嵐電の紹介:2019年日本映画。京都市内を走る路面電車・京福電気鉄道の嵐山本線・北野線、通称 嵐電(らんでん)の沿線を舞台に、ノンフィクション作家の男、カフェで働く女、修学旅行のために京都に来た青森県の女子高生の嵐電にまつわる3つの恋愛エピソードを描いていく群像劇です。
監督:鈴木卓爾 出演者:井浦新(平岡衛星)、大西礼芳(小倉嘉子)、安部聡子(平岡斗麻子)、金井浩人(吉田譜雨)、窪瀬環(北門南天)、石田健太(有村子午線)、福本純里(川口明輝尾)、水上竜士(永嶺巡)ほか
映画「嵐電」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「嵐電」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
嵐電の予告編 動画
映画「嵐電」解説
この解説記事には映画「嵐電」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
嵐電のネタバレあらすじ:起
ここは京都市内を走る路面電車、京福電気鉄道の嵐山本線・北野線、通称“嵐電(らんでん)”沿線です。冬のある日、神奈川県鎌倉市在住のノンフィクション作家・平岡衛星(井浦新)は、バッグひとつを担いで嵐電沿線にやってきました。
東映太秦撮影所近くのカフェ「キネマ・キッチン」で働く小倉嘉子(大西礼芳)は、通勤中の嵐電車内で吉田譜雨(金井浩人)という不思議な男と出くわしました。到着した駅で道に迷った譜雨は嘉子に道案内してもらいました。
青森県から修学旅行のため京都にやってきた女子高生の北門南天(窪瀬環)は、同級生たちと共に京菓子のマスコットキャラクターをラッピングした「夕子さん電車」が通り過ぎるのを目撃しました。「夕子さん電車」を見たカップルは結ばれるという都市伝説があり、南天は浮かれる同級生たちをカメラに収めていたところ、8ミリカメラで「夕子さん電車」を夢中で撮影している地元の男子高生・有村子午線(石田健太)と遭遇しました。
嵐電沿線で部屋を探していた衛星は別の電車を撮影していた子午線と出くわし、彼の持つ8ミリカメラに関心を持ちました。その後、地元の不動産屋に西大路三条駅近くの部屋を紹介してもらった衛星は、この嵐電にまつわる不思議な話が転がっていないかと尋ねました。衛星は電車にまつわる不思議話を本として出版しているのです。
嘉子は同僚と共に太秦撮影所に仕出し弁当を配達に出向きました。そこにはスタッフの川口明輝尾(福本純里)らと共にあの譜雨の姿がありました。譜雨は東京からやってきた売れない俳優で、この撮影所で撮影される「結婚オブ・ザ・デッド」という映画に出演することになっていたのです。
嘉子は明輝尾から、譜雨に京都弁を指導してやってほしいと依頼され、成り行きで引き受けることになりました。嘉子は明輝尾に促されるまま、台本を手に譜雨との方言指導を兼ねたセリフの打ち合わせに臨みました。その際、譜雨は嘉子に嵐山を案内してほしいと言い出し、すぐに「こんなこと言ってすいません」と取り下げました。
嘉子の父は入院中であり、いつも叔母に面倒を見てもらっていました。嘉子は行きつけのカフェの主人・永嶺巡(水上竜士)からもっと自分のことも大事にしてあげないとあかんと諭されました。
嵐電のネタバレあらすじ:承
その夜。嵐電沿線の名所を調べていた衛星の元に1本の電話がありました。衛星はこの仕事がひと段落したら戻ると相手に伝えました。翌朝、衛星が駅のホームでペンを走らせていると、そこに子午線が8ミリカメラをもってやってきました。大の鉄道オタクである子午線が夢中で電車を撮影していると、後から南天がカメラを手に追いかけてきました。
子午線は南天に名を名乗ることも拒否、「運命を信じる?」という南天の問いかけにも「俺は“電車”だけや。“電車とか”いう中途半端なものやないねん」と言って去っていきました。
