ワンダーウォール 劇場版の紹介:2020年日本映画。100年以上の歴史を持つ学生寮。乱雑に見え、住人たちは自由気ままに生きているようだが、そこにはおのずから秩序が保たれていた。その寮の建替えを計画する大学側と、補修しながら建物を残すべしと主張する寮生の間で対立が続く。対立の前線である学生課にはある日、両者の間を隔てる壁が立てられた。京都大学吉田寮問題を題材として大きな反響を呼んだNHK京都放送局制作のドラマに未公開カットを追加した劇場版。1993年生まれの前田悠希は本作がNHKに入局して初めて演出した作品だった。脚本の渡辺あやは朝の連続テレビ小説『カーネーション』や映画『ジョゼと虎と魚たち』等の脚本を担当してきた。昔風の学生寮を再現した美術にも注目。
監督:前田悠希 出演者:須藤蓮(キューピー)、岡山天音(志村)、三村和敬(マサラ)、中崎敏(三船)、若葉竜也(ドレッド)、山村紅葉(寺戸敏子)、成海璃子(三船香)、ほか
映画「ワンダーウォール 劇場版」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ワンダーウォール 劇場版」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ワンダーウォール 劇場版の予告編 動画
映画「ワンダーウォール 劇場版」解説
この解説記事には映画「ワンダーウォール 劇場版」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ワンダーウォール 劇場版のネタバレあらすじ:学生課の壁
京都の片隅にある国立京宮大学の学生寮近衛寮は、築100年の古い木造建築。代々学生たちが自主管理する自治寮だった。建物の老朽化を理由に大学側は取り壊して建て替えを提案しているが、寮生たちは補修による現状の姿での維持を主張し対立は10年に渡っていた。
寮生たちは代々団体交渉の記録を残し、大学との交渉のしかたを伝授してきた。そして2017年12月、大学側は寮生に翌年9月に寮を明け渡すように命令する。さっそく寮生は学生課に抗議に行く。
その年、これに先立って、その学生課の室内には前にはなかった壁ができていた。抗議に来た学生と職員を隔てるための壁である。
ワンダーウォール 劇場版のネタバレあらすじ:空振りの抗議活動
3回生のキューピー(須藤蓮)、1回生のマサラ(三村和敬)らが学生課へ向かう。キューピーは高三の夏期講習の時に近衛寮の存在を知って志望校を決めた。寮生各自が勝手気ままに生活しているようでいて自ずと秩序ができている寮を愛していた。マサラは、近衛寮は変人の巣だと教わっていたが、入寮するとまさにその通りだった。
寮の行く末がかかる重大事態なのに抗議活動への参加者が少ないのをマサラは気にする。学生課では寮生たちがテラドポットとあだ名をつけている、強面の中年女性 寺戸(山村紅葉)がいつもどおり彼らの応対をすると予想していた。
しかしその日、彼らの相手をしたのは若くきれいな女性であったので拍子抜けしてしまう。彼女は担当者がいないと言う。弁が立ちキューピーが今回の抗議活動で期待をかけていた4回生の三船(中崎敏)は、彼女を見て黙って去ってしまう。女子寮生が涙ながらに抗議するが、学生課の職員たちはこちらを見ようともしない。
ワンダーウォール 劇場版のネタバレあらすじ:荒れる一回性
寮に帰ってキューピーもマサラも不完全燃焼な気分が抑えられない。マサラは今日で寮生の敗北が決まったと言う。マサラは説明を求めようと4回生の三船や志村(岡山天音)を捜す。
きれいなお姉さんを見てすごすごと逃げた三船や、お姉さんの胸をじっと見ていた志村、そして大事な抗議行動に参加しない寮生たちへの怒りをキューピーにぶつけ、ネコに八つ当たりする。
なんでも自由な寮のありようまで批判し、闘争に参加しない者には罰も必要だとまで考えるマサラにキューピーは反発する。
ワンダーウォール 劇場版のネタバレあらすじ:こたつを囲んで
マサラが外に出た後、志村とキューピーはこたつを囲む。2017年の始めには団交で三船が説得力をもって、補修しての寮の維持を主張し、当時の学生部長がそれに合意しかけた。
だが、次の団交でその合意は一方的に破棄され、学生部長は風邪による貧血で倒れてしまう。その後学生部長は学生部長も大学もやめる。志村は彼が学生を交渉相手と考える最後の人物だったことに気づく。
ドレッドヘアーの寮生(若葉竜也)が部屋に入ってきて、うずたかく積まれた本の裏に何があるか調べたがるが、それは待ってもらって志村はキューピーに自分の考えを言う。
テラドポットのように学生の前に出る職員がいて、その背後に、絶対出てこない担当者がいて、学生部長がいて、学長がいてという大学の権力構造を説明。おそらく自分たちは勝てないという絶望感を語る。
そこへ何と、昼間の学生課の女性が三船に会いたいと寮を訪れる。彼女は志村の部屋に上がり、寝転がっていたドレッドも美女の登場に起き上ってこたつを囲む。彼女は実は三船の姉で、三船は姉を見て困って出て行ったのだった(志村も彼女の胸でなく三船という名の名札を見ていた)。
派遣社員である三船の姉は職場を変えてもらうので安心して学生課に来るようにと弟に言いに来た。だが彼女はおそらく寮生たちは勝てないとも言う。この間まで京宮大の大学院の学生だった彼女は、知り合いたちに問い合わせた。大学は老朽化を理由に寮の取り壊しを主張しているが、実は跡地の利用が目的だった。
寮がなくなった後にお金になる研究をする分野の研究棟が立つだろう。しかし、同時に彼女は寮生の闘争を励ます。経済至上主義のせいで自殺する学生が出ている。そしてオンボロ寮を学生が守ってきたのは、この寮が幸福というものに関係しているからに違いない。ドレッドが頑張りますと答える。
ワンダーウォール 劇場版の結末:本の壁の陰
三船の姉が帰り、志村たちが寝込んだ後、三船は居酒屋で酔っぱらって他の客に絡んでゲロを吐いたマサラを連れて帰ってくる。三船と姉のことを知らないマサラはなおも三船に食ってかかって三船に押しとばされ、積まれていた本が、マサラがぶつかったせいで崩れた時、その陰に掛け軸が現れた。
その部屋は元々茶道のお茶室だった。昼間、本を片付けた部屋で、ドレッドのお点前のお茶を志村、三船、キューピーがいただくことになる。マサラはまだ寝転がっている。
2019年.寮生の数は減ったがまだ近衛寮は存在している。3月に三船と志村は卒業していった。そして大学は15人の寮生を相手に訴訟を起こした。
以上、映画「ワンダーウォール 劇場版」のあらすじと結末でした。
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