日輪の遺産の紹介:2010年日本映画。『鉄道員』で直木賞を受賞した浅田次郎が「若書き」と評する長編小説 日輪の遺産(1993年)を原作にした映画。キャッチコピーは「いつか、この国が生まれかわるために」、「浅田文学の原点。復興に信念を貫いた4人の男と20人の少女たちの運命。」で、第2次世界大戦終戦末期に、マッカーサーの財宝を巡る極秘作戦を遂行した陸軍将校たちと20名の少女たちの運命が描かれた作品。監督は『半落ち』(2004年)などの佐々部清、脚本は『あなたへ』(2012年)などの青島武です。
監督:佐々部清 出演:堺雅人(真柴司郎/近衛第一師団・少佐)、中村獅童(望月庄造(座間五百一連隊・曹長))、福士誠治(小泉重雄/東部軍経理部・主計中尉)、森迫永依(久枝)、土屋太鳳(スーちゃん)、ミッキー・カーチス(マイケル・エツオ・イガラシ/元在日アメリカ軍司令)、ジョン・サヴェージ(ダグラス・マッカーサー/連合国軍最高司令官)、八千草薫(金原久枝)、ほか
映画「日輪の遺産」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「日輪の遺産」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
日輪の遺産の予告編 動画
映画「日輪の遺産」解説
この解説記事には映画「日輪の遺産」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
日輪の遺産のネタバレあらすじ:1
2011年3月、米国・カリフォルニア州、第2次世界大戦終戦時、通訳だった日系二世の老人イガラシは、日系新聞記者のダニエル・ニシオカの取材を受けていた。イガラシは記者にメモ帳に「幽窓無暦日」と書き、マッカーサーと出会った1945年8月30日のことを語り始めました。場所は厚木飛行場、来日後の東京へ向かう車中で「私の財宝、父の遺産はどこだ」と呟いたマッカーサーの言葉を彼は聞いたと言いました。その頃、日本では、都内の森脇女子学園の卒業式に1台の車が入っていった。その車から二人の老夫婦が出てきました。その老夫婦は追悼の碑を感慨深げに眺め、「この石を見る度に、自分だけ仲間はずれにされたような気がします」と女性が呟くと、白髭をたくわえた男性は「生き残った者が贅沢を言うな」と呟きました。そこに教師をしている孫娘・金原涼子とその婚約者・後藤俊太郎が迎えに来ました。この老夫婦はこの学校に毎年多額の寄付をしてきたのでした。式の最中、白髭をたくわえた老人が「今、真柴さんに会った。…もう、命令は守らなくていいと言ってた」と呟き、倒れ、そのまま亡くなりました。老人は市議会議員も務めた人でしたが、遺言で密葬、資産のほとんどを市に寄贈という形になりました。この老人の妻・久枝は、息子・荘一郎、孫娘・涼子、その婚約者・後藤を呼び、真柴の手帳を手に自らの過去を話し始めました。
日輪の遺産のネタバレあらすじ:2
昭和20年8月3日、軍需工場で働く森脇女学校の少女たちのところに、憲兵が現れ、担任の野口先生が治安維持法違反容疑で連行されました。8月10日、工場に野口先生が帰ってきました。その日、近衛第一師団少佐・真柴司郎は、近衛師団司令部将校集会場で、ポツダム宣言の内容を巡っての議論の場にいました。1本の電話が入り、真柴は「誰にも気付かれずに陸軍省大臣室に来い」と命令を受けました。彼が大臣室に入ると東部軍経理部・小泉重雄主計中尉がいました。その部屋には阿南惟幾陸軍大臣、梅津美治郎参謀総長、田中静壱東部軍司令官、森赳近衛師団長、杉山元第一総軍司令官という帝国陸軍トップがいました。彼らは重大な密命を受けました。それはマニラで山下将軍が奪った900億円のマッカーサーの財宝を、米国軍上陸前に隠密裡に隠匿せよというものでした。