日日是好日(にちにちこれこうじつ)の紹介:2018年日本映画。二十歳になった典子は母の薦めで同じ年でいとこの美智子とお茶を習うことになりました。毎回同じことの繰り返しと思っていたお稽古も季節ごとに入れ替わる掛け軸や器、美しい和菓子にも次第に惹かれていきます。美智子は就職が決まると同時にお茶をやめて、しばらくすると結婚して故郷に戻り子育てを始めます。典子は美智子がいなくなっても淡々とお茶を続けます。お茶を通して自分の心と向き合い、自然の光や音、風を感じながら所作を学んでいきます。長い人生の流れのなか、四季を感じながら移ろいゆく自然。日本古来から続くお茶を通しての美しい人生物語。本作が遺作となった樹木希林さんはお茶の先生役として出演しています。
監督:大森立嗣 出演:黒木華(典子)、樹木希林(武田先生)、多部未華子(美智子)、原田麻由(田所)、川村紗也(早苗)、滝沢恵(由美子)、山下美月(ひとみ)、郡山冬果(典子の母)、岡本智礼(典子の弟)、荒巻全紀(南一恵)、鶴田真由(雪野)、鶴見辰吾(典子の父)、ほか
映画「日日是好日」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「日日是好日」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
日日是好日の予告編 動画
映画「日日是好日」解説
この解説記事には映画「日日是好日」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
日日是好日のネタバレあらすじ:起
典子(黒木華)の家の近くで、独り暮らしをしているいとこの美智子(多部未華子)は、よく典子の所に遊びに来ていました。今日も遊びに来てお菓子を食べながら楽しく話がはずんでいました。そんな二人を見ながら母(郡山冬果)はふと「ご近所にとても品のいい人がいるのよ。とってもお辞儀の仕方がいいんだけど武田さんって言う人で、お茶の先生をしているらしいんだけどね。」といいながら「二人でお茶を習ったらどうかしら?」と、いつも学校と家の往復だけの生活をしている娘の典子を、母親としては何かと気にかかっていたので、しっかり者のいとこの美智子と一緒に何かをしたらどうかなと考えたのでした。
典子は戸惑いながらも、美智子に誘われ二人なら楽しいかなとも思ったのか、習いにいくことになりました。近所と聞いていたものの、馴染みのない道を通って行きました。しばらく行くと、人通りの少ない場所の細い路地裏に大きな家があって、そこに看板が掛けられていました。
そこで初めて目にした武田先生(樹木希林)は、独り暮らしをされているようで気持ちよく中に通されました。二人が中に入ったものの、先生はすぐには来られないのでしばらく部屋の中をじっと眺めていました。普通の家の居間とは一味違って、掛け軸や「日日是好日」と書いた文字の額縁、一輪ざし、どれもが二人にとってはとても不思議な空間に見えたようでした。
しばらくして先生が来られて、初日はお茶をごちそうしてくださいました。先生からは、学生なのでこれからは土曜日にしました、とのことでした。それからというもの、帰りは二人で寄り道をしながらその日のお稽古の話から近況報告をしたり、将来の夢などを話したりしながら、お茶のお稽古に行くようになります。
2回目からは、帛紗さばき[ふくささばき]を習いました。お茶よりも先にお菓子が出て不思議に思っていると、先生が「まず、お菓子なの。」と言われました。なんだかとても不思議な気持ちになるのでした。回を重ねるごとに不器用な典子は一生懸命頭で覚えようとしていくのですが、先生からは「頭ではなく、体で覚えよ。」と言われるのでした。また「畳の歩き方から器の持ち方全て、形から入れ。」とも言われるのでした。そこで美智子は「それって形式主義じゃないですか」と反論するのですが先生は「何でも頭で考えるからそう思うのねぇ。」と一笑します。毎週土曜日になると、こんな感じで二人はなんとも摩訶不思議な気持ちで、お稽古を続けるのでした。
日日是好日のネタバレあらすじ:承
毎週土曜日の午後にお茶を二人で習っていましたが、美智子が二ヶ月ほど外国に行くことになり、典子も休もうかと思います。両親が食事に行くので一緒に行こうとしますがやっぱり気が変わりお茶に行きます。こうして美智子が帰国するまでしばらくひとりでお茶に通います。美智子が外国から戻るとまた二人でお茶に行きます。
学校の卒業もだいぶん近づいたある日、お茶の帰りに海を見に行きます。そこで将来の話をします。美智子は自分の希望通りの貿易商社に決まります。典子はものを書く仕事がしたいので、出版会社の入社試験を受験することにします。受験の前の週に受験があるから休みます、と連絡するのですが、落ち着かずにやっぱりお茶に行きます。結局、出版会社は落ちてしまいます。あきらめきれない典子はバイトをすることに決めて、そのままお茶は続けます。
お茶の稽古は卒業するまで二人は続けました。お茶会にも参加するようになり、器の見方を学び、たくさんのお弟子さんともふれあい、少しずつ上達もしていきました。しかし、卒業と同時に美智子は就職してお茶をやめてしまいます。
そしてまた一人になった典子はバイトしながらも、お茶に通います。少しずつ後輩もできました。主婦や婦人警官、高校生の女の子、みんな初めは長く正座ができなくて足がしびれて、お茶どころではなかったのですが、次第に慣れてきて上達していきました。高校生の女の子はセンスがあるのか、特に上達が早かったです。典子は今までは形を真似るだけで必死だったのが、少しずつ余裕が出てきたのか楽しくなって、季節ごとに変わる掛け軸や、12年に一度の干支の器や雨やお茶の水の音、お茶だけではなくまわりのものまでも、じっくり見たり、感じたりもできるようになってきました。しばらくすると美智子は退職して地元に帰ります。そして結婚して子供もできます。
