パンケーキを毒見するの紹介:2021年日本映画。新型コロナウイルス禍真っただ中の2020年に就任し、2021年までの約1年間政権の座に就いていた第99代内閣総理大臣・菅義偉の素顔を、ブラックユーモアや風刺アニメを交えたシニカルな視点で描いたドキュメンタリー作品です。日本アカデミー賞で最優秀作品賞など主要部門を総なめした『新聞記者』のプロデューサー・河村光庸が企画・製作・エグゼクティブプロデューサーを務めています。
監督:内山雄人 出演者:菅義偉、石破茂、江田憲司、村上誠一郎、古賀茂明、前川喜平、森功、鮫島浩ほか ナレーション:古舘寛治
映画「パンケーキを毒見する」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「パンケーキを毒見する」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
パンケーキを毒見するの予告編 動画
映画「パンケーキを毒見する」解説
この解説記事には映画「パンケーキを毒見する」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
パンケーキを毒見するのネタバレあらすじ:起
平成の時代が終わりを迎えようとしていた頃、新元号「令和」の額縁を掲げた当時の内閣官房長官・菅義偉。その後、菅は「自助、共助、公助、そして絆」とのスローガンを掲げ2020年9月に第99代内閣総理大臣へと就任しました。
本作は就任から1年を迎えようとしていた菅の素顔に迫るべく製作されたドキュメンタリーであり、タイトルの「パンケーキ」は菅の好物であり、首相就任当初にマスコミ関係者を招いて催された懇談会で振る舞われたものです。
映画スタッフは菅が総裁を務めた自由民主党(以下・自民党)の派閥・菅グループの中核を成す「ガネーシャの会」所属の若手議員、菅の元秘書、かつて菅と繋がりのあった市議や県議会議員、菅をよく知るマスコミや評論家、揚げ句の果てにはホテル、スイーツ店にまで取材を敢行しようとしましたが、大抵は軒並み拒否されていました。それでもごく一部の与野党議員や元官僚、ジャーナリスト、ノンフィクション作家などが本作のインタビューに応じてくれました。
アクアライン料金値下げ、NHKの受信料に関する交渉、ふるさと納税の創設、携帯電話料金の値下げに着手する一方、「GoToキャンペーン」や東京五輪開催への執念や新型コロナウイルスのワクチン接種の遅れなどの難題に突き当たっていた菅政権。かつて菅と総裁選を戦った自民党・石破茂は菅を「威圧感がある」と評しました。
立憲民主党・江田憲司は菅が橋本龍太郎政権時代から頭角を現していたことを振り返り、菅は有言実行の男だったと語りました。ノンフィクション作家の森功は菅の印象を割とにこやかで気づかいを見せる人物だと語り、元朝日新聞政治部出身のジャーナリスト・鮫島浩は菅を支える議員らによるグループの存在を示唆しました。
パンケーキを毒見するのネタバレあらすじ:承
法政大学教授の上西充子は2020年11月6日に行われた参議院予算委員会の一部始終に着目していました。菅は日本共産党書記局長・小池晃から日本学術会議の新会員6名を任命拒否した問題について問われましたが、自身の言葉でろくに回答することができず、内閣官房長官・加藤勝信が代わって回答しました。その後、菅は何事もなかったかのように「そういうことだと思います」と発言しました。
続けて質疑に立った立憲民主党・辻元清美は質問を小出しにし、菅からやんわりと回答を引き出す戦法をとりました。菅は策略に引っかかったかのように辻元の質問に釣られた回答をしました。
本作は、菅や菅の前の首相・安倍晋三など最近の政治家を「平気で嘘をつく」と断じました。政治家たちは地獄で鬼に舌を抜かれてもいいよう、予め何枚も舌を仕込んでいるというのです。
自民党・村上誠一郎は、首相になるだけの力を持つ歴代政治家にはそれなりの見識があったものの、安倍・菅あたりからそれが失われてきていることを危惧しました。石破は、元々政治家は国民に「お願い」する形をとっていたのが最近では国民に「命令」する形が多くなってきたことを指摘しました。
