夕陽のあとの紹介:2019年日本映画。鹿児島県長島町を舞台に、幼い里子との特別養子縁組を目指す女性と、その子供を7年前の乳児置き去り事件で手放した実の母。二人の“母になりたい”女性の葛藤をDV、乳児遺棄、不妊治療、養子縁組制度などの社会問題を織り交ぜて描いた人間ドラマです。
監督:越川道夫 出演者:貫地谷しほり(佐藤茜)、山田真歩(日野五月)、松原豊和(日野豊和)、永井大(日野優一)、川口覚(新見秀幸)、木内みどり(日野ミエ)、渡辺早織(山本恵)、鈴木晋介(伊藤論)、宇野祥平(吉田)、滝沢涼子(前川玲子)ほか
映画「夕陽のあと」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「夕陽のあと」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
夕陽のあとの予告編 動画
映画「夕陽のあと」解説
この解説記事には映画「夕陽のあと」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
夕陽のあとのネタバレあらすじ:起
鹿児島県の最北端に位置する長島町。漁業の盛んなこの町では、町の女性たちは漁に出た夫たちの帰りを待っていました。ブリの養殖を手掛ける日野優一(永井大)と妻の五月(山田真歩)の夫婦も朝早くから仕事に出ており、家の留守を守るのは優一の母・ミエ(木内みどり)と7歳になる里子の豊和(松原豊和)でした。
優一と五月は長年に渡って不妊治療を受けてきており、五月の幼馴染で役所の福祉課に努める新見秀幸(川口覚)の紹介により当時生まれて間もない豊和と巡り合ったという経緯があり、優一が親から受け継いだ今の仕事も軌道に乗ってきたことから、夫婦は豊和と“本当の家族”になるべく特別養子縁組を組むことを検討していました。
豊和が毎朝、同級生と通学している時に声をかける一人の女性がいました。彼女の名は佐藤茜(貫地谷しほり)といい、1年ほど前からこの島に移住し、港の食堂で働いていました。茜はその働きぶりが評判を呼んでいましたが、彼女の素性を知る者は誰一人もいませんでした。
夕陽のあとのネタバレあらすじ:承
ある日、五月は仕事帰りの茜を夕陽が良く見える場所に連れて行くことにしました。五月はいつもは元気な茜がここ最近元気がない様子を気にしていたのです。五月は茜に、何か悩みがあれば相談に応じることを伝えましたが、茜は特に何も語ることはありませんでした。そんな茜が非常に気にしていたのは豊和のことでした。
茜は豊和が小学校のキャンプに参加した時も帯同し、一緒にカレーを作り、一緒に写真を撮り、豊和にだけ子守唄を歌ったりしていました。一方、五月は優一と久々のデートを楽しんでいましたが、二人の会話は常に豊和のことばかりでした。その後、豊和を迎えに行った五月でしたが、茜がなぜか豊和の母親のように振る舞っていることに違和感を覚えました。さらに五月は豊和からキャンプの夜は茜が付き添ってくれたことを聞き、何とも言い知れぬ不安を覚えました。
そんなある日、秀幸は茜が仕事を休んでいると知り、見舞いに出向きました。秀幸はこの島では珍しい単身の若い女性である茜が移住してきたことに疑念を抱いていたのですが、茜がなぜか幼児用のおもちゃを持っていることにその疑念を深めていきました。
一方の優一と五月は着々と特別養子縁組の話を進めていました。特別養子縁組を受けるためには養子となる子供が8歳未満であること、生みの親の同意が得られていることなどが必要なのですが、未だに生みの親の消息を掴めずにいたことから夫婦は焦りを隠せずにいました。そんな時、優一と五月は豊和に隠された驚愕の真実を知ることになりました。
夕陽のあとのネタバレあらすじ:転
実は豊和は、今から7年前に東京のネットカフェで発生した乳児置き去り事件の被害者だったのです。そして五月は豊和の生みの親の名を知ってしまい、たまたま茜の家で食事をごちそうになっていた豊和を連れ戻しに向かいました。そして秀幸もまた茜の本心を聞くこととなりました。
翌日、五月は茜と鉢合わせてしまい、「島から出ていけ!」と気持ちをぶつけました。茜もまた「豊和の母親に戻りたい」と本音をこぼし、五月は強い拒絶反応を示してしまいました。それから茜は豊和の親権を取り戻しために動き出し、養子縁組を諦める気のない五月は茜の職場に乗り込んで改めて「島から出ていけ!」と掴みかかりました。
五月は意を決し、豊和の全てを知るべく置き去り事件の起きた東京に向かいました。五月は当時の児童相談所の保護司から事情を聞き、茜の辿ってきた壮絶な人生を垣間見ることとなりました。かつて壮絶なDVを受けてきた茜はたった一人で生まれたばかりの豊和を育てていたのですが、精神的にも経済的にも追い詰められていきました。
そして空に大きな夕陽がかかった日、茜は豊和を一人ネットカフェに置き去りにし、自らはビルから飛び降りようとしたのですが、ポケットから豊和のお気に入りのおもちゃが転がり落ちたために思いとどまったのです。その後、茜は懲役1年・執行猶予3年の有罪判決を受け、就職した工場では丁寧な働きぶりを認められていたものの周囲とは孤立していたのです。
茜の元勤め先の工場を訪れた五月は茜が豊和に対する想いを綴った記録を見せてもらい、子供を産んだことのない自分の経験と照らし合わせて茜の苦悩の一部を垣間見ることができました。それでも五月は豊和を手放すつもりはなく、優一も豊和に真実を知られたくないと考えましたが、ミエは豊和もいずれ島を去る日が来ると諭しました。
夕陽のあとの結末
茜は自身の過去の全てを知ってしまった秀幸にもう一度チャンスを欲しいと頭を下げました。秀幸は「一緒になって豊和の成長を影ながら見守ろう」と提案しましたが、茜は何も言わずにその場を立ち去りました。
そんな茜の元に豊和が訪ねて来ました。豊和は五月と茜が喧嘩したと思い込んでおり、五月の代わりに謝りに来たのです。豊和は優一から家業のブリの子育てと同じ様に島はみんなで子育てをするのだと聞かされており、「茜もお母さん」と言い残してその場を後にしました。
茜は五月に会いに行き、二人きりで船に乗って腹を割って話し合いました。茜は豊和を産んだ傷は7年経っても痛むと語り、五月はその痛みはわからないままでも豊和を愛していることに変わりはありませんでした。茜もまた、豊和が五月のことを本当に愛していることを痛感し、二人は互いに感謝の気持ちを伝え、一緒に大きな夕陽を見つめていました。
それから程なくして、茜は島を出ることにしました。茜はいつか豊和が島を出た時に居場所を作ってあげることを五月と約束しており、茜は最後に豊和の顔を見に行くとそっと「きばれ、豊和」と呟きました。
以上、映画「夕陽のあと」のあらすじと結末でした。
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