夏の終りの紹介:2012年日本映画。作家・瀬戸内寂聴が出家前の「瀬戸内晴美」時代に執筆した同名小説を映画化したものです。キャッチコピーは「だって、愛してるの。」で、瀬戸内自身の体験をもとに2人の男との三角関係に苦悩する女の姿を描いた恋情ドラマです。
監督:熊切和嘉 出演:満島ひかり(相澤知子)、綾野剛(木下涼太)、小林薫(小杉慎吾)、赤沼夢羅(鞠子)、安部聡子(小杉ゆき)、ほか
映画「夏の終り」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「夏の終り」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
夏の終りの予告編 動画
映画「夏の終り」解説
この解説記事には映画「夏の終り」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
夏の終りのネタバレあらすじ:起・知子の暮らし
時は昭和30年代、ある年の暮れ、染色家・相澤知子が帰宅すると、共に暮らしていた年上の作家・小杉慎吾は知子に「来たよ、今日。…木下くんさ。…よっぽど僕のことが信用ならなかったんだな」と告げました。知子は「いいじゃない。昔のことよ」とあっさりと慎吾に言いました。木下涼太とは知子が結婚していた12年前、偶然の出会いから恋に落ち、家庭を捨てて駆け落ちした相手でした。知子が今、同棲している慎吾は、同棲8年になる妻子持ちの作家で、愛人・知子を妻に認めさせたどこか飄々とした不可思議な男でした。慎吾は妻の家と知子の家を行き交いする生活を送っていましたが、染色家として自立していた知子は、その事に不満に感じていませんでした。知子は慎吾に妻と別れてほしいとも思っていませんでした。知子の家には、時折、鞠子という女学生が出入りしていました。
夏の終りのネタバレあらすじ:承・揺れる心
大晦日の夜、知子は風邪をひいてしまいました。慎吾は知子の看病をしていましたが、突然、慎吾は妻の元へ帰ってしまいました。年が明けたある日、体が弱っていた知子は、慎吾がいないことにひどく寂しさを感じました。そんな時でした。1本の電話がかかってきました。それは木下涼太からでした。知子は寂しさから涼太に「見舞いに来てくださらない」と誘いました。涼太は知子の求めに応じ、知子のもとへやってきました。「来たよ」と笑顔で言う涼太を、知子は笑顔で迎えいれました。駆け落ちした当時と変わらない情熱的な涼太に、知子は惹かれ、それ以来、心が揺らぎ始めました。慎吾は相変わらず、妻の家と知子の家とを行き交いし、知子の思っていた通りにはならず、次第に寂しさを感じ始めました。ある夜、涼太と知子はナイトクラブへ行きました。涼太は知子に慎吾のことを「家でも、あっちでも、あの人、奥さんの前でもそうなんだ。きっと優しいさ。でもそんなの愛じゃない。ヒューマニティさ。自分が傷つきたくないんだ」と評しました。
知子は慎吾との同棲関係を続けつつ、涼太と昔と同じような恋愛関係に戻っていきました。
夏の終りのネタバレあらすじ:転・愛欲の果て
ある夜、知子は衝動的に涼太の家に転がり込みました。知子は涼太と一夜を共にしました。翌朝、知子の心がなかなか手に入れない涼太は、激しい嫉妬心を持ちました。涼太はいつまでも知子と慎吾との関係が続くはずはないと思い、知子に執拗に問い詰め始めました。知子はそんな涼太に「うるさいわよ。いい年して、あれもこれもって言わないで。惨めったらしいのよ」と言い放ちました。涼太は「勝手にしろ」と知子に言い去っていきました。知子はふとかつて、涼太と駆け落ちするときのことを思い出しました。その時、夫は知子の頬を叩き、「女のくせに」と言い、泣く娘を抱き去っていきました。知子は「だって好きなのよ」と言い、地団太を踏みました。そんなある時、知子がいない間、慎吾と涼太は知子がいないことに寂しさを感じ、二人で何度か飲みに行く関係となりました。知子が旅から帰ってきたとき、二人は一緒に知子を迎えに行きました。知子は二人に笑顔で応えました。知子は愛欲に任せ、奔放に過ごしているうちに、慎吾と涼太とを天秤にかけた二股の生活に陥りました。そんな知子に、涼太は再び激しい嫉妬心を抱き、知子への独占欲を強めました。知子はそんな涼太のことを面倒に感じ始め、彼と距離を置くようになりました。ある夜、知子は涼太が「慎吾と別れて、また一緒になろう」と言われたことを話しました。すると、慎吾は「ほっとけばいい。おかしな奴だ。人のものばかり欲しがる。…くだらん」と評しました。ある日、知子は偶然、慎吾の妻・ゆきから送られてきた手紙を読んでしまいました。知子はその手紙を丸めて捨て、距離を置いていた涼太のもとへ行きました。「まるで女学生よ。べたべたして気色悪い」と知子が愚痴ると、涼太は「何言ってんだ。当たり前じゃないか。あっちは夫婦だ」と知子を諭しました。そう言うと涼太は「もういやなんだ」と呟き、知子をおいて家を出ていきました。数日後、罪悪感を募らせた知子は、慎吾の妻の家「小杉裁縫研究所」を訪ねました。すると家には慎吾がいました。慎吾の妻は東京に行っており、留守でした。会うことができなかった知子は、慎吾を家から連れ出しました。近所の目を気にする慎吾は知子と、喫茶店に入りました。知子は慎吾に涼太との関係を告白し謝りました。知子は「こんなのいやよ。もうどうしていいかわからない」と目に涙をこぼし嘆きました。知子は慎吾に「私が来たことを伝えてよ」と言い、約束させました。それから数日後、知子の家に慎吾が帰ってきました。慎吾は仕事の取材で忙しくなると言い出しました。それを聞いた知子は、慎吾を責めました。すると慎吾は、「もう居場所がないんだ」と泣き崩れました。知子も慎吾も、長かった関係に息苦しさを感じていました。
ただただ、どうしょもない三人の大人たちの三角関係。でも、元は小説が原作と言うことで、文学的美しさや気だるさが漂っており、嫌いではない作品です。満島ひかりさんは狂気のような女を演じるのがうまいなあ。どうしょもないのは、逆に言うと人間らしいことなのかもしれません。瀬戸内寂聴さん原作と言うことで、妙に説得力あるというか、リアルな人間を描いているなと思いました。