八日目の蝉(ようかめのせみ)の紹介:2011年日本映画。恋人の子供を誘拐してしまった希和子。誘拐犯でありながら子供を実の子のように愛情をかけ育て、子供もまた21年たってからその愛に気付く悲しい愛の物語。直木賞作家・角田光代のベストセラー小説が原作の映画です。キャッチフレーズは「どしゃぶりの雨の中で起きた誘拐事件。犯人は父の愛人。連れ去られたのは、私。私はその人を、本当の『母』だと信じて生きてきた」、キャッチコピーは「優しかったお母さんは、私を誘拐した人でした」です。2012年第35回日本アカデミー賞最優秀作品賞・監督賞・主演女優賞ほか10部門を受賞した作品です。
監督:成島出 出演:井上真央(秋山恵理菜=薫)、永作博美(野々宮希和子)、小池栄子(安藤千草)、森口瑤子(秋山恵津子)、田中哲司(秋山丈博)、渡邉このみ(秋山恵理菜=薫(少女時代))、市川実和子(沢田久美(エステル))ほか
映画「八日目の蝉」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「八日目の蝉」のあらすじと結末をネタバレ解説。動画やキャスト紹介、レビューや感想も掲載。ストーリーのラストまで簡単解説します。
八日目の蝉の予告編 動画
ネタバレ「八日目の蝉」あらすじ・結末
ここからは映画「八日目の蝉」のネタバレを含んでいます。あらすじの結末まで解説していますのでご注意ください。
八日目の蝉のネタバレあらすじ;起
1995年10月、ここは東京地裁です。主人公・野々宮希和子(永作博美)が「逮捕されるまで毎日祈るような気持ちで生活をしました。今日一日、明日一日、どうか薫と生きられますように、それだけを祈り続け暮らしました。4年間、子育てをする喜びを味わわせてもらった事を、秋山さん夫妻に感謝しています」と述べる誘拐事件の裁判シーンから物語りは始まります。
1985年、野々宮希和子は、大手の下着メーカーで働いていました。そして、同僚の秋山丈博(田中哲司)とつきあいました。彼女はこの恋愛が不倫と知りますが、妊娠してしまいました。丈博は、希和子から妊娠を告げられたとき、妻・恵津子との離婚計画が台無しになると考え、希和子に中絶をさせます。しかし、そのために希和子は一生、子供を産めない体になっていまいました。一方、丈博の子供を宿した妻・恵津子は、希和子の家に行き、中絶したことを罵倒し希和子を傷つけます。
後日、丈博と恵津子の間に「恵理菜」が生まれました。希和子はこの赤ちゃんを殺しに行きます。しかし、希和子に微笑みかける赤ちゃんを見て、「この子のためだけに生きよう」と衝動的にどしゃぶりの雨の中、連れ去ってしまいます。希和子は誘拐犯になってしまいました。希和子は彼女に「薫」という名をつけ、逃げ回ります。そして、家族や夫らに理不尽な仕打ちを受けたり、見放されたなどの様々で複雑な事情を抱えた女性たちだけで生活するエンジェルホームに逃げ込みます。
八日目の蝉のネタバレあらすじ;承
しかし、エンジェルホームは宗教団体のような所で、自分の娘や妻を奪い返そうとする家族などから、糾弾・抗議を受けていました。希和子は、警察が来るのではないかと恐れて、そこからまた逃亡することを決意します。希和子は、施設で知り合った沢田久美から岡山の小豆島の彼女の母の家を紹介されます。希和子はそこへ逃亡しました。
希和子は久美の母・昌江の家で偽名・宮田京子を名乗り、そうめん工場で働きながら、優しく愛情を注いで薫を育てました。きれいな瀬戸の景色に感動した希和子は、薫に「これからはきれいなものを見せてあげる」と約束します。薫はすくすくと育ちます。しかし、そんな平穏な日々もうち破られます。
ある日、小豆島の「虫送りの祭り」の様子をアマチュアカメラマンが撮った写真がコンクールに入賞したのです。その写真には希和子と薫の姿がはっきりと写っていました。写真は全国紙に掲載、報道されてしまいました。それを見た希和子は「もうダメ…」と思い、薫と親子の楽しい思い出を作るため、ある写真館で二人で写真を撮ってもらいます。そして、学校や海に行きました。お寺に行ったとき、薫が蝉の抜け殻を拾いました。
