大綱引の恋の紹介:2020年日本映画。『半落ち』『陽はまた昇る』『ツレがうつになりまして。』などを世に送り出し、2020年3月に他界した佐々部清監督の遺作となったラブストーリーです。鹿児島県薩摩川内市の伝統の祭事である「川内大綱引」を背景に、主人公の鳶職人と韓国人女性研修医との恋、そして主人公の家族の姿が描かれます。三浦貴大が主人公を、元KARAの知英がヒロインを演じ、主人公の父を演じる西田聖志郎が本作の企画・プロデュース・鹿児島弁指導を兼任しています。
監督:佐々部清 出演者:三浦貴大(有馬武志)、知英(ヨ・ジヒョン)、比嘉愛未(有馬敦子)、石野真子(有馬文子)、西田聖志郎(有馬寛志)、松本若菜(中園典子)、升毅(中園喜明)、朝加真由美(中園サチエ)、中村優一(福元弦太郎)、金児憲史(吉留隆治)、恵俊彰(古賀圭介)、月影瞳(青崎秀美)、小倉一郎(阿久根信昭)、伊嵜充則(永山伸一)、金井勇太(竹之内俊郎)、安倍萌生(吉留由美)、吉満寛人(林芳郎)、池田倫太朗(濵田克之)、小山悠(吉村悠人)、西田あい(知佳)、沢村一樹(池田耕治)ほか
映画「大綱引の恋」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「大綱引の恋」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
大綱引の恋の予告編 動画
映画「大綱引の恋」解説
この解説記事には映画「大綱引の恋」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
大綱引の恋のネタバレあらすじ:起
鹿児島県薩摩川内市に400年もの間に渡って受け継がれてきた伝統の祭事、川内大綱引。この大綱引きは年に一度、毎年9月の秋分の日の前日に年一度行われ、町は「上方」と「下方」に二分して対決します。
祭の花形は「一番太鼓」「大将」「押大将」の三役であり、祭に参加する男たちにとって一番の花形である「一番太鼓」の座を射止めることは最高の栄誉でした。
平成の初め頃、当時10歳だった少年・有馬武志も祭に夢中になった一人でした。武志は祭で一際輝く父の姿に尊敬と憧れを抱いていました。武志の幼馴染である中園典子は、自分が女であることを理由に一番太鼓の座に就けないことを悔やんでいました。
それから月日は流れ、平成から令和になった直後の2019年(令和元年)6月。35歳になった有馬武志(三浦貴大)は東京のIT企業で働いていました。大学進学と共に状況した武志は、今ではすっかり大綱引への情熱も失せていました。
そんな折、武志の勤めていた会社は不況の煽りを受けて倒産。職を失った武志は故郷の薩摩川内市に戻り、父・寛志(西田聖志郎)が親方を務める鳶職の「有馬組」で鳶職人として働く一方、消防団員としても活動を始めました。
武志の家族は武志と寛志の他にも、「有馬組」の女将を務める母・文子(石野真子)と飲食店で働く妹・敦子(比嘉愛未)がいます。寛志は跡取り息子の武志に「早く身を固めろ」と口うるさく勧めていましたが、奥手な性格の武志には未だに恋の予感すらありませんでした。
そんなある日、所用で川内駅に来ていた武志は、駅内のコンコースで倒れた老人を助けようとしました。そこにたまたま通りかかった韓国人女性の研修医ヨ・ジヒョン(知英)が駆け寄り、武志とジヒョンは連携プレーで老人の命を救いました。老人が救急車で搬送された後、武志とジヒョンは互いに名乗ることもなくその場を後にしました。
武志が帰宅すると、文子が家族や社員一同を集めていました。この日60歳の誕生日を迎えた文子は、有馬組の女将そして一手に担ってきた有馬家の家事全般からの定年退職を宣言しました。次の日から文子は家事の全てを放棄し、家事は武志・寛志・敦子が分担して行うこととなりました。その頃から、文子は連日のようにある所へ出かけるようになっていきました。
大綱引の恋のネタバレあらすじ:承
7月。寛志は親友の中園喜明(升毅)の娘で武志の幼馴染である典子(松本若菜)が川内に戻ってきたことを知りました。自衛隊員となった典子は各地を転々としており、結婚して娘をもうけたものの離婚して鹿児島に赴任していました。典子は久々の大綱引を楽しみにしていました。
ある日、武志は大学時代に韓国語を学んだ経験を買われ、韓国からの訪問団の通訳のボランティアをすることになりました。1999年に川内大綱引の400年祭が開かれた際、韓国の昌寧郡が祭に参加したことがきっかけで、川内市と昌寧郡は定期的に交流を行なっているのです。武志はそこで偶然にもジヒョンと再会を果たし、二人は次第に心を通わせ合うようになっていきました。
