約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯の紹介:2012年日本映画。1961年に起きた名張毒ぶどう酒事件において死刑判決を受けた男、奥西勝。無実を訴え続けた奥西と彼を信じ冤罪を証明しようとする弁護団や支援者の半世紀に及ぶ闘いの記録を再現ドラマを交えながら描く社会派ドキュメンタリー。無実を訴え続けた死刑囚を演じた仲代達矢、息子の無実を信じ続けた母を演じた樹木希林の名演が光ります。
監督:齊藤潤一 出演者:仲代達矢(奥西勝)、樹木希林(奥西タツノ)、山本太郎(青年期の奥西勝)、天野鎮雄(川村富左吉)、寺島しのぶ(ナレーション)、ほか
映画「約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯の予告編 動画
映画「約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯」解説
この解説記事には映画「約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯のネタバレあらすじ:起
1961年の高度経済成長に沸く日本。三重県名張市の町はずれにある小さな集落、葛尾で陰惨な事件が起きます。名張毒ぶどう酒事件。慰安会で振舞われた葡萄酒を口にした村の女性たちが次々に倒れ、5人が死亡した事件です。警察は殺人事件として捜査を開始、重要参考人として連行されたのが慰安会の参加者で事件により妻を亡くした奥西勝でした。
動機は三角関係の清算。奥西には愛人関係にあった女性が村にいたことから、妻と愛人を同時に殺めようしたのではないかという疑惑が深まります。奥西は慰安会の行われた公民館で一人になった隙に葡萄酒に農薬を混ぜたと自白しますが、その後警察に自白を強要されたとして犯行の否認に転じます。
この事件にはほとんど物的証拠が残されていません。公民館で見つかった葡萄酒の王冠は当日のものとしては古く錆びており、奥西が農薬の瓶を捨てたという名張川からは瓶のかけらすら見つかりませんでした。しかし事件後厳しい取り調べを受けた奥西が自白すると、村人達の証言は一変しました。まるで奥西を犯人に追い込むかのように次々と証言を変更しはじめたのです。
約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯のネタバレあらすじ:承
1961年の津裁判所。裁判長の小川は証拠が乏しいことから奥西に無罪を言い渡します。しかし検察はすぐに控訴、名古屋で開かれた高等裁判では一転して死刑の判決が下ります。さらに最高裁でも死刑が確定しました。
1987年、拘置所の独房の中で死刑の執行に怯え続けていた奥西に支援者が現れます。男の名は川村富左吉。奥西の冤罪を信じる川村は再審を求めて、町で署名活動を開始します。事件後、村を追われた奥西の母タツノも息子の無実を願い続けていました。タツノは息子の身体を気遣う手紙を書き続け、内職して電車賃を稼ぎ、月に一度奥西に会いに拘置所へ通い続けます。
判決文を読んで理不尽さに憤りを感じていた鈴木泉弁護士は名張事件の弁護団に加わり、奥西の救済を決意します。第5次再審請求、弁護団は死刑判決の決め手となった唯一の物的証拠、葡萄酒の王冠に目を付けます。検察は奥西が噛んで開けたという王冠に出来たキズと奥西の歯型が一致したという鑑定結果を採用しましたが、三次元の解析を大学に依頼したところ二つの傷はまったく一致しませんでした。さらに奥西が使ったと自供した農薬ニッカリンTは赤い色をしていますが、当日振舞われた葡萄酒は白かったと村人達が証言していたことが明らかになります。
約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯のネタバレあらすじ:転
1988年タツノは84歳でこの世を去ります。母から拘置所の奥西に宛てた手紙は969通、もう一度息子と一緒に暮らしたいという願いはついに叶いませんでした。
逮捕から36年経った1997年、20年を費やした第5次再審請求は棄却されました。元裁判官の秋山は裁判官を縛る縦社会が存在し、それが再審の開始を阻む要因になっていることを明かします。
2002年の第7次再審請求、27人の弁護団は奥西が自供した農薬に関する毒物鑑定に注目、すでに販売停止になっていた農薬ニッカリンTを取り寄せ再度分析検証を開始します。しかし80歳を目前にした奥西は胃ガンを患い、胃の三分の二を除去するほどの大手術をします。奥西に残された時間が少ないことを実感した鈴木弁護士は新たな証拠に取り組み始めます。
名古屋大学の石川教授は葡萄酒の王冠の4本の足のうち、一本だけが不自然につぶれて曲がっていることに注目しました。弁護団は同じ形の王冠の復元を町工場に依頼、奥西の自白と同じように10人が歯で噛んで開けてみたところ、潰れて曲がる王冠は一つも出ませんでした。王冠を噛んで開けたとする奥西の証言に大きな疑念が生じます。
逮捕から44年経った2005年4月、名古屋高裁は再審の開始と奥西の死刑の停止を決定します。奥西は79歳になっていました。
約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯の結末
しかし検察は即座に異議申し立てを行いました。その半年後、奥西を支えてきた川村も心筋梗塞でこの世を去ります。奥西は信頼してきた川村の死に大きなショックを受けます。
逮捕から45年経った2006年12月、名古屋高等異議審は再審請求を再び棄却しました。再審を取り消した裁判長は奥西の自白を重視しました。その後、最高裁は毒物を詳しく検証するよう名古屋高裁に審理の差し戻しをします。再び再審の扉が開く可能性が見えてきました。
しかし逮捕から51年経った2012年5月、再び再審請求は棄却されます。再審の取り消しから2日後、奥西は肺炎を患って緊急入院します。面会に行った鈴木弁護士は奥西がすっかり痩せ細ってしまったこと、その手には手錠がかけられていたことを悲痛に訴えます。そして僅かな証拠のみで奥西を死刑に追い込んだ裁判官達への憤りを露わにします。
名張事件から半世紀、事件現場となった公民館も取り壊され、懇親会に出席した村人32人のうち17人がこの世を去りました。際限なく続く再審の決定と取り消し。司法は何を狙っているのかと問いかけるところで映画は幕を閉じます。
以上、映画「約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯」のあらすじと結末でした。
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