その頃、「結婚オブ・ザ・デッド」の撮影は快調に進んでいました。譜雨の役はゾンビと化す新婚夫婦の友人で、どこからともなく現れたゾンビたちに襲われるというものでした。一方、南天は映画村を見物していた同級生たちと合流しましたが、この修学旅行を機にカップルとなった友人を見て複雑な心境になりました。
いつものように「キネマ・キッチン」で働く嘉子は、映画撮影現場に入り浸っていることを店の主人に揶揄されました。そんな嘉子は譜雨からナンパされたことを同僚に打ち明けていたところ、譜雨が共演者たちと共に店の外に姿を表しました。共演者たちは嘉子たちと一緒に食事しないかと誘いました。
嘉子は「自分は人見知りやから」と乗り気ではありませんでしたが、譜雨ひとりだけが共演者たちと別行動を取っているのが気になって後を追いかけてみました。嘉子は明後日の11時に帷子ノ辻駅で待ち合わせて一緒に嵐山に行こうと誘いました。
子午線は相変わらず駅で電車を撮り続け、居合わせた衛星に電車の製造年月や型番など事細かくウンチクを語りました。衛星は子午線に、嵐電にまつわる不思議な話がないか尋ねてみたところ、駅に「江ノ電」カラーの電車が入ってきました。この電車“江ノ電号”は嵐電と江ノ電が2013年に提携した記念にカラーリングされた車両であり、衛星は「江ノ電号か…」と感慨深くなりました。
その夜、衛星は妻・斗麻子(安部聡子)と電話をしていました。以前、衛星は京都出身の斗麻子と共に寒い時期に京都を旅したことがあり、一緒に“江ノ電号”を見る約束をしたものの、斗麻子がぎっくり腰になって旅館から出られなくなってしまったのです。
衛星はそれでも“江ノ電号”が見たいという斗麻子を支えながら沿線まで向かいましたが、結局“江ノ電号”は現れることはありませんでした。斗麻子は帰ろうよという衛星にもう少し外に居たいと言い出し、当時を振り返った衛星は「行っちゃだけだ…」と呟きました。
衛星と斗麻子が駅で写真を撮り合っていると、そこに1両の電車が入ってきました。その電車も残念ながら“江ノ電号”ではなかったのですが、衛星と斗麻子はキツネとタヌキの二人組の車掌に導かれるように電車に乗り込みました。当時を思い出した衛星は、あの時と同じ駅のホームで斗麻子の写真をじっと見つめていました。
嵐電のネタバレあらすじ:転
明後日。帷子ノ辻駅で落ち合った嘉子と譜雨は沿線を歩きながら台本の読み合わせをすることにしました。その後、電車で嵐山に着いた二人はすっかり打ち解け合い、河原を散策しながら語り合っていましたが、譜雨が今度一緒に京都タワーに行かないかと誘うと、嘉子は一転して神妙な表情になり、仕事を理由に「また今度…」と言葉を濁しました。
帰りの電車内でも嘉子と譜雨は表情が固いままでした。嘉子は譜雨とは別の駅で降り、どうしても嘉子のことが気になる譜雨は次の駅で降りて彼女を必死に探しましたが見つけることはできませんでした。そこで譜雨は嘉子の家の最寄り駅である御室仁和寺駅で彼女を待ち構えましたが、現れた嘉子は「私、ちょっとモヤモヤしてしまったんで…。譜雨さん、自分のしたいことばかり要求しはるんで…」と言うと、自分は自身がないから人と一緒にいるのは苦手だと打ち明けました。譜雨はいつか嘉子がどこかに飛んで行ってしまいそうな気がすると言うと「僕は真剣なんだ」と嘉子にキスをしました。
ちょうどその時、駅を“江ノ電号”が通り過ぎ、子午線が慌てて追いかけていきました。譜雨と嘉子は明日に帷子ノ辻駅で待ち合わせる約束をしました。そこにあのキツネとタヌキの乗った電車が入り、あっけにとられる子午線をよそに嘉子と譜雨は行先は何処へでも行くというその電車に乗っていきました。
車内で居眠りしていた嘉子が目を覚ますと、そこには譜雨の姿はなく、二人と“キツネ”と“タヌキ”しか乗っていないはずの電車は普通の乗客でごった返していました。
翌日。衛星は永嶺から、嵐電には乗ると健康になるといわれている“健康電車”が走っているという話を聞きました。衛星は妻とは別居しているという永嶺に、斗麻子と離れ離れの暮らしを送っているわが身のつらさを打ち明けました。そこに子午線と南天が現れ、キツネとタヌキの車掌が乗る“妖怪電車”に乗ると大切な者同士が別れてしまうという都市伝説があることを衛星に教えました。
