しあわせのパンの紹介:2011年日本映画。北海道の洞爺湖畔に小さなパンカフェ・マーニが開店した。季節の食材を使ったパンと美味しいコーヒーで、訪れる人のお腹も心も温かくしてくれる。いろいろな悲しみを持ったお客さんが、りえと水縞の暖かい心で幸せな気持ちを取り戻す。近所の変な常連さんとのおかしな交流を描くハートフルドラマ。
監督:三島有紀子 出演:原田知世(水縞りえ)、大泉洋(水縞尚)、森カンナ(齋藤香織)、平岡祐太(山下時生)、光石研(未久のパパ)、八木優希(未久)、中村嘉葎雄(阪本史生)、渡辺美佐子(阪本アヤ)、中村靖日(広川のだんなさん)、池谷のぶえ(広川の奥さん)、本多力(郵便屋さん)、霧島れいか(未久のママ)、あがた森魚(阿部さん)、余貴美子(陽子さん)、ほか
映画「しあわせのパン」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「しあわせのパン」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「しあわせのパン」解説
この解説記事には映画「しあわせのパン」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
しあわせのパンのネタバレあらすじ
北海道の洞爺湖の湖畔に2階建ての小さなお店が建ちました。お店の名前はパンカフェ・マーニ、水縞(大泉洋)の焼く季節のパンと、りえ(原田知世)の淹れる美味しいコーヒーが自慢のお店です。二人は夫婦で、東京からこの北海道にやってきました。店の名前のマーニは、りえが大事にしている絵本の主人公の少年の名前から取ったものです。冒頭、少女が図書館で、月とマーニというタイトルの絵本を読んでいるシーンから始まります。絵本の内容は「少年マーニは、自転車のかごに月を乗せて、いつも東の空から西の空へと走って行きます。」「ある日、やせ細った月が言うのです。ねえマーニ、太陽をとって、一緒にお空にいるととってもまぶしくって」「だめだよ、太陽をとったら困っちゃうよ。」「どうして?」「だって太陽をとったら、君がいなくなっちゃうから。」「そしたら、夜に道を歩く人が迷っちゃうじゃないか。」「大切なのは、君が照らされていて、君が照らしているということなんだよ。」。月とマーニは抱き合います。
水縞は、妻のりえをいつも見守るように、そばに寄り添っています。月と湖が見える風景の中で、薪でパンを焼く水縞の姿が見えます。そんなお店に、一風変わった近所の住民が顔を出します。何故か、毎日郵便を届けてくれる郵便屋さん(本多力)が入って来ます。店の中にはいつもトランクを持っている阿部さん(あがた森魚)が座っています。店内にりえの淹れるコーヒーの香りが漂っています。水縞が焼きたてのカンパニを持って入って来ます。水縞の作る焼きたてのパンと、りえの淹れるコーヒーと季節の野菜の料理、2階にお客様用の宿泊ベッドがあるのが、カフェ・マーニです。
しあわせのパンのネタバレあらすじ:ガラス作家の陽子さん
ガラス作家の陽子さん(余貴美子)は失敗した作品を壊しています。注文した鏡を取りに来た二人は、邪魔をしないように足音をしのばせて入りますが、陽子さんは気付いています。鏡でしょう?と声をかけられて二人は驚きます。どんなに小さな声で話しても陽子さんは地獄耳です。持って帰った鏡はぴったりで二人は喜びます。部屋に置いてあるビンにお金を入れます。一ついいことがあると、なんとなく小銭を入れるのです。
しあわせのパンのネタバレあらすじ:季節は夏
お店の電話が鳴り、女性の声で二日泊まりたいと予約が入ります。パンカフェ、マーニに東京から女性の宿泊客が来ました。彼女の名前は香織(森カンナ)、バッグの中には沖縄のパンフレットと水着が入っています。湖でボートに乗っていた香織に友達から電話がかかります。そして沖縄のビーチにいると嘘を言います。そして、バランスを崩してボートがひっくり返ってしまいます。鉄道員の時生(平岡祐太)が休暇でカフェに宿泊するためにやってきます。その後、びしょ濡れの香織が入って来ます。驚くりえが、大丈夫ですかと尋ねたら、大丈夫と言って二階にあがります。時生は、香織にタオルを届けてほしいとりえに頼まれます。香織がシャワーを浴びていたので、時生は戸惑いますが、香織が顔を出したので手渡します。夕食の時に、香織が酔っ払って、沖縄に一緒に行く予定だった彼氏にすっぼかされた話をします。その夜、時生は香織が草原でけつまずいて、子供のように転がりながら泣いているところを目撃します。思わず笑ってしまい、気付いた香織にサンダルを投げつけられます。
