夜のピクニックの紹介:2006年日本映画。第2回「本屋大賞」を受賞した恩田陸の同名小説を映画化した作品で、一昼夜かけて80kmの距離を歩く「歩行祭」を舞台に高校生の友情や葛藤を描いた作品になっています。シンプルな設定ながら学生生活を思い出すような描写がいくつも見られ、自然とノスタルジーに浸ることのできる一本です。
監督:長澤雅彦 出演:多部未華子(甲田貴子)、石田卓也(西脇融)、西原亜希(遊佐美和子)、郭智博(戸田忍)、加藤ローサ(榊杏奈)、貫地谷しほり(後藤梨香)、松田まどか(梶谷千秋)、柄本佑(高見光一郎)、ほか
映画「夜のピクニック」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「夜のピクニック」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
夜のピクニックの予告編 動画
映画「夜のピクニック」解説
この解説記事には映画「夜のピクニック」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
夜のピクニックのネタバレあらすじ:起
高校3年生の主人公・甲田貴子(多部未華子)は、今回が最後となる恒例の学校行事「歩行祭」に参加します。80キロもの長い距離を歩くことに絶望を感じる貴子の親友・遊佐美和子(西原亜希)。そんな美和子に貴子は、転校して今はニューヨークで暮らしている親友の榊杏奈(加藤ローサ)から届いていたハガキを見せます。そこには「貴子たちの悩みが解決して、無事ゴールできれば…」や「おまじないを昨年かけておいた…」など理解できないことばかりが書いてありました。
学校に着くと全校生徒が校庭に集まっています。別のクラスの美和子とは別れ、同じクラスの後藤梨香(貫地谷しほり)らと合流した貴子。この日の空は澄み渡り、絶好の日和です。そしてついに歩行祭が始まり、学校を出発した貴子たちは、歩きながら好きな男子の話をします。「貴子は西脇君が好きなんでしょ?」とからかわれる貴子ですが、彼とはしゃべったこともありません。
貴子には、周りのみんなには内緒にしている異母兄弟がいます。それが同じ学校に通う、西脇融(石田卓也)です。貴子と融は、中学生のころに父親の葬式で初めて顔を合せました。2人との面識があるものの、その境遇から互いに避けるように学校生活を送っています。周囲には2人が異母兄妹であるという事実は知らせず、意識はしているものの言葉を交わさない2人の間には、いつも微妙な空気が流れていました。そんな2人の距離感から、周りにいた友人たちからお互いに好意があるのではと勘違いされています。
夜のピクニックのネタバレあらすじ:承
休憩をとりながら、果てしない道のりを歩く貴子たち。長く険しい道のりの歩行祭も、初めのうちは遠足気分で生徒たちも楽しそうに歩いています。歌を歌ったり芝居がかった演技を披露したり、そんな光景を見て切なくなる生徒もいたりと、さまざまな生徒たちに混じり、やっと昼食休憩の時間がやって来ました。杏奈からの手紙が気になる貴子。杏奈には好きだった男子がいましたが、結局最後まで内緒にして旅立ってしまいました。
昼食の弁当を食べようとした貴子は、西脇のグループと一緒になします。そこでもやはり言葉を交わすことができず、険悪な雰囲気で終わってしまい、一緒にいた友人たちは、2人に何かあるのかと余計に関係を疑います。
夕方になると足に疲労が来て、リタイヤするものも現れ始めました。しかし時間の流れを感じながら、昔の自分にはもう戻れないのだと感じて、今を生きることの大切さを感じるようになります。夜になり集合写真を撮る時間、貴子は勇気を出して西脇に話しかけようとします。しかし西脇は貴子をわざと避けるように、その場を離れました。
夜のピクニックのネタバレあらすじ:転
夜も歩行祭は続きます。貴子が歩いていると、そこへ杏奈の弟・順弥が現れみんなを驚かせます。順弥は、ピクニックに来たついでに、姉の好きだった人を探し出そうとしていました。「姉は、親友の兄弟が好きだと言っていた」と話す順弥。貴子は自分には兄弟はいないと伝えると、順弥は次に美和子のもとへ走って行きました。
この日、偶然誕生日だった西脇に貴子はついに「誕生日おめでとう」と話しかけることができます。しかしそれ以上は会話が続かず、それ以上何も話せずに終わってしまいました。西脇の親友・戸田忍は、なぜ貴子を避けるのか西脇にたずねます。何事もタイミングが大事だと、自分の経験を話しだす戸田。それを聞いた西脇も深く納得するのでした。
そして休憩地点へやっと着いた貴子たち。ここでは二時間の休憩時間がありますが、もうヘトヘトで話しをする気力もありません。体育館で短い仮眠をとって、重い体を無理やり起こして、最後の残り10キロはそれぞれ個人で学校を目指します。最後の力を振り絞り、走っていくものもいれば歩いて学校を目指す者もいました。
貴子は、親友の美和子とゴールを目指します。朝日が昇り歩きながら学校を目指す貴子に、美和子は貴子と西脇の関係を知っていると告白しました。実は貴子の母親が一年前、親友である美和子と杏奈の2人には知っておいてほしいと話していたのでした。貴子は、西脇に対して罪の意識を持って生きてきました。しかしそれは母親が背負うもので、貴子には申し訳なく思う貴子の母。西脇の父の不倫相手の子として、貴子は生まれてきました。しかし「西脇君とこのままの関係でいいの?」と、美和子は尋ねます。
夜のピクニックの結末
歩いている途中、道で休憩していた西脇と戸田に遭遇する貴子と美和子。西脇は足をくじいてしまい、戸田と貴子、美和子たちで交代に西脇の荷物を持ちながらゴールへ向かうことにしました。そこへ、キャンプをしていた順弥が知り合いの車に乗ってやって来ます。
「姉の好きな人は、テニス部に所属しているはず」と話す順弥。西脇がテニス部だとわかると、順弥は姉妹はいるかと尋ねます。すかさず戸田が、「彼には姉妹はいない」と答えますが、すべてを理解した順弥が貴子と西脇が異母兄妹であることをべらべらとしゃべってしまいました。微妙な空気が流れて、気まずくなった順弥はさっさと去っていきます。
戸田は2人の関係性に驚きながら、今まで事実を話してくれなかった西脇に納得のいかない様子です。戸田は貴子に西脇との関係をけしかけたことを悪く思っていました。そして戸田と美和子が気を利かせたことで、ようやく貴子は西脇に話す機会を与えられます。今まで言えなかった自分の気持ちをお互いに吐露する2人。この歩行祭には、貴子はかけをして挑んだと話します。西脇と一言でもいいから話そうと意気込んで挑んだことや、自分や母のことを憎んでいたかと尋ねる貴子。西脇は、「憎むことはなく、ただ嫉妬していた…」と答え、会話はなくてもお互いに意識していた2人はすぐに互いの境遇を理解し合うことができました。
西脇は「損した、もっと青春しておくんだった…」と後悔し、貴子は「いま、してるじゃん」と答えます。2人はいつかまた一緒に歩くことを約束して、学校へと続く最後の道を歩いていくのでした。そして最後には、杏奈が書いていたおまじないとは順弥だということもわかります。学校までの坂道を最後にそれぞれの思いを込めて上ります。ゴール直前に貴子は美和子に礼を言い、みんなで一緒にゴールしたのでした。
以上、映画「夜のピクニック」のあらすじと結末でした。
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