許された子どもたちの紹介:2020年日本映画。『先生を流産させる会』などを手掛けた内藤瑛亮監督が、実際に起こったいくつかの少年犯罪事件から着想を得、8年がかりで完成させた作品です。同級生をいじめで殺しながらも、母の差し金により不処分となった不良少年が社会から壮絶な制裁を受ける過程を描きます。
監督:内藤瑛亮 出演者:上村侑(市川絆星)、黒岩よし(市川真理)、名倉雪乃(櫻井桃子)、阿部匠晟(倉持樹)、池田朱那(宮台莉子)、大嶋康太(小嶋匠音)、清水凌(高橋蒼空)、住川龍珠(井上緑夢)、津田茜(佐々木円)、西川ゆず(村田鈴)、野呈安見(倉持茜)、春名柊夜(蓮見春人)、日野友和(キャロル)、美輪ひまり(丸山寧々)、茂木拓也(松本香弥憂)、矢口凛華(三浦凛)、山崎汐南(藤野結)、地曵豪(倉持武彦)、門田麻衣子(倉持絵梨夏)、三原哲郎(市川祐司)、相馬絵美(四宮美紀)ほか
映画「許された子どもたち」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「許された子どもたち」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
許された子どもたちの予告編 動画
映画「許された子どもたち」解説
この解説記事には映画「許された子どもたち」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
許された子どもたちのネタバレあらすじ:起
とある地方都市に住む中学1年生の市川絆星(上村侑)は不良仲間の小嶋匠音(大嶋康太)や松本香弥憂(茂木拓也)、井上緑夢(住川龍珠)と不良少年グループを組み、リーダー格として暴れ回っていました。
ある日、絆星らは日常的にいじめている同級生の倉持樹(阿部匠晟)にボーガンを作ってもってくるよう命じました。樹を河川敷に呼び出した絆星らは早速ボーガンの試し撃ちを始めました。絆星はふざけて緑夢に狙いを定めようとしたところ、咄嗟に樹が緑夢を庇う素振りを見せました。絆星はボーガンで樹の喉を撃ち抜き、樹は血まみれになって倒れました。絆星ら4人は樹を見捨ててその場から逃げ出しました。
学校の父母会は樹が家に戻ってこないことから大掛かりな捜索活動を開始しました。捜索隊の中には絆星の母・真理(黒岩よし)と父・祐司(三原哲郎)の姿がありました。捜索の末、樹は発見されましたが、その時既に樹は絶命していました。
数日後、絆星の家に刑事がやってきました。絆星は両親には事件当日は樹に会っていないと嘘をついていましたが、警察は付近の防犯カメラの映像から絆星ら4人を割り出しており、何よりも緑夢が正直に警察に証言していました。刑事に問い詰められた絆星は、自分が樹を撃ったことを認めました。
許された子どもたちのネタバレあらすじ:承
マスコミは絆星らの凶行を大々的に報じ、絆星の家には記者たちが殺到しました。真理と祐司は弁護士の四宮美紀(相馬絵美)に絆星の弁護を依頼しました。真理は絆星を庇うあまり、絆星は犯行推定時刻には既に家に戻ってきていたと嘘のアリバイを主張しました。
家庭裁判所で絆星らの裁判が始まり、四宮は絆星の供述は刑事に自白を強制されたものだと主張しました。法廷には樹の父・武彦(地曵豪)と母・絵梨夏(門田麻衣子)が意見陳述のため訪れましたが、裁判は終始絆星らに有利なペースで進んでいきました。そして裁判官が下した判決はまさかの「不処分」でした。無罪放免となった絆星は密かにほくそ笑みました。
絆星ら4人は再び学校に通い始めましたが、事件の反響は絆星らの予想を超えて大きくなっており、ネット上では絆星らに対するバッシングが相次ぎました。そして武彦と絵梨夏は絆星を相手取っての民事訴訟に踏み切りました。
絆星、匠音、香弥憂は教室で緑夢を取り囲み、警察に証言したことを責めました。そこに居合わせた同級生のひとりが「少年院行っとけよ」と呟き、キレた絆星はその同級生を殴り倒してしまいました。この件はたちまちネット上で広まり、絆星の家には「人殺し」「殺人鬼」などと落書きされるようになりました。絆星の一家は四宮に勧められてホテルに身を隠し、学校関係者は絆星に転校を勧めましたが真理は判決を盾に拒絶しました。