しあわせのパンのネタバレあらすじ:香織と時生とコロポックリ
あくる日、水縞は香織を連れて村を案内していきます、時生も荷物運びに連れ出されます。香織と時生は沖縄で日焼けしたようにする為、外で日光浴をします。何故か時生は水中眼鏡を付け、香織は足ひれをつけています。時生と香織が沖縄土産を探しますが、見つかりません。香織がどうして沖縄の土産が売っていないのとぼやくと、時生は、それは東京の感覚だと話していると、バイクがガス欠で止まってしまいます。そこは、ちょうどガラス工房の前で三階から陽子さんが声をかけます。陽子さんが、沖縄のみやげ物を探しているの?と尋ねます。ガラス工房で地獄耳の陽子さんには二人の話が聞えていたのです。店の中をごそごそして探すと木彫りのコロポックリが出てきます。コロポックリは家の前に黙ってプレゼントをくれるのだと話し、小さな幸せをくれる人形だと香織に手渡します。
しあわせのパンのネタバレあらすじ:香織の誕生日
その夜、香織がお洒落をして二階から降りてくるとケーキとワインが用意されていました。みんなが、香織の誕生日パーティーをしてくれたのです。水縞が、お祝いの時に食べるクグロフという特別なパンを出してくれました。香織は、皆でパンを食べて、しあわせな時間を過ごします。香織は時生に、私はかっこ悪い女だと思ったでしょと尋ねます。時生は自分がかっこ悪いと知っている者は大人だと思う、もがいたことのある者が幸せになれるのだと思います、と答えます。時生は自分が電車を方向転換させるポイントを毎日切り替える仕事をしていることを話します。電車は簡単に切り替えられるのに、自分の人生は簡単に切り替えられない、自分はこの北海道を出ていけない、とつぶやきます。香織は時生にもがいているじゃん、と言い、一緒に東京に行こうと誘いますが、時生は無理です、仕事もないし、と断ります。
しあわせのパンのネタバレあらすじ:香織と時生のチェックアウト
香織が東京に帰る日、水縞が今日はライ麦パンがうまく焼けたと話すと、香織がこれくださいと言います。これは多すぎると話すと会社の皆に食べてもらおうと思って、月浦のお土産ですと笑顔で言います。香織が、時生はどうしているのか?と尋ねると、水縞は、朝早く帰ると言って出ていったと答えます。香織は一瞬顔を曇らせます。二人に「今までで一番いい誕生日でした」とお礼を言って時生に「いろいろ付き合ってくれてありがとう」と伝えてほしいと頼んで、出て行きます。香織がバス停にいると、時生がバイクで送って行くよと現れます。香織を後ろに乗せて走り出してから、時生は東京まで送って行くと話します。香織も笑顔で承知します。コロポックリが揺れるキャリーバッグを引きずりながらバイクは走ります。
しあわせのパンのネタバレあらすじ:水縞とりえの回想
夜になり、りえが時生が無事に東京まで運転出来たか心配しています。水縞は大丈夫だよ僕だって出来たんだからと言います。ここまで遠かったねとりえは思いにふけます。水縞は「りえさん、ここで無理して笑うことないよ・・僕のほしい物は一つだけだから」と優しく話します。りえがなにを?と尋ねると水縞は内緒ですと答えます。
しあわせのパンのネタバレあらすじ:季節は秋
水縞とりえは散歩をしながら、栗拾いをして栗のパンを作ることにしました。店に帰りパンを作っているとガラス作家の陽子さんが忍び込んできます。二人は見つからないようにカウンターに隠れます。陽子さんはそっと入って来て、ガラスの花瓶を出して置きます。そして、にこっと笑い出て行きます。二人は顔を出して、今年の新作だねと微笑します。後ろから陽子に「栗のパン食べますか?」と声をかけます。
しあわせのパンのネタバレあらすじ:悲しい少女
水縞とりえは、バス停で学校に行くバスに乗らずに暗い顔をしている少女・未久(八木優希)が気になります。未久を店に招いてホットミルクを出してあげます。その時、店に子沢山の常連客が来店します。新たに生まれた子供のことを愛おしく紹介しています。未久は、そちらを見ないで背中を向けています。阿部さんの大きなトランクの中は何が入っているのか話題になります。水縞が学校にパンを届けに行くので未久を一緒に乗せます。学校では明るく友達と話す未久でしたが、帰りのバスで一人の時は暗い顔になっています。家に帰ると誰もいなく、流しには洗い物が溜まり、テーブルの上に晩御飯代と書かれたメモとお金があります。パパ(光石研)が帰って来て、未久はママのかぼちゃのポタージュが食べたいと告げます。パパは困った顔をして、未久の目から涙がこぼれます。次の朝、未久はパパにバス停まで見送られます。一人になった未久のパパは、カフェ・マーニに入ります。コーヒーを頼んだ後、水縞とりえが夫婦でお店をしていることを羨ましがります。水縞は、好きな人と、好きな場所でパンを焼いて、散歩して、来られるお客さんにもここでパンを食べて景色を感じてもらいたいと話します。一人で出来なくても、二人なら出来ることがあります。それを聞いてパパは寂しそうな顔をします。