その財宝は、敗北を悟った阿南ら上層部が祖国復興の為の金でした。真柴は、小泉と実戦経験豊富な望月曹長と共にこの極秘任務を遂行しに行きます。3人は現在、財宝は架空の新型対戦車弾を装い東京駅の貨車に入れられ、明日、武蔵小玉の南多摩陸軍火工廠へ移送し、三鷹電機の武蔵野工場から勤労動員を徴用し、財宝を隠すことを命じられました。何も知らない森脇女学校の野口先生と20名の女学生たちはトラックに乗せられ、現地に向かいました。車内で女学生たちは「いざ来いニミッツ マッカーサー 出てくりゃ地獄へ 逆落とし~♪」と「比島決戦の歌」を歌っていました。真柴は財宝を隠す現場に到着、現場に鎮座する祠に作業の安全を願いました。間もなく、森脇女学校の野口先生と女学生たちが到着しました。彼女らは12~13歳の20人の少女たちで、頭に「七生報国」のはちまきを巻いていました。真柴は現場を案内し、これからする作業は国の為の重要な作業であることを告げました。真柴と小泉が話していると、級長の久枝からスーチャンが貧血なので休ませてあげてほしいと頼んできました。真柴は、「申し訳ない」と呟くスーチャンに優しく休むように言いました。明るく純真な少女たちは、力を合わせて、懸命に作業をしました。久枝は休んでいるスーチャンに、先生から借りた本『車輪の下』を渡しました。少女たちは、厳つい顔の望月曹長に「赤鬼」というあだ名をつけました。作業は順調に行われ、あと貨車1台分のところまで来ました。
日輪の遺産のネタバレあらすじ:3
その日、米軍機が「日本、無条件降伏、戦争終わる」と書かれたビラを蒔いていきました。真柴は、少女たちを集めて「このビラは敵の謀略である。…」と諭しました。その時、松本という少女が真柴に「隊長、…戦争を止めるのは恥ずかしいことではないと思います。…」と先生の制止も聞かず、言いました。級長の久枝は即座に「あともう少しだから、力を合わせて、任務を全うしよう」と呼びかけ、全員で作業にとりかかりました。真柴、小泉は安堵しました。その夜、真柴のもとにマントの伝令の男が封筒を渡しに来ました。真柴がその封筒を開けると、命令書と何かを紙で包んだものが入っていました。その命令書には「8月15日までに作業を完了すること。作業者全員に玉音放送を聞かせること。放送終了後、機密保持の為に全員に同封の薬物を服用させること、その際に見苦しい者は銃殺すること。そして、処置終了後、壕内入り口を閉鎖すること」と書かれていました。真柴は小泉と相談しました。小泉は真柴に「国民の命はこの財宝で必ず救われる。その為には生きねばならない。我々も少女たちも」と訴えました。真柴は急ぎ、近衛師団司令部に行きましたが上層部は殺されていました。車中、望月曹長は真柴に「女子供まで駆り出して、挙げ句の果てに殺してしまえというのは戦ではありませんよ」と呟きました。真柴は命令の確認の為、阿南陸軍大臣の家に向かいました。阿南大臣は既に切腹しているところでした。阿南大臣は「そのような下命はしていない。貴様、人間として生きよ」と真柴に言葉を残し、絶命しました。真柴が現場に戻ると、小泉に命令は無効であったことを告げました。小泉はそれを聞いて安堵します。そこにお風呂に入ってきれいになった20名の少女たち出てきて、真柴に向かって敬礼しました。玉音放送は間近でした。望月は「聴く気になれない」と言い、風呂掃除にいきました。望月が風呂場に行くと、久枝が風呂を洗っていました。望月と久枝は二人でとりとめもない話をしながら、風呂掃除をしました。
日輪の遺産のネタバレあらすじ:4
