の・ようなもの の紹介:1981年日本映画。落語家の青年が恋愛や挫折を経験しながら人生を模索していく様をコメディタッチに描いた森田芳光監督の青春映画。2016年には本作の35年後を描いた映画「の・ようなもの のようなもの」が製作され、森田組で助監督を務めた杉山泰一がメガホンを取りました。
監督:森田芳光 出演者:秋吉久美子(エリザベス)、伊藤克信(志ん魚)、尾藤イサオ(志ん米)、麻生えりか(由美)、でんでん(志ん水)、加藤治子(由美の母)、ほか
映画「の・ようなもの」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「の・ようなもの」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
「の・ようなもの」の予告編 動画
映画「の・ようなもの」解説
この解説記事には映画「の・ようなもの」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
「の・ようなもの」のネタバレあらすじ:起
東京の下町。23歳の誕生日を迎えた落語家の志ん魚は仲間達にカンパしてもらい、初めてソープランドへやってきます。相手をしてくれたソープ嬢のエリザベスはどこかあどけなさの残る志ん魚を可愛いと気に入り、自宅の電話番号まで教えてくれました。その後エリザベスの自宅に遊びにいった志ん魚は、彼女が洋書を愛読するインテリな女性だと知り感心します。志ん魚はエリザベスに高級フレンチをご馳走してもらったりと分不相応なデートを楽しようになります。
「の・ようなもの」のネタバレあらすじ:承
ある日志ん魚は落語研究会に所属する女子高生達のコーチを頼まれ、弟弟子の志ん菜とともに高校を訪ねます。部員の由美に一目ぼれした志ん魚が電話番号を教えて欲しいと口説くと、由美も嬉しそうに応じます。その後志ん魚は兄弟子達や落語研究会の女子高生らとともに番組制作会社と協力して団地住まいの主婦向けに天気予想クイズを企画し大成功、その後も青空寄席と称して志ん米が団地の中で寄席を行って大盛況となります。高座では古典落語に挑む志ん魚ですが、客には退屈そうにあくびをされてしまいます。師匠にもお前の古典には面白みがない、現代ネタを取り入れてみたらどうだと言われてしまうのでした。
「の・ようなもの」のネタバレあらすじ:転
志ん魚はエリザベスに由美と付き合うことになったことを告白し、別れを告げようとします。しかし元々私達は友達なのだから別れる必要もないというエリザベスの甘い言葉に乗せられ、志ん魚はずるずると二股交際を始めるようになってしまうのでした。ある日由美との公園デートを楽しんだ志ん魚は彼女を自宅まで送り届けます。由美の自宅に招かれた志ん魚は由美の父からどんな落語をやっているのかと聞かれ、「二十四孝」という古典落語を披露します。しかし由美の父から古今亭志ん朝や立川談志に比べると下手だと辛口で斬り捨てられ、さらに由美も父の意見に同調し始めます。すっかり自信をなくした志ん魚は終電も逃してしまい、夜の街を彷徨い始めます。
「の・ようなもの」の結末
志ん魚を心配した由美はスクーターを走らせ、志ん魚を探し始めます。志ん魚は浅草に向かってひたすら夜の街を歩き続け、吾妻橋に差し掛かったころにはすっかり夜が明けていました。浅草へ着くと由美が先回りして待っていてくれました。兄弟子の志ん米が苦節20年にして真打に昇進することが決まり、仲間達は自分のことのように喜びます。一方エリザベスは友人に誘われ滋賀の雄琴に引っ越すことを決めたと言い、志ん魚は一抹の寂しさを覚えるのでした。志ん米の昇進を祝うパーティーが盛大に行われます。志ん魚は将来に対して漠然とした不安を抱えながらも、早く真打になりたいという志ん菜の言葉にしみじみと頷くのでした。
一風変わった映画だったなあ。回顧した時に最初に口から出た言葉でした。伊藤克信さんは形にはまらない男優さんであったということを良く覚えています。学生と社会人の両立を目指していた頃に場末の映画館で本作を鑑賞しました。当時はこれといった感想も無かったのですが、現在当時を振り返ってみれば冒頭の言葉に思いがけなく繋がったのでした。辛辣なようでそうでもなく、また深刻なようでそうでない。エロスの要素がかなり色濃く含まれているので、好き嫌いが分れる映画のはずなのですが、さっぱりとした内容であったのは、青春群像劇ならではでしょうかね。パッとしない落語家の彼が彼女の父親から辛辣な言葉を浴びせかけられて夜中の道をただひたすら歩いている姿が印象的でした。続編も機会が有れば鑑賞することにしましょう。時の隔たりがどう表現されるのかが楽しみです。