しあわせのパンのネタバレあらすじ:未久の母
日が変わり、店の前に未久が立っていたのでりえは招き入れます。かぼちゃのポタージュスープを出してあげます。未久はその皿を見つめて回想します。家族揃って、ママの作るかぼちゃのポタージュを、美味しそうに飲んでいます。未久は、このスープが一番好きでした。ある晩、パパとママが言い争っているところを見ます。そして、未久の部屋の隙間からママは未久を見て、黙って出て行きます。窓からママが車の助手席に乗って出て行くのを見てしまいます。回想はここで終ります。突然未久は「いらない、絶対にいらないから」と怒鳴ります。正気に戻り、りえに詫びて店を飛び出します。
しあわせのパンのネタバレあらすじ:招待状
りえは郵便屋さんに未久宛ての手紙を頼みます。美味しい夕食をつくっているから、お腹が減ったら食べに来てと書かれています。未久は店に来て席に座っています。そこにパパも来店して、二人は驚きます。りえは未久とパパに、別々に招待状を送っていたのです。二人が席に着くと、かぼちゃのポタージュが出て来ます。未久は店の外に飛び出してしまいます。心配してりえが出ようとすると、水縞が未久ちゃんは大丈夫、と止めます。未久は半月を見て、意を決したように店の中に戻ります。席に戻り、皿を引き寄せて、一口かぼちゃのポタージュを飲みます。立ったままのパパも、席に戻り、かぼちゃのポタージュを飲みます。未久が美味しいねとパパに向かって言うと、パパも美味しいねと応じます。でも、違うね、ママのかぼちゃのポタージュとは違うねと未久が言います。パパもああ、違うなと応じます。未久が、ママはもう戻らないんだよねとパパに尋ねます。パパはしばらく沈黙した後で、ママは戻らない、ごめんな、黙っていてごめんな、と答えます。その時、阿部さんが突然立ち上がりトランクを開けます。阿部さんはアコーディオンを取り出し奏で始めます。心を込めて、愛と春を弾きます。未久とパパは涙を流しながら、曲を聴きます。水縞がパンを運んできます。そのパンをパパがちぎって未久に手渡します。二人はパンをかぼちゃのポタージュにつけて食べ始めます。二人に笑顔がうかび、水縞とりえはホッとします。また来てくださいと二人が言うと、パパは「本当にありがとうございました」と頭を深く下げて出て行きます。パパと未久は手をつないで帰って行きます。店の中では阿部さんへのお礼にりんごの蜂蜜パンを出します。美味しそうに食べる阿部さんが、私は辛党なんですよと二人に言います。水縞とりえはしあわせな笑顔になります。
しあわせのパンのネタバレあらすじ:季節は冬
風の強い日、少しだけ休ませてほしいと関西弁で電話がかかります。駅まで水縞が車で迎えに行きます。待っていたのは、老夫婦でした。車の中で阪本史生(中村嘉葎雄)は、昔、あや(渡辺美佐子)に振られてここに旅行に来たことを話しだします。その時にあやが後を追いかけて来て、二人で月を見たそうです。史生は有珠駅でもう一度プロポーズして、あやが承諾してくれたのです。娘の名前を有珠駅と月を合わせて、有月と名付けたと言います。50年ぶりにこの有珠駅に来て、月を見る為に来たと水縞に話します。カフェ・マーニに着いて、お湯をもらい、あやは薬を飲みます。あやはパンが嫌いなので、ご飯はないかと尋ねますが、米を切らしていました。水縞は米を貰いに外に出ますが、出際にりえに「ちゃんと見ていて」と言います。なんとなく二人の様子がおかしいと感じたからです。史生はカバンから日の出湯と書かれた暖簾(のれん)を見ます。窓から外を見て「月が見えんな」とつぶやきます。史生はあやを愛おしそうに見ています。しばらくして、月が顔を出し「そろそろ月を見に行こうか、有月も待ってるわ」と吹雪の中、外に出ようとします。りえは慌てて引き止めます。その時、水縞が帰って来て、月ならこの窓から見えますからと無理やり引き止めます。りえが史生に2人の生活を尋ねます。史生は神戸で2人でずっと銭湯をしていたと話します。地震で全て失ったと言い、娘の有月もその時に亡くしたと話します。それでも、皆に暖かい風呂をと思い、建て直しました。しかし、自分の体の衰え、明日に夢を持てなくなり、生きていくのはもう充分だと思ったのです。
