うつくしいひとの紹介:2016年日本映画。熊本県出身の行定勲監督が、同じく熊本県出身者やゆかりの出演者たちを集め、熊本県の全面協力のもと全編を熊本で撮影したノスタルジックな短編ラブストーリーです。2017年には熊本地震を受けて製作された続編『うつくしいひと サバ?』が公開されています。
監督:行定勲 出演者:橋本愛(透子)、姜尚中(謎の男)、高良健吾(玉屋末吉)、石田えり(鈴子)、米村亮太朗(田上)ほか
映画「うつくしいひと」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「うつくしいひと」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
うつくしいひとの予告編 動画
映画「うつくしいひと」解説
この解説記事には映画「うつくしいひと」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
うつくしいひとのネタバレあらすじ:起
ススキが生い茂る熊本・阿蘇の草千里。草原に佇む若い女性を中年男がカメラに収めています。
所変わって、熊本市・問屋街の片隅にある「玉屋末吉探偵事務所」では、事務所の主である私立探偵の玉屋末吉(高良健吾)が暇そうにうたた寝していました。するとそこへサングラス姿の謎の美女(宮崎京)が小柄な男(伊藤匠)を伴って現れ、玉屋に依頼話を持ち掛けてきました。それは熊本のマスコットキャラクター“くまモン”に関わることらしく、女から耳打ちされた玉屋は「それは一大事ですな」と大変驚き、極秘だという案件に対して「探偵の口は堅いのです。決して口外はしません。任せてください」と引き受けることにしました。
うつくしいひとのネタバレあらすじ:承
熊本の繁華街にある小さな本屋兼カフェ。ここでアルバイトをしている女子大生の透子(橋本愛)は客(黒木よしひろ、中川ひとみ)にコーヒーを注いでいたところ、そこに友人の田上(米村亮太朗)が訪れ、「透子ちゃんに話があるんだ。実はね・・・」と持ち掛けようとしました。その時、この店に黒いロングコート姿の謎の中年男(姜尚中)が訪れ、接客する透子に「面白い本ばかり揃えてあるね。君のおススメの本はあるかな?」と尋ねてきました。戸惑いながらも本を探す透子に男は年齢を尋ね、透子は21歳だと答えると、男はアメリカの詩人ウォルト・ホイットマンの詩を引用して「若い女は美しい。でも、老いた女はもっと美しい」と語りました。
男が本数冊を買って店を出た後、透子がカフェへ戻ると、田上は客二人と談笑していました。田上の話とは、透子の母・鈴子(石田えり)が怪しげな男に付きまとわれているというのです。その男の特徴は、先程店を訪れたあの中年男と同じく黒いロングコート姿だったということです。透子は仕事が終わるや路面電車に乗り、鈴子が華道の師範を務める習い事教室へと立ち寄りました。母が親切丁寧に生け花を指導している様子を見つめていた透子でしたが、庭先には怪しげな男が物陰からこちらをじっと見つめていることに気が付きました。田上が話していた男は先程本屋に来ていたあの黒いロングコートの中年男であり、透子は慌てて後を追いましたが男はいずこへと姿をくらましてしまっていました。鈴子に何かあったのか聞かれた透子は、男のことははぐらかすと一足先に帰宅しました。
うつくしいひとのネタバレあらすじ:転
その夜、透子は帰宅した鈴子を玄関で出迎え、本を読みながら鏡台の前で髪をとかす鈴子の姿を時折不安そうに見つめていました。鈴子が使っている櫛は高校自体に亡き夫からプレゼントされてものであり、鈴子は自身の高校時代の話を透子に語り出しました。
高校時代、映画作りが趣味だった透子の父は、文化祭の出し物として鈴子を主役に映画を撮っていたのです。鈴子は乗り気ではなかったものの結局映画に出ることになり、櫛は出演のお礼だったのです。
