映画「WALKING MAN」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
WALKING MANの紹介：2019年日本映画。日本を代表するラッパーのひとりANARCHYの監督デビュー作であり、人気漫画家の高橋ツトムが企画・プロデュース、『民衆の敵』などの梶原阿貴が脚本を手掛けた作品です。ANARCHYと親交のある野村周平が主演を務め、乞音症を抱えた極貧の若者がラップとの出会いを機に人生を大きく変えていく過程を描きます。
監督：ANARCHY 出演者：野村周平（佐巻アトム）、優希美青（佐巻ウラン）、柏原収史（山本さん）、伊藤ゆみ（キム・ヘジョン）、冨樫真（佐巻真由美）、星田英利（柳下勝弘）、渡辺真起子（福本光代）、石橋蓮司（汪さん）、T-Pablow、WILYWNKA、Leon Fanourakis、じょう、LETY、サイプレス上野、hMz、ほか
この解説記事には映画「WALKING MAN」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
母子家庭育ちの佐巻アトム（野村周平）は川崎の工業地帯で極度の極貧生活を送っていました。アトムの父は借金だけ残して亡くなり、今はダンサーの母・真由美（冨樫真）、高校生の妹・ウラン（優希美青）と三人暮らしです。アトムは幼い頃からの吃音症のためか人前で話すのが苦手で、引っ込み思案でいつも影が薄く暗い表情をしていました。
アトムは生活費を稼ぐため不用品回収のアルバイトをしていました。そんなある日、真由美が舞台から転落して病院に搬送されたとの連絡がアトムに入りました。真由美は脊髄を損傷しており、もしかしたら下半身不随になりかねないほどの大怪我でした。
アトムは入院の手続きや保険の申請などをしなければならないのですが、ソーシャルワーカーの柳下勝弘（星田英利）は、アトム一家の保険証の期限が切れていることや保険料を滞納していることに容赦なく突っ込みを入れ、しまいには「自己責任って知ってる？ なんでもかんでも世の中のせいにしちゃダメだからね」と冷淡な言葉を突き付けてきました。アトムはまともに受け答えできず、しかも家賃を滞納していることから、アトムは途方に暮れるしかありませんでした。
翌日、アトムはとあるアパートの遺品整理を行うことになりました。この日は職場の先輩である山本さん（柏原収史）が別の現場に行ったため、アトム一人で受け持つことになりました。
この部屋の住人は数日前にアパートの階段から転落死しており、アトムは仕事がてら部屋で見つけた真新しいシューズを試しに履いてみました。いつもは覇気のないアトムも、この時ばかりは少しだけ気分が上向きになりました。
ある日の夜。仕事を終えて帰宅途中のアトムはたまたま壁に落書きをしている若者たちを見かけました。若者たちはすぐに駆け付けた警察に逮捕され、アトムは若者たちが落とした帽子を拾ったのですが、そのことで仲間だと疑われて警察に連行されてしまいました。
事情聴取を受けたアトムは解放されるなり急いで病院へ向かいましたが、真由美の意識はまだ戻らないままでした。帰宅後、アトムは当面の生活費や必要経費などを計算しました。思春期真っ盛りのウランは自分だけスマホを持っていないことに不満を持っており、更には翌月には修学旅行が控えていました。
ある日、アトムは山本さんに誘われて飲みに行きました。ところが、深夜近くに帰宅したアトムは家にウランがいないことに気付き、彼女を探しに再び外へ繰り出しました。その後、アトムは何とかウランを発見しましたが、かねてからアトムを疎ましく思っていたウランはアトムを他人扱いしました。
数日後。アトムは真由美を見舞いに行くと、見知らぬ男が真由美を見舞っていました。その直後、アトムはウランが万引きで捕まったとの知らせを受け、慌ててスーパーへと向かいました。そこには以前アトムを聴取した警官がおり、アトムを知恵遅れ呼ばわりしてきました。やがてウランの担任教師も駆け付けたのですが、実はこの教師は真由美の見舞いをしていた男であり、しかもウランいわくこの教師は真由美と不倫関係にあったということでした。
その翌日、アトムは先日遺品整理した住民がラッパーだったことを知りました。部屋にはこの日の夜にとあるクラブで開催されるラップバトルのチラシがあり、住民が遺したカセット式ウォークマンとラップのネタ帳がありました。この住民はおそらくこのラップバトルに出場する予定だったのでしょう。ラップに興味を抱いたアトムは初めてクラブに足を踏み入れました。
そこではLeon Fanourakis（本人）のライブパフォーマンスが行われており、やがてサイプレス上野（本人）の司会進行によりラップバトルが始まりました。高校生RAP選手権を制したじょう（本人）ら強者が出揃うなか、アトムは流れでステージに上げられてラップバトルに参加させられることになりましたが、一度もラップなどやったことのないアトムは結局何もできずに敗退しました。