日日是好日のネタバレあらすじ:転
気づくと30才になっていました。
楽しかったお茶だったのですが、後から入った人たちが典子よりもどんどん上達していく。仕事も典子は今もバイトのまま。武田先生には「手がごつく見える。10年にもなるんだから少しは工夫しないと。」と言われます。長年付き合っていた彼氏とも結婚の話が出て婚約するも、結婚式の1ヶ月前に相手の裏切りを知り、どうしても許すことができずに別れてしまう。
典子は自分の居場所が職場にもお茶の教室にも、どこにいても無くなってしまったような気持ちになります。両親と一緒に住んでいた家を出て、実家から30分ほど離れた所で独り暮らしを始めるようになります。バイトとお茶はそのまま続けるが、何かと忙しく、父から食事の誘いがあっても断ってしまう。その少し後に父の訃報を聞きます。大切な家族との別れ。そんなときも、やっぱりお茶に行き、桜を見ながら武田先生と話をすることで、気持ちが落ち着いて行きます。
日日是好日の結末
典子も武田先生も年を取っていきます。
お茶は何度も同じことの繰り返しで、淡々としているかもしれないけれど、すぐには見えなかったことが長く続けることで見えてくることもある。掛け軸も読むのではなく絵のように感じればいい、そんなことが少しずつわかってきたような気がする。季節を感じ、雨の音の違いもはっきりとわかるようになった。そうして武田先生の初釜を迎える。時々、お茶の会の時に現れる先生の親戚でセンスのいい雪乃さんは、典子の憧れの人。この日も雪乃さんに会った。そしてその雪乃さんから武田先生が若い頃の一時期、先生の先生から離れる時期があり、その事もあってその先生は亡くなられたことを聞かされます。
穏やかで上品な武田先生にもそんな過去があったことを知り、典子は驚きます。お茶会の時に武田先生が一期一会、今日という日は二度とない。同じことの繰り返しだけれど同じ人、同じお茶は二度とない。この瞬間をこの出会いを大切に、と。ずっと教室に行っていたのに教室に掲げてある「日日是好日」の意味がわからなかったけれど、毎日が素晴らしい、今日一日が素晴らしい1日ということが、やっとわかるようになったのでした。
以上、映画「日日是好日」のあらすじと結末でした。
「日日是好日」感想・レビュー
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「日日是好日」とはお茶席の掛け軸によくあります。これがお茶の神髄を表していることだということが映画を見てよくわかりました。
季節の二十四節気が映像として描かれていて美しかったです。
故樹木希林さんが出演で、お茶の先生がぴったりでした。でも樹木さんはお茶はこの映画で初体験ということがビックリです。役に真剣に取り組む樹木さんの名演技がみられてとても良かったです。 -
この映画の主人公に黒木華さんがぴったりだなと思い見に行きました。お茶を通して就職の事やお父さんとのやり取りがとても素敵でした。「今日という日は二度とない」という先生役のあの樹木希林さんの言葉がとても心に残りました。鶴見辰吾さん演じるお父さんの笑顔が忘れられません。どんな時もお茶があったというメッセージを受け取りました。
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私自身もお茶を習っており、公開前からあの希林さんが先生役で出演されるということでとても楽しみにしていました。希林さんは残念ながら公開前に逝去されましたが、「必ず劇場で見なくては」との思いで、映画館に足を運びました。
作品の中の茶道の流派は自分自身で習っている流派とは異なる表千家だったので、一つ一つの所作の違いにまず目が行きました。普段から着物を愛着されていた希林さんとあって、佇まいは自然そのものでしたが、一つ一つの所作も美しく、違和感なく見られたのはさすがの一言でした。所作のアップシーンが所々あったのですが、黒木さん・多部さん共にしっかりお稽古をされて臨まれたのだなと、清々しい気持ちになりました。
主人公の黒木さんが、「なぜ形にばかりこだわるの?」ともやもやしたり、自分の人生が思うようにいかずに「こんなお稽古してる場合じゃないのに」とやきもきしたりする点は、共感することばかりで気持ちが楽になりました。肩肘はらずに付き合えばいいんだと。
お稽古に悩んでしまってる人、そしてお茶って難しそうと思う人にこそ気楽に見てもらいたい映画です。 -
この映画は劇場で見逃していたので、BSテレビ東京の放送で見ました。樹木さんをはじめ出演の皆さんの演技、お茶室の雰囲気、その前に広がる庭の四季の移ろい、どれもが素晴らしかったです。
人生は心配や不安なこと、辛いことが沢山ありますが、だからこそ気がつくことも沢山あること、そのためには形、身体を信用すること、そして人生は生きる価値があることを想いました。
「日日是好日」、まだまだ想い至らぬ点ばかりと思いますが、大切なお守りの言葉としたいです。
大好きな希林さんの遺作と言うことで、劇場まで足を運びました。静かに自分と向き合って観たかったのですが、アンラッキーなことに、後ろのおばちゃん達がずーっとしゃべっていたので、話が頭に入らず、全く集中できずでした。これはもう一度自宅で観なくては!希林さんのお茶の先生の所作は本当に綺麗で、いつまでも観ていたくなりました。季節によって、お茶菓子などが変わり、日本を感じられる風情のある映画だったと思います。お茶は頭でなく、体で覚えるものというのが、心に残りました。