しあわせのパンのネタバレあらすじ:豆のパンとの出会い
二人の前に柔らかいご飯とポトフが置かれます。あやが、ポトフのジャガイモを食べて、美味しそうな顔をします。色とりどりの豆が入ったパンが目につきます。傍に近寄っていき手に取ると、史生が「食べられへんやろ」と止めに行きます。あやはパンを口にして美味しそうに食べます。史生が「パン美味しいんか?」と聞くと、「美味しい」とあやが幸せそうに答えます。私、明日もこのパン食べたいなとあやが言うと、史生は唖然としてしまいます。あやが「お父さん、ごめんなさいね」と言うと史生は涙を流して「わかった」と答えます。あやがパンをちぎって史生に手渡すと史生も食べてうまいと言って二人並んで食べます。りえが「明日、またパンを食べてください。」と言います。水縞がパンをこねているところに史生が寄ってきます。自分の好きな言葉のカンパニオの意味を話します。語源はパンを分け合う人達です。水縞は、しばらくここで過ごすように勧めます。もう少ししたら、ここから満月が見えるからと説得します。
しあわせのパンのネタバレあらすじ:カンパニオ
カフェ・マーニの前に列が出来ます。先頭にアコーディオンを弾く阿部さん、続いて郵便屋さん、広川夫妻、陽子さん、それぞれ持って来たものを見せます。それを見て史生とあやは驚きます。持ち寄った食べ物を並べてワインで乾杯をします。皆が時を忘れて笑っています。満月の日、史生とあやは月を見ながら「綺麗だね、月はいつもここにあるね」と言います。あやが「これでお土産が出来たわ、お父さんありがとうね」と笑顔で言います。水縞とりえは駅で二人を見送ります。あやは電車の窓から笑顔を見せて帰って行きました。見送った後、りえは水縞をずっと見ていて「私も水縞君のことをずっと見るから」と言います。「ありがとう水縞君、私の為にここに来てくれて」といいます。
しあわせのパンの結末:季節は春
郵便屋さんが一通の手紙を届けます。中村史生さんからの手紙でした。手紙には、この春にあやが亡くなったと書いてあります。カフェ・マーニへ行った頃、あやが長くない命と知って、一緒に死ぬ気だったことが書いてあります。しかし、それは自分の傲慢だったと書かれていて、あやが、それまで食べなかったパンを美味しそうに食べたことで、人間はいつまでも変わり続けられるのだと気づいたそうです。最後にカフェ・マーニで過ごした時、カンパニオ~仲間と一緒に過ごすこと~こそ、しあわせがあるように思います、と書かれてありました。水縞とりえはテーブルに向かい合って座りました。お互いのパンをちぎって交換しました。りえが「見つけたよ、私のマーニ」と幸せそうな笑顔を見せています。水縞も一番欲しいものが手に入ったようです。
しあわせのパンの結末:水縞とりえのしあわせ
カフェ・マーニの開店2周年記念日、常連さんにパンを贈ります。しあわせのパンと書かれています。郵便屋さんがみんなに届けに出て行きました。りえが「来年のお客さんが決まったよ」と外から走ってきます。水縞が「ずいぶん先のお客さんが入ったんだね、どこからくるの?」と訪ねます。
りえは自分のお腹を指差すのでした。
以上、しあわせのパンのあらすじと結末でした。
「しあわせのパン」感想・レビュー
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ものすごく癒される映画です。水縞くんとりえさん二人の空気感、カフェマーニの存在感、北海道の自然。見るといつも心が浄化される感じがします。あんな癒しのカフェがあったら素敵。それぞれのエピソードも、二人の関係性もゆっくりあたたかく変化していくのがよかったです。
初めてこの映画を観たとき、こんなに穏やかで楽しくて優しい気持ちになれる映画ってあるんだ、と思いました。音楽も人もストーリーも全てが優しくやわらかい。水縞くんがつくるパンとりえさんがつくる季節の料理が、マーニに訪れる人々の心を癒していきます。この映画は終始女の子が可愛らしい声でナレーションをしているのですが、実はそのナレーションをしている女の子は水縞くんとりえさんの元に生まれてくる子どもだったということが最後にわかります。その女の子のセリフを聞いたとき、なぜか涙が止まりませんでした。なんとも言えないあたたかい気持ちなのに涙が止まらない。不思議な感情でした。この映画はお気に入りになり、DVDを購入して今でも見ては優しい気持ちを取り戻しています。