写真の女の紹介:2020年日本映画。CMディレクター出身の串田壮史監督が自らの経験を織り交ぜて映画化した、自身の長編監督デビュー作となる異色のラブストーリーです。写真加工を手掛ける写真館主の主人公は胸に傷を負ったインスタグラマーの女性と出会い、傷を画像処理で消した写真を作ることになりましたが…。本作はSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2020で SKIPシティアワードを受賞しています。
監督:串田壮史 出演者:永井秀樹(平間械)、大滝樹(今日子)、猪股俊明(西条)、鯉沼トキ(ひさ子)、菊池宇晃、勝倉けい子、土田諒、ほか
映画「写真の女」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「写真の女」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
写真の女の予告編 動画
映画「写真の女」解説
この解説記事には映画「写真の女」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
写真の女のネタバレあらすじ:起
今年で50歳になる中年男の平間械(永井秀樹)は、亡き父親が遺した町の小さな写真館を営んでいます。女性恐怖症の械はこの年になってもまだ独身であり、自宅で飼っているカマキリの世話をすることが生き甲斐でした。
ここ最近はめっきり家族写真を撮影する来客も減り、今や械のメインの仕事といえばパソコンの写真加工ソフトで写真の補正加工を行うレタッチの仕事が多くなっていました。
この日も常連客である葬儀屋の西条(猪股俊明)が訪れ、いつものように遺影の作成を依頼してきました。寡黙な械は黙々と遺影の作成を始めると、そこにひさ子(鯉沼トキ)という女性が来店してお見合い写真の撮影を依頼してきました。
急ぎの仕事ではないという西条の計らいで械はひさ子の依頼を優先することにしましたが、ひさ子は械に自分の写真の更なる加工を要求してきました。完成した写真はひさ子自身とは全く別人の顔に仕上がりましたが、ひさ子は写真を手にするとそのまま写真館を去っていきました。
西条は「大変な仕事だね」と械の肩を叩き、械は西条に依頼された仕事を黙々と完遂させました。械は黙って先程のひさ子の加工前の写真を箱に収め、仕事帰りに銭湯で疲れを洗い流してからカマキリの待つ家に帰りました。
写真の女のネタバレあらすじ:承
械は休日を利用して車でひとり山に向かい、そこで大好きな昆虫の写真を撮って過ごしていました。そこにはセクシーなスポーツウェアに裸足のミステリアスな女性・今日子(大滝樹)がおり、スマホで大自然を背景に自撮りしていましたがどうも上手く撮れない様子でした。械は思わず今日子に興味を抱き、彼女に近づいてみると、今日子は胸元に大きな傷を負っていました。
械は今日子の問いかけにも黙して応じず、彼女をドラッグストアへ連れて行くと傷の応急処置をしました。その夜、械は今日子を自分の写真館へと招き入れました。今日子はインスタグラムに自分の写真を投稿していることを械に話し、自分の胸の傷を修正してほしいと依頼しました。
今日子は相変わらず黙して語らぬ械を強引に食事へと連れ出しました。レストラン近くの広場の時計から音楽が流れ、今日子は音楽に合わせて踊り始めました。食事の席でも今日子は一方的に話し続け、械はただ黙って彼女の話に耳を傾けていました。械は自宅のカマキリのために料理のひとつまみを持って帰ることにしました。
その日、今日子は械の自宅に泊めてもらうことにしました。今日子はひとりスマホを手に取り、自分がかつてバレエダンサーだった頃の懐かしい写真を見ていました。
写真の女のネタバレあらすじ:転
翌朝、械が目を覚ますと今日子の歯ブラシが並べて置かれていました。今日子は械の飼っているカマキリに声をかけ、苛立った械は彼女を自宅から追い出しました。しかし、その直後に今日子は偶然出くわした西条と共に械の元に戻り、械は仕方なく今日子を招き入れることにしました。
械が今日子にどう接していくべきか悩んでいたところに、先日お見合い写真の加工を依頼したひさ子が再び来店してきました。ひさ子は先日の写真をさらに加工してほしいと依頼し、械は言われるがままに早速作業に取り掛かりました。
作業場に居合わせた今日子は「それじゃ別人になっちゃう」と指摘しましたが、ひさ子は「他人の目に映る姿が本当の自分だ」と開き直っていました。
その夜、今日子の元にスポンサーから電話があり、「フォロワーの求める今日子と今の今日子にはズレがある」と契約打ち切りを告げられてしまいました。すっかり意気消沈した今日子はたまたま出くわした西条を連れて械の家に上がり込み、三人で食卓を囲みました。
その後も械はカマキリをカメラに収め、今日子の依頼通りに彼女の胸の傷跡を補正していました。そんなある日、今日子は補正前の自らのありのままの写真をインスタグラムに投稿したところ、予想とは裏腹にフォロワーたちから数多くの「いいね!」が寄せられました。それを見た今日子は満足しました。
写真の女の結末
ある日、械の元に西条が1枚の写真を持ってやってきました。写真に写っているのはわずか7歳で亡くした西条の娘であり、西条は写真加工で若返らせることができるのなら逆に年を取らせることもできるのではないかと考えたのです。械は西条の依頼を引き受け、娘の20年後を想像した写真を作ってみせました。その夜、西条は械が加工した娘の写真を見ながら酒を飲んでいました。
械が女性恐怖症になってしまったのは、幼い頃にメスのカマキリがオスのカマキリを捕食するところを見てしまったのがきっかけでした。械は今日子と過ごしているうちに少しずつ女性恐怖症を克服しようとしていましたが、今日子の胸の傷がなぜか一向に治らないことに疑問を抱いていました。
実は今日子はこの傷のおかげでようやく人に認められたと感じており、傷が癒えてなくならないように自ら傷をいじくって治りを遅くしていたのです。
ところがそんなある日、今日子がインスタグラムに投稿した無修正の写真が「自傷行為または生々しい傷」を理由に全て削除されてしまっており、強いショックを受けた今日子は胸の傷を抉ってしまいました。
械は今日子の傷をカメラに収め、彼女をそっと抱きしめました。械は今日子を病院へ連れていき、自ら今日子のために輸血を申し出ました。その夜、械は今日子と共に、彼女と初めて食事をしたレストラン近くの広場へ行き、飼っていたカマキリを放ちました。
カマキリはその場にいたメスのカマキリに食べられてしまい、その様子を見た今日子は悲しみましたが、ようやく重い口を開いた械は「可哀想じゃない。メスに食べられるオスだけが相手が生きているという官能的な悦びを得られる」と語りました。今日子は広場で踊り始め、械はカメラを構えるポーズを取りながらいつまでも彼女に見入っていました。
以上、映画「写真の女」のあらすじと結末でした。
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