マイ・カントリー マイ・ホームの紹介:2018年ミャンマー, 日本映画。日本で生まれ育ったミャンマー人女子高生が、日本とミャンマー、2つの国の狭間で揺れ動く姿を、恋愛模様を交えて描いたひと夏の青春ストーリーです。歴史の波に翻弄されてきたミャンマーの人々の境遇を、ミャンマーを代表するキャスト陣が綴る感動のヒューマンドラマです。
監督:チー・ピュー・シン 出演者:ウィ・モン・シュエー・イー(ナン)、アウン・イェ・リン(トゥラ)、ヤン・アウン(サイ)、森崎ウィン(木村アウン)、川添野愛、ほか
映画「マイ・カントリー マイ・ホーム」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「マイ・カントリー マイ・ホーム」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
の予告編 動画
映画「マイ・カントリー マイ・ホーム」解説
この解説記事には映画「マイ・カントリー マイ・ホーム」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
マイカントリー マイホームのネタバレあらすじ:1.夢見る少女
東京で暮らす日本で生まれ育ったミャンマー人の女子高生ナンは、パティシエになる夢を叶えるため、日々ケーキ屋でのアルバイトに励んでいました。パティシエの専門学校に行くためには学費が相当必要でしたが、ミャンマー料理店を営むナンの父サイは、娘ナンの夢を応援しようとしてくれませんでした。既に母は他界し、自分の夢を応援してくれる家族がない事にナンは悩んでいました。
そんなある日、トゥラというミャンマー人青年がサイの店に現れました。日本に来て6カ月、トゥラは日本の生真面目で几帳面な働き方に中々馴染めず苦闘していました。そんなトゥラを見かね、サイはトゥラを店で雇い始めます。突然よく分からない男を雇うことにナンは反発します。しかし、同国の困っている人を放っておけないと言うサイに、ナンは反論できませんでした。ナンの父に対しての苛立ちは募るばかりでした。
マイカントリー マイホームのネタバレあらすじ:2.国籍がない
それから間もなくして、父サイの55歳の誕生日が来ました。父との情況は同じでしたが、ナンは父へのプレゼントとして抹茶ケーキを作りました。抹茶のスイーツ作りをライフワークにしようと思っていたナンは、これで父に少しでも認めてもらおうと考えていました。しかし、ケーキをプレゼントしようとしたとき、ナンは父サイと従業員トゥラとミユキの会話から、自分に国籍がないことを知ってしまいます。また、サイがいつかナンと一緒に母国ミャンマーに帰ろうと考えていることも知ってしまいます。これまで日本人だと思って生きてきたナンにとって、これは衝撃的なことでした。
そんなナンは偶然、母の日記を目にします。そこには母と父サイの過去が記されていました。サイが日本に移住した理由は、約30年前のミャンマー国内での混乱にありました。当時、アウン・サン・スーチーが主導する民主化運動に参加していたサイと母は、逮捕から逃れるため国外へ逃亡し、難民として生きることを余儀なくされたのでした。サイと母はその後、結婚し夫婦となり、ナンという子宝を授かります。ナンという名前には「国や民族を愛する子に育つことを願って」という願いが込められていました。日本での暮らしは順調でしたが、故郷ミャンマーのことを忘れられない父と母は、ナンの高校卒業を機に家族で故郷へ帰ろうと考えていたのでした。衝撃の事実と亡き母と父の痛切な想いを知り、ナンは激しく動揺し、落ち込みます。
そんなナンを励ましたのはトゥラでした。また、父サイとも2人だけで静かに語り合う時間を持ちます。「ミャンマーの活動家たちが刑務所にいる間も、日本にいる私には人権や自由が与えられた。ミャンマーの事情を世界に知らせるため、民主化のために自由に発言できた」「じゃあ、なぜ帰りたいの?」「もし自分勝手な気持ちでこの国に居続けるなら、ミャンマー人の文化や民族の誇りを失うだけだ。家族が困っているから活動を始めたわけじゃない。国の将来のために人生を懸けて活動してきたんだ。新しい時代のお前たちが今の故郷を支えないなら、いつやるんだ?いつ帰るんだ?」父の故郷への強い想いをナンは知ります。しかし、日本生まれ育ち、日本でパティシエになる夢を諦められないナンに、ミャンマーに帰ることなど考えられませんでした。結局、ナンとサイは心から和解することはできませんでした。
マイカントリー マイホームのネタバレあらすじ:3.揺れ動く心