絆星らは「仲直りしよう」と緑夢を河川敷に呼び出し、リンチを加えようとしましたが、そこに現れた数人のヤンキーが「お前が殺したんだろ」と絆星に殴りかかりました。緑夢もヤンキーたちに交じって絆星に暴力をふるいました。
許された子どもたちのネタバレあらすじ:転
絆星の一家は別の町へ引っ越すことにし、絆星は偽名を名乗って別の学校に転校しました。周囲とは頑なに心を閉ざし、目立たぬようひっそりと過ごしていた絆星は、数人の女子からいじめられている櫻井桃子(名倉雪乃)の存在を知りました。桃子は教師と寝たといういわれなき噂が流れていたのです。やがてどこにも居場所のない者同士という共通点を持つ絆星と桃子は一緒に過ごすことが多くなりました。
ところが、転校先でも瞬く間に絆星の正体がバレてしまいました。同級生のひとりは他の生徒たちにも絆星の正体をバラし、激怒した絆星はその同級生に殴りかかる騒動を起こしました。絆星の一家は再び引っ越しを決意しましたが、逃げ続ける日々に疲れ果てた祐司は書き置きを残して蒸発してしまいました。こうして絆星は真理と二人きりの生活を始めました。
同じ頃、武彦と絵梨夏は樹の事件を綴った告白本を出版し、大きな話題となりました。真理の元にも出版社の人間が訪れ、本を書かないかと持ち掛けてきました。絆星の事件で職を失い、生活苦に陥っていた真理はその話に乗り、絆星の潔白を主張する本を出しましたが、それはかえってネット上で炎上を煽る結果となりました。
絆星は桃子に、自分が樹を殺したことを打ち明けました。桃子は動じず、樹の両親に謝るべきだと諭しました。絆星は真理には内緒で、桃子と共に樹の家へと向かいました。武彦は絆星を追い返そうとしましたが、絵梨夏は絆星を樹の遺影の前に案内しました。絵梨夏はうつむいたまま何もしない絆星に対し、「あなたは何を謝りたいのか分かっていない。自分の罪と向き合いなさい」と言い放ちました。結局何もできなかった絆星はその場を後にしました。
許された子どもたちの結末
絆星と桃子は事件現場である河川敷に向かいました。そこでは緑夢が樹の遺影を飾り、花を添えて樹を弔っていました。緑夢は絆星の存在に気付き、「自分にもう少し勇気があったら、樹くんは死なずに済んだ」と静かに語りかけました。何も言い返せない絆星は遺影の花を放り投げ、その場を去ろうとしましたが、すぐ近くでは匠音と香弥憂がボーガンで遊んでいました。
二人を見つけた絆星は、桃子の制止を振り切って匠音に殴りかかりました。絆星は匠音からボーガンを奪い、匠音に狙いを定めました。そして放たれた矢は止めようとした桃子の頬をかすめ、匠音を逸れて別の場所に突き刺さりました。匠音と香弥憂はその場から逃げ去り、絆星は樹の遺影を滅茶苦茶に破壊しました。
その頃、真理は絆星の行方を捜していたところ、絆星の家に突撃インタビューなどをして実況していたユーチューバーの男に襲撃されました。この町にもはや居場所のなくなった真理は絆星と共に別の町へ引っ越していきました。
絆星と真理は見知らぬ町で新たな生活を始めました。ある時、絆星は真理に面白い夢を見たと話しました。それは自分の頭が膨らんで爆発してしまうというものであり、絆星はこの夢は“再生”を意味しているのだと笑い飛ばしていましたが、夢の内容を聞いた真理は不吉なものを感じ取っていました。
以上、映画「許された子どもたち」のあらすじと結末でした。
こんなに怖い映画は、他に見たことがなかったです。
この映画以上にひどいイジメはいくらでも現実世界で起きているのに、この映画がこんなにも心に爪痕を残してしまったのは、着眼点がイジメていた側のほうだったからだと思います。
イジメ自体は思い出すだけでも気分が悪くなってしまいますし、イジメていた子に温情を示すなんてできない。
でもこのイジメっ子の苦しみが伝わってきてしまって、どうしようもなく心がザラザラになって行ってしまったのです。
「人の心を癒すのは人の心しかない」
どの子たちにも、いつか愛され癒される場所ができて欲しい。
自分でも信じられないことですが、見る前はが考えられなかった感情が湧いてきた映画でした。
そして、ほぼ無名でありながら、どの役者さんたちも素晴らしい演技でした。