世の中にたえて桜のなかりせばの紹介:2021年日本映画。『ゴジラ』シリーズなどに出演してきた名優・宝田明が企画・製作総指揮を務め、本作が初の長編映画主演作となるアイドルグループ「乃木坂46」の岩本蓮加とダブル主演を務めたヒューマンドラマです。不登校となった女子高生は終活アドバイザーのアルバイトをすることになり、同僚の老アドバイザーと共に様々な事情を抱えた人たちの話を聞くうちに成長していく姿を描きます。宝田明は本作の公開直前に逝去し、本作が遺作となりました。
監督:三宅伸行 出演:岩本蓮加(咲)、宝田明(敬三)、土居志央梨(南雲先生)、名村辰(陸斗)、郭智博、柊瑠美、伊東由美子、徳井優(河川管理の男)、吉行和子(敬三の妻)ほか
映画「世の中にたえて桜のなかりせば」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「世の中にたえて桜のなかりせば」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「世の中にたえて桜のなかりせば」解説
この解説記事には映画「世の中にたえて桜のなかりせば」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
世の中にたえて桜のなかりせばのネタバレあらすじ:起
女子高生の咲は尊敬していた教師の南雲先生が生徒からのいじめを苦に学校を辞めてしまったことがきっかけで不登校に陥っていました。
そんな咲は終活アドバイザーの事務所でアルバイトをしています。「依頼者の話を聞くだけの仕事」という仕事内容を受けて応募した咲は、依頼者に扮した先輩終活アドバイザーの敬三の相談に乗るというネット広告のPR動画に出演しました。
咲は仕事を終えると南雲先生のアパートに向かい、今ではすっかりニートと化して引き籠もり生活を送っている彼女の身の回りの世話をすることが日課になっていました。しかし、南雲先生の精神状態は次第に悪化の一途を辿り、やがて死にたいと口にするようになっていきました。
世の中にたえて桜のなかりせばのネタバレあらすじ:承
そんなある日,咲の事務所もとにひとりの若い男が相談に訪れました。この男はあらかじめ遺書を書かねばならない仕事に就いたとのことで、まだ健康で死ぬつもりのない自分はいったいこの遺書に何を書けばいいのかわからないというのです。咲は何も答えることができませんでしたが、敬三はまだ整理されていないという男の父親の遺品を整理してみてはどうかとアドバイスしました。
男は実家に戻り、かつて消防士だった父親の遺品の整理をしたところ、中から無いと思われていた父親の遺書が出てきました。しかし、その封筒の中身の便箋には何も書かれていませんでした。この話を男から聞いた敬三は、その思いを書いてみてはどうかとアドバイスしました。
咲たちのもとに次なる依頼が舞い込んできました。それは河川管理の仕事をしていたという男が自分のしてきた仕事を動画として残しておきたいというのです。咲は学校の写真部員である同級生の陸斗に協力してもらい、河川管理の男に撮影場所を指定してもらうことにしました。
河川管理の男が指定してきた場所はいずれも道路や路地ばかりで、川は一見全く見当たりませんでした。河川管理の男が言うには、この場所はいずれも昔に川が流れていた場所であり、今では水害対策として地下水路に切り替えたとのことでした。
やがて咲たちは大きな川に辿り着き、水鳥が遊ぶ自然な空間を満喫していると、河川管理の男はこの川は完全な人工の川だと説明しました。陸斗は大切な仕事だったのだと感想を言うと、河川管理の男は涙ぐみながら初めて自分の仕事が報われたこと、そして自分の余命は長くないことを伝えてきました。
世の中にたえて桜のなかりせばのネタバレあらすじ:転
陸斗はこのことがきっかけで動画編集のため咲たちの事務所に出入りするようになり、敬三とも会話を交わすようになっていきました。
ある時、敬三はかつて自分も咲と同様に不登校児だったことを明かしました。太平洋戦争時代に満州で暮らしていた敬三は終戦を受けて日本に引き揚げてきましたが、理想で思い描いていたような世界とはかけ離れた現実に疎外感を覚えるようになり、家が貧しかったことも相まって学校には行かずに働いていたというのです。
そんな敬三に転機が訪れたのは、後に妻となる女子との出会いでした。その女子から勉強を教えてもらうようになった敬三はいつしか彼女に惚れ込んでいくようになり、再び学校に通うようになったというのです。
咲は敬三にやりたいことはあるのか尋ねてみました。敬三のかつての母校だった中学校の裏に春になると綺麗な満開の花を咲かせる大きな桜の木があり、敬三は妻と二人でもう一度桜を見たいのだと答えました。しかし、敬三の妻は体調がおもわしくなく、願いが叶うかどうかはかなり厳しい状況でした。
そんな時、咲は敬三からある和歌を教えてもらいました。敬三が国語教師となった妻から教えてもらったという和歌は「世の中にたえて桜のなかりせば・・・」。
世の中にたえて桜のなかりせばの結末
咲は陸斗と共に、敬三が言っていた桜の木を探すことにしました。苦労の末、咲たちはようやくかつて中学校のあった場所を突き止めましたが、桜の木は既に枯れてしまっており花を咲かせることはありませんでした。桜探しの一方で、咲は南雲先生をいじめていた生徒を捕まえ、本当にそれでいいと思っているのかと迫りました。
咲たちは枯れた桜の木を撮影し、敬三夫妻と南雲先生を大きなスクリーンのある場所に招待しました。陸斗は桜の木にCGで作った満開の花を重ね合わせてスクリーンに映し、敬三夫妻は当時のことを懐かしみながら二人で一緒に過ごしてきた時間が一番の宝物だと振り返りました。
敬三の妻は咲に、当時学級委員だった自分は先生から敬三を登校させるよう命じられていたことを打ち明けました。南雲先生は敬三の妻に自身のこれまでのことを相談し、自分は今まで完璧にやろうとして失敗したことを打ち明けました。敬三の妻は完璧な先生を好きな生徒なんていないと助言しました。南雲先生はこれを機に新たな道を踏み出す決意をしました。
咲は再び学校に通い出すようになりました。ニュースでは以前に咲たちのもとに遺書の相談に訪れていた男が宇宙飛行士としてロケットで飛び立ったところが流れていました。
以上、映画「世の中にたえて桜のなかりせば」のあらすじと結末でした。
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