続いて南天の同級生たちが現れ、南天を連れ戻そうとしましたが、南天は子午線とは運命で結ばれているといってききませんでした。しかし、それでも子午線は南天には全く気はなく、南天は同級生たちと共に店を後にしました。しかし、子午線が撮ったフィルムには南天の姿ばかりが映っていました。
その頃、嘉子は駅で譜雨を待っていましたが、そこにいた明輝尾から告げられたのは譜雨はすでに東京に帰ってしまったということでした。その夜、嘉子は永嶺の元を訪れると、永嶺は嘉子の父が撮っていた8mmフィルムを映写していたところでした。映像には幼い頃の嘉子が映っており、嘉子はフィルムに一緒に映っていた幼馴染の多田章雄(石上桂寿祈)のことが気になりました。
翌朝。子午線は駅にいる衛星に何をしているのか尋ねてみました。衛星は「どうすることもできないことを待ってるのかなあ…」と答えました。子午線はどうしても南天のことが気になってしまったと言うと、キツネとタヌキの妖怪電車を見てしまったことを打ち明け、「だからもう、会えない」と嘆きました。
嵐電の結末
譜雨の面影を追い続けていた嘉子は、嵐電の車両の整備をしている章雄と偶然に再会しました。章雄は「俺はあれから、ずっと嘉子を探し続けていた気がする」と語りました。
数日後、子午線の通う学校に何と南天が押しかけていました。南天は転校してきたと嘘をつき、すぐに家出してきたことを白状しました。子午線は妖怪電車を見てしまったのにどうして南天と再会できたのか不思議に思い、なかなか素直に気持ちを打ち明けられませんでした。南天は「私が好きなのは子午線だけだ!」と告白しました。
その頃、駅で譜雨を待ち続けていた嘉子は、現れた明輝尾から自分が映画を撮る時は女優として出てほしいと頼まれました。明輝尾は嘉子と譜雨の息がぴったりと合っていたのを見抜いていたのです。明輝尾はその時になったら譜雨にも出演してもらうと意気込んでおり、嘉子は涙ぐみながら「譜雨さんが出るなら出ようかな。詳細決まったら連絡ください」と伝えました。嘉子の目には、力尽きて倒れ込んだ自分の幻影の周りを高校生たちが戯れる光景が映っていました。
衛星は永嶺の店でコーヒーを飲んでいました。永嶺は、常連客にとっては毎回同じに思えるコーヒーの味も、新鮮な気持ちで飲むと美味しく思えることを話しました。それから永嶺は衛星や嘉子、地元住民たちを集めて嵐電のフィルム上映会を開きました。
フィルムにはなぜか、嘉子と譜雨が車内で楽しそうに語り合っているという嘉子の身に覚えのない光景が映し出されていました。そしてフィルムには駅のホームにたたずむ斗麻子の姿もありました。斗麻子は「衛星さん、どっか遠くへ行ってはるんやね…待ってるよ」と語りかけていました。
その夜、子午線と南天は一緒に駅に行くと、そこにあのキツネとタヌキの妖怪電車が入ってきました。子午線は咄嗟に、南天に「あの電車を見てはあかん!」と引き留めました。一方、駅ホームに居合わせていた衛星は、この電車に斗麻子の姿を見ました。
斗麻子は衛星に1枚の写真を渡すと、そのまま車両の中に消えていきました。それはかつて斗麻子が京都旅行の際に撮った衛星の写真でした。子午線と南天は妖怪電車には乗らず、そのまま駅から走り去っていきました。
それからしばらくして、嘉子は明輝尾がメガホンを撮る映画の撮影に女優として参加していました。嘉子は譜雨と共演しており、二人は互いに感情をぶつけ合った迫真の演技を見せました。一方、鎌倉の自宅に戻った衛星は斗麻子と水入らずの日々を過ごしていました。
夜になり、嵐電は終電が走りすぎていきました。静まり返った駅に嘉子と譜雨の幻影が現れ、これからやってくるキツネとタヌキの電車が来たら話し合うのをやめようと語り合いました。「私たちは変わってしまうから」と言うと、二人の幻影は手を取り合いながらすっと消えていきました。
以上、映画「嵐電」のあらすじと結末でした。
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