希和子は「蝉は7日間だけ生きられるの。でも8日目も生きることがあるかもね」と言います。薫は「一人だけ8日も生きるのはイヤや、これ宝物にする。蝉が寂しくないように持っててあげる」と答えました。警察の手が迫ってきました。必死に逃げる二人でしたが、ついにフェリー乗り場で希和子は警察に逮捕されてしまいました。
八日目の蝉のネタバレあらすじ;転
年月は流れ、2005年の夏、薫(井上真央)は秋山恵理菜として成長し、21歳の大学生でした。しかし、両親とは理解しあえず、アルバイトをしながらアパートで一人暮らしをしていました。バイトが終わって駐輪場に行くと、自称フリーライターの安藤千草が現れ、「薫ちゃんだよね」と声をかけられます。驚く恵理菜に、千草は今、自分はエンジェルホームの問題や恵理菜の誘拐事件を取材していることを告げ、取材を申し込みます。恵理菜は、何ももう覚えてないと去ろうとしますが、スクラップブックを渡され、読んでほしいと千草に押し付けました。恵理菜は誘拐事件後、実の両親とぎくしゃくした関係で、家出したり、母に責められた記憶が蘇ります。
その頃、恵理菜はバイト先の塾の講師・岸田孝史と不倫中でした。ある日、相談する相手や友達がいない寂しい恵理菜は、千草を呼び出して、自分が岸田との子供を妊娠したかもしれないと告白します。妊娠検査薬で妊娠を確認した恵理菜は、父親と同様の態度をとる岸田を見て、妊娠した事を言わずに、岸田と別れました。
ある日、千草と夕食をとりながら、この子供を産むと言う恵理菜は、誘拐事件後の崩壊した家庭環境を語り、それは全て野々宮希和子のせいだと語りました。それを聞いた千草は、自分は実はエンジェルホームで恵理菜と姉妹のように育てられたマロンであると白状します。恵理菜は実家に帰り、自分は妊娠したので、大学を辞めて働きながら子供を育てたいので、お金を貸してほしいと母・恵津子に頼みます。それを聞いた母・恵津子は、半狂乱になりおろせと言い、「どうしたらいいの?」と泣き崩れてしまいました。
八日目の蝉のネタバレあらすじ;結末
千草に誘われ、恵理菜は、誘拐されていた時の場所への取材旅行にでかけます。エンジェルホームに行くと、既に解散し、建物は廃墟となっていました。恵理菜は、千草から当時の話を聞かされますが、記憶は蘇りませんでした。ホテルで、恵理菜は、千草に「母親になんてなれない」と押さえ込んでいた不安を打ち明けます。千草は、エンジェルホームという独特の施設で育ったせいで、男性に対して恐怖症になったんだと告白します。また、千草はそんなダメな自分でも二人で一緒なら母親になれると恵理菜を励まします。
恵理菜は、自分の過去を探しに岡山の小豆島に渡ります。海、学校、寺の階段、夏祭りの伝統行事をした丘で恵理菜の思い出が蘇ってきました。そして、ある写真館の前で1枚の写真を発見します。それは希和子と自分の写真でした。その写真から港の漁師に「この女性を知りませんか?」と聞くと、その漁師はかつて母・希和子に思いを寄せていた文治でした。恵理菜は「その時の事を教えてください」と聞きました。年老いた文治は「覚えとらんのか、あの人は…あんたの事を心配しとった、こう言ったんよ」と答えました。
恵理菜は、フェリー乗り場のベンチで休みながら、希和子と自分が来たあの夜のフェリー乗り場での記憶を思い出します。フェリー乗り場前でご飯を買い、店を出た希和子と自分を警官たちが囲んでいました。希和子は、薫を乗り場まで行くように言います。振り返りつつ乗り場まで一人で歩いた薫を警察官が保護します。希和子は警察に逮捕されつつ、「その子はまだ朝ご飯を食べていないの!」と叫びます。すべての思い出を取り戻した恵理菜は、写真館へ走ります。
