作を思い切り意訳して真っ向勝負を回避するか、あるいは短編にするかだろう。そんな宮部みゆきの原作映画「模倣犯」は、単行本が上下巻合わせて1,500ページというベストセラー大著に敢然と挑んだのが、今は亡き森田芳光監督だ。
当時の森田監督といえば、「黒い家」で「悪魔のいけにえ」的なテイストを発揮し、「39–刑法第三十九条」も当時のサイコ・スリラーブームに便乗しつつ、極めてロジカルな傑作にした監督だ。
だから期待して観たものの、ところが森田監督はこの作品をとんでもない”実験映画”にしてしまったのだ。
新しモノ好きの本領を発揮してHD24pで撮影したものの、凝り過ぎて特撮映画でもないのに合成ショットが800にも及んだとのことで、それってゴジラよりも多いわ、製作が大幅に遅れるわで、かなり問題を起こしたそうだ。しかも、マスコミを利用して遺族を翻弄する狡猾な殺人犯を軸に置き、人間の悪意と犯罪心理に対して、深遠なテーマを投げかける原作の外殻だけ残し、後は学芸会的な演技しか出来ない中居正広演じる殺人犯を、意味不明のトリックスターにして、完成したのは森田版「怪人20面相」。
しかも、ラストは石井輝男監督の「江戸川乱歩全集/恐怖奇形人形」もかくやのウルトラ首花火大会。
それなら、最初から江戸川乱歩でもやればよかったんだ、みたいな変な結果になっている。でも津田寛治の小悪党ぶりや小池栄子のヴァンプなキャラなど、キャスティングの嗅覚の鋭さは、さすが森田芳光の面目躍如だとは思う。
基本的に私は映画を観る姿勢として、駄目な部分も愛おしいと思いながら観ることにしているのですが、この「模倣犯」という映画については、面白い!と思えなかったので残念でした。まず、原作の展開を期待して視聴するとがっかりします。文庫本で4冊~5冊もある話を映画の尺に合わせようとするとどうしても無理が生じてしまうのは仕方がないかなと。たとえば、二部作としてじっくり描写されていたらまた違った評価だったかもしれません。キャストのファンが観ると楽しめるかもしれませんが、原作のファンが観るとちょっと…いや、かなり惜しいという印象の作品でした。