その数日後、サイの店に突然、木村アウンというアイドルが現れました。日本とミャンマーで活躍するミャンマー人歌手・アウンは、ナンにとっても憧れのアイドルでした。ナンは大興奮します。サイはアウンのため、鎌倉巡りを企画します。アウンとの観光旅行にナンは大はしゃぎします。そんな旅の中、アウンがふと語った言葉にナンは驚きます。日本で活躍するアウンでしたが、彼は日本国籍を持たず、ミャンマー国籍のままでした。「なぜ国籍を変えないの?」「父の影響かな。日本で働いていても、ミャンマー人としての意識は変えたくない。そんな父の思いがあるから国籍は変えていない。国籍は変えてなくても、日本には感謝する気持ちはずっと持っている。日本の人々も愛している。そしてミャンマーの人のことも絶対に忘れない」アウンの言葉にナンの心は揺れ動き始めます。そんな2人の様子を、密かにナンに思いを寄せるトゥラは複雑な心境で見つめました。
その数日後、ナンはアウンとデートすることに成功します。ナンは自分が無国籍で、日本とミャンマーとの間で板挟みになっていることをアウンに打ち明けます。「人種に関係なく、夢は頑張らないと実現できない。人それぞれに困難はあるんだ。何でも簡単にうまくいくのだったら、誰でも成功する」ミャンマー人として日本で夢を叶えることをイメージできないでいるナンに、アウンは微笑みながら語りました。
その夜、両親の故国ミャンマーを知りたい気持ちが強くなったナンは、夏休みに親戚を訪ねることにしました。サイは娘ナンの決断に喜びますが、民主化活動でどうしても譲れない問題が発生し、サイは旅に同行できなくなります。そこでサイの代わりにトゥラが案内役としてナンに同行することになりました。
マイカントリー マイホームのネタバレあらすじ:4.初めての故国
初めてのミャンマーへの旅にナンは不安を隠せません。そんなナンをトゥラは優しくエスコートします。ヤンゴンに到着し、ナンは初めて母の実家を訪ねます。祖母はナンたちを暖かく迎え入れます。早速、ナンはそこでモヒンガーを御馳走になります。その味は父サイの味と全く同じでした。「サイもこれを作るの?これはあなたのお母さんの味よ」祖母の言葉を聞き、ナンは父の母への深い愛を実感します。
その後、ナンは父親の実家に行きました。祖父母たちから涙で迎え入れたナンは、そこである寺院に案内されました。そこはサイたち活動家の寄付金で運営されている寺院で、子供たちがパソコンを使って勉強をしていました。その寄付金名簿の中には父の名、そして、自分の名、また、亡き母の名もありました。更にナンを驚かせたのは、父の故郷が茶葉の一大産地であることでした。茶畑で楽しそうに抹茶ケーキ作りの夢を語るナンを、トゥラは笑みを浮かべ見つめました。旅の中で2人の距離は近くなり、ナンはトゥラを意識するようなります。
そして、父の実家を去る日、ナンはサイが自分たち家族が帰国したときのための部屋があることを知ります。幼い頃から父がナンに母国語・ミャンマー語を教えていたのは、いつか故郷に帰り故郷を愛してほしいという願いがあったのです。また、サイたちの帰りをいつまでも待つと語る親戚たちの愛情に、ナンは深く心を打たれます。
日本への帰国前夜、ナンとトゥラはアウンのコンサートに行きました。愛する故郷ミャンマーをテーマにした歌を歌うアウンに見入るナンや、コンサート後にアウンと親しげに話すナンを見たトゥラは、その場から立ち去ります。すぐに追いかけてきたナンに、トゥラは想いを告白します。深刻な顔を崩そうとしないトゥラの耳元に、ナンは顔を近づけました。「愛してる」ナンはそっと日本語で呟きました。笑顔で見つめ合い、2人は手を固く握りあいました。
マイカントリー マイホームの結末:5.私の家
帰国の日、ナンとトゥラは民主化活動の激戦地だった場所を訪ねました。ナンは突然、靴を脱ぎ、素足になりました。ミャンマーの文化では聖地に入る時は素足になる文化がありました。ナンにとってそこは、両親が命を賭して闘った聖なる場所なのでした。そして、ナンは父サイにビデオ電話をかけました。
「私は無国籍なんかじゃない。私の家は両方の国にある。私はミャンマー国籍を取って、日本の学校に通うわ」ヤンゴンの街並みを背に笑顔で話す娘ナンの姿を見て、サイは涙を浮かべました。そして、ナンは親戚たちが自分の作った抹茶ケーキを気に入ってくれたことに触れ、ミャンマーでも自分の夢が実現できるとサイに語りました。
「そうだ。どこにいてもやっていけるんだ。お前は価値ある人間になっていくんだ」「お父さん、私にミャンマー人としての生をくれて、ありがとうございます」ミャンマー語で話す娘ナンに、微笑みながらサイは親指を立てました。
この映画の感想を投稿する