鈴子は押し入れの中に眠っていた、その未完成だという映画の8ミリフィルムを取り出し、透子と一緒に観ました。そこには楽しそうに田園地帯を歩き、やがて水を勢いよく噴き出す通潤橋の前で手を繋ぎ、そしてキスを交わす若き日の鈴子(島ゆいか)と父(小原汰武)の姿が映っていました。するとそこにメガネをかけたもう一人の少年(油木田一清)の姿が。この少年は父に頼まれてこの映画の監督を務めた人物であり、父の親友だったというのです。鈴子は三人揃って仲良しだった当時を思い出し、懐かしんでいました。
翌日、透子は「玉屋末吉探偵事務所」を訪れ、事情を説明すると玉屋に鈴子の護衛を依頼しましたが、ちょうど玉屋は重要な案件で忙しく、最初は難色を示しましたが、透子の真剣な眼差しには勝てずに引き受けることにしました。
愛車の旧型フィアット500で鈴子の生け花教室に駆け付けた玉屋は透子と共に張り込むことにしました。透子は玉屋の重大な案件とは何かと尋ねると、玉屋は「これがバレたら熊本に居れなくなる」ほどのものということでした。そんな時、透子の携帯電話に田上から連絡があり、鈴子をつけている男は上江津湖にいるというのです。現地に駆け付けた透子と玉屋は田上と合流、川のせせらぎをカメラで撮っているあの男を見つけました。男の様子を探る三人でしたが、玉屋と田上は突然近くの物音に気付て林の茂みに入り込んでしまいました。そこには何とあの“くまモン”がおり、玉屋と田上は協力してくまモンを取り押さえました。どうやら重大な案件とは、行方不明になったくまモンの身柄を確保することだったようです。
うつくしいひとの結末
ひとり取り残された透子の前に「ここで会ったのも偶然かな?」と男が近づいてきました。透子は男に誘われ、玉屋が戻って来た時には姿がありませんでした。
男は透子を伴って(熊本地震で崩壊する前の)熊本城を訪れ、高石垣で無邪気にはしゃぎ回る男女の高校生三人組の幻を垣間見ていました。
続いて男と透子は菊池渓谷に向かい、男はトレッキングをしていた女性(高崎恵理)に声をかけました。別に男とその女性は知り合いというわけでもなく、男はただその女性に想像力を働かせてみたかったというのです。その時、男の目の前には、またしても8ミリカメラを回しながらはしゃぐあの高校生三人の姿が映っていました。
その後、透子は男の運転する車で阿蘇に向かい、男は透子の姿を写真に収めました。(これが冒頭のシーン)男の職業は映画監督であり、夏目漱石の「草枕」を映画化するためにスタッフと共に熊本入りするものの、どうしても過去に置き忘れてきたものを思い出したくて単独で熊本各地を辿っていたのです。男の目の前にはまたしてもあの高校生三人組が映りやがて彼らの前には数人の踊り子たちが現れ、熊本の郷土の伝統的な踊りを始めました。メガネの少年は無我夢中でその様子をカメラに収めていました。高校生たちは男に微笑みかけると姿を消していきました。
夕暮れ時、男は「今日のお礼に、これを受け取ってくれませんか?」と透子に華麗な装飾が施された櫛をプレゼントしました。これはかつて男が好きだった人に渡そうとしていたものだったのですが、その人は自分と同じく彼女に想いを寄せていた親友を選んだのです。透子は男が好きだった“うつくしいひと”にとてもよく似ているといい、受け取れないという透子にどうか持っていてほしいと懇願するのでした。実はこの男こそが透子の父と鈴子の親友だったのです。
夜になり、透子と男は熊本城近くで別れることにしました。母に会わなくていいのかと問う透子に、男は「あなたと過ごせたから。ありがとう」と言うのみでした。そこに玉屋が鈴子を連れて駆け付け、男と鈴子はようやく再会を果たしましたが、男は鈴子と言葉を交わすことなく車で走り去っていきました。透子は鈴子に男からもらった櫛を渡し、「素敵な人だったよ」と言葉をかけました。そして透子と鈴子は玉屋に家まで送ってもらうことにしました。
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