名も無い日の紹介:2019年日本映画。映画監督で写真家の日比遊一が自らの実体験を基に描き上げた人間ドラマです。海外でカメラマンとして活動していた一家の長男(永瀬正敏)は次男(オダギリジョー)の訃報を受け、生まれ故郷の名古屋市熱田区へと戻りました。三男(金子ノブアキ)共々現実を受け入れられない長男はカメラを手に取り…。
監督:日比遊一 出演者:永瀬正敏(小野達也)、オダギリジョー(小野章人)、金子ノブアキ(小野隆史)、今井美樹(明美)、真木よう子(小野真希)、井上順(稲葉一男)、藤真利子(稲葉奈津子)、大久保佳代子(直子)、中野英雄(八木)、岡崎紗絵(稲葉奈々)、木内みどり(伊藤久子)、草村礼子(小野スエ)、宍倉秀磨(竜太)、窪塚俊介(眼科医)、カトウシンスケ(谷口)、松澤匠(石川)、辻しのぶ(看護師)、松代大介(小野達也(18歳時))、前嶋曜(小野章人(15歳時))ほか
映画「名も無い日」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「名も無い日」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
名も無い日の予告編 動画
映画「名も無い日」解説
この解説記事には映画「名も無い日」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
名も無い日のネタバレあらすじ:起
小野達也(永瀬正敏)は三人兄弟の長男として愛知県名古屋市熱田区で生まれ育ちました。自由奔放な達也は高校を卒業すると故郷を飛び出してアメリカに渡り、今ではニューヨークで写真家として多忙な日々を送っていました。
名古屋は毎年6月5日に催される「熱田まつり」の準備に追われていました。達也は兄弟の次男・章人(オダギリジョー)が死んだとの知らせを受け、25年ぶりに名古屋に舞い戻ってきました。
従姉妹の稲葉奈々(岡崎紗絵)の車で宿泊先のホテルまで送ってもらっていた達也は途中で「ちょっと歩きたい」と申し出ました。奈々は母・奈津子(藤真利子)が精神的に参っているので明日にも家に来てほしいと告げました。達也は了承すると、昔のことを思い出しながら夜の街を歩き、久々に熱田の実家を訪れました。達也は主を失い、すっかり荒れ果てた家に足を踏み入れようとしましたが、結局立ち入ることはありませんでした。
達也の宿泊先のホテルには、結婚して名古屋を離れていた三男・隆史(金子ノブアキ)も泊まっていました。隆史と昔話をした達也は、かつての同級生だった伊藤秀行の母でこのホテルに勤める伊藤久子(木内みどり)とも再会しました。久子はぜひ息子に会いに来てほしいと頼み、達也は了解しました。
達也はカメラを手に、名古屋の街並みを撮ろうと繰り出したのですが、結局何も撮ることができませんでした。その後、達也は再び実家を訪れましたが、結局中に立ち入ることはありませんでした。
達也は入院中の祖母・スエ(草村礼子)の見舞いに行きました。スエは優しい心の持ち主だった章人を懐かしみ、かつては祭りの時期にどの家でも飾られていた提灯を最近すっかり見かけなくなったとぼやきました。病院を出た達也は、かつて章人から熱田まつりの時期には名古屋に帰って来いと言われたことを思い出しました。達也は両親の墓参りに兄弟三人で出かけた際、章人からニューヨークに行きたいと言われたことも思い出していました。
名も無い日のネタバレあらすじ:承
過去を振り返っていた達也の元に隆史から電話がありました。隆史は妻の真希(真木よう子)と共に既に叔父の一男(井上順)と奈津子夫妻の家に集っていました。実家で孤独死していた章人の第一発見者となったのが奈津子であり、彼女はそのことで精神的に参っていました。
その夜、達也は親友の八木(中野英雄)が経営する居酒屋を訪れました。店には同級生だった直子(大久保佳代子)も来ていました。達也が店を出た後、八木は直子に章人の死の詳細を尋ねましたが、直子にもわからないことでした。
店を出た達也は同級生だった明美(今井美樹)と再会しました。二人は商店街を歩きながら会話を交わしました。明美は達也がカメラマンになっていたことを知ると「世界中の素敵を記録するなんて、それだけでも素敵だね」と言いました。明美は同窓会には出席しておらず、忘れていくみんなが許せないのかもしれないと語りました。
達也がビジネスホテルに戻ると、隆史が部屋の前の廊下で待っていました。隆史は章人が引き籠るようになってから何度も様子を見に来たのですが、章人が頑なに拒んだことを振り返り、深く介入すべきだったと後悔しました。達也はカメラマンを辞めてまでも傍にいてやればよかったと言うと、隆史は章人は達也の夢を諦めさせてしまったとより一層自分を責めてしまっただろうと諭しました。