その頃、外では、全員が玉音放送に耳を傾け、日本が降伏したことを知りました。真柴は、今回の任務・作業は絶対他言無用と厳命しました。ただ、スーちゃんだけが真柴と小泉のところに来て、「私たちは本当に帰ってもよろしいのですか」と聞きに来ました。小泉は「もちろんだ…」と言い、彼女は帰っていきました。真柴と小泉は寝泊まりしていた小屋に入り、今後の話をしていました。小泉は鞄の中に入っていた薬物がなくなっていることに気がつきました。真柴と小泉は探し回りましたが、ありません。その姿を見ていた野口先生は「あれは栄養剤ですよね」と言いました。3人は壕に走り戻りました。祠の前に少女たちの持ち物が置いてあるのを見た野口先生と小泉は壕内に駆け込みました。真柴は倒れ込みました。そこへ望月と久枝が風呂掃除を終えてやって来ました。真柴は望月に「薬がなくなったんだ」と叫びました。思わず壕内に入ろうとする久枝を望月は抱きしめ、止めました。その時、壕内から3発の銃声がしました。壕内に入ろうとする望月を、真柴は制しました。壕内から小泉が呆然としながら、出てきて「青酸カリでした。…苦しむ者は処置しました。…」と言い、久枝に銃を向けました。望月は久枝の前に立ちはだかり、小泉は泣き崩れました。野口先生は「楽にしてやってほしいと言ったのは私です。…私は生徒たちを引率しなければいけませんから」と言い残し、銃を手に壕内に入りました。壕内から一発の銃声がしました。その後、久枝は、望月と久枝の家で共に暮らしていました。
日輪の遺産のネタバレあらすじ:5
ある日、真柴が訪ねてきました。望月は真柴に「金を稼いで、あの山を手に入れます。…わし、久枝を嫁にもらいます。軍人ですから…生き残った者を守ると誓ったんです」と言いました。その言葉を聞いた真柴は「あんたは本当にいい男だ」と言い、帰っていきました。久枝のこの過去の物語を聞いた涼子は、祖母・久枝に「ありがとう」と言いました。そして、庄造の葬儀の日、久枝は真柴の手帳を庄造の棺に入れました。一方その頃、米国のイガラシは記者に二人の人物の話をしていました。一人目は、真柴でした。彼が久枝からもらった沢庵を持って、米軍病院の元参謀総長・梅津に面会に来たときのことでした。梅津は1枚の紙を、真柴に渡そうとしましたが、自分が取り上げたと話しました。続けて、真柴は沢庵を私に渡し、あの歌を歌いながら去っていったと語りました。その時、取り上げた紙が「幽窓無暦日」で「監獄に月日は流れない。使命という監獄の孤独に耐えよ」という意味だと教えました。二人目は小泉でした。小泉は日本の建て直しの提案書をもち、単独でマッカーサーに面会し、あの財宝の在処をネタに交渉し、あの財宝と共に命を絶った19人の少女たちの話をして、最期に自らの頭を銃で撃ち、それを見たマッカーサーは彼の提案書を本国に送ったことを話ました。そして後日、財宝がある場所へマッカーサーが行ったとき、一人の凛とした少女が立ちふさがったこと、また、財宝の周りに「7回生まれ変わっても、国の為に尽くす」というはちまきと19の遺体があったのをマッカーサーが見て、「財宝などなかった。この壕を塞げ」と命令したことを語りました。イガラシは小屋の中で見つけた『車輪の下』を出し「私は天分を全うしただけだ…」と語りました。
日輪の遺産の結末
2011年初夏、久枝は、荘一郎、涼子、後藤と共に、塞がれた財宝と少女たちが眠る壕の場所に行きました。涼子たちは、「この場所は守り続けましょう。誰かが覚えていればいいんです」と言うと、久枝は「好きにしなさい」と答えました。涼子はお腹をさすり「覚えておこうね」と語りかけました。涼子は身籠もっていたのです。その時、祠の一つの石が落ちました。久枝が振り向くと、野口先生と19人の少女たちが現れ、「久枝、ありがとう。…お前は仲間はずれなんかじゃないぞ」と語りかけてきました。
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