わが母の記の紹介:2011年日本映画。小説家、井上靖が68歳の時に出版した自伝的な小説を元に作られた小説がベースとなって作られた感動の実話。ある疑念をもったまま母親と向き合った8年間の想いを描いています。高齢の母親が痴ほう症になって家族をかきまわしていき、家族はそれに振り回されるのですが、その様子を温かく時には悲しくユーモラスに描いています。景色のきりとり方、音楽の使い方も含めてすべてにおいて「文学作品」といえる映画作品です。
監督:原田眞人 出演者: 役所宏司(井上洪作)、樹木希林(母親/八重)、三國連太郎(父親/隼人)、宮﨑あおい(洪作の三女/琴子)、菊池亜希子(洪作の次女/紀子)、ミムラ(洪作の長女/郁子)、、赤間麻里子(洪作の妻/美津)、南果歩(伊上家の次女/桑子)、キムラ緑子(伊上家の長女/志賀子)ほか
映画「わが母の記」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「わが母の記」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
わが母の記の予告編 動画
映画「わが母の記」解説
この解説記事には映画「わが母の記」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
わが母の記のネタバレあらすじ:父親の訃報
作家である井上洪作は父親の容体が悪いということで実家へと帰ります。父親は洪作の手を握ったとおもったら、つきはなすようなしぐさをします。そんな父親のしぐさが気になった洪作でしたが、父親の容体が良くなったので家に帰ることになります。家に帰ろうとした彼を母親の八重が呼び止めます。母親は解せない言葉を口にします。不可解に思いながらも、洪作は家に帰ることにします。家では自分の作品の出版作業で家族全員がてんやわんやで作業をしていました。ところが反抗期の三女の琴子だけは手伝いをせず、部屋でカタツムリの撮影をしています。怒る洪作でしたが、琴子は意に介しません。そんな時、容体が持ち直したに見えた父親でしたが、急きょ体調が悪化し亡くなったという知らせを受けます。
わが母の記のネタバレあらすじ:母親の異変
父親の葬儀に親戚一同が集まります。そんな中、母親は外で一人でポツンと座りこむなどおかしな行動を取り始めます。しばらく経ち、痴ほう症に話したいことがあるからと母親の八重が彼を訪ねてきます。母親の八重は痴ほう症が進んでおり、ますますおかしな行動を取り始めます。洪作の書斎にきて二人で話しをしても会話が全く成り立ちません。洪作には昔母親である八重に捨てられたという疑念がありました。伊豆の山奥の土蔵で、彼は曽祖父の妾に育てられた過去がありました。母親に捨てられたのではと疑念を抱く洪作は母親を問い詰めたかったのでした。父親が曽祖父の妾と暮らしていた事実を知った琴子は不潔だと顔をゆがめます。
わが母の記のネタバレあらすじ:三女琴子の決断
母親である八重の誕生日を親戚一同で祝うことになりました。とても楽しい誕生日会でしたが、八重の痴ほう症はかなり進んでおり皆はそれぞれにショックを受けます。その後八重の面倒を見ている志賀子の夫がけがをしてしまい八重の面倒をみきれなくなります。洪作の元へ志賀子からSOSのの電話をかけてきます。洪作は八重を迎えに行くことになりましたが、八重は頑なに姨捨山(うばすてやま)に連れて行かれるのだと思い込んでいて抵抗します。なんとか八重を連れだし、面倒をみることになりますが、痴呆はかなり進んでおり洪作の家族はてんやわんやとなります。父親の仕事にも影響が出始めてると悟った三女の琴子は、伊豆の別荘で琴子と暮らすことを決心します。彼女は父親が「昔母親に捨てられたのではないか?」という疑念を抱きながら、作家としては母親に優しく接することができるものの、子どもとして母親とどう接することができないのか葛藤していることを知っていました。琴子はパートナーとなった運転手だった瀬川と八重と一緒に暮らし始めます。しばらくして洪作は心配になり琴子の元へ行きますが、案の定八重の痴ほう症はますます進み、その上周囲の者に嫌味を言ってくるので、琴子はもう爆発寸前でした。
わが母の記のネタバレあらすじ:母親の徘徊の理由
家族総出で母親の八重の面倒を見ることになりますが、彼女は夜になると家を出て徘徊をするようになります。その徘徊は家族を苦しめますが、それには訳がありました。ある日の夜、八重は行方不明になります。トラック運転手のたまり場を訪れ、「海を渡った息子に会いたい。」と周囲に頼みます。頼みを引き受けたトラック運転手に港まで連れていってもらうことにした八重はそのまま港へ行ってしまいます。そのことを知った洪作は必至で母を追いかけ、やっとの想いで母親にたどりつきます。八重は「やっと息子に会えた。」と洪作を抱きしめます。母親の八重は洪作を手放した過去を悔やんでずっと息子を探してはいかいしていたのでした。八重は「曽祖父の妾に息子の居場所を何度も訪ねたけど教えてくれなかった。戦争で台湾へ逃げるとき、息子も一緒に連れて行きたかったけど、船に乗るのは命がけだったから乗せられなかった。」と告白します。戦時中、家族の血筋を絶やさないため家族が離散することを決めた世の中でもありました。特に長男である洪作を危険な目に逢わすことが出来ず、泣く泣く手放したことが分かります。港での騒動以来、八重はぱたりと徘徊することを辞めて、おとなしくなります。おとなしくなった八重はまた元の長女の志賀子の元へと帰ります。
わが母の記の結末
痴ほう症になりながらもずっと自分を捨てたことを後悔しずっと悩んでいた母親の胸の内を知った洪作は、母親の想いを疑っていた自分を恥じて、息子として八重に向き合うことを決意します。その父親の想いを三女の琴子は痛いほど感じていました。2人が八重のことを話しているときに、洪作は琴子の背後にふと八重の姿を感じます。その時に家の電話が鳴ります。電話に出ると志賀子が泣きながら母親の訃報を伝えてきました。洪作はショックで泣き崩れます。家族、親戚一同が揃い、八重を見送ります。棺桶に入った母親の八重は花に囲まれ、満足そうに笑っていました。洪作は息子として母親と本当の別れをするのでした。けれども彼の心の中には、いつまでも優しい母親の姿があるのでした。
以上、わが母の記のあらすじと結末でした。
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