翌日。達也、隆史、真希は章人発見時の詳細を訊くため警察署へ向かいました。章人の死には事件性がなく、遺体が章人本人であるかはDNA鑑定の結果待ちであるとの説明を受けた達也たちは、章人の死亡推定時期が発見時の半年ほど前であると聞かされて言葉を失いました―――。
名も無い日のネタバレあらすじ:転
―――章人は三人兄弟の中では最も優秀でした。東京大学を卒業し、ハーバードの大学院を出た章人はバイオ系の研究員となっていましたが、達也が家を飛び出したため実家を継いでいたのです。達也や隆史は章人のことを誇りにしていましたが、章人は真面目過ぎるがゆえに思ったことを口に出せず、一人で抱え込んでしまう性格で、兄や弟にも本心を打ち明けることはありませんでした。
父も亡くなり、やがて母も亡くなり、章人は人目を避けるように実家に引き籠るようになりました。数年前に達也が一時的に帰国した時、章人は留守にしていたのですが実家はゴミ屋敷と化していました。達也は部屋の片づけをしていた際、章人が眼科で処方してもらったと思われる鎮痛剤を見つけました。
そこに章人が帰宅してきましたが、達也の呼びかけにも応じようとしませんでした。章人の右目は白濁しており、達也は章人が通院している眼科に問い合わせると、章人の右目はすぐにも手術が必要で失明の危機にあることを知らされました。
達也は章人を責めましたが、好きなことをやって生きている達也とは対照的にプレッシャーに飲み込まれて人生を挫折してしまい、這い上がる気力すら失った章人は「あんたに俺の何が分かる。結局、みんな自分のことしか考えていない。早くアメリカに帰れ」と言い放ちました。達也はそれでも自分は章人の兄だと告げてニューヨークに戻っていきました―――。
―――DNA鑑定の結果、遺体は章人本人であることが判明しました。章人の通夜と葬儀が手配され、達也と隆史夫妻は叔父叔母夫妻の家に泊まることにしました。達也は「章人の命日はいつになるんだ」とこぼしました。
通夜の日。途中で抜け出した達也は買い物に行き、そこで八木の息子・竜太(宍倉秀磨)と会いました。竜太は八木と離婚した母に引き取られており、父と面と向かって話したことがないことを打ち明けました。達也は自分の弟が死んだ話をし、自分から父を誘ってあげるよう諭しました。竜太はかつて章人が言っていたように「自分もニューヨークに行きたい」と言い出し、達也はいつでも来ていいと返しました。
名も無い日の結末
章人の葬儀が催された頃、街は熱田まつりで賑わっていました。達也はホテルで再会した久子の家を訪れ、達也がニューヨークに渡る前に事故死した秀行の位牌に手を合わせました。久子は今なお息子の墓参りをしてくれる人物がいることを告げ、達也にある頼み事をしました。
その後、達也はスエの見舞いに行きました。スエは達也に早くニューヨークに帰れと告げると、「人間は所詮、自分の真実しか持てん。章人の真実は章人にしか分からんのだ。あの子はあの子のもらった命を生きた。それでええ」と語りました。
病院を出た達也は夜の街を歩きながら章人の思い出に浸っていると、達也を探していた隆史がドライブに誘ってきました。二人は三兄弟が子供の頃によく行っていた川に向かい、隆史は達也になぜ写真を撮らないのかと訊きましたが、達也は答えられませんでした。
あくる日、達也は明美を誘って秀行の墓参りに行きました。明美はかつて秀行と交際していたのです。達也はそこで待っていた久子と明美を引き合わせ、二人きりにさせました。明美は今も自分のせいで秀行が死んだと自責の念に駆られ続けており、久子は「前に進んでちょうだい」と明美に声をかけました。
達也と隆史は業者に実家の片づけを依頼し、名古屋を離れることにしました。奈々は達也に、実家に置かれていた封筒を手渡しました。達也は実家を訪れ、今度こそは中に入ると、部屋の光景をカメラに収めていきました。
達也は静かに泣きながら、部屋に並べられた6膳の箸を撮影しました。それは三兄弟がとある土産物屋に行った際、章人が両親、三兄弟、そして真希の6名分買ったものでした。
その夜、達也は封筒を開けてみました。中には章人の字で「死ぬのは最後」と書かれていました。達也は改めて三兄弟が幼かった頃、まだ家々の軒先に提灯が飾られていた頃の景色を振り返っていました。
以上、映画「名も無い日」のあらすじと結末でした。
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