その頃、敦子は川内でレストラン「スライダー」のオーナーをしている福元弦太郎(中村優一)と交際していました。川内に生まれ育った福元も武志と同じように東京で働いていましたが、つい最近川内に帰郷してレストランを開いたのです。
福元は大綱引の三役に選ばれることを望んでいましたが、福本家の属する「下方」に対し、敦子の有馬家や中園家は「上方」に属していました。そこで福元と敦子は自分たちの交際は祭が終わるまでは周囲に黙っておくことにしました。
大綱引の三役の発表日。選ばれた者には祭を主宰する「川内大綱引保存会」から本人に直接電話連絡があるのですが、武志は緊張のあまり携帯電話を自宅に置きっぱなしにしたままジヒョンが研修医として勤務している離島の下甑島へと向かいました。
大綱引の恋のネタバレあらすじ:転
この年、上方の「一番太鼓」に選ばれたのは有馬組に勤める武志の幼馴染にして鳶の師匠でもある吉留隆治(金児憲史)でした。一方、下方の「一番太鼓」に選ばれたのは何と福元でした。福元と敦子は改めて祭が終わるまでは交際を隠しておくことにしましたが、その時既に敦子は福元との子を妊娠していました。
福元は「一番太鼓」を辞退するから結婚しようと敦子に伝えましたが、敦子はそれに反対し、祭が終わってから両親に話をしようと提案しました。その後、敦子は街中で文子が若い男と一緒にいるところを目撃しました。敦子は文子が不倫をしているのではないかと疑いました。
9月。大綱引の準備が着々と進むなか、武志とジヒョンは本格的に交際をスタートさせていました。武志はジヒョンとの結婚を意識するようになりましたが、家族は国籍の違うジヒョンを受け入れてくれるのか非常に気になっていました。
そんな時、武志は文子が飲んでいる処方薬を見つけ、ジヒョンにそれが何の薬なのか尋ねてみました。一方の敦子も文子に妊娠していることを知られてしまいました。敦子は文子が若い男と一緒にいたことを咎め、一家は口論となりました。そこで武志は、文子ががんに侵されていることを明かしました。
文子が飲んでいたのは抗がん剤であり、若い男というのは文子の担当医だったのです。しかも文子のがんはかなり進行しており、文子は入院することとなりました。ジヒョンも文子に付き添うこととなり、その際に有馬家の者たちは武志とジヒョンの交際を知ることとなりました。
大綱引の師匠である寛志は活動を辞退してまでも文子に付き添いたいと願い出ましたが、文子は「私は川内の女だ。お父さんから綱を取ったら何も残らんよ」と活動を続けるよう諭しました。寛志は国籍の違いを理由に武志とジヒョンの交際には反対していましたが、文子は二人の恋を応援していました。
大綱引の恋の結末
そんな時、「一番太鼓」を担う吉留が神社の階段から転落して肩を怪我してしまい、太鼓を叩くことができなくなりました。「一番太鼓」の代役に選ばれたのは何と武志でした。実は吉留は文子のがんのことを知り、せめて文子に武志の雄姿を見せてあげたいとわざと怪我をしたのです。
不安がる武志でしたが、ジヒョンから思いもよらぬことを告げられました。あと2週間で研修期間が終わり、ジヒョンは韓国に戻って病院で勤務しなければならなくなったのです。
それを聞いた武志は奮起し、ジヒョンに帰国する前に自分が「一番太鼓」を務める姿を見せたうえで、上方が勝ったらジヒョンにプロポーズする決意を固めました。それからというもの、武志は上方の挨拶回りに出向き、寛志の指導のもと熱心に猛特訓に励みました。
そしていよいよ祭の当日。この日は420年記念の祭でした。大綱引の会場となる川内市内の車道には上方と下方の総勢3000人ものの男たちが集い、特別に外出を許可された文子も車椅子に乗って観戦に向かいました。文子、敦子、典子、そしてジヒョンらが見守るなか、遂に大綱引が始まりました。
川内市内が大熱狂に包まれるなか、文子は武志の叩く太鼓の音の異変に気付きました。典子は急いで自宅に引き返すと喜明から代わりの太鼓を借り受け、武志に渡しました。武志はその太鼓を威勢よく叩き続け、大綱引は武志の属する上方の勝利に終わりました。
数日後。敦子は晴れて福元との結婚が許されました。武志は帰国の途につくジヒョンを駅まで見送りに行き、彼女に祭につかった鉢巻きを贈りました。武志は韓国での綱引の祭に行くと約束し、必ず迎えに行くからとジヒョンに固く誓いました。
以上、映画「大綱引の恋」のあらすじと結末でした。
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