何もできぬまま帰宅したアトムは、家の電気が止められていることに気付きました。その夜、ウランは友達の家に泊まり、アトムは懐中電灯の灯りの下で住民が遺したネタ帳に目を通しました。それからというもの、アトムは住民が遺したウォークマンの音楽に深く聞き入り、ラップの世界に魅了されていきました。
そんなある日、アトムは山本さんが奢ってくれるというので行きつけの中華料理店に行きました。ところが、店に闇金の回収屋が押し入り、山本さんは連れて行かれてしまいました。店のアルバイトをしている韓国人女性キム・ヘジョン（伊藤ゆみ）が止めに入りましたが、キムもまた借金を抱えており、早く返済しろと脅されました。しばらくして、ボコボコにされた山本さんが店に戻って来ました。店主の汪さん（石橋蓮司）はあまり関わりたくない様子でした。
キムは日本語を勉強するために来日し、そこで出会った日本人の男と結婚する予定でしたが、寸前でその男に騙されて所持金を持ち逃げされたというのです。アトムはいつしかそんなキムにほのかな想いを抱くようになりました。
翌日。決まっていた仕事がキャンセルになったことから、アトムは通行量調査のアルバイトをすることにしました。アトムは数取機のスイッチを押しているうちに、いつしかそれでリズムを刻むことを思いつきました。それ以降、アトムは数取機のリズムに合わせて心の奥底から湧き出た言葉を口に出すトレーニングを始め、次第にどもることなくスムーズに言葉を話せるようになっていきました。
そしてアトムは腕試しにと再びラップバトルに参加、以前帽子を拾ってあげた男からも檄を飛ばされて以前負けた相手に再戦を挑みました。結局このバトルにも敗退したアトムでしたが、少しずつ手応えを掴みつつありました。
そんなある日、アトムはいつもの汪さんの店に行くと、裏口から何やら怪しげな荷物が運び出されていました。アトムの存在に気付いた汪さんはアトムにか1万円札を握らせ、このことは誰にも言わないよう告げてきました。
その後、アトムはキムのアパートへと向かいましたが、アトムが見たのは回収業者のバンの車中で山本さんと愛し合うキムの姿でした。強いショックを受けたアトムは降り出した雨の中を立ち尽くしていました。
帰宅したアトムはこれまでの想いや不満、怒りなどをラップのリリック（歌詞）としてしたためていきました。そこにはかつてのように後ろ向きで無気力だった頃のアトムの姿はありませんでした。
ある日の夜、アトムは街でばったりウランと出くわしました。ウランはいかがわしいデートクラブで働いており、アトムは経営者にウランを返して欲しいと掛け合いましたが痛めつけられてしまいました。
アトムはいつもの汪さんの店の前を通りかかりました。すると店先にはキムが倒れており、アトムは彼女を抱き抱えようとすると、そこに汪さんがなぜかアトムらの職場の事務員・福本光代（渡辺真起子）と共に現れました。アトムは汪さんに店の奥へ案内され、この店では裏稼業としてドラッグ加工が行われていることを知りました。
まともに働いても借金を返せないキムもドラッグ密売に加担させられていました。汪さんはアトムに口止め料として純金のネックレスと50万円を渡しましたが、ウランを取り戻したいアトムは数取機を使って更に50万円を要求、汪さんと光代は今までとは違うアトムの強気ぶりに思わず笑ってしまいました。
こうして100万円を手に入れたアトムは再びデートクラブに乗り込み、ようやくウランを返してもらうことに成功しました。ウランは家が貧乏であることに強い不満を持っており、アトムはそんなウランに家族との絆は金では買えないと告げると必ずウランを幸せにすると固く誓いました。
ある日の休憩中、山本さんはアトムに語りかけてきました。これまで何もかも自己責任だと冷たくあしらわれてきたアトムでしたが、山本さんはアトムの家が貧乏なのも吃音なのもアトムのせいではないと励まし、ただしラップをするのは自分の責任だと伝えました。ラップとの出会いでようやく自分の生きる道を見つけたアトムは、役目を終えた数取機を海へと投げ捨てました…。
…それから1年後。この日はアトムのライブが行われようとしていました。ウランはキムとすっかり打ち解け合い、下半身不随ながらも意識を取り戻した真由美の見舞いをしていました。そしてウランらが見守るなか、アトムはこれまでの人生や想いの全てを綴ったリリックを朗々と歌い上げ、人々の共感を得て喝采をもって迎え入れられました。
以上、映画「WALKING MAN」のあらすじと結末でした。
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