菅には金集めを得意とする手腕を持つ一方、「喧嘩師」としての一面も持ち合わせていました。2013年、アルジェリアで10名の日本人が死亡した人質事件が発生した際、菅は政府専用機の派遣を強行しました。その他にも、菅はふるさと納税や迎賓館の一般公開などにも貢献していました。
パンケーキを毒見するのネタバレあらすじ:転
1948年12月6日、秋田県のいちご農家に生まれた菅は上京して法政大学に進学、卒業後に建設大臣や通商産業大臣などを歴任した自民党・小此木彦三郎の私設秘書を務めました。1987年、38歳で横浜市議となった菅は「影の市長」と呼ばれるまで頭角を現し、1996年に47歳で衆議院選に初当選して国会議員となりました。
1998年の自民党総裁選の際、菅は所属していた会の長・小渕恵三ではなく、師と仰ぐ梶山静六の支持に回りました。その後、着実にキャリアを重ねて行った菅は2009年に当時の首相だった麻生太郎が不用意発言でバッシングを浴びた頃から注目されるようになり、安倍政権で官房長官を務めた後に首相の座へと昇りつめました。菅は世襲議員でもエリートでもない叩き上げでした。
元文部科学事務次官・前川喜平は、元警察庁で安倍・菅政権に内閣官房副長官として仕えた杉田和博のようなトップになりたくてもなれなかった人間がその仕返しを政権にぶつけるようなやり方は必ず分断を招くことになると警鐘を鳴らしました。
事務次官時代、出会い系バーに通っていたことを報じられた前川は、表沙汰になる前に杉田に呼び出されて注意を受けたことを明かしました。しかし、マスコミが取り上げる以前に杉田がなぜ前川のバー通いの件を知っていたのかは未だに謎のままでした。
前川のバー通いの一件以降、安倍政権時代では森友加計学園に関する問題や「桜を見る会」の問題などが山積していきましたが、安倍・菅政権はそれらの追及をのらりくらりとかわしていきました。本作は政治家が既得権益を手放せず、国民のことを全く顧みなくなったことを訴えています。
パンケーキを毒見するの結末
本作は例え話として、牧場で放し飼いにされている羊の話を始めました。冬が訪れ、外の羊たちは寒さに震えているのですが、牧場主は暖かい家の中で悠々と過ごしていました。
やがて冬の厳しい寒さに耐えかねた羊たちが次々と凍死していき、牧場主もようやく重い腰を上げて「すぐ暖かい小屋を作ってやる」と宣言したのですが、すぐに「大きな村祭りがあるのだ。そんな金、使うわけがない」と小屋作りを撤回しました。
隣町の牧場は早々と厳冬の対策が執られ、多くの羊たちの命が助かっていました。そのことを知った猿が羊たちを助けようと動きましたが、どこからともなく飛んできた吹き矢によって倒されました。牧場主はごく一部の毛並みの良い羊だけを延命させようと目論んでおり、羊たちを「決して怒ることはない。ずっとそうだ。彼らはすぐ忘れてくれるから。そんな生き物だ」と見下していました。
本作はアメリカのジャーナリスト、エドワード・R・マローの「羊の国家は狼の政府を生む」や黒人解放運動の指導者キング牧師の「問題になっていることに沈黙するようになった時、我々の命は終わりに向かい始める」との名言を引用しました。
石破は、かつての自民党は自由闊達な気風だったのが次第に変わっていってしまったことを指摘しました。いかに国民が酷い仕打ちを受けようとも、酷い政治を行う政治家が選挙で勝ってしまい、支持率は下がることがない現実。若者が政治に無関心になっていき、政治家もその傾向が続くことを願っている実情・・・。
今や日本は先進国7ヶ国(アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、カナダ、日本)からなる「G7」の中においても地位が著しく失墜しており、若者の幸福度などの割合も今や中国や韓国などに抜かされている現状です。本作はこのまま政治に無関心でいるべきなのかと観客に問いかけ、ひとつの時代の変わり目にある今こそ我々は考え直す時にきていることを訴えて幕を閉じます。
以上、映画「パンケーキを毒見する」のあらすじと結末でした。
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