そして写真を見て、希和子が撮影の前に「薫、ありがとう。ママ、薫と居られて幸せだった。ママはもういらない、何にもいらない。薫が全部持っていって、大好きよ、薫」と言ってくれた思い出が蘇ります。恵理菜は自分が愛されていたことを思い出し、前向きに八日目を生きていこうと決意します。そして、「私、もうこの子が好きだ」と恵理菜は言います。
以上、映画「八日目の蝉」のあらすじと結末でした。
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「八日目の蝉」感想・レビュー
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胸が苦しく切なくなる作品でした。希和子が薫に、『これからはきれいなものを見せてあげる』という言葉にぐっときました。虫送りの祭りのシーンの世界観が幻想的な印象を受けました。希和子が逮捕されるシーンでは涙が止まらず、一番泣いてしまいました。また、主題歌の中島美嘉さんのDearという曲も作品の内容にとても合っていて、切なく悲しくなる曲でした。
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幾ら子供を産めなくなったからと言って誘拐なんて…と思いましたが、薫には希和子が必要だったのだと感じました。
希和子と薫が警察によって引き裂かれるシーンでも泣きましたが、一番泣いたのは薫が希和子と過ごした時間を思い出し、そして希和子の大きな愛に気付いたシーンでした。
何度見ても新鮮な涙を流すことができる素晴らしい作品だと思います。 -
不倫や自己勝手な 行為や言動が
いかに 周囲を悲惨な世界に連れ去るのか
考えさせられた話でした。
それでも人は 欲 に勝てない
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ご多分にもれず僕も泣いてしまいました。少なからず感情移入していまったのが、永作博美さん演じる希和子でした。希和子は本来ならば誘拐犯であり犯罪者なのてすが、逆に娘を強引に引き離す警察や実の親が悪い奴に見えてしまいます。やはり生みの親より育ての親なんでしょう。そして僕が共感を覚えるのは、かりそめの母親である希和子が社会からはみ出したアウトサイダーだと言う部分でした。男一人で幼い子供2人を育ててきた、僕も言わばはみ出し者です。いつも仕事より子供の事を優先させる僕はやはり厄介者。職場では疎外感と孤立感を感じるのが常でした。もともとはバリバリの仕事人間だった僕。「もし私に何かあったら、子供を実家に預けて好きなだけ働くつもりでしょ!」妻からはそう言われた事があります。その時は漠然とそうするかもしれないなあ…と思っていました。しかしいざ妻が亡くなりまだ小さな子供たちの手を握った時、絶対にこの子達を離してはいけないと強く感じたのです。上司からの「実家に子供預けろ」勧告は拒否、上級管理職への昇進も辞退。まさに男社会では厄介者のアウトサイダーです。希和子もアウトサイダーであるけれど、何があってもこの子と一緒に生きて行くという強烈な意志がありました。はみ出し者が社会に抗って必死に子供を育てていく、そこがちょっと自分に似ていて強く共感する部分でした。ただ作品中、8日目の蝉が誰を指しているのかは分かりません。娘が先日成人式を迎えました。まだ学生の娘が自立し完全に子育てを終えた時、僕も八日目に生きる蝉の様に新しい世界を見ることができるのか、それとも命を次につないだ後静かに最期を迎えるのか。その時になってみないとわかりません。
私はすごく涙もろいのですが、その中でも一番泣いた映画です。希和子と薫が島を出る前に警察に捕まってしまう20分間のシーンが今でも忘れられません。人をだましたり、決していい事をしていない希和子を応援してしまいます。私は今までで一度も本という物を買ったことがなかったのですが、初めて原作を買いました。ハッピーエンドでもバットエンドでもないこの映画、